「結局ここも異常無しですか…」
赤城の口にしたそれに相槌を打とうとして、気付く…
「いや…異常は有ったな。」
「ええ、そうね…」
龍田も同じ意見らしい…ま、多分考えてる事も同じだな…
「え?何か有ったんですか?」
「…風呂場、濡れてんだろ?」
「あー…」
濡れてるって事は、普通に考えたらここが風呂場として稼働したって考えるべきだ(水をわざわざ撒いたとかで無い限りは)生きた人間が利用したのかどうか、と言うのも別にしてな…と言うか、普通は生きた人間が使ったと考えるのが考え方として自然だが。
「…まぁ、確かに異常は異常だけど…私たちが外に出る手掛かりにはならないわよね…」
「そう、だな…」
ま、実際その通りだし…正直な所、仮に生きた侵入者がここに居たとしても今俺たちにはあまり関係が無い。つか、もっと言えばどうでも良い…
「…んじゃ、次はトイレだな。」
「……本当に行くの?」
「出られない以上、何でも試してみるしかねぇからな…」
俺だって行きたかないが、仕方無い……ハァ…さっさと向かうか。
「あの…男性の方も確認しないと駄目なの…?」
「…ま、そりゃ…さすがに気になるか…嫌なら良いぞ?取り敢えず俺が一人で確認「ハァ…行かないとは言ってないでしょ?」…なら、初めからグダグダ言うな。」
「…貴方は婦人用のトイレに入るのに抵抗無いんですか?」
……さっき、『龍田』にもその辺言われたな…
「別に覗きが目的じゃねぇし、つか…どうせ誰も居ねぇだろ…大体、この緊急事態にそんなの気にしてる場合か?」
「……確かに、そうですね…」
「と言うか、どう考えても危険な気がするんだけど…」
「…不安なら俺が先に「さっさと入りましょうか…」「そうね…」……だから、何なんだお前らは…」
さっきまで渋ってた癖に、急に気が変わったかの様にスタスタとトイレまで向かう二人に溜め息を吐く…ハァ…たくっ…一々面倒臭い奴らだ……まぁ、叢雲に比べたら遥かにマシだが。
「まぁ、何となく予想はしてたけど…ここには何も異常は無さそうね…」
「私、紳士用トイレなんて初めて入りましたよ…」
……まぁ、普通は入らな……あ。
「…でも、良く考えたら…ここも定期的に掃除してる子が居る事になるのよね…」
「宿泊施設として解放してるなら掃除は絶対に必要ですけど…逆に良く、躊躇無く出来ますよね…」
「……」
誰か分かったらさすがに労ってやるか……一瞬そう考えたが、さすがにやめておくべきか…どう考えても嫌々やってるだろうし、変に触れてやらない方がそいつもまだ気は楽だろう…
「…と言うか、本来なら貴方もやるべきなんじゃないの?貴方だってここのトイレ、時々利用してるんでしょ?」
「まぁ、な…」
確かに、正論だ…利用してるのに掃除に参加しないのは筋が通らねぇか…
「…ま、何にしても先ずはここを脱出してからになるな…」
「ホント、いつになったら出られるのかしらね…」
「さぁな…」
「…私、さすがに朝には向こうに戻らないと困るんですよねぇ…」
「俺にそんなの言われても知らねぇっての。…つか、龍田は完全にとばっちりだししゃあねぇが…お前は俺の後を付けて来て勝手に巻き込まれてるだけじゃねぇか。」
「だって…まさか出られなくなるんて…」
「報告書は読んだんだろ?にも関わらず、不用意にここまで来たお前が悪い。」
「そんなぁ…」
「さっさと出たいなら協力しな…まぁ、そう簡単には出られそうにねぇけどよ…」
「ホント、せめて天龍ちゃんに連絡でも取れればねぇ…」
「……」
龍田の場合、変なフィルター通してあいつの事を見てる気がしてならないが…それでも、俺からしたってあいつは頼りになる奴だと思う…頭の回転が早く、何処までも冷静さを保てる上…あいつは周りがカッカしてても落ち着かせる事すら出来る…マジで俺からしたら欲しくて堪らない能力の持ち主だ……ハァ…まかり間違って、今ここに来てくんねぇか…いや、単に遭難者が増えるだけかも知れねぇな…だが、それでもだ…居てくれれば…俺ももうちょい落ち着けるんだがな…