「…止まれ。」
しばらく洞窟を進んだ所でシウスが指示を出すが、シウスの言葉が終わる前に既に俺は足を止めていた……ちょうど俺の勘もヤバいと告げている…
「どうしたの?」
俺の後ろでイリアさんが声を掛けてくるが、敢えて無視してシウスに話し掛ける…
「シウス……どんな罠が仕掛けられてるか、分かるか…?」
「……さぁな、だが…それでも警戒するに越した事はねぇ…」
「罠が有るの?」
「ええ、恐らくですが…ラティ。」
「分かってる…イリアさん…ゆっくりで良いんで…そのまま…後ろは向かずにこっちに…仮に分断系の罠だった場合…そこに居ると、仕掛けに巻き込まれるかも知れません。」
「わ、分かったわ…」
イリアさんが怯えつつ…後ろに下がる…実は万が一を考えてラティにも松明を持たせている…本当に分断されたとしても何とかなる筈だ…っ!…上か!?
「キリト!こっちだ!」
「イリアさんは急いでこっちに!」
俺はシウスの方…イリアさんがラティの方に向かって走る……俺たちがそれぞれ辿り着くと同時に、上から降って来た大岩が通路を完全に塞いでしまう…
「しまった…!ラティ!イリアさん!」
「こっちは大丈夫だ!」
「私も大丈夫よ!」
「良かった…こっちも問題は無い!」
「分かった!俺とイリアさんは別の道を探す!」
「後で合流しましょう!」
二人分の走り去って行く足音が岩の向こうから聞こえた。
「……まさか本当にラティの勘が当たるとはな…」
「言ったろ、ラティは本当に鋭いんだよ。」
アイツの土壇場での勘の良さには…俺も嘗て何度か助けられている…
「しっかしさっきお前の居た所に落ちて来た岩と言い…また天井からか…?一体ここの構造はどうなってやがんだ…?」
シウスが上を見上げ、俺もそうするが…意外にここの天井は高い様で松明で照らしても良く見えない…
「…案外罠じゃなくて、小規模の落盤だったのかも知れないな…」
とは言え、それだと俺たちの進んでいた通路の天井だけ崩れている辺りに疑問が残る…
「そりゃまた随分都合の良い話だな…まぁ良い、急ぐぞ?万が一本当に落盤なら…仮にデケェのが来たら連中に勝てても出られなくなるかも知れねぇ…」
「だな…」
「階段か…どうする?」
俺たちは警戒を続けながら歩いていたが…その後は特に罠などは無く、モンスターとは遭遇したものの…海賊の一味らしき奴にも出会う事は無くここまで来た。…目の前に少し急めだが、下りの階段の様な物が見える…海賊連中がやったのかは知らないが、間違い無くここが人工的に作られた証拠だろう…
「…まだラティたちと合流出来てないけど…ここに来るまでに特に脇道らしき物は無かったからな…一度引き返そうにも道は塞がってるし、降りるしかないだろ。」
まぁそもそも二人とはぐれた時点で、残して外に戻る選択肢を元々取る気は無いんだけどな…
「降りた先で道で繋がってるかも知れねぇか。」
「アレが罠にしろ、事故にしろ…万が一の事を考えて複数の出口は用意するもんじゃないのか?」
「確かに。なら降りるか…先ずは俺が降りる…さすがにそんなに深くねぇだろ。下に着いたら呼ぶから、後から降りて来な。」
「ああ。」
シウスが階段を降り、地面に空いた穴に消えて行く…
「…と。チッ、思いの外急な階段だな…」
穴の方からシウスのそんな声が聞こえて来る…まぁチラッと見えた限りでも、かなりガタガタの…あくまで階段に見える岩だったからな…
「うし、着いたぜ…下から照らすから降りて来い。」
「了解、今…!」
その瞬間後ろに気配を感じて振り返る…今まで気が付かなかった…!
「っ!…らぁっ!」
咄嗟に背中の鞘から剣を抜き、振り向きざまに斬り付けるが何かを斬った感触は感じられなかった…剣は硬い物に受け止められている…!
「っ…棍棒?」
そいつの持っていた松明が俺の剣を受け止めた物の正体を教えていた…多分、木で出来た太めの棒…だが、持ってる奴の顔までは良く見えない…一旦剣を引こうとしたが、棍棒に刃が食い込んでしまったらしく抜く事が出来無い…
「っ…ふんっ!」
片手で持っていた剣の柄にもう片方の手も使い、力を込めて引きながら、前蹴りを棍棒に向かって叩き込む…!
「!…グゥッ!?」
奴が後ろに吹っ飛び、剣も抜けた…
「キリト?どうした?」
「悪い、敵襲だ…ちょっと待っててくれ。」
幸い相手は一人…先の攻防を鑑みるに、多少苦戦するかも知れないが…何とかなるかも知れない。
「…俺もそっちに…悪ぃ、無理そうだ…」
どうやらシウスの方にも敵が居るらしい…
「構わない、こっちの相手は一人だ。」
「チッ、こっちは三人だ…」
……マジか。
「すぐ片付けてそっちに「ふん、要らねぇよ」…そうか。」
まぁアイツなら問題無いか…そういう事なら、俺は自分の相手に集中するか。
吹っ飛んだ時に地面に身体を打ち付けたらしくしばらく相手は呻いていたが、今ちょうど立ち上がった所だ…シウスの邪魔は出来無い…ここで倒すしか、無いだろうな…
「さあ…来い!」
俺は棍棒を振り上げて向かって来る男を迎え撃った。