その後、ラティがただでさえ太めの兎を三人では多過ぎるくらい捕って来て閉口したり、俺たち二人だけでやるつもりだった兎を締めて血を抜く作業にイリアさんも参加し始めて面食らったり…(しかも俺たちの手際をちょっと見ただけで出来る様になった)
まぁとにかくイリアさんが一部を食べ、残りの焼いた兎肉を俺とラティで何とか処理して、三人で交代で見張りをしながら眠りに着いた。
…翌朝、特に今回は夢を見たりする事も無く俺は目を覚ます…当然と言うかやはり俺が先の様だ…(と言うか結局三人共寝てしまった様だが…まぁ、何も無かった様だし今回は良いか)
…さて、朝飯を調達しないとならないな。
俺は相変わらず寝起きの悪いラティを何とか叩き起し(その騒ぎでイリアさんも起きて来た)獲物を探しに向かう事にした。
行った先で数人の盗賊と出くわし、小競り合いになったが何とか追っ払うと言う一幕があった為に遅くなったものの…俺は何とか最低限の収穫を得る事が出来た。
「…兎は分かるけど、この果物は何処から?」
「別に人が管理してるっぽい所から盗んで来たとかじゃないんで安心してください。探すとその辺の木に成ってたりするんですよ…昨夜は肉オンリーだったし、今朝も肉だけだと俺も辛いんで。」
まぁ、地球だと本当に果物がなってる木が人の所有物じゃない方が考えにくいけど、ここだと有り得るんだよなぁ…
「あ、コレ虫が食ってるぞ…」
「ん?そうか…ちゃんと見てなかったな、悪かった…勿体無いけどそれは後で埋めよう。」
埋めれば種が発芽して木に成り、やがて実を付ける事も有るからな…この辺の木の多くは似た様な経緯で生えたのかもしれない。
「そうだな。」
「…ここへ来て改めて自然の循環を勉強するとは思わなかったわ…」
「そちらの地球の文明レベルは判断しきれませんけど、大体管理されてそうですね…」
「……」
それに関してイリアさんは苦笑のみ返す…まぁ正直、あちらの地球の歴史に興味有るかと言えばもちろん有るけど…この様子見る限り聞かない方が良さそうだな…
朝食を食い終わった後は出発前にイリアさんも誘って三人で軽く組手する…と言ってもまぁ、俺は徒手空拳に関してはほとんど我流だし、ラティは親父さん直伝でイリアさんは確実に地球由来の武術で決まった手順で技を掛け合う約束組手は同門じゃないからあまりやる意味が無いし、出来るのは自由組手と組手試合だけにはなる。
「…試合で良いですか?」
「私は構わないけど…キリト君は良いの?」
「俺も特に異論は無いですよ。」
まぁ朝とは言え…しっかり食事も取った以上、戦闘狂の気が有るラティが試合を選ばない訳が無い。素手での組手も久しぶりだしな(ラティの親父さんが亡くなって以来ラティは朝に起きて来ないし、おばさんが何回声をかけてもギリギリまで起きなくなった)
装備を外してイリアさんと向かい合うラティに耳打ちする…
『ラティ。』
『ん?』
『イリアさんは強いぞ、昔ミリーとやった時と違い…始めから全力で行った方が良い…』
…まぁアレはあくまで本当に子供の頃に遊びレベルでやった時の話だが、ラティにはこの方が伝わりやすい筈だ。
『…ああ、分かってる…手は抜かない。』
戦いの上手さなら俺よりラティの方が上だ…これでいきなり油断して負ける事は無いだろう…
「ちょっと…ラティにだけアドバイス?」
ラティから離れようとすると向こうにいるイリアさんがジト目と不満声を漏らす…そうだな、試合ならフェアじゃないよな…
「すみません、イリアさん…今そっちに行きます「ちょキリト!?」そんなに狼狽えるなよ。あくまで試合なんだから…大体、公平にやらないと意味無いだろ?」
「う…そりゃまぁそうだけど…」
「じゃ、行って来る…」
ラティから離れてイリアさんの所まで走って向かった…
『何かアドバイスは有るかしら?考えてみたらラティが素手で戦う所は私見てないのよね…』
そりゃラティのメインウェポンは剣だし無いだろう…俺は…そう言や向こうでレゾニアの連中はボコボコにしたっけな…
『そうですね…ラティの使う体術はとても自然な感じですかね。』
『……自然?』
『外連味が少ないと言うか、見た目ばかり派手な大技があまり含まれて無い様で…その分的確に隙を狙い、急所を突いて来ます…それと、あいつ力加減少し下手なんで当たる時は気を付けてください。』
ラティには全力を出す様に言っといて今更だが、あいつは本当に加減が下手なのだ…イリアさんの動き見る限り、クリーンヒットはしないとは思うけど万が一の場合は有る…
『…分かったわ。出来るだけ躱すか、打点をズラす様にするわ。』
『ええ、それともう一つ…』
『?…まだ何か有るの?』
『イリアさんが攻撃する時も十分に注意してください…あいつ、相手に自分の好きな所に打たせてカウンター決めるの上手いんで。』
『…えっと、もしかしてラティ…結構強いの?』
『俺の知る限りでは、試合ならかなり強いと思いますよ。』
まぁ、俺もラティの親父さんには剣(もちろん真剣)でも素手でも最後まで勝てなかった…ラティのいない所で二刀流で挑んだがそれでも負けた…その親父さんに習ったのだから強くても別に何ら不思議は無い…
『…分かった、本気で行くわ。』
そう言って自分の手を開いたり閉じたり…自分の拳の具合を確かめ始めたイリアさんから離れ、俺は二人が良く見える所で立つ。
「…ンッ、ン…両者とも準備は宜しいですか?…では、始め!」