「足の具合はどうですか?」
「今はあまり痛みも無いわ…ごめんなさいね、私も見張りくらいは参加したい所なんだけど…」
「無理をして悪化されたら、困りますから…捻挫って、意外に侮れないのはさすがに分かるでしょう?」
「そうね…」
骨折などと違い、多くの奴が軽視しがちな"捻挫"…だが、早急に適切な手当てをしなかった場合治りは遅くなり…最悪の場合後遺症が残る事も有る面倒な症状だったりするのだ……仮にも軍人なら、その辺の話は嫌になる位聞いた事が有ると思う。
「ま、手当てもして貰いましたし…何れ良くなるでしょう。」
「……アレは本当に意外だったわね…まさか彼に、そう言う知識が有るなんて…」
まぁ、分からないでも無い…実際俺もそう思ったし…ただ、良く考えれば当たり前なんだよな…
「イリアさん軍人ですよね?実地訓練の経験は?」
「……実地訓練って言われても、ね…私は「デスクワークが主ですか?」…一応、訓練と研修は受けたのよ…」
つまり、純粋なサバイバル経験はほとんど無いと。
「そうですね、取り敢えず…冒険者って言うのは要は、一種の傭兵とかその類いだと思えば納得出来ませんか?」
「……あー…成程ね、組織の後ろ盾が無いんだから大抵の事は自分で出来無いと、生きてはいけないわね…」
「そう言う事です。」
冒険者として一人で生きてるんだから、自分の事は最低限自分で出来無いとあっさり死ぬ…どれだけ武勇で名を馳せても毒蛇に噛まれただけでそいつはそこで終わる…どうしても、知識は必要だ。
「ま、そろそろ寝てください…俺もこの後ラティと交代したら休むんで。」
「分かったわ…」
「そう気負わないでください…そもそも俺たちがやらかさなきゃこんな所まで来てないんです…巻き込んだのはこちらですよ?」
「そう、ね…でも…私、は…」
「……眠ったか。」
まぁ背負われてるだけの状態でもずっと気を張ってだろうし、肉体的痛みを感じれば精神にもダメージは来る…相当疲れてる筈だ……んー…人の事ばかり気にしてられないな、俺も休まないと。
……この後、普通に爆睡してるラティを起こすのに無駄に労力を消費する事に…気が抜けても仕方無いとは思うが、もう少し敵地に居る自覚を持ってくれ…全く、まだまだこいつから目を離せないな…俺は今更リーダーやリーダーの補佐なんて役割は担いたくないんだ、早く成長して…俺にもっと楽をさせてくれ…
「おい、起きろ。」
「シウス…何だ…?」
「イリアの様子が可笑しい…」
「ん?」
俺は上体を起こし、イリアさんの方を見る…目を閉じている彼女の頬が赤く染まり、彼女の横たわる地面の窪みにそれなりの量の水が溜まっている……俺は立ち上がり、イリアさんの方に向かった。
「イリアさん?」
「ハァ……ハァ……ハァ……」
返事は無く、やけに呼吸も荒く…深い。魘されてるだけかとも思ったが、どうもそれだけじゃ無さそうだ…
「ちょっと失礼します…」
俺はイリアさんの額に手を当ててみる…!…熱い、熱が有るな…
「キリト、やっぱこいつは…」
「タイミング的に、足の傷が原因だな…要は捻挫じゃなかったんだ。」
程度の程は分からないが…恐らくイリアさんがなったのは捻挫では無く、骨折…骨折すると高熱を出す事が有る…
「どうすんだ?」
「ここに寝かせとくのは不味い、俺がイリアさんを背負う…ラティを起こしてくれ、このまま出発するしか無い。」
「つっても、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃない…大丈夫じゃないが…さっさとここから脱出しないと余計命に関わる…」
イリアさんを死なせる訳には行かない…無茶だろうが、やってやるさ。
「悪いが、お前とラティに頼みが「分かるぜ?」ん?」
「とにかく、派手に暴れりゃ良いんだろ?」
その顔に浮かぶのはいつもの獰猛な笑み…
「悪いな…イリアさんを背負ったまま戦うのは、俺もキツイからな…」
「気にするな、こっちはこっちで上手くやる…任せとけ。つか、俺たちでここを潰しちまっても良いんだろ?」
「……いや、囮に徹してくれよ。」
ま、頼もしくて助かるけどな…