先に戦端を開いたのは俺の予想通りラティだった(相手の力量読めなくても打ってみて確かめよう、と言うタイプだからな…)
「ふん!」
数センチ有るか無いかの距離を一気に詰め、そのまま右側頭部へのハイキック…(うわ、初撃にしては結構スピード乗ってるな…俺が本気でやれって指示を素直に聞いたのか…)
いきなり強めの一撃が来てさすがに驚いたのか、イリアさんが目を見開く…一瞬ラティを止めようかと思ったが、イリアさんがすぐに表情を引き締めたのを見て動くのを止めた(ま、どうするのかお手並み拝見だな)
蹴りを手の甲で受け、そこからラティの足首を掴む(既に間合いに入られてる以上躱そうとすれば紙一重になる上、体勢も崩れやすいからこの場合受けるか、流すのが普通だが今回イリアさんは威力が乗ってるのを見て流した訳か…ラティの足をそのまま流し切って下ろさなかったのは…アレだな)
ラティの右拳がイリアさんの脇腹前で左手に掴み取られている…
……恐らく、ラティが蹴りを出した少し後でパンチを繰り出したんだろう…そうなると、足を下ろさなかったのは正解だ。地に足を着けてしまえば途中からでも拳の威力はある程度ブースト出来る…あの体勢ならほとんどダメージは出てない筈だ。
そして二人は相手を睨み付けたまま止まってしまう……ハァ…やれやれ…
「…イリアさん、コレは試合ですよ?」
「!……そうだったわね…」
イリアさんが手を離すとラティが足を下ろした…おい。
「…ラティ、拳を動かそうとするな…離れろ。」
「っ!」
「試合だって言ったろ?この状況で追い打ちするな。」
「分かったよ…」
ラティが渋々とイリアさんから離れ、最初と変わらない位置に戻る。全く、あのままだと膠着状態に陥っていたな…
「…で?イリアさんはまだ続けますか?」
「ええ。」
「ラティは……聞くまでも無いか。」
「当然だ。」
ふぅ…参ったな、初撃でコレか…イリアさんも熱くなりやすいタイプの様だし、こうなると最悪こっちも身体張って止めないといけなくなりそうだ…この後山越えするから余力は残しておいて欲しいんだけどな……あ、そうなると今度ラティが俺に挑んで来るのか…このレベルの応酬した後のラティとはやりたくないな…間違い無く全力で向かって来るだろうし…(最悪多少怪我させてでも止めるか)
「…んじゃあ…始め!」
その言葉と同時に今度はイリアさんが突っ込む……お、さっきのラティより速い、か?っ!?
「テヤァ!」
懐に入った瞬間に拳を縦にしてのパンチ…腹に向かって来た拳をラティが膝を上げてガード(昔だったら腕で受けてたな)…と、ラティが後ろに下げられたか…そこをイリアさんが追撃、しようとしたところにラティが上げたままの膝を斜めにして蹴りに行く。
「ハァ!」
「ふっ! 」
イリアさんの出した拳は今度はラティの身体の中心…鳩尾に入り、ラティの蹴りがイリアさんの脇腹に叩き付けられる…
「はい、ストップ。それ以上やったら怪我しますよ。」
俺は一度離れて次の攻撃に移行しようとした二人の間に割って入った。
「……そう、ね。」
イリアさんが構えを解いて脇腹を手で押さえる…
「……」
「…ラティ、不満なのか?何なら相手してやるけど?」
「……いや…分かった。そうだな、コレで止めるよ。」
ラティが手を下ろした。