宮藤とペリーヌがドーレスさんの屋敷を後にして4日後、2人はモスクワの街中を移動していた。
宮藤「うわぁ!ここがモスクワか。私初めて来たよ!ペリーヌさんは?」
ペリーヌ「寒いですわ!エイラさんやサーニャさんはよくこんな所に住めますわね!」
宮藤「確かにね。取り敢えずサーニャちゃんの家を探さないとね。」
ペリーヌ「地図によると、モスクワ西部の通りの端にあるらしいですわ!行きますわよ!」
宮藤「うぅ寒いな。ドーレスさんからコートを貰ってなかったら凍え死んてたよ。」
ペリーヌ「モスクワは夏でも1桁がザラ、冬はマイナス30℃も珍しくないらしいですからね。こんな所に巣を設けたあたり、氷山ネウロイは別に不思議な存在では無かったのかもしれませんわ」
その時、2人は後ろから話し掛けられた。
サーニャ「あれ?芳佳ちゃん?ペリーヌさん?どうしたの?」
宮藤「あっ、サーニャちゃん。実はね、エルデ教授という人を探しにここまで来て…」
ペリーヌ「リトヴャク家に匿われていると聞いたので、サーニャさんに話を聞きたくて来たのですわ」
二人が事情を話すとサーニャが少し険しい顔になった。
サーニャ「・・・取り敢えず、裏道に行こうか。ここじゃ誰に聞かれてるか分からないし。」
宮藤「そうだね。リーネちゃんの事とかも、漏れたらまずいから」
3人は裏道に移動して人が居ない事を確認するとサーニャから口を開いた
サーニャ「先ず、疑う訳じゃないけど、どうやってエルデ教授が私の家にいる事を掴んだの?」
宮藤「エルデ教授のパトロンという、ドーレス氏に会って聞きました。ドーレス氏がパトロンというのは、産婦人科のジェニー教授からの情報です」
ペリーヌ「私が訪ねたら、面会のアポが取れましたわ」
サーニャ「・・・うん。大丈夫だね。ごめんね、疑うような真似をして。エルデ教授から、自分を訪ねる人は誰であっても質問をして欲しいって言われたから。」
宮藤「一応こちらも、ジェニー教授から手紙はもらって来てます。彼女の魔法で、エルデ教授しか読めないように細工はされてますけど」
宮藤はジェニー教授の手紙をサーニャに渡す。
サーニャ「・・・うん。なんて書いてるか私には全く分からないね。それじゃあ、私の家に行こうか。」
宮藤「ありがとうサーニャちゃん。なるべく目立たず移動しようか」
ペリーヌ「それとサーニャさん、リーネさんは射撃の腕を現役時代より上げているらしいです。どうかご注意を」
サーニャ「そう。やっぱりリーネさんは敵に回ってるんだね。・・・もう情けはかけられないね。」
宮藤「それと、向こうには1500人以上のカールスラント四強レベルの強化ウィッチがいる。こっちは皆あがり済みだから、相当に苦しい戦いになりそうだよ」
サーニャ「それは、ネウロイの時以上に苦しい戦いになるね。・・・1度エイラに占いでもしてもらう?」
宮藤「結果は自分で切り開きたいな私は、あっ、最悪の結果が怖いわけじゃないよ?」
サーニャ「芳佳ちゃんらしいね。・・・はい。私の家に着いたよ。入って。」
宮藤「ありがとうサーニャちゃん、では、失礼します~」
サーニャが先頭で入り、後に宮藤とペリーヌも続いて入っていった。
エルデ「サーニャさん。後ろにいる人達は誰ですか?・・・ん?もしかして車椅子の子は精神科の宮藤さんかしら?」
ペリーヌ「私はペリーヌと申します。宮藤さんとサーニャさんの元同僚ですわ」
宮藤「はい、私は精神科の宮藤です。ジェニー教授からの手紙を預かってます」
宮藤は手紙をエルデ教授に渡した。
エルデ「ジェニーちゃんから?ええと・・・・・成程。大体の事情は分かったわ。先ず、私は直ぐに病院に戻るのは難しいと思う。」
宮藤「やはり、シャイタン教授の一件があるからですか?」
エルデ「そうね。私の信頼出来る親友からの話だとどうやら、私の病院の部屋の周りにシャイタンの部下が張り付いてるようなのよね。だから、迂闊に病院に戻る事が出来ないのよ。だから、昔からの知り合いであるリトヴャク家を頼ってしまったの。」
宮藤「もう手を打ち始めているんですね…、きっと泌尿器科か循環器科の連中か、外から呼んだウィッチかもしれませんね…。教授がいくら竜人種でも、下手に暴れたら取り巻きは倒せても病院が壊れてしまいます。間違いなく教授の方が逮捕されますよね…。シャイタンはそこまで計算済なのでしょう…」
エルデ「そうね。だから、貴方達に私が得たシャイタンの秘密を話すわね。この事は絶対記録に残さないで、頭の中にだけ残しておきなさい。」
宮藤「元よりそのつもりです。下手に記録を残して落としたりでもすれば、筆跡などからバレてしまいますから。もっとも、アルテアが私をマークしているので、探りには来そうなんですが…」
エルデ「頼んだよ。それじゃあシャイタンの秘密を話そう。先ず、彼奴は人間じゃない。死から蘇ったゾンビみたいなものだ。」
ペリーヌ「なんですって?!という事は、彼は1度死んでるのですか?!」
宮藤「だからリーネに親近感を持ったのかな?リーネも軍法会議で1度死刑になった身ですから」
エルデ「生き返った方法としてはシャイタンが作ってた蘇生薬のお陰と聞いています。それともう1つの秘密はシャイタンの弱点は心臓や脳天でもなく、病院内にあるシャイタンの自室の金庫に入ってる心臓と聞きました。これを破壊しない限りシャイタン自信を蜂の巣にしようが、セメントで固めて海に沈めようが死ぬ事はありません。」
宮藤「確かにそれは重大なヒントになりますね、ありがとうございます!それとエルデ教授、シャイタン教授が密かに進めているであろう『イルミナ』について、何か知る事はありますか?」
エルデ「『イルミナ』かあれは昔に比べてかなり進化したと聞いた。人によって体内に2つのイルミナを取り込んでるモノがいるらしい。」
宮藤「…2つも?!ヴェール教授は、本来なら2個以上移植すればそれは寿命を投げ捨てるようなものと仰ってましたが…。本当に移動するイルミナや、硬い外殻を持つイルミナもありそうですね…」
ペリーヌ「ネウロイもコア2つの個体がいましたわよね、それに近いと思いますわ。なので、ネウロイに出来た事は超速再生以外全て出来ると考えてもいいでしょう」
エルデ「私が聞けた範囲で二つ持ちは最低でも2人いるらしい。その2人の名はさっき出てきたリーネさんとアルテアさんの2人です。」
宮藤「アルテアもイルミナを…!これは本当に、刺し違える事も覚悟しなきゃいけないんだね…!」
ペリーヌ「それに、ドーレス氏の奥方であるシュトラール氏が、空から見たリーネを『自分でも勝てるか分からない』と評していたらしいですわ。イルミナを2つ受ければ、竜人種以上の強さになるという事ですわね…!」
エルデ「嘘でしょ!シュトラールさんは竜人種の歴史上最強の力を持ってる方なのよ!あの方が勝てないなら他の竜人種が束になっても勝てないじゃない。」
ペリーヌ「おそらくですが、リーネさんの正確無比な射撃を見ての感想かもしれませんわ。いくら肉弾戦で無敵でも、遠距離からライフルで撃たれたらただの的ですわ。彼女には弾道を安定させる固有魔法がありますもの」
エルデ「確かにそうですね。いくら我々でも遠距離からの攻撃に即座に対応するのは・・・サーニャさん。唐突ですが、この家からウラル山脈の距離は大体どのくらいですか?」
エルデ教授が話している最中に急に険しい顔になりサーニャに尋ねた。
サーニャ「ウラル山脈なら…、ここはモスクワの端だから…、ゆうに400kmはあるかな…」
エルデ「気の所為だと、嘘だと信じたいけど、明らかにウラル山脈の方向から狙われてる感じがするのよね。」
サーニャ「400kmからの狙撃なんて非現実的…。まさか列車砲かレールガンの類…!」
ペリーヌ「そんな派手な攻撃をすれば、軍が動きますわよ?!」
その時、サーニャ宅の電話が鳴り出した。
宮藤「・・・このタイミングで電話が鳴るなんて。誰でしょうか。」
ペリーヌ「気をつけてください。リーネかアルテアからの宣戦布告かもしれませんわ」
サーニャ 「はい。気をつけます」
サーニャは1呼吸置いて受話器を手に取った。
サーニャ「もしもし?」
リーネ「もしもし、サーニャちゃん。久しぶり〜リーネだけど元気にしてた〜?」
電話先のリーネは何時もの口調で話しかけて来た。
サーニャ「…リーネちゃん!一体なんの用…!」
リーネ「今ね。サーニャちゃんの家を特注のレールガンで狙ってるんだよね。もし、大事な家や街を撃ち抜かれたくなかったら素直に私の言う事を聞いて欲しいな」
サーニャ「リーネちゃんも卑怯になったわね…。どうせ、シャイタン教授のイエスマンになって、中佐達を殺してこいとか、そのあたりだよね…。誰がその要求を飲むと思って…?」
リーネ「ふ〜ん。まあ、予想通りの答えだね。じゃあ、断ったから人質のエイラさんを殺しちゃうね〜。」
サーニャ「…!エイラがそこにいるの!どうして!なんて事をするの!」
ペリーヌ「もはやリーネは、人ではありませんわね。地獄という名の刑務所に送りましょう」
リーネ「酷いな〜ペリーヌさん。一緒に戦った仲間を人じゃないなんて。私は立派な人間だよ♪」
ペリーヌ「その一緒に戦った仲間を人質に仲間殺しを命令し、要求が通らないと知るや否や人質を殺そうとしたのは誰ですか?そんな人の事は人間と言いません、ケダモノと言うのです」
リーネ「五月蝿いな〜。そんなに言うならペリーヌさんの孤児院を破壊しても良いんだよ?」
ペリーヌ「あなたとは本当に分かり合えないですわ。結局あなたの望みは軍門入りと、他のウィッチの皆殺しなんですわね?ただ私の経験則上、あなたの要求を呑んでもエイラさんが無事に帰ってくる保証はありませんわね。あなたのような人間は、たいてい要求を叶えつつ人質は抹殺するのが鉄板ですからね」
リーネ「・・・もういいや。やっぱり私の言う事は聞いてくれないんだね。だったら全面戦争と行こうか。」
ペリーヌ「元よりそのつもりですわ。貴方が先に宮藤さんを手にかけておき、挙句エイラさんを人質に自分のイエスマンになれなんて虫が良すぎですわ。それと、ガリア軍はブリタニアに宣戦布告を通告した事を報告します。現元帥曰く『悪は可能性から根絶やしに、ブリタニア人を赤子の果てまで殺し尽くす』そうです。これは私の意思では無いので、文句があるならパリを火の海にすればいいですわ」
リーネ「良いよ。その宣戦布告受けて立つよ。こっちはカールスラント4強クラスの師団を用意してるからね。ネウロイに占拠された時以上にガリアを火の海にしてあげる。」
ペリーヌ「ブリタニアとガリアは紀元前から犬猿の仲、この際ノーガードのインファイトも悪くありませんわね。要件は済んだのかしら?」
リーネ「うん。楽しみにしてるよ。それと私とアルテアちゃんは前線に出るからね。もし私達を倒したかったら前線に来てね芳佳ちゃん。その時はひとりじゃ何も出来ないような身体にしてあげるね♪」
宮藤「リーネちゃん、今度こそ私は2人に引導を渡すよ。こんな卑怯な人間と仲良くしていたなんて、私の歴史に泥が付いちゃうよ。泥は自分で落とさないとね」
リーネ「ふふふ♪来てもいいけど、もし、私達に負けたら喉も目も腕も完全に潰して私とアルテアちゃんの2人で一生可愛がってあげるね♪」
宮藤「もし、私が勝った時は、歴史上最も愚かなウィッチとして永遠に語り継いであげるよ。世界中に歴史をばら蒔いてね」
リーネ「面白いねリスクとリターンは同等じゃないとね。・・・それと、もう1つね。実はエイラさんを人質にとったなんて嘘だからね〜。あれで、サーニャちゃんを引き込めたら良かったんだけどやっぱり上手くいかないか〜。」
宮藤「随分狡猾な策を考えるね~、まあ、それでも世界大戦はきっと避けられないと思うよ?あの裁判以降、ブリタニアの国際的地位は堕ちたからね」
リーネ「良いね。生きたおもちゃを手に入れるにはそれぐらいしないとね。それじゃあまた前線で、今度は敵として会おうか」
宮藤「じゃあねリーネちゃん。今度こそ、引導を渡すから」
宮藤は勢いよく受話器を戻した。
エルデ「なんだか、大変な事になりましたね。こうなったら私もガリアに赴いて加勢をしましょう」
宮藤「エルデ教授、ありがとうございます!」
???「エルデ教授、面会はまだ続きそうですか?って、あの宮藤さんがなぜここに?!」
サーニャ家に1人の女性が入ってきて宮藤は少し困惑していた。
宮藤「えっと、私はエルデ教授に用があってきたんです。…えっと、貴方は?」
フランメ「私はフランメよ。エルデ教授に同行して来たの。私はシャイタン教授が今の思想に堕ちた理由を調べていたの。一応聞いてく?」
宮藤「え!シャイタン先生の思想は昔からじゃないんですか!是非教えて下さい!」
次回、シャイタン先生の過去が明らかに!