しばらくラティとイリアさんに戦闘を任せつつ、後方の警戒をしていた俺とシウスだったが、頂上に差し掛かったところで俺は足を止めた…
「ん?どうしたキリト?」
「いや…そのな…」
単純に疲れていたのもある…何せ後方にいた俺たちにまで手強いフェルウォームや、俺たちの時代のメトークス山では見かけず、正直言ってやりにくいスライムが何体も襲って来た…てっきりここが本当に危険なのは夜だけだとばかり思ってたんだが…前に一人でこっそりここに来たのも夜だったし…でもそれよりも俺は…
「ラティ?」
「……」
前方からイリヤさんの声が聞こえ、シウスから視線を外してそちらを見れば二人も足を止めている。…恐らくラティも同じ事を考えたのだろう…
「ねぇ、シウス?」
「あん?」
「…頂上に着いたら少し休憩しない?ほら、この後私たちはまた山を下らないといけないでしょう?」
「……あの店主も多少到着が遅れたくらいで文句言う奴には見えなかったし、俺は構わねぇがな…程々にした方が良いぜ?日が暮れた後の山越えはあんま賛成出来ねぇ。」
「あら…やっぱりそうなの?」
「ああ。正直降りた先の街道での野宿の方がまだ安全なくれぇだ。」
「分かったわ。少しだけ休んで行きましょう…ラティもキリト君もそれで良いわね?」
「はい。」
「分かりました。」
ああ言っていた割に頂上に着いた瞬間にその場に横になるシウスに驚嘆と呆れを感じていると、ラティとイリアさんが俺のところにやって来た。
「キリト…」
「ラティ…やっぱお前もか…?」
「ああ…」
「貴方たち…私たちに会った時の事を気にしてるのかしら?」
「……そうですね…それなりに印象の強い出来事だったんで、つい…ここでまた何かあるんじゃないかと思ってしまったんですよ。」
「…ま、例えば例の第三勢力が私たちの様にここから侵入する、って可能性も無いでは無いでしょうけども…ここならあまり目立たないでしょうし…」
「最も俺自身…それも無い、とは思うんですよ…貴方たちの時の様に夜ならまだしも今は…」
「そうね、少なくともこんなに明るい時間に堂々と出て来る事は無いと思うわ…さっきだってこの山の中で人に会ったしね…」
「…とまぁ、少なくとも俺の中で結論は出てるんですよ。それでもつい、足は止めてしまいましたけど。」
「キリト…お前マジか…?正直俺はそこまで考えなかったな…」
「おい、お前らそろそろ出発しなくていいのか?」
「…と、そうだな…今行くよ。」
ラティがシウスの方に向かって行く中、イリアさんが俺の肩を軽く叩いた。
「何ですか?」
「彼…今話を聞いてたりしなかったかしら…?」
さっきよりも声を潜めてそう聞いて来る…
「…さぁ?それなりにぼかしてましたし、そうでなくても向こうもこっちがワケありなのは察してるでしょうから…少なくとも多分聞いては来ないんじゃないですか?」
「適当ね…」
「寧ろ聞いてくれた方がありがたいんですがね…どう考えても信じられない部分は省いてこちらから説明しませんか?アレで結構お人好しの様ですし、手を貸してくれるかも知れませんよ?」
「キリト君って結構強かなのね…」
「いやいや…俺だって別に無理強いする気は無いですし、それに特に広める理由がなきゃあいつも言い触らしたりはしないでしょうからこっちも損はあまり無いと思いますよ。」
「……どちらかと言えばこっちが損する要素がほとんど無いわね。」