「名前はキリト・ツーベルク…歳は19…出身地はここムーア大陸のクラトスの町…?聞き覚えが無いな?」
「……」
途中で俺と同じく兵士に腕を掴まれ、合流したシウスとラティ(いや…何でお前もいるんだ…)と共に詰め所に連れて来られた俺は二人と別れ、一室に入れられた。…中にいた、話は分かるようにこそ見えたが…かなり突っ込んだところまでしつこく聞いて来ようとする兵士に身分を全て話してしまった……不味い、この時代にクラトスは無い…きっちり調べられたら面倒な事になる…
「…まぁ冒険者ならあまり出自は当てにならんな…この大陸も決して狭くは無いし、我々も把握してない可能性は有るか…名前と年齢に関して嘘は言ってない様だし、身分についてはここまでにしておこう。」
「はい…ありがとうございます。」
思わず胸を撫で下ろしそうになるのを堪え、俺はその場で頭を下げた。
「…礼は要らん…被害者の店主には悪いが、こっちも色々忙しいんだ。手っ取り早く行こう…続きだ、さっきも言ったが…こちらの聞く事には全て嘘偽り無く答えてくれ。」
確かにさっきも同じ事を言われた…だが、その兵士の目は先程より鋭くなっている…まるで、ここからはどんな誤魔化しも許さん、と言っている様に…
「はい、分かりました…」
俺の身分以外は特に聞かれて困る事は無い…筈だ…
「さて、お前らは夕刻近くにこの町に入って来たのは入り口に立っていた兵士から確認が取れている…メンバーはお前、ラティクス・ファーレンス、シウス・ウォーレン、イリア・シルベストリの四名…合っているか?」
「はい、そうです。」
緊張して来た…座っている背もたれの無い丸椅子のケツの収まりが気になり、少し後ろに下がり深く座る…
「先ず今回のお前らの目的は何だ?何故この町に来た?」
「山を挟んで向こう側…ホットの町の道具屋で店主から依頼を受けました。」
「依頼された仕事の内容は?」
「この町の武器屋から荷物を受け取り、それを持ち帰る事です。 」
「…その荷物とは宿屋に預けてある兎の彫像か?」
既に調べがついていた様だ。
「はい、そうです。」
「そうか…あー…すまんな、こっちでももう調べはついてるが、一応確認するのが規則でな…」
「いえ…」
悪いのは間違い無く店で暴れたこちらなのだが…律儀に謝罪され、第一印象にプラスする形で俺はこの兵士に好感を覚えていた…
「ん…?何だ?…おい、どうした?」
ドアが叩かれる音が聞こえ、兵士がドアに向かって声をかける…
「申し訳ありません…ちょっとお耳に入れたい事が…」
敬語を使われてるって事は階級の高い兵士なのか…
「…分かった…入って来い。」
「失礼します!」
大きな声で入室を告げた兵士がドアを開けて入って来る…余程慌てているのか、ドアを後ろ手に乱暴に閉め…俺を一瞥もする事無くツカツカと乱暴に足音を立てて兵士の横にやって来ると兵士の耳に口を近付けた…
……小声の様で当然俺の耳には聞こえないが、聞かされている兵士の顔はだんだん険しくなって行く…
「……本当か?」
「はい…もう手が付けられなくて…」
「…仕方無い、私も行こう。」
聞き終えた兵士は椅子から立ち上がり、自分を呼びに来た兵士と部屋のドアに歩いて行ったが、途中で振り向き…
「すまないが少し外す…ここの書類に手を触れる事と、部屋から出るのは許可出来無いが…机の上の飴と飲み物は好きにしてくれて良い。」
確かに兵士の机の上には俺が入って来てすぐ俺の前に置かれたコップに水を注いだ水差しと、籠に入った飴がいくつか入っている…
「すみません…ありがとうございます。」
「ではな…」
兵士は俺に背を向け、ドアを開けて部屋を出て行った。