「キリト…本当に、大丈夫か?」
……まぁ、正直キツイ…それでも俺は、敢えて挑発的な笑みを浮かべてやる事にする。
「ラティ、お前に出来て…俺に出来無いって言うのか?」
俺の言葉を聞いて…さっきまで不安そうだったラティも笑顔を見せる。
「そうだな、お前なら…問題無いよな。」
「おい、そろそろ行くぞ。タイムリミットは夜明けまでだ…時間は掛けられねぇだろ?」
「ああ、分かってる…ラティ、シウス…頼むぞ?」
「「任せろ。」」
……全く…昔からずっと、俺は仲間に恵まれている…一人ではどうにもならない時でも…いつだって、俺の周りには頼りになる仲間が居た…それは、この世界で新たに生を受けてからも変わらない。
「じゃあな、イリアさんを宿に送ったら…俺もすぐに戻る。」
俺は二人に背を向け、走り出した。
「くそっ…!キツイ…!」
そう重くは無くても、やはり意識の無い人間一人を背負い…ろくに舗装もされてない地面を走るのは辛い…たくっ…あの体力馬鹿…良くこんな無茶が出来た物だ…
「ん……キリト…?」
イリアさんが目を覚ましたらしい…
「気が付きましたか?」
「私、一体…」
「無理して喋らなくて良いです…今貴女は体調を崩しています…これから、貴女を街まで送ります。」
「その…ごめんなさい…私、下りる「良いから寝ててください」でも…」
「イリアさんに何か有ったら…困りますから。」
「……本当にごめんなさい…私、足でまといよね…」
「……」
まぁ、俺もここで何か気の利いた事でも言えれば良いんだが…特別イリアさんが安心出来る言葉は浮かんで来ない…そもそも、今のイリアさんに俺の声がちゃんと聞こえてるのかも怪しいしな……やがて、イリアさんはまた眠りについた…
「死なせませんよ、絶対に。」
あまりのキツさに悲鳴を上げ始めた心に喝を入れる…俺よりイリアさんの方が辛いんだ…こんな所で音を上げてられるか。
「ヒッ、ヒィ…!」
「……」
俺の前でへたり込む男の前で屈み、そいつの喉にナイフを当てる…
「出口は、何処だ…!?時間が無いんだ…さっさと案内しろ…!」
「っ…外だ…!」
視界に入る光と、鼻に届く潮の匂い…一体どれくらいの間洞窟内をさまよったのか…俺は漸く洞窟を出る事が出来た。
「ほっ、ほら…!?外に出れただろ…!?約束通り俺を…!ハグッ!?」
ここまで俺を案内してくれた男の口を手で抑え、喉をナイフで刺す…
「ハァ…ハァ……すみませんイリアさん、もう少し待っていてください…」
俺は最初に入って来た洞窟の入り口の方まで向かう…くっ…急がないと…もう夜が開ける…
「まさか、本当に生きて戻るとはな…」
「まぁ、何とか…」
「で、本気で中に戻る気なのか?」
「ええ、イリアさんの事…お願い出来ますか?」
本当は街までついて行くつもりだったけど…気を抜いたら倒れそうなんだよな…このまま戻るしか無い…
「それは構わないが、大丈夫なのか?」
「また、夜明けに迎えに来てください。」
「……無理するなよ?」
「したくても出来ませんよ。」
俺は船員に背を向ける…っ…立ちくらみがして、その場に膝を着く…
「この程度のダメージで、約束はすっぽかせないよな…」
俺は頭に巻かれた包帯に触れる…油断して食らってしまった棍棒…それは、俺の頭を割った…他にもあちこち傷を負っている…まぁ、休むのは…この仕事が終わってからにしよう…
「大丈夫か?ふらついてるぞ?」
「これなら、まだかすり傷ですよ。」
……仮想世界ならな。
「っ…」
俺は立ち上がり、歩き出す…ふぅ…早くラティとシウスの所に戻らないとな…