松明を持つシウスを先頭にして、後ろをイリアさん、俺、ラティの隊列で洞窟の中を進んで行く…
「…で、貴方の方から持ち掛けた話だって聞いたけど…勝算は有るのかしら?」
「さぁな。」
イリアさんが歩みを止める…シウスは気付かずスタスタ進んで行こうとしてるので、俺は溜め息を吐きながらイリアさんの背を越してシウスの肩を叩いた。
「ん?どうした?」
「…一旦止まれ、イリアさんの話が終わってない。」
「…何だよ?」
「勝算は無いって…作戦は?」
「あん?そんなもん奥まで進んで大将を叩く!…それ以外に何かあんのか?」
シウスの答えにイリアさんは完全に頭を抱えた…まぁ、イリアさんの気持ちも分からなくは無い…SAO時代の俺だったら正直同じ想いだっただろうし……ただ、今の俺の意見は違う…取り敢えずは…
「ラティ、ちょっと来い。」
「…ん?」
イリアさんの後ろで欠伸をして、完全に自分には関係無いのスタンスを取っていた我らがリーダーを手招きして呼ぶ。
「…イリアさんのフォローしといてくれ。」
「……あー…了解。」
面倒そうな顔しつつも一応察して引き受けてくれる辺り、教育の甲斐が有ったってもんだな…昔は暴走しがちなコイツのストッパー役はいつも俺かドーンだったからな…そう考えると、本当に成長したと感じるよ。さて、俺も自分の仕事をするとしよう。
「なぁシウス、ゴチャゴチャ考えるより突っ込んだ方が早いってのは分かる…うん、俺もそう思わなくも無い。」
と言うか、激しく同意する…敵の懐に飛び込む以上、何の策も無しに進むのは普通は可笑しな話だが…地の利は向こうに有ってここの構造も分からないが行かざるを得ない以上、実際は余計な事を考えずに進んだ方が逆に上手くいくのは今世の俺の経験上良く有る話だ…寧ろ守りに入った方が危険だったりする…
この世界はゲームでは無いし、当然遊びでも無い…システムのアルゴリズムに乗っ取って世界が動く訳じゃない…命懸けなのは敵も同じなのだ…攻略法なんてそもそも存在しない。慎重になるに越したことは無いかも知れないが、元々危険を完全に避けるのは不可能で…いつも通りにやっただけなのに突然死ぬ事は有る…だが、いつもと違う事をやって死ぬパターンは寧ろ多いと言えるだろう…
……少しオカルティックに言うなら、俗に言うジンクスとかそう言う話だ。意識し過ぎても良い事は無いが、しなきゃしないでろくでもない事になるのは少なくない。
現実的に表すなら経験だ…未知な事でも自分の経験に当て嵌めて行くと存外上手く行く物……完全に脱線したが、要は行く前からグダグダ考える方がかえって危険になるって話だ…そもそも入り口に罠の無い可能性の方が低いのだから…
「…一応少しは警戒しようぜ、何が有るか分から「キリト、今すぐそこから下がれ」っ!」
シウスに言われた事に逆らわず、言う通りにした事が俺を助ける事になった…今俺の足元には俺の頭より少し大きめの岩が有る……上から、コイツが降って来た。
「警戒はしてる、寧ろ油断しきってんのはお前らだ。…キリト、少なくともお前なら…気付けた筈だぜ?」
「確かに…悪かった、反省するよ。」
あの瞬間、俺は気を抜いていた…これじゃあシウスに意見しようとした俺が間抜けだな…
「…そこのお前らも分かったな?…取り敢えず罠のパターンを調べねぇと迂闊に踏み込めねぇ…策なんて練るのはそれからだ…大体、向こうが聞いてるかも知んねぇのに…こっちも滅多な事言えるかよ。」
「その…ごめんなさい…」
「良いさ、普段の俺ならそう思われても仕方ねぇ。…さて…イリア、その様子だと…どうやら敵のアジトに踏み込んだ経験は余り無いな?」
頷くイリアさん…まぁ無くは無いのかも知れないが、ここまで自然を利用したトラップを仕掛けられた場所に踏み込んだ事は先ず無いだろう…
「ラティ、キリト…お前らはどうだ?」
「森の中とかならたまに有るが…俺たちも洞窟はさすがに無いな…大体、俺たちは故郷の町に盗賊が攻め込んで来たりしての防衛戦が主だし。」
「つまりほぼ無し、と。じゃあ仕方ねぇ…ここでは基本、俺の言う事には従ってもらう…良いな?」
俺はラティとイリアさんの顔を見る……反対意見は無さそうだ…いや、有ってもこんなの見せられたら言えないが。
「…俺も異論は無い。」
「…良し、とは言え気付いた事が有ったら何か言えよ?俺も全部分かる訳じゃねぇ…今のだってたまたま音で気付いただけだからな。」
改めてゾッとする…もしシウスが気が付かなかったら…最悪俺は死んでいた…ここからは本当に気を緩められないな…