「今世で大分昔になりますかねぇ…ちょっとメトークス山まで行ったんですよ。」
「それって…子供の頃って事かしら?」
「ええまぁ「一人で山って…家出か何か?」家出も何も今世は俺、別に両親いませんし…ラティの両親や町の人は良くしてくれましたけど…正直前世で色々あったせいもあって、素直に親切を受け取るって事が出来無かったんですよね…」
「それで町を出ようとしたの? 」
「ええ…今思えば無茶でしたよ…体格も今より小さいし体力もそう有る訳じゃない…メトークス山の頂上までは何とか辿り着きましたけど…」
「その後は?」
「…来てから気付いたんですが、別に当てがあった訳じゃないんですよね…だから数日…何となくメトークス山で兎食って生活してたんですよ。で、四日目にラティの親父さんが来て町に連れ戻されました。」
「……ラティは本当に知らないの?」
「俺自身は後でラティの両親にこっぴどく怒られましたが、当時は子供のラティが真似するといけないからって事でラティには伝えていません…最も数日間とは言え、町から消えた時期が有るのは覚えているかも知れませんけど。」
「貴方って前から周りに心配かけるタイプだったのね…」
「今世に関しては仕方無いですよ…寧ろ、俺からしたら周りに迷惑かけてるのは自分でしたから。」
「でも…その時の貴方はまだ子供でしょう…?」
「精神年齢なら…ラティの両親より上なんで…今だとすっかり馴染んでしまって、自分でも年相応に感じますけど。」
あの頃は本当に戸惑った…何せ心は大人なのに身体は小さな子供…体力も無いし、歩幅も違うからメトークス山に辿り着いたらもう夜も更けていた…武器だってあの時は刃渡りの短いナイフのみ…メトークス山に一人で行って俺は一体どうする気だったんだか…我が事ながら呆れてしまう…
まぁそれだけただ、世話になってる現状が嫌だったって事なんだろうけど…それで死んだら町の人を悲しませるだけだからな…あの人たちははっきり言って皆お人好し過ぎる…
「皆人が良すぎるんですよ…俺みたいな得体の知れない子供を自分の子供、或いは孫の様に扱うんですよ…」
途中のクール村でも散々引き止められて、逃げるのも大変だった…
「そうさせたのは貴方の人柄よ、きっと…」
「誰も俺をほっといてくれないんですよ。だからせめて出来る事をしようと思って町の自警団に入ったんですよ…ラティたちと一緒に。」
「そう…」
「俺はあの町で骨を埋める覚悟でした。既に一度はそう長くは無くても人生全うして死んだ身です…特に後悔は無いし、別に他にやりたい事があった訳でも無い。」
「ここまで来た事…後悔してる?」
「どうですかね…本音は…また冒険をしたいと何処かで思っていたのかも知れません… 」
「?…またって…前世では冒険を…?」
「ええまぁ…そろそろラティも戻って来ます…切り上げて良いですか?」
「貴方はとことんラティには弱味を見せないつもりなのね…」
「あいつには俺の事ばかり気にしてて貰っても困りますから…何せまだまだ頼りないんだから自分の事を最優先して欲しいんですよ。」