傍受マニアの艦これ   作:三和

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色々と気にしすぎるタイプ…それは、私も早い段階で何となく分かってた…でも、あいつの事を気にしてる余裕があの頃の私には無かった……言い訳にしかならないけど。

 

本当は気付いてる…明らかに私以上に重たい物を抱えてるあいつに、更なる負荷を掛けた…それが、今あいつを追い詰める原因の一つになっている事…でも、それでも…不器用なあいつを好きになってしまって…今は、助けたいって…そう思ってる…だけど、あいつは…一定の距離以上には自分の心に立ち入らせてくれないから…どうしようもない…

 

「「ハァ…」」

 

二人の声が耳に入り、私は我に返る…

 

「…なぁ、叢雲。」

 

「…えっと…何「お前、取り敢えず鎮守府の方に帰れ」…え…」

 

「そうね、その方が良いわ…」

 

「……」

 

「悪ぃけどハッキリ言わせてもらう…今のお前じゃ、何の役にも立たない。」

 

「何せ貴女、さっきからずっと上の空だからね…提督が心配なのは分かってるし、貴女の想いも聞かされたから悩むのも少しは分かる…その上で言うけど、だからこそ今の貴女じゃ駄目ね…周りが全く見えてない。」

 

「私は…」

 

緩慢に動かしてた足をその場で止める…今は、何処に居たんだったかしら…

 

「立ち止まるな…早く帰れ…後はオレたちに任せな。必ず見付けるとは言えねぇけど、全力は尽くすからさ。」

 

「待って。この子一人にしたら、また行方不明になるかも知れないわよ…今の様子じゃ、正直不安ね…」

 

「…確かにそうだな…叢雲、取り敢えず入り口まで送って「嫌よ」…あ?」

 

「嫌って言ったの…私も行く。」

 

ここまでずっとあいつの事を考えていた…その所為で意識が散漫になってたのは認める…でも、この役は譲りたくない…私だって、あいつを助けたい…未だろくに戦闘も出来無い、最早出来損ないと言っても良い私だけど…でも、私は…それでもやっぱり艦娘で、秘書艦で…何より…

 

「私は…きっとここの誰よりあいつの事を知ってるから…だから、引き戻す役は私…そうでないといけないと…そう、思うの。」

 

先程からあいつの事に思いを馳せつつも、それとは別に…少しずつ輪郭を帯びて来た一つの考え…それが今、私の中で確信になった。

 

「…大きく出たな…で、引き戻すってのはどう言う事だ?」

 

「ずっとこの状況に違和感が有ったの。電気も点いて…ここまでスムーズに探索が進むなんて、この場所でそれは…絶対に有り得ないって。」

 

「…あのね、有り得ないって言われても今は…結局それが現実で「夕立、悪ぃけど一旦黙っててくれ」え?」

 

「良し、続けろ…叢雲。」

 

「今こう言う状況になってるのが間違い無く現実…それは分かってる…ただ、やっぱりここでは異常が無いのが既に異常なんだと思う。」

 

「…少なくとも異常はゼロではねぇよな。既に三人もの人間が行方不明になってる…でもその割には、確かにこの状況はちと平和過ぎるな…」

 

天龍は…私と同じ考えみたい…でも、確信には至ってないって所かしら?

 

「そこも踏まえて考えてみたの…以前私たちが巻き込まれた非現実的状況…そして、あの時は精神にまで影響が出てた…」

 

「…風呂場の存在を完全に忘れてたりな…何より、あの時も数時間前に使ったのに頭の中からその知識も記憶も消えてたレベルだ…その癖…可笑しいのはオレたちだけじゃなくて、時間そのものまで異常を起こしてた。」

 

「だから思ったの…今私たちが居るのは確かに現実。でも、あの時は?何より、提督たちは何処に行ったのか?」

 

「…成程な。つまり、提督たちが居るのは"ここ"じゃねぇ…そう言いたいんだな、叢雲?」

 

…凄い。この短時間で私と同じ結論に辿り着いてる…あいつが天龍は頼りになるって言ってたけど、確かにその通りね。

 

「は?ここじゃないってじゃあ何処「いや、場所そのものはここだと思うぜ、夕立」…いや、今ここじゃないって…」

 

「悪ぃ…オレの言い方が悪かったな…提督たちは多分この建物内には居るけど、この空間には居ねぇ。そう言いたかったんだ。」

 

「?…ますます分からなくなったんだけど…」

 

「つまり、場所は同じだけど…提督たちは今、現実とは違う別の世界に居るんだと思います…だから、このまま闇雲に寮内をウロウロしても見付からないと思います…」

 

「異世界って言うよりは、多分異界とか異次元とか言った方が正しいかねぇ…今思えば、あの時のオレたちも入り口のドアを開けて中に入ったあの時点で向こう側に居たんだろうな…」

 

「…そう言う事。意味は飲み込めたし、理解も出来た…まぁ、まだ納得は出来無いけど…うん、それが正しいと言う前提で話を進めましょう…先ず、私たちが今居るここが現実世界…提督たちは今異界の方に居る…なら、どうやって向こうに侵入するか考えないといけない訳ね…」

 

「前回は多分…オレたちは元々狙われてて…招待を受けた形なんだろうな…今回は、最初から省かれてる事になるんだろうな…」

 

「…その、振り出しに戻る事になりますけど…結局は…」

 

「その方法を探すしか無い、その為に行動しないといけない…つまり、結局闇雲に探すしか無い訳ね…で、最後に叢雲…一つ良いかしら?」

 

「何でしょうか?」

 

「貴女が提督を引き戻す役って言うのは結局どう言う意味なのかしら?」

 

「…それは、私も含めた私たち三人が…今行方不明になってる三人に…それぞれ深い関わりを持っているからです。」

 

「…当然、オレは龍田だろうな…」

 

「私はもちろん、提督。」

 

「…つまり、私が赤城さん…成程、貴女の仮説通りなら…あくまでも私たち三人でないといけないのね…余計な人員が増えても、一人二人減っても駄目と。」

 

そう、だからきっと…あの子の命日で有る今日。私たちと密接な関係になるあの三人が異界に取り込まれて…何よりそれに気付き、捜索に出たのが私たち三人だったのはきっと…言わば運命みたいなものかも知れない…

 

「逆に言えば…こうして私たちが三人揃ってる以上、向こうから何らかのアプローチが有るかも…そんな風にも考えてたりする?」

 

「ええ。」

 

正直、私たち三人が向こうへ渡る方法を見付けるより…その方が可能性が高いとも思ってる…

 

「だから…私は帰れません。あいつを見付けるまでは…何より龍田は、ウチの艦娘ですから…見捨てる訳には行きません。」

 

「…まぁ、オレとしてもあの二人をこのまま見殺しにするのは寝覚め悪ぃしな…」

 

「…私も赤城さん放置して帰れないからね…まぁ、正直に言えば…仮にあの人一人だったら、積極的には探さないかも知れないけど。」

 

「中々薄情なんだな「報告書にチラッと龍田の性格について書かれてたけど…ある意味龍田とは別ベクトルだけど、それでもそれと同レベルか…あるいは少し上の面倒臭い奴って言っても…同じ様に言えるかしら?」……そんなにヤバいのか?」

 

「そうね、要は…規則、秩序…何それ美味しいの?とか言えるタイプかしらね。」

 

「うわぁ…いや、龍田よりヤベェんじゃねぇのそれ…」

 

「…非常に悲しい事に、それが私の同僚なのよね…」

 

「……悪かった。」

 

「別に気にしなくて良いわ…もう慣れてるし…まぁ、切れるなら切りたいと思ってるのもやっぱり本音だけど…さてと、取り敢えず行動しましょう。当面の目標は…向こうへの侵入方法を探すか、あるいは…向こうから招待されるのを待つ事ね。」

 

…少し希望が見えて来た気がする…待ってて…きっと、もうちょっとでそっちに行けると思うから…

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