傍受マニアの艦これ   作:三和

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部屋に戻り、龍田が茶を淹れる…俺がやろうとしたが普通に断られた…まぁ実際楽出来るならそれに越した事は無いんだが、何となく落ち着かないのも確かだ…

 

「自分の事を上司、私たちの事を部下とか言ってる癖に…普通上司が率先して部下にお茶を淹れるって可笑しいでしょ。」

 

「…俺の勝手だろ。」

 

論理的な反論は出来無いが(そもそも一般的に間違ってるのは俺の方なのも分かっている…)それでも自然と憎まれ口の様なものが出て来る…

 

「…ま、普段なら貴方に淹れさせるのも有りかも知れないけど…少なくとも、私だって手を怪我してる人にそんな事させる程鬼じゃないわよ…」

 

「…で、火傷の方はどうなんですか?」

 

どうと聞かれても、包帯をきっちり巻いている以上は実際どうなってるかなんて分からん…ま、ただ…

 

「痛みは多少マシになったかもな…尤も、これは包帯を巻いているせいかも知れないがな。」

 

至極当たり前と言えば当たり前の話だが…基本、怪我などの肉体の損傷部位は外気に触れてると痛みが続くものだ…が、そこに絆創膏を貼ったりして空気を遮断すれば痛みは消えたり…多少は弱まるのが普通だ(まぁ、あくまで外傷の話では有るが)

 

「予断を許さないって事ね…」

 

「そんな大袈裟に考えんなよ…大した事は無い「水膨れが出来てたんでしたっけ?それを大した事は無いと言うのは無理が有ると思いますよ?」…実際そうなってる俺が大した事無いって言ってんだから何も問題ねぇんだよ。処置自体はこの場で出来るものとしては適切だった筈だしな…」

 

多分、な…まぁ、今更失敗してたかも…とか考えるのは正直面倒だ…

 

「ホントに…相変わらず頑固と言うか「今更だろうが」まぁ、そうなんですけど…もう少し人に頼るとか、有るでしょうに…」

 

「現在進行形で頼ってる様なもんだろ。」

 

あからさまな緊急事態だってのに、俺は自分の身を守る事さえ満足に出来やしない…尤も、これはたまに起こる深海棲艦との戦闘でもそうなんだから本当に今更だ…無線が不通になったら俺に出来る事は何も無くなるんだから、本来で有れば現地に居た方が色々対応もしやすい訳だが…当然、そんな事は出来る筈も無い…艦娘たちへの遠隔指示や、深海棲艦の無線に割り込んでの撹乱しか出来無い現状がどれだけ歯痒いか…チッ、イライラして来やがる…

 

普段の事だってそうだ…何せ、所詮俺は男で…艦娘は全員女なんだ…考え方の違い故にせっかく相談されてもたまに話が噛み合わなくなるし、それ以前に…死んだ事も無い俺に船だった頃に沈んだ記憶の話とかされてもな、何も言える訳が無い。…ハァ…今更与えられた役目を放りだそうとは思わないが、一人になると何度も辞めたい…あるいは死にたいと頭に過ぎる…まぁ、こいつらを含めた艦娘たちの前ではとても言えないが。

 

こんな精神状態で、未だ一人も轟沈した奴を出してないのはそれこそ奇跡と言えるのだろう…現状、負けてないだけ…あるいは、深海棲艦がここに戦略的価値を見出してないから攻勢が緩いだけ…つまりは運が良い方なだけと考えるべきだろうがな…当時俺と似た様な事してた奴は大勢居ただろうに、俺だけがこんな立場に居る以上…運が良いとはとても言えんがな…

 

「ちょっと…大丈夫?」

 

「…ん…ああ、問題無い。」

 

龍田の声が聞こえ、俺は現実に戻って来る…いかんな、気を抜き過ぎて余計な事を考えちまった…さてと、切り替えるか…自分の不甲斐無さについてグダグダ悩むのはこの状況を脱して、一人になってからで良い。

 

「…本当に大丈夫ですか?」

 

「しつけぇな…俺が大丈夫だって言ってんだから、大丈夫に決まってんだろ。」

 

さっきの思考に引っ張られたせいで、少しネガティブになってるのが見抜かれてるらしい…やれやれ…だからこいつも龍田も苦手なんだ…こいつらは信用に足る相手じゃない癖に勘が良過ぎる…加えて言えば、ある意味ここに天龍が居なくて良かったとも言える…あいつはアレで結構俺に気を使うからな…今の精神状態だと、情けなく縋っちまいそうだ…

 

「取り敢えず話を進めるぞ…」

 

龍田が寄越して来た湯呑みに口を着けて、中の茶を啜る……良し、少し頭がクリアになって来たな…

 

「…話?」

 

「先ずは確認だ、この寮の現状と…今の俺たちの記憶についてな…」

 

「う~ん…そうですねぇ…一番気になるのは、やっぱり窓についてでしょうか…」

 

「最初…俺は龍田に窓に砲弾を撃ち込ませた…が、傷一つ付かなかった…で、しばらくして気が付いたら…寮から窓そのものが消えていた…だったか?」

 

「そもそも…実際はここに窓が有ったかどうかも今は分からないのよね…」

 

「…本来はどうだったか、今悩む必要が有るかは何とも言えんが…まぁ、始めは窓が有ったから砲弾を撃ち込むと言う発想が出たのは確かだな…」

 

実は最初から壁しか無かったなら…果たしてその発想が浮かんだかは正直何とも言えん…まぁ、あの日閉じ込められた際にトイレのドアを破壊しろと天龍に指示を出した俺だ…浮かばなかったとも言い切れんが…いや、高々木製の壁を破壊しろと言う発想が浮かばないなんて事が有るのか?……今悩んでも仕方ねぇか。

 

「今は窓が無い現状を考えたら…そもそも、あの時も実際は窓が有ったのかどうかも…何とも言えなくなるわね…」

 

「まぁ、確かに…とは言え、今これ以上それを考えるのはあんまり意味がねぇな…実際、今は窓がねぇんだし…」

 

「…何だかんだ部屋に戻ってから五分くらい経ちましたかね…私、今は窓が有るかどうかみてきましょうか?」

 

「…いや…単独行動するとまた合流出来無くなるかも知れん…この後、三人で確認した方が無難だ…」

 

と言うか、実際見に行って窓が有ろうが無かろうが…結局破壊して脱出すると言う選択肢が取れないから無駄では有るが…まぁ、さっきも赤城の言ってた通り…今の俺たちにとって一番恐ろしいのは詰みになる事だ…取り敢えず出来る事は全部試すしかねぇ…絶望して身動き取れなくなりゃ、それで俺たちは終わりだからな…

 

にしてもあの時…一番危惧してた事が今になって起こるとはな…あの時はそもそも、加賀と叢雲が消えた事で脱出すると言う選択肢自体取れなくなったが…今回は全員が揃ってる代わりに脱出そのものが出来無い。

 

…さっきは居ない方が良いとか思ったが、やはり撤回だ…今、俺は一番天龍に居て欲しい…あいつの思考は割と俺と似通ってるし、有事の際は俺の先を行くのは間違い無い…ハァ…俺たち三人だけだと堂々巡りになる…何より…

 

「?…何?」

 

「どうかしました?」

 

「いや…何でもねぇ。」

 

二人の顔を見回した後…俺は軽く息を吐いた…何より、こいつらを俺は心の底から信じる事が出来無いのが一番の問題だろう…別に今回の一件の仕掛け人がこの二人のどちらか、あるいは両方だとか言うつもりは無い…無いが、正直こいつらは土壇場で俺を裏切るんじゃないか…どうしても、そんな疑念が拭えない。

 

……そんな事を考えながら取り敢えず茶を飲み干し、俺は湯呑みを床に置いた。

 

「…お代わりは?」

 

「…貰えるか?」

 

そろそろ動くか…そう考えていた辺りでそう声を掛けられ、出鼻を挫かれる形にはなったが…まぁ良い、焦った所でどうなるものでも無い。

 

……二杯目を一口飲んだ所でトイレが近くなる可能性に気付いたが、もう手遅れだ…そもそも何の手掛かりも無いんだから、一つ予定外の行動をするのも一興と言うやつだろう…

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