「チィッ…!」
振り下ろされる棍棒をサイドステップで躱す…相手の側面を取れたので、向こうの脇腹に向けて剣を突き出すが…
「んなっ!?」
棍棒の軌道が途中で横を凪ぐスイングに変わり俺の腹まで飛んで来て、咄嗟に俺は後ろに飛ぶ…!
「ふぅ…」
何とか躱せたが、すぐ後ろが壁だ…ここだと取り回しの利く、向こうの武器の方が有利になるな…
「チッ…今ので仕留めたと思ったのによぅ…」
「それはこっちのセリフだ。」
コイツ…妙に戦い慣れしてやがるな、本当に海賊なのか…!…チッ!
「おらどうした!?逃げるだけかよ!?」
空けた距離が一気に縮められ、そこから奴の棍棒の乱打が俺を襲って来る…何とか身体を捻ったりして躱しながら思う…
コイツ自身の動きと、その手に持つ棍棒から繰り出される振り下ろし、横凪ぎ…果ては突きまで…奴が振るってるのは打撃武器である棍棒の筈なんだが、まるで剣士と戦ってるかの様だ…しかも闇雲に振ってるんじゃなくて、いくつか本気で危ないと感じた攻撃も有った…今はまだ躱せてるが、あまり長くもちそうも無い…っ!ここだ!
「セイッ…!」
「ぬっ…!」
奴の打撃網の僅かな間隙を捉え、剣を奴の頭に向けて振り下ろす…!奴が攻撃を止めて後ろに飛んだ…逃がさない…このまま畳み掛ける…!
「ハァッ…!」
「クッ…速ぇ…!」
剣を持った右手を後ろに引き、 奴との間合いを詰める…奴の前に着くと同時にその腕を奴に向かって突き出した…片手剣単発スキル…ヴォーパル・ストライクを意識したつもりだったが、正直アレ程の威力は乗せられなかった…まぁ当たれば御の字と言った所か…
「フンッ…!」
「チッ!」
奴は何と棍棒を手にしていない左手で突き出された俺の剣を掴んで止めている…俺はすぐに剣から手を離し、そのまま奴の懐まで距離を詰めて、鳩尾に正拳突きを叩き込む…
「グフッ!?」
手応えアリ……SAO時代の感覚なら普通にエンブレイザーでも使う所だが、あんなの相当指先を鍛えてないと再現は不可能だ…まぁ奴は鎧は着けてないし、指先は無理でもこの世界で拳はある程度鍛えた…
あそこまで綺麗に急所に入れば、向こうもさすがにノーダメージでは無いだろう…そんな事を考えつつ俺は何気に今も俺の剣を掴んだままの奴の左手から剣を引き抜く…っ…血が顔に飛んで来た…仕方無く腕で拭う…まぁ幸い今回もコートは黒だし、乾けばそこまで目立たないだろう…
「クソッ…!テメェ…!」
すぐにトドメを刺す気でいたが奴は立ち上がる…ふぅ…そろそろ、本気で行くか。
「……」
俺は左手でもう片方の剣を引き抜き、いつもの様に腕を下げて自然体で構える…俺からは動くつもりはなかったが、先程まで激昂していた筈の男も意外とクレバーな面も有るのか、俺を睨むばかりで動く気は無い様だ…どちらかと言うとこのスタイルの時はカウンターの方が戦い易いんだけどな…実は今も下から激しい物音が響いている…どうやら向こうもまだ片付いていない様だ…
さっきは大丈夫だろうとは思ったが…シウス程の腕で未だに終わってないとすると…向こうにいるのもコイツクラスか、あるいはそれ以上の手練かも知れない…さすがに少し心配だ…ラティとイリアさんの事も有る…これ以上時間は掛けたくない……行くか!
「デヤァ!」
基本的に接近戦時以外使えない二刀流だが、この距離なら全く問題は無い…さっさとケリを着ける!