目の前の獣から放たれる右ストレート…まぁまぁのスピードだけど…俺は普通に見えてるし、予備動作の分かりやすい典型的なテレフォンパンチだから…見えなくても大抵の奴は反応出来るだろうけどな…当然俺は身体をずらして避け、取り敢えず奴の右腕の外側に入る…当初そのまま顔に拳を叩き込もうとしていたが、直前で黒い考えが浮かんだ…俺は伸ばされた奴の右の手首より少し下…前腕部を右手で掴み、次に左手で上腕…二の腕の辺りを掴む…本能的な恐怖を感じたのか、必死で腕を動かす獣だが…完全伸び切った腕を掴まれてる場合、ただ腕を引いても中々外れない物だ……まぁ、今回の場合…どうにかして逃げないといけないと考えたのなら、反応としては正しいけど。
俺は前腕部を掴んでいた左手を動かして、腕を仰向けにしつつ、自分の手を戻してまた掴み直す…俺が腕に密着しつつ、外側に居ると言うこの位置関係だと向こうは反撃もしにくい…だが、さすがに狼狽えて棒立ちってのもな…普通何か有るだろ…そつ呆れつつ、俺は左膝でそいつの肘を突き上げる…
「ギャアアアア!?」
……梃子の原理で奴の肘関節が破壊され、よっぽど痛かったのか…とてつもなくうるさい悲鳴を上げる…いや、本当にうるさいな!?
「うっさい!」
思わず奴の喉の辺りに左肘を叩き込む……いや、まぁ…俺のやった事がやった事だし…我ながら理不尽な事を言ってるな、とは思うけどな…
喉をやられたせいか、血を吐き出すばかりで鳴き声を上げる事しか出来無くなってるそいつを見つつ…左手を自分のコートの内側に入れ、お目当ての物を取り出す…素手でも殺れるが、あまりに時間が掛かり過ぎるからな…
俺は取り出したナイフで奴の首を斬り裂く…上半身の一部を除いて、身体は毛むくじゃらだし…表皮自体相当硬い感じはしたが、何とか切れた…動脈の位置も合ってたらしく、血が噴き出す…うわ、また顔に血が…またコートの袖で拭きながら思う…コレ、洗っても取れないと言うか…しばらくは洗う暇も無いよなぁ…まぁ、嫌ならもっと綺麗に殺せって話だろうけどさ…
「さて、次は誰からだ?」
一人殺すのに時間を掛け過ぎだとは思うが、コイツらは一人が襲いかかっている間…他の奴は邪魔しないくらいの知性は有る様だから、これだけ残虐に殺ればこちらを脅威には感じてくれるだろう…てか、相手の脅威も分かったんだし…もう仲間を助ける事も出来無いんだからいっそそのまま逃げれば良いと思うが…そこは獣の本能が優先されるのか…ま、俺は殺りやすくて良いけどな…
「良いぞ、そのまま全員で掛かって来な。」
俺は右手にもナイフを持つ…あの程度のパンチなら当たらない…なら、全員カウンターで急所を斬り裂ける…俺のこの場のノルマは最低でも残り三人…さっさと終わらせる…