騎士王の弟   作:テムテムLvMAX

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アルトリアは示す、騎士道を。その先にある王道を。

アルティシアは支える、王道を行く姉を。

二人は寄り添う、二人でいることが肝心なのだと。

故に如何なる事象も、死すらも二人を別つものではない


魔女の刺客、来る

 ─会場の皆が逃げだし教会は逃げ遅れた市民や観客で溢れている、この狂った状況では弱き者は身を隠すしか方法がないのだがその隠れ家さえ崩壊を迎えつつあった─

 

 

「教主、ここは避難を! もはや持ちません! あの呪いが我が教会の結界まで侵食しています!」

 

「ならん! 大元はあの謎の魔術で消え去ったがまだ残滓は残っておる。それにだ、我らが逃げて誰が後始末する? 誰が人々を守る?」

 

 

 ワシとて逃げられるなら逃げ出したいわい……しかしそれをすればこの場の維持はどうなる、会場に準備された魔術や結界が維持出来なければこの街も終わりだ。何十と言う魔術師が手間暇かけて造り上げたそれが無くなれば呪いは瞬く間に広がるだろう。

 そう思えばここで引くわけには絶対にいかん。

 

 

「ここから先はワシの命令を聞く必要はない。逃げ出すなら勝手にしなさい、ワシは残り最後まで見届けようぞ」

 

「貴方が逃げない、と言うなら私も覚悟をしますよ」

 

「命懸けでお供します!」

 

「教主がそう言うならば手伝わない訳には行かないですなっ!」

 

 

 ……くはは、愉快な者しかおらんな! これだけ居ればこの場は何とかなろう、何とかしてみせよう! 

 

 

 ★☆☆★

 

 

 

 ─教主を筆頭に神父達や専属の魔術師達が呪いの対応で奔走している一方で、アーサーは逃げずに残った僅かな騎士達を無造作にはね除けアルティシアの元へ急いでいた。

 彼は服は焼け焦げていたが呪いはほぼ無く、おぞましい侵食は収まったように見えるも、誰もが無惨だと思う姿のまま天を見上げ大の字で寝ていた─

 

 

「おい、大丈夫か。私の弟なら生きているな?」

 

「あはは……不意打ちされてズタボロだぁ……あたた、頭が……」

 

「アル……体は動かせそうか? 半分は自分だろうに、もっと加減しないからこうなるんだぞ?」

 

「……ごもっともです」

 

 ─寝転がりながら顔をそらすアルティシア、咄嗟の魔術の制御はまだまだ仕上がりはお粗末なようだ、姉に指摘され赤い顔でそっぽ向いていた─

 

 

「一先ず騎士達はもう掛かって来ないだろう。いや会場全体に広がるこの呪いのせいで誰も寄り付かないだろうな、私は鎧のお陰で平気だがアルティシア、お前は違うだろう。お前を教会へ一時的に避難させたら、この騒動に一区切りつけてくる。元はと言えば私の思惑が招いた騒動と言ってもいい、ならば私は責任を果たす」

 

「律儀だね、姉さん」

 

「私は背負えるモノは背負うつもりだ、それが王だろう。お前もその一人だ、手を貸すぞ。よいしょ!」

 

「っ?! これじゃお姫様だ?!」

 

 

 ─アルティシアを軽々とお姫様だっこで担ぎ上げ、安全そうな教会へ行こうとしたときにふと背後に気配がした、アルトリアは咄嗟に横へ飛び退くと先程の場所に黒い魔力の棘が無数に刺さっている─

 

 

「?! っ」

 

「アハ! お上手ねアーサー王様」

 

「皆逃げたと思ったが……少女とはな、騎士の真似事か?」

 

 

 ─アーサーが睨みを効かせ相手を牽制するが態度は飄々として変わらず、寧ろ少しにこやかな表情にすらなっていた。まるでそれが望みとばかりに─

 

 

「そうだよ、アーサー、いやここはアルトリアの方がいい? 。私は貴女と一緒なのよ、()()の意味でね? ふふふ……」

 

「お前は……なんだ? 何故私を知っている?」

 

「さぁて? 私も知っていることしか知らないし、詳しい話は聞かさせていないもの。あ、そうだ! 貴女の本当の親の話は聞かされているわ!」

 

「お前は本当に何を言っているっ! バカにしているのか?」

 

「アハハ! なんだろうねぇ? うふふ」

 

 

 ─アーサーは逃げる隙を探るがかの少女はのらりくらりとした立ち振舞いが神経を削ぎ、負傷した弟の安全を考えると少しばかりの焦りが出て始めていた。

 そこからはお互いに話す事はなく、しばし流れる静寂─

 

 

「……お話は終わり? ならお仕事しますか『礼装鎧化(アーマー・アクティブ)』」

 

 

 ─掛け声と共に現れた魔術的なギミックが彼女の全身を瞬時に覆い流線型の鎧となった。それはいつか出会うだろう湖の騎士と似た鎧であるとアルティシアには分かった。─

 

 

「あ、そうだ。ターゲットは弟君だけだから、貴女は逃げていいよ」

 

「ふざけるな誰がそんなことをするかっ!」

 

「あらそう? ハアッ!」

 

 

 ─少女騎士は剣を抜いてアルトリアに突き付けた。二人の間は剣が三本分空いていたが、少女騎士の軽い踏み込みで瞬く間に縮まり、体重を乗せた振り下ろしは縦一閃にアルトリアを捉えんとした─

 

 

「なぁんとぉっ!」

 

「それでは逃げられないよ? ほらほらっ!」

 

 

 ─それを体をよじりながら後方へ飛び退くことで避ける、しかし避けた先に追撃の黒い魔力の棘が無数に飛んでくる。弾幕じみたそれを避けるのは不可能に近く被弾は必至─

 

 

「こんなもの! ふぅん!」

 

 

 ─しかしアルトリアはこれを魔力放出と合わせて腕を振るうことで蹴散らした、と同時にアルティシアを更に後方へ投げ棄てた。せめて戦いには巻き込まないようにする苦肉の策、苦渋の決断だった─

 

 

「アルティシア、すまん!」

 

「おぁぁぁ?! 早めに言ってよぉぉぁっ!?」

 

「アハ! あーんなに大事にしてた弟君投げちゃうんだ?」

 

「死ななければ良い、アルティシアは丈夫な奴だ。それにだ、私が本気を出すには今のアイツではついてこれない」

 

「本気? 出さなくても良いよ? 貴女の相手はしないわよっ!」

 

 

 ─鎧が魔力をジェットのように吹き出し、先の攻撃よりも素早く移動する少女騎士。青黒い軌跡を描くその動きはアルトリアを無視してアルティシアを狙っていた、だがアルトリアはそれを感じ取り大剣を大きく振りかぶりその軌道上に合わせ『風王撃滅』を放つ─

 

 

「威力は分かっているよ、避けるまでもないね!」

 

「ならばその想定越えてやるッッッ!!!」

 

 

 ─少女騎士は魔力を更に吹かし速度を上げ竜巻を振り切るが、アルトリアも負けじと強引かつ豪快な動きで『風王撃滅』を二度三度と放ち、竜巻のそれぞれが重なりより巨大になる。だが少女騎士は大竜巻にあえて向かう─

 

 

「アハハ! 風じゃ効かない効かない! オラ! 死ねっ!」

 

「っ!? ぐあっ!?」

 

「ふー……つい熱くなっちゃった、そこで大人しくしてれば良いよ、そのままね。じゃ、私弟君殺して帰るから」

 

 

 ─竜巻を中央から破りアルトリアに剣の一撃、鎧を突き抜け腹部にこぶし大の穴がポッカリと空いている、アルトリアの腹部の半分が失われた。

 それでも諦めずにアルトリアは少女騎士に刃を突き立て、鎧の一部を抉り飛ばした。しかしそれが最後の力を振り絞った一撃だった。もうアルトリアに立っていられる力は無く、かろうじて膝を付くが少女騎士が軽く蹴り飛ばせばなんの抵抗も出来ずに地面を転がっていった─

 

 

「ただで死ねると思うな……ガァッ!」

 

「あーもう! ウザイウザイウザイウザイッッッ!!!」

 

「あ、かはっ……アルティシアっ! 逃げろ……! 逃げるんだ! あがっ!?」

 

「うるさい、殺すなって命令されてるけど、もう知らない。貴女がとっっっても目障りだもの。えいっ♥️」

 

 

 ─穴の空いた腹を目掛け踏み砕くように脚を下ろし、一度目にグチャリと肉が潰れた音がした。

 二度目には骨の砕ける音が響いた。

 三度目でアルトリアの絶叫が聞こえなくなった─

 

 

「っ!!? ぁぁぁぁあああっ!?」

 

「んふふふっ! 我が主よ! これでも私は不完全ですか? いいえ! 私は完全なる騎士! 私は貴女の最高傑作! クハハハハハ!!! ……ほら! もっと! 悲鳴を! 奇声を上げろ! 私に痛みを教えろ! さぁ! さぁ! さぁ!」

 

「ぐぁ! やめろっ! あぁぁぁぁぁっ!!? ぁぁぁぁぁ……っ! や……め、ろっ! ……あ……」

 

 

 ─少女騎士は天を仰ぎこの上ない幸福感に包まれ、自身の体を抱きしめアルトリアを何度も何度も執拗に踏みつけ、アルトリアは痛みに耐えれず気絶してもその手を止めずに肉塊と化すまで悦に至りつづけた─

 

 

 ★★☆

 

 

「アルティシア……あぁ、アルティシア君。残念だったね、お姉さん事は。…………フフフフ、アハハ! アーッハッハッハッ! もう誰も君を守ってくれないよ? 悲しいねえ? ええ? 悲しくないの? 人でなし? 涙の1つでも流してみたらどう? 私も気が変わって見逃すかもよ? んん? アハハ! 無力だよねぇ? 大事な姉を目の前でむちゃくちゃされても手が出せないなんてねぇ!」

 

 

 姉さんが、目の前で、事切れていた。

 もう、目には光がない。

 ……死んだんだ。

 どうして? 

 そんなことあり得ない。

 姉さんは強い、無敵なんだ。

 転生チートを持った俺より強かった。

 そんなはずない、殺せるものか、嘘だ。

 きっと今にも姉さんはやり返す、あんな奴に負けるものか。

 

 

「あれ? アル君? どうしちゃったのかな?」

 

 

 目の前のこの少女、騎士と名乗る不審者。史実にも、原作にもいないこのイレギュラー。それは俺も同じ。

 

 姉さんが本来の運命を辿らずここで死んだのも、あり得ないこのイレギュラーのせいだ。全部俺が悪いのか、俺があの時、転生しなければこうならずブリテンの最後の時まで生きていたのか。

 

 調子に乗った一般人なんかじゃ歴史を変えられない、しかも運命をいたずらに変えた挙げ句に誰かを巻き込み不幸にしてしまった。こんなことなら俺もいない方がいい。いっそアルトリア姉さんの後を追おう。そして謝ろう。

 

 

「ずいぶん大人しいね……逃げられないと悟ったなら、殊勝よね。そもそも片腕もないし、程度が知れている魔術師見習いがあの方の最高傑作である私に勝てるはずもないし? うふふ、さぁ、頭を下げて四つん這いになりなさい。そしたら楽にあの世に旅立てるよ?」

 

 

 ─アルティシアは大人しく言われた通りに四つん這いになり、少女騎士に自らの命を差し出した。彼の目には生気が無く、死人に似た目付きをしていた。もう、彼の心は折れていた。目の前で姉を失い踏みにじられ、尊厳すら砕かれた。彼の魂はもう生きる事を諦めていた─

 

 

「はい、さようなら。来世は強くなれるといいね」

 

 

 ─少女騎士は剣の振り下ろし、無慈悲に首を切り落とした……かに思われたその時。キィィンと甲高い金属音が鳴り響いた、なぜかあらぬ方向から剣が飛んできてアルティシアを守ったのだ─

 

 

「なにっ!? って、きゃっ!?」

 

 

 ─あとほんの少し遅れていたら首が飛んでいたであろうと言うギリギリで飛来したそれは、アルトリアの腰に納められていた選定の剣、そのものだった─

 

 

「あ、カリバーン……」

 

『死を知るには少し早いぞ、汝はまだ使命を残している。そうそう死ねるものではないと、そう心得よ』

 

「でも! もう俺は無理だ……心が砕けた、もう無理だよ」

 

『何を言う。私を掴め、この場を生きれば答えは得られる。そして姉を甘く見るな、誰の姉だと思っている? お前の姉だぞ、お前が信じてやらねば誰が信じてやれるんだ』

 

 

 カリバーンさん……そうだよな、俺が折れたらきっと姉さんは悲しむ。最後まで俺の心配をしてくれた、優しい優しい姉さん……その仇討ち、今の俺にはそれくらいしかしてやれない! 

 

 

「選定の剣! 今更邪魔をしないでよ! 自分の主も助けなかった癖に!」

 

『私は繊細でな、豪胆かつ豪気な彼女の得物には不向きなのだよ、と言っても聞こえていないか。アルティシア、覚悟は良いか?』

 

「あぁ、覚悟は決まった。今の俺は復讐者だ」

 

『アヴェンジャーと言うことだな、よろしい。その名の元に我を振るえ』

 

 

 ─アルティシアはカリバーンを手に取った、すると無いはずの右腕が光を帯びて生えだし、強く輝きを放つガントレットを纏った─

 

 

『これなるは“宿命の鎖”。対象を縛りつけ強制的に運命へ進ませる物。聖書に記された上位存在が全ての生き物に監視と管理するを行う為に施した呪いだが、既に汝の運命は我れらが全能神が書き換え、白紙になっている。しかし鎖を無効化したわけではない、こんな呪いとて使いようはあるからな、故に私はお前の運命を新たに決め宿命の鎖を利用してやった。今のお前にはあやつを倒すと言う運命を定めておいた、それに反応し鎖は運命を遂行させるためにお前の腕となったわけだ。

 

 話が長くなったがしっかり聞いていたか?』

 

「いやいや、敵を前にそんなこと出来るかよ。それに今はアイツをぶっ殺せれば何でもいい!」

 

 

 ─新しい腕を手にいれたアルティシア、姉の復讐を誓いカリバーンを取る。対する少女騎士モーゼット。姉の無念を晴らすべくアルティシアは猛り吠え荒ぶる龍を想起させる雄叫びをあげ、死合いの合図とした─

 

 

 

 




次回で決着つけないと話が進まねぇな・・・(焦り)
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