一般的に西洋鎧と言うのは…頭に被るヘルムと腕と手にはめるガントレット…胴を守るメイルに、膝から足首までをおおうグリーブ…それに靴の様に足に履くサバトンと言ったパーツに分かれている。
今回の場合、革とは言え戦闘用に作られている為にそれで殴ったりすれば最悪痛いで済まない可能性も有るのでラティは装備を外し、イリアさんもナックルは無しで戦って貰ったが…俺もラティも、一つ重要な事を忘れていた…
「…大丈夫ですか?」
「……大丈夫よ、この程度なら慣れてるわ。」
外で裸足になる訳に行かないので、ラティは当然サバトンを脱いでいない…先も言った通り革で出来ているそれは…当然の如く硬いのだ。
「すみません…やり過ぎました…」
……最後にラティの入れた蹴りのスピードは最初の一撃の時より更に速かった上に、イリアさんはノーガードで受けてしまった…
「…だから…大丈夫よ…それよりラティは大丈夫?…うっかり急所に叩き込んでしまったから…」
「大「大丈夫ですよ。ラティの親父さん、修行の時は割と容赦無いんで…ラティは何度か急所にも一撃貰って慣れてますから」…いや、何でお前が言うんだよ…」
「何だ…そんなに痛むのか?」
「いや…大した事は無いけど…」
「なら良いじゃないか。」
そこで木陰に座ったイリアさんが近くでしゃがんで、具合を聞いていた俺の耳に口を近付けて来る…
『…ラティ、本当に大丈夫なの…?結構…本気で打ち込んだんだけど…』
そこで俺も小声でイリアさんに答える。
『モーニングスターって聞いた事有ります?』
『…確か…杖の先に鉄製のトゲの付いた鉄球が鎖で繋がれた武器…の事だったかしら…?』
『それで大体合ってます。昔、ラティの親父さんが町に攻め込んだ盗賊を相手にした時リーダーの武器がそれだったんですけど…親父さん、剣ではかえってやりにくいと判断して素手で相手したんですよね…』
『それで…どうなったの…?』
『……顔面に飛んで来た鉄球を拳で破壊して、あまりの展開に惚けたリーダーをそこから一撃でノックダウンしました…』
『……冗談?』
『生憎冗談じゃありません…俺も見た時は、思わず自分の目を疑いました…』
あの時、誓った物だ…親父さんの拳は…絶対にノーガードで受けない様にしよう…と。
『俺も叱られてぶん殴られた事は有りますけどさすがにそういう時は手加減してくれます…けど、修行の時は手を抜いたら意味無いので…ある程度本気に近い力で打って来ます…前世での経験から受けに慣れてる俺と違って、ラティは当然何度かそのまま食らってます…』
『…じゃあさっきの攻撃は…』
『…急所ですし、痛いのは間違い無いでしょうが…あの程度では…ラティは先ず気絶もしないでしょう…』
そういう理由も有って、俺はラティとは本当はあまり戦いたくないのだ…中途半端な攻撃をしても打たれ強くて中々倒れないから疲れるし…そうなると俺も当然手加減なんて出来無い上、向こうは決して弱くないからこちらもそれなりの傷が着く…
『決めた…私は今度から貴方たちの鍛錬には絶対参加しない。』
『イリアさん程の強さだと…多分これからも挑まれると思いますけどね…』
『……冗談じゃないわ…もう当分ごめんよ…』