一応シウスのお陰で休憩は取れたが、正直あまり疲れが取れた気がしない…とは言え、ラティとイリアさんが心配だし、そんなに時間は掛けられない…先を急ぐ事にする…道なりに進んでは居る筈だが…実際、何度か奇襲された様にあちこちに見落とした横穴が有る様で…他に道が有る可能性も否めない…と言うか、今更だが…俺たち、帰れるのか…?
「ん、止まれ。 」
「どうした?」
「行き止まりだ、別の道を探すぞ。」
シウスが松明で照らした場所には確かに壁が有る…?…何か違和感を感じる…元ゲーマーとしての勘ってやつだろうか…コレは単なる壁じゃない、そんな気がする…
「シウス、ちょっとその壁…叩いてみてくれないか?」
「あん?……!…へぇ…確かに、他の壁と音が違うな。」
「この洞窟の構造は分からないが、取り敢えず…向こう側は空洞と見るべきだ。」
「だが、別の場所から繋がってるって可能性は?」
「それは当然有るだろうけど、コイツは…見た目通りの"壁"じゃ無いと思う。」
岩壁に近付き、手で触れてみる…触れた感触自体には特に異常は感じない…普通に石の壁だ。
「ま、確かに色も微妙に他と違うけどな。」
「多分…何処かに、コイツが開くスイッチでも有るんじゃないか?」
まぁ、言ってて自分でも無理が有るとは思う……ゲームなら納得するが、実際こんな洞窟にそんな仕掛け作ろうとしたらかなり大掛かりになると言うか、そもそも普通に無理じゃないかとも思う…ただ、俺の勘は何故か目の前の壁は一種の"ドア"だと言ってる…どうやって開けるのかも分からないが…
「キリト、下がってろ。」
「何をする気だ?」
シウスが指をポキポキと鳴らす…コイツ、まさか…
「……厚さがどれくらい有るか分からない…お前の拳がイカれるかも知れないぞ?」
「さて、やってみねぇと分からねぇだろ?」
まぁ、コイツならやれるかも…と言う気がしないでも無い…身近に金属の鉄球を拳で破壊した人物が存在した訳だし、岩壁くらい破壊する奴が他に居ても不思議は無いんじゃないかとも思う。
「……まぁ、一撃じゃキツいかも知んねぇな…キリト、後ろ見張ってろ。」
「了解…無理はするなよ?」
「ああ。」
シウスが松明を地面に置いて、深呼吸するのを見つつ…後ろを向く…とは言え、今の所特に敵の気配は感じない……まぁ、散々殺したからな…
「せいっ!」
シウスの気合いの入った声と共にバゴッと重い音が響く……この洞窟、崩れるんじゃないか?
「……どうだ?」
「ん…ちょいヒビは入ったな。」
「マジか…」
確かに出来そう、とは思ったが…本当にやってしまうとは…この星って、親父さんクラスの人外が結構ゴロゴロ居たりするのか?
「ふぅ…もう一発行く…引き続き頼むぜ?」
「ああ。」
……まぁ、正直警戒するだけ無駄なんだが。何せこんだけデカい音がしても、誰もこっちに来ないからな…
「ふんっ!」
再び響く重い音…次いで、ガラガラと何やら崩れる音が…
「空いたぜ?向こうは結構広めの空間みてぇだ。」
後ろを向いて成果を確認する……うわ、本当に穴空けちまったよ…
「罠の有無は?」
「ん…正直、入ってみねぇと分かんねぇな…」
「……まぁ、取り敢えず行ってみるか。」
と言うか、わざわざ穴空けといて…今更迂回するのも変な話だしな…さて、鬼が出るか蛇が出るか…
「!…ちょっと待て。」
「ん?」
「足音だ…それも、走ってこっちに近付いて来てるな…」
シウスにそう言われ、耳を澄ます…確かに、微かだが聞こえる…
「どっちだと思うよ?敵か、それともラティたちか…」
「どっちも有り得るし、そもそも俺たちの方は隠れる場所なんて無いだろ…敵だとしても、迎え撃つしか無い、」
「ま、そうだが。」
取り敢えず俺はコートの内側からナイフを抜く…だんだん足音は大きくなって来る…確実に、こちらに近付いて来てるな…ん?
「シウス、コレ…一人分の足音じゃないか?」
ここが割と広いせいか音が反響していたが、良く聞けば…コレは間違い無く、一人分の走ってる足音だ…
「んじゃ、敵だな。」
シウスが腰のダガーを抜く……そろそろ近い、姿が見えて来る頃だ……今!
「ふっ!」
ナイフを投げる…残念ながら松明の明かりは向こうまで届かず姿はハッキリとは見えないが、位置さえ分かれば俺は当てられる。
「ちょ!?待てキリト!?俺だ!」
「ラティ!?」
とは言え、相手がラティだと分かった時にはもう俺の手からナイフは離れた後…さすがにヤバいと思ったが…
「へぇ…やるな。」
シウスが感心した様な声を上げる…いや、まぁ…不意打ちで投げたナイフを走ってる相手に普通に掴んで止められたら、そう言う反応にもなるよな…実際俺も驚いてるし…
「悪い…大丈夫だったか?」
「ハァ…全く、寿命が縮んだよ…」
俺たちの前まで来たラティがナイフを俺に渡して来る…ん?
「合流出来たのは良かったんですが、何でイリアさんはラティに背負われてるのか聞いても?」
「それがその…足、挫いちゃって…」
「成程…」
単に転んだのか、それともトラップにでも掛かったのか…
「……まぁ、取り敢えず敵の気配は無さそうなんでこの場で少し休憩しますか?ラティも…ずっとイリアさんを背負ってたんならさすがに、疲れただろ?」
「まぁ、な…」
「その、ごめんなさい…足でまといになって…」
「あー…少なくとも俺たちには謝らなくても良いですよ……こっちも疲れてるんで。」
本当は合流出来たし、このまま一旦帰りたいが…出口が分からない事にはな…入り口に戻る道はあの時塞がっちまったし……ハァ…ま、今考えても仕方無いか…何とかなるだろ…