結局その後は特別何が有る訳でも無く…ポートミスまで俺たちは戻って来てしまった…(有ったら有ったで…それはそれで困るけどな…)
「来たか…そこで止まれ。」
町の入り口に立っていた兵士二人の内一人が、昨日俺が出て来た詰め所に繋がるドアの方に走って行く…姿が見えなくなった辺りでもう一人の兵士が口を開いた。
「…罪人はお前たち二人だけだったな…貴女は取り敢えず町の中へ…宿の方で待っていてくれれば、昼までには刑の内容を伝えます。」
「分かりました。それじゃあキリト君、ラティ…しっかりね?」
「「はい…」」
イリアさんが町の中へ入って行く…ちょうどさっきの兵士が戻って来た……微妙な顔をしている…?
「どうした?」
もう一人の兵士が声を掛けている…
「いや…それがな……まぁ良い、俺たちが気にする事じゃないしな…取り敢えずお前たちはこっちだ、ついて来い。」
「「はい…」」
俺もラティもノロノロと兵士の後に着く……多少歩みが遅いのは大目に見て貰いたい…自分たちが悪くてもこの後しばらく牢の中と考えたら、さすがに気も滅入って来る…
「…お前たちが中に入って少ししたら担当の者が来る…後は指示に従え。…言うまでも無いが、騒ぎは起こすなよ?」
兵士に促され、開け放たれたドアの向こうに有った空間に足を踏み入れる…俺たちが入ってすぐドアが後ろで閉まった。
「大変な事になったな…」
「他人事みたいに言うな、お前も同類だぞ?」
ラティの発言に呆れながらも、俺はそう声を掛ける…まぁ本当はそんな資格も無いけど。
「…たかがケンカ…って事にはならないか…」
「城下町だ、罪状が思ったより重くても仕方無い…そもそもシウスの方からケンカを売ってる…応戦した俺たちが正当防衛になるなんて…甘い話は無いだろうさ… 」
そう、そもそもシウスが余計な事をしなければ…と言う話にはならない…騒ぎを止めるでも無く迎撃してしまった時点で…俺たちも同罪なのだ…まぁさすがにケンカぐらいで死刑になるとは思えないけど…俺の知ってる地球の法に比べたら厳しい物にはなるかも知れない…
「…何か、騒がしくないか?」
と、ラティにそんな事を言われて思考の海から帰還する…確かにやけに声が響いてる気はするが…
「ここは多くの兵士が居るだろう詰め所で、今は日中だ…そりゃ昨日よりは煩いだろうさ。」
「いや…そんな雰囲気じゃない気が…」
言われ、改めて耳を澄ませてみる…とは言え俺の方は特に違和感を感じなかった……ラティの勘か?
…そうやって考え事をしていたら向こう側から誰か歩いて来るのが見えた…アレは確か…昨日俺の取り調べをした兵士だな…
「来たか。剣を渡せ、一度こっちで預からせて貰う。」
俺はもちろんの事、ラティも特に抵抗する気は無い様で鞘ごと剣を括っていた鎧から外し、兵士に渡す……西洋剣は日本刀に比べたら刀身もそれなりに厚みも有り、当然決して軽くは無い筈だが…兵士は特に気にする事も無く片手に二本、もう片方の手にもう一本を持った…特別苦にしてる様子も無い。
俺がその事実に感嘆としつつ…先程の兵士の言葉に一つ違和感を感じたので質問してみる…
「一度?俺たちはしばらく牢の中なので、当分武器は返して貰えない筈では?」
罪人として扱われている以上、武器は取り上げられる…それは間違いが無いだろう…ただその際に一度、なんて言う必要は無い…まるですぐ返す予定が有るかの様な…
「少し…事情が変わってな…とにかくこのままついて来い。」
兵士が俺たちに背を向けて歩き始める…妙に歯切れの悪い兵士の言葉に俺とラティは顔を見合わせ、二人して首を傾げる…が、当然答えが出る訳も無い…結局俺たちは前に向き直り、兵士の後に続いて歩き出した。