「何しやがる!」
入口近くに立て掛けておいた完成品の傘を踏み壊されて俺は思わず声を荒らげた
「七夜だな?我々と共に来てもらおう」
押しかけてきた警官の一人にそう言われ俺は一瞬反応したがすぐにこう返した
「…七夜?誰だ、それは?人違いだ。さあ、早く帰ってくれ。アンタらが売り物をぶち壊してくれたおかけで余計な仕事が増えちまったからな」
そうして先程までしていた作業に戻ろうとした
「…来ないなら力づくでもと言われている」
横目でその警官がサーベルの柄に手を掛けるのを見た瞬間に俺はソイツに肉薄し顎を蹴り上げた
壁にソイツが激突しそのまま呻いていたがやがて静かになった
「…貴様!大人しくしろ!」
次に別の警官の鳩尾を蹴り付ける
ソイツが呻いて昏倒したのを確認し俺はそのまま入口の戸を蹴破った
「待て!待たんか!」
俺は夜の闇の中を長屋の間を縫うようにして走る
この辺りは俺の庭みたいなものだ
障害物を避けながら時折物を多少崩しただけで奴らの動きは鈍くなった
クソ!一体誰が俺の正体を警官に告げ口したんだ!?
もう俺の正体を知ってる奴は生きていないはずだが……
……今はそんな事を考えても仕方が無い
俺は奴らを撒けたのを確認すると長屋を抜ける事にした
そんな俺に立ちはだかる影が……
帽子は被ってないがアレも警官か?
「…チッ!そこを退け!」
俺は速度を落とすこと無くソイツに突っ込みそのまま奴の顔面に蹴りを叩き込もうとして……そこで俺に向かって来る刀の切っ先に気付いた
「チッ!」
俺は無理矢理速度を落としそのまま横に飛んで牙突を躱した
「フン。今のを躱すか。どうやら鈍ってはいないようだな」
その時今まで雲に隠れていた月が姿を表し少し明るくなった
そしてさっきまで暗くて見えなかったソイツの顔を照らしだした
「…壬生浪…新選組三番隊組長、斎藤一」
「…久しぶりだな、糞餓鬼」
俺は構えた
コイツ相手に加減してたら殺される…!
「……一応俺は戦いに来たわけでは無いんだがな」
「よく言う。さっきのは躱せなければ俺は死んでいた。大体、戦いに来たわけじゃないんなら今更俺に何の用だ?アンタが警官やってるのも驚いたが俺は別に警官にしょっぴかれるようなことはしちゃいないぜ?」
「フン。あの頃貴様が殺した人数は一人や二人じゃない。少なくとも本来であれば貴様は俺がこの場で斬っている」
……どうやら本当に戦う気は無いらしい
俺は構えを解いた
……瞬間に再び牙突が襲って来た
「…!クソ!」
俺は刀を足で滑らせるようにして流しそのままの勢いで奴の腹に蹴りを叩き込もうと……
「いい反応だが、甘い!」
奴刀を手放し俺の足を止めていた
そのまま投げ飛ばすされ受身をとる俺に奴は告げる
「…貴様に仕事を持ってきた。志々雄真実を憶えているか?」
今夜は良く死人の名前を思い出す日だ……