騎士王の弟   作:テムテムLvMAX

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カリバーン「こっちへ来い・・・こっちへ来い・・・」

アルトリア「ホイホイ誘いに乗るぜ~」

アルティシア「なにしてんだ・・・?」


選定の時

 ─アーサーと名乗るアルトリアが模擬試合にて兄ケイを倒したあと、人々の眼から逃れて身を隠す丁度良い場所を見つけそこで一休みしていたときのこと─

 

 

「ふぅ……ここなら大丈夫そうだ」

 

 

 ケイ兄さん、凄かったな……私の一撃を受け止めるなんて……うん、世界は広い……まだまだ私より強い騎士は居るだろう、今回はケイ兄さんがその事を身をもって教えてくれたんだ。しっかり心に刻むとしよう

 

 

「さて、ケイ兄さんの見舞いにいこう、一応隠れ蓑の魔術を使うか、聞き齧った程度だが無いよりマシだろう」

 

 

 ─魔術で姿を隠して兄ケイが運ばれたテントへ向かうアルトリア、その途中に教会の横を通り過ぎた時だった。

 アルトリアの耳に不思議な声が届いたのだ、男性とも女性とも分からぬがそれでいて聞き心地のよい声だった。その声はアルトリアを導く囁きをひたすら繰り返していた─

 

 

『……我の導きに答えよ……汝の選定を下さん』

 

「ふむふむ、幻聴やイタズラの類いではなさそうですね……面白そうだし導かれてやりますか、方角は……教会? まぁ行ってみるとしよう」

 

 

 ─アルトリアは好奇心を刺激されこそこそと教会へ忍び込んだ、普通に正面から入れば対魔術結界に簡単に隠れ蓑の魔術が剥がされる為だ。かといって忍び込んだとしても結界に剥がされるがすぐさまバレることはないと踏んだ、しかしそれをアルティシアにしっかり見られており後ろからストーキングされているとは気付いていない。

 

 さてアルトリアが忍び込んだのは教会の中庭だ、マーリンの提案で選定の儀が行われてから4年あまりが過ぎていた、その間に何度も何度も我こそ王だと選定の剣に挑んでいたが誰一人その剣を抜く者はいなかった。

 

 ある者は台座を叩き割り乱暴に奪おうとし、ある者は掛けられた魔術を改変して引き抜こうとしたが全て失敗、選定の剣を用意したマーリンがその様な事態を想定していない訳がなかったのだ。

 

 アルトリアは声に導かれ教会の中庭へきていた─

 

 

「さてさて……中庭か、ふむ…………声の主よ、どこに居られるか! 聞きたいこともある! ……居ないのか?」

 

 まさか本当は幻聴? いやいや確かにこの耳に聞こえてきた……はず、えぇい! 私の勘はマーリン様お墨付きの鋭さだぞ? もっと自分を信じろ私! 

 

「……となれば、この直感を信じるなら……この選定の剣が私を呼んだのか? ……いやいや剣が喋るなんて」

 

『いかにも、君を呼ぶ声は私だ』

 

「っ!? ……すぅーはぁー、見苦しい事をしましたね、忘れてください」

 

 

 ─まさかのカリバーンがアルトリアを呼んでいたようだ、剣が喋ると言う不思議な体験に彼女は驚いたが騎士足るもの冷静であれと己を律し、話す剣に向かう。

 

 カリバーンはアルトリアが呼吸を正し落ち着いた事を確認して彼女を呼んだ経緯を語り始めた─

 

 

『私は選定の剣、カリバーン。君も知っているだろう?』

 

「えぇ、カリバーンとお呼びしても?」

 

『許しましょう、私が君を呼んだのは他でもない、君が次なる王足る器を持つと判断したからだ。

 私は君の力を見て確信したよ、君こそ私を持つに相応しい、寧ろ私が選ばれたいとさえ思ったんだ』

 

「え! その、つまりあの……おおあどどどどうしよう! ……王様? 私いずキング!? 選ばれし王!?」

 

『そう言うことだ』

 

「我が生涯に一片の悔いなし! ……じゃないやこれからだ、これからやるんだ」

 

『そう、君はこれからだ。さぁ柄をとり引き抜け、さすれば私は高らかに新たな王を祝おう!』

 

 

 ─アルトリアは言われるがままに巨石に埋め込まれた金床の前まできた、鍛えた両手でカリバーンをしっかり握り金床から勢いよく引き抜く! 

 

 するり、幾人もの屈強な騎士達が挑みびくともしなかったあの剣が何の抵抗もなく引き抜けたのだ。さぁ、祝え新たなるブリテンの王、その名は─

 

 

『よくぞ引き抜いた、新たな王よ! 名を教えてくれないか? 私が未来永劫、その名を刻むために!』

 

「私は……アルトリア、いや今はアーサーです!」

 

『アーサー! おぉ新時代の王! 天に座する我らが神よ! 我らの希望、我らの夢を、そしてブリテンを背負う若き王に祝福と喝采を! さぁ私を天に突き出すんだ、全能の神よりが祝福が来る!』

 

「分かりました! はぁぁぁっ!」

 

 

 ─カリバーンの指示に従いアーサーは中庭からよく見える空に向かい剣を突き上げた、右手に持ち、それこそ天に届かんとする気迫と共に突き上げたカリバーンに空から光が差し込む、それこそは選定の剣が起こした“奇跡”。アーサーは全能存在に認められた王としての証を授かったのだ、その証はアルトリアの右の手の甲に現れている─

 

 

「これは……っ!?」

 

『それは全能神より君に預けられたモノ、名を天の紋章と言い運命に逆らう力を秘めているそうだ、それ以上の事は聞かされていない。ただ、全能神より伝言がある、≪最強最善のセイバーになれ≫だそうだ』

 

「ええっと、セイバーって事は剣士に? この場合は騎士だろうけどそれだとナイトで良いだろうし……うん! 意味が分からんな!」

 

『それはおいおい分かるだろうとも聞いている、それよりも私を見せびらかし君が王である証明を皆に示すんだ』

 

「そうですね、ふぅ……今更ながら緊張しますね、さっきまでのテンションがどこかへ消え失せてしまいましたよ」

 

 

 ─アルトリアはカリバーンを携え教会の出口に向かい歩き始めた。

 その彼女がカリバーンを抜く少し前、追い付いたアルティシアはその一部始終を見ていた訳だが……何故か喋るカリバーンはともかく祝福を与えた全能神に思いっきり心当たりがあった、ここキリスト教勢力やろがい! 出てくるなら聖四文字か立川のロン毛にしろ! そう叫ばないだけの我慢をする事は出来た─

 

 

「嘘だろマジか」

 

 

 オーマイゴーッド! 全能神よ! 結構干渉してくるなぁ! 本当はここ何にもないただ剣を抜く場面やろがーい! 何で『祝福(チート)』与えちゃったかなぁ! 話がぐちゃぐちゃだあ! もはや俺の知ってるFateじゃねぇ! 

 

 と言うかちゃんとしたFate歴史知らないけどおおむねはアルトリアに弟は居ない、剣持つと肉体が老化しない、ベティがアガートラム何故か持ってる、最後は人の心が分からんのかとか部下に言われる始末……ひょっとして、もしかすると全能さんってそれを回避しようと送り込んだのか? この世界が俺を必要としていたと思ってたら実は全能さんが俺を必要としていた可能性が……? 

 

 同じアルトリア顔科アルトリア属アルトリア・ペンドラゴンを救いたいと言う思いを持っていた……? 何で分類してんだ俺。

 

 

「あーなんかフラストレーションたまるぅ~」

 

「ん? アルティシアじゃないか、まさか後を着けていたのか?」

 

 

 ─アルティシアがうんうん唸っているとアルトリアと鉢合わせた、もとよりバレても問題ないアルティシアはアルトリアに後を着いてきたことを自分から話した─

 

 

「うん、姉さ、アーサー兄さんが慣れない隠れ蓑の魔術でこそこそしてたから何かなって疑問を持ってね? そしたら何で選定の剣抜いてらっしゃるんです?」

 

「抜けそうだなぁー抜けるかな? と思ったら抜けたんだ、何も難しくないだろう?」

 

「そこ大事だよ、皆に王ですって言わないで引き抜いたら面倒よ? あの騎士達が大人しく認めるとは思わないけどなぁ……」

 

 

 正直あの騎士様(笑)達が「ははぁアーサー王様ぁ!」とはならないんだよなぁ……Fate世界がと言うか史実がそうなんだもん、物的証拠見てから抵抗するなよ流れグッダグダになるやろ水戸黄門見習え。史実で言うならアーサー王は男だろって話になるけどな。そこはそれこれらはこれってことで。実際態度の悪い騎士は認めんだろうな、史実なら数の暴力で認めさせるとか言うのがマーリンの解決法だったか、脳筋か魔術師の癖にって思ったわ

 

 

『ほほう、君の弟は既に全能神の恩恵を受けているようだ。私の声が聞こえるかね?』

 

「え? まぁ、はい。カリバーンさん? で、いいんですかね?」

 

『良い、それより全能神より伝言を君にも預かっている、やり過ぎてもいいよ、とな。何がだ? 私には理解出来ん』

 

「うん、そうなんだ……そうなんだ……うん、俺は理解したから、ありがとうカリバーンさん」

 

 

 ─ともあれアーサーは選定の剣カリバーンを抜いたことを広めるべく街に向かうがアルティシアはそれを止め明日に日を改めることを提案した、既に今日の大会は終わり人もまばらとなった今の時間帯では効果が薄い、何よりほとんどの騎士達が宿へ休みに向かってしまい居ないのだ、そう言うとアーサーも納得し明日改めて報告する事にした─

 

 

 ☆★★

 

 

 

 ─その日の夜、教会の中庭に月明かりが仄かに差し込む時間に花の香り漂う魔術師が剣なき台座を見つめていた─

 

 

「運命が動き出すんだね……全能神よ、君の願いを叶えよう。それが私の願いを叶えることになるからね。運命なんてクソ食らえ人の人生を高位存在ごときが定めるなよ胸糞悪い、私はきっと平行世界の私が見たら目を丸くするだろうね……全能神のおかげでここまで人に強く想いを持てるようになった、だから真のハッピーエンドを目指せるんだ」

 

 

 ─誰に聞かせる訳でもなく、ただ呟くだけだった─

 

 

 

 ★☆☆★

 

 

 

 ─日を改めて翌日、例年通りに大盛況な模擬試合会場は朝から飛び入り参加枠も含めた試合をしていた。

 

 飛び入り参加枠、それは毎年波乱を呼ぶ枠だ。実力が未知数な騎士や意外な実力者が出てくるサプライズ枠として驚きを持ってくる。今年もその例に漏れずサプライズがあった、それも超特大のサプライズだ─

 

 

「聞け! 私は選定の剣を抜いた! 私は選ばれた! 王として選ばれた! このカリバーンを見よ!」

 

 

「な、なにぃぃぃ?!」

 

「嘘だろ……いやでも本物だ、あの剣を見間違う筈かねぇ!」

 

「おぉ……っ! ついに王が生まれなさった! これでブリテンは安泰じゃぁっ!」

 

 

 ─アーサーは飛び入り参加枠で出場し持っていた剣を高らかに掲げ観衆全てに見せつけた、使い手を定め台座に刺さっていた時より数段輝くカリバーンは見るものに王の威光と威厳を与えていた。それに驚き歓喜する声が聞こえてくるがそれは市民ばかりだった。

 

 騎士と言う騎士はカリバーンが抜けたことを認められなかった、それはそうだろう、模擬試合に出ている騎士達の大半は何度も挑んでは抜けなかったモノばかり、それが名も知らぬ騎士が抜いたなんてプライドが許さない。会場に来ている騎士は一人残らずアーサーを睨み付け今にも襲い掛かろうと殺気立つ、しかしアーサーはそれを良しとした。寧ろウェルカム、殺気立つ事がアーサーの作戦に嵌まっているに他ならないからだ─

 

 

「私が王だと認められない者もいるだろう、いや、寧ろそれが大半なのだろう! しかし私は剣に選ばれたからといってすぐに王になろうとは思っていない! この場にいる騎士に問おう! 我を偉大なウーサー王と同列に扱うならば剣を置け、認めぬならば剣を取り私の命を持っていけ! 偽りの王ならばこの場で命を落とし真なる王ならば必ず生き残るだろう! そう私は確信する! 私の騎士道を止められるなら止めてみろ!」

 

 

 ─アーサーの宣言が全ての騎士にダメ押しとばかりに煽りをかけると、殺気をこれでもかと漂わせた騎士たちが試合会場に入ってきた。

およそサッカー場二面分は有った筈が半分が埋め尽くされていた。その数4000人を超える騎士がアーサーを認めずその命を狙いあわよくばカリバーンを奪う腹積もりを隠さずにいた、誰は一人として剣が偽物だとは思っていない、ただプライドと野心がアーサーを王とは認めないだけなのだ─

 

 

「大教主様、申し訳無いが今より“全騎士対私達”として試合を行う、よろしいな?」

 

「う、うむ問題はない……寧ろ試合が盛り上がるからの、それよりもいつの間に剣を抜いたのだ!?」

 

「昨日サクッと抜きました」

 

「コラ、アルティシア、言い方を考えなさい」

 

「……よし! もはや問わぬ! 剣に選ばれた王なら王らしい態度で示すのだ、それを持って証明としワシは新たな王に忠誠を誓うぞい」

 

「すみません大教主様…………と、言うような感じに皆さまに試合の説明をお願いします」

 

「うむ、任せよ! 

 これより! アーサーとその弟アルティシアVS全騎士! 今後あるか分からないビッグマッチ! アーサーは昨日凄まじい力量を見せ、かの選定の剣を抜いた者だ! そしてその弟の魔術師見習いも期待が持てる! 

 相対するは全騎士達! どこを見ても猛者猛者猛者! この戦いはまさに王決定戦! 

 

 ルールは簡単である、アーサー側が戦闘不能になるかはたまた全騎士達が全員戦闘不能になったら試合終了となる!」

 

 

 ─ブリテンの猛者達とアル兄弟のビックバトル、常軌を逸脱するこの試合を言い出したのはアルトリアだった。

 

 王として世間に認められようとするならそれは力を示し騎士たちに後押ししてもらう事だと、それは同時に腐った騎士を吟味し選別しアルトリアの目指す公正公平で清廉潔白な騎士道を剣を通じて伝え、同じ騎士道を持つものを探し出せる、と考えていた。

 この一挙両得な作戦はアルティシアも仕方なく賛成していた、言葉で言うより万倍楽で分かりやすいのだ。力を指標にする騎士ばかりならそうするしかないと、半ば諦めたような面持ちだったが。

 

 そしてこの戦いは後にブリテンの歴史の一ページでは収まりきらない激戦となるのだった─

 

 

 

 

 




全能神「アルトリア顔は皆幸福たれ!」

アルトリア「すごい力をもらったぞ!」

アルティシア「なんでだー!?」



読者の皆さまへ

この物語は作者が調べたアーサー王伝説の情報を元にFateのキャラを当て、オリジナル要素を付け足し、進行しています。
史実と違う、Fateの設定と違う、と言うのがありましてもこの小説の設定と言うことで見逃して下さい。

ただ、話の流れではなく作者が気付かず単純に間違えている可能性があります

例、アロンダイトをガウェインが持っている、ランスロットに太陽の加護が付いている等々

見かけたらご一報ください

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