二刀流を使うに辺り、最も難しいのは当てる事…と言う一見すると当たり前の理屈を良く聞く…要するに手数が増えている様に見えて、実際はどちらの剣も同じ軌跡を辿らせてしまうので最初はともかく…途中から読まれる様になるのだ…
俺がSAOでこの力を手にした時、実は真似しようとする奴はチラホラいた。だが、使いこなせた奴は…そうだな…俺の様に黒が似合っていた少女、彼女なら仮に二刀流を使っていれば…あるいは俺より強くなったのかも知れないが…結局まともに使えた奴は居なかった。
まぁ、別に俺が凄かったなんて言うつもりも無い…あくまで俺も二刀流ソードスキルが有ったから、二刀流での戦い方を構築出来ただけの話…
「オオッ!」
「クソ野郎が!」
二刀流の肝はこれまた当たり前に聞こえるが、やはり剣を二本使っている事…ただ、さっきも言った通り左右それぞれの剣で別の軌跡を描けれなけば仮に相手より速く剣を振れても当てる事は出来無い…そもそも片手で振ってるせいで威力は下がる…これで相手を追い込むにはとにかく剣を振り続けて、手数でのごり押しで相手を追い込みつつ…焦れて反撃して来た相手の攻撃を受け止めてカウンターで決める…それが俺にとっての必勝パターンと言える。
今俺がやってるのは変則的にはなるが、一応二刀流ソードスキルの一つダブルサーキュラー…片方の剣を止められてもすぐにもう片方の剣を振る…隙の少ない技だ…とは言え、この世界ではシステムのアシストは無く…振るのはアバターでは無い生身の自分の腕なので…見た目は非常に地味な上、ハッキリ行って腕の疲労が溜まって行く…つか、ぶっちゃけもう既に痛い…まぁ、そもそも…ソードスキルとして発動してたらこうも連続では使えない…っ!スピードが落ちて来たな…
「鬱陶しいぞ!」
俺の連撃の隙を狙って振り下ろされる棍棒…口角が上がるのが分かる…ふぅ、何とか決着を着けれそうだ。
「っ!テメェ…!」
「ハァッ!!」
剣を交差して棍棒を受け止め、その状態から左右の剣を一気に開く事で棍棒を弾く…そして俺はそこから更に連撃に繋げて行く…それは二刀流上位ソードスキルの一つにして、俺が二刀流を使う時…最も使用頻度の高いソードスキル…
「スターバースト…ストリーム…!……なんてな。」
まぁ、思わず力が入ってしまったが…実際はあの世界での半分の威力も出ない事を考えると気も抜ける…ふぅ…スピードは落ちていたとは言え、それでもガラ空きの胴に向かって慣れ親しんだ十六連撃……いや、しかし…さすがにやり過ぎたか?
散々斬られ、突かれた身体はそのまま仰向けに崩れ落ちる…と言うか、身体が原型を留めてるのが奇跡と言っても良い所だ…
「……」
顔に飛んで来た血をコートの袖で拭い、男に近付いて確認する…一応まだ息は有る様だが、うっかり喉を突いてしまったので話す事は出来無いだろう…口から大量の血を吐きつつ…俺の開けた穴から呼吸の漏れる音が聞こえる…
今更…敵対者が無惨な姿を晒そうと、ほとんど心が動かないくらいには…俺も慣れてしまっている。まぁ、とは言えだ…
「悪い、あんたが思ったより強かったから…加減出来無かった…」
向こうには多分…皮肉に聞こえるだろうが、そうでは無い…少なくともアバターでは無い、生身の俺としては確かに中々にキツい相手だった…まぁ、SAOやALOには探せば普通に居ただろうクラスの使い手では有ったが…俺にもブランクが有るしな…どうしても前世の俺と今の俺…アバターと生身の違いも有ってか、どうにもズレを感じる…
「その傷じゃあ薬草でも無理だな、今楽にしてやる。」
ミリーの使う紋章法術ならまだしも…この深さの傷口なら薬草使っても塞がる前にこの男は死ぬだろう…別に苦しませるのが目的じゃないし、さっさと死なせてやるべきだろうな。
「その状態じゃ遺言も残せないが…俺はこれから先、あんたの事は忘れないだろうさ。」
改めて思う…こいつは、確かに強かった…不思議とあの世界に居たら、更なる脅威になっていただろう、と言う確信が有る…
「じゃあな。」
俺はそいつの胸に向かって、剣を突き下ろした。