フランメ「それじゃあ、シャイタン先生の過去を話すわね。シャイタン先生には、マーグという親友と、ユピって言う恋人がいたのよ。ただね、2人とも今は死んだの。マーグの方は交通事故で、ユピの方は自殺。両親もある理由で心中してるわ」
宮藤「まさか、その人達を生き返らせる為に死者を蘇らせる薬を作ったんですかね?・・・でも、それと優生思想主義になった理由は結びつかないような。」
フランメ「その原因が原因なのよ。マーグを轢いた犯人は両脚義足の人で、義足のせいでブレーキングが遅れて轢かれたのよね。ただ、裁判では義足に原因はなし、マーグの方の不注意という事で無罪になったの。ユピの方は、当時シャイタンの子を妊娠していたんだけど、ある日精神障害者に街中で腹を蹴られて流産したのよね。でも、こっちもやはり裁判では精神障害者の方が無罪になった上に、1円も慰謝料なしという結果。彼女は裁判結果と流産したショックで首を吊って自殺したわ。両親も、経営する工場である日作業員の1人がミスをしてあわや大事故という事態が起きたの。父親はその作業員を叱ってクビにしたんだけど、その人が発達障害者だったのよね。その人は支援団体に駆け込んで損害賠償を起こし、父親は敗訴して工場は倒産。母親も「発達障害者をいじめた悪魔」と誹謗中傷の嵐を受けたの。結果、2人で無理心中したわ。彼は障害者のせいで、大事な人を4人も失ったの。それで障害者と、障害者におもねる社会の不合理に怒りを覚えて、優生思想を研究するようになったのよね。彼は当時優生学の権威だったゼフゲレ医師に師事して、今の地位を築いたのよ」
宮藤「・・・・・・そんな、事があったんですね。確かに世間は障害者に優しくしようという風潮が流れています。それによって、悲しい思いをする人もいたんですね。・・・」
ペリーヌ「確かにお気持ちは分かります。けど、だからといって宮藤さんやその他の障害を持つ方に復讐するのは筋違いにも程があります!」
フランメ「ええ、その通りよ。彼のしている事はただの復讐に過ぎない。もっとやり方は他にもあったのに。だから、私は宮藤さんを応援したいわ。学内でも見ていたけど、あなたは常に自分が特別な人間だという意識なく行動していた。譲る時はきちんと譲るし、自分と同じような患者が相手でも、そっちに非があるときはきちんと注意していた。本当の共生に必要なのは、あなたのような価値観よ。だから、産婦人科は精神科の支援に回るわ。で、いいのよねエルデ教授?」
エルデ「ええ、そうね。本当は私から提案すべきなんだけど。私は貴方にローザンヌの頂点に立ってもらいたいといつも思っていたわ。貴方なら、男女平等な働き方も実現してくれそうだからね」
宮藤「そんな!私は当たり前の事をしてきたんですよ!それに、私は出来る事ならどんな患者さんでも救いたいんです。でも、私一人の力じゃ出来ないから大学病院に入ったんです。だから、私の方からお願いします。是非、私に力を貸して下さい!」
エルデ「私の方からもお願いしたい事よ。私達は貴方と手を組むことにするわ。」
宮藤「はい。お願いします!」
宮藤とエルデ教授は握手を交わした。
エルデ「さて、次の一手はシャイタン教授の拿捕ね。おそらく世界の動きは、世界大戦の流れでほぼ確定。そうよねフランメ?」
フランメ「ええ、今カールスラント西部~ガリア北部の各軍港に、連合軍が集結しています。やはり、ガリア軍のサカルッチ元帥が開戦派の支持を固めているようです。ただ、スオムスのクザワール元帥は、ブリタニアと戦争をしても益は無しと厭戦派の支持を固めて対立しているようですが」
ペリーヌ「世界大戦と言っても、図に表すとブリタニア対世界と言った所でしょうね。普通に考えたら結果は火を見るより明らかですけど、ブリタニアの兵力が一人一人、一騎当千の力を持ってますからね。」
エルデ「1500人もカールスラント四強レベルの兵がいれば、おそらく1人倒すだけでも世界連合軍側は200~300の兵を犠牲にする事になるわ。更にイルミナの力で強化されれば、少ない資源で短期決戦も夢じゃない。クザワール元帥はそこを冷静に評価してるんだけど、サカルッチ元帥は初めからブリタニア市民を殲滅して戦争を進め、降伏を促す予定なのよ。恐ろしいわ」
宮藤「けど、あっちは手を出してくる人全員に容赦ないでしょうね。・・・シンプルに全滅するか、させるかの戦いになりそうですね。」
エルデ「そうね。あちらの考え方はサカルッチ元帥のものに酷似してるから、軍隊をすり抜けて街を襲撃なんて事も平気ですると思うわ。まだ開戦の兆しはないけど、時間の問題ね」
宮藤「・・・けど、どうなっても私はリーネとアルテアだけには自分の手で引導を渡したいです!」
エルデ「向こうもその気みたいだから、その2人とは嫌でも一騎打ちになると思うわ。おそらくだけど、こちらが動かなくても向こうから勝手にやって来る。だから、それまでに対策を練りましょう」
サーニャ「私は取り敢えず、エイラに連絡取ってみるけど、上層部が動かないならスオムスからの援軍はあまり期待出来ないかもね。」
フランメ「スオムス軍はせいぜい15万人規模、装備もカールスラントなどに比べると一世代遅れてる。かつて初めてウィッチの義勇軍を運用した頃の面影はなくなっているわね。こう言ったらなんだけど、未だに練習機が複葉機で自動小銃すら初期モデルでは、ウィッチ居なくても負けそうね」
エルデ「エイラさんみたいな前線のウィッチはきちんと新型の銃器が支給されていたけど、軍としてはカツカツよね。生き残りの竜人種で一番弱いフルスちゃん1人でも勝てちゃうかも」
宮藤「カールスラントはミーナ中佐やバルクホルンさんが指揮を執ると思うので大丈夫だと思います。後はリベリオンや扶桑、ロマーニャがどう出るかは分からないですね。」
その時、更にもう1人の人が家の中に入ってきた
???「世界の動向なら、一応私が調べておいたわ」
ペリーヌ「さらに人が増えましたわね。もしかして貴方も竜人種ですか?」
チェイム「ええそうよ。私はチェイムって言うの。シュトラールに頼まれて、2人の付き添いと、世界の動向を観測するようにってね。よろしくね」
宮藤「ありがとうこざいます。チェイムさん。早速であれかもしれませんが、他国の状態について教えて貰ってもいいですか?」
チェイム「まず扶桑ね、扶桑はやはりブリタニアに対する感情が良くないわ。貴方を殺害しかけたリーネさんの影響で、世論は反ブリタニアに流れつつある。ここ数年は死刑執行の影響で感情が落ち着いていたけど、生存してるという、情報が入ってからはまた息を吹き返したわ。連合軍参加はほぼ確実ね。最新型の空母雲龍型が6隻、欧州に向かって航行中よ。噂では、ジェット戦闘機秋水を艦載機として実用化したと言われてるわね」
宮藤「つまり、扶桑はブリタニアと交戦する構えなんですね。」
チェイム「そうね。それとガリアは、サカルッチ元帥が優勢な事でほぼ参戦は確定。上陸部隊30万人と航空機1万機を用意してるわ。スオムスはクザワール元帥の影響で連合軍参加は控えてる状態ね。ロマーニャとヴェネツィアは、それぞれ20万人の上陸部隊を陸路で派遣中よ。オラーシャもバルト海から艦隊が移動してるみたいだから、参戦は確実ね。カールスラントは、各軍港に大型艦を入れる準備をしてるから、やはり参戦確定ね」
宮藤「数の暴力をもってしてもイルミナを持った1500人の軍団に勝てるんでしょうか?それに、ブリタニア軍も黙ってないでしょうから。」
チェイム「そうね。だからガリアは地方都市を直接攻撃し、市民を灰にして講和に持ち込む腹積もりみたい。それとリベリオン、密かにレーダーを掻い潜る爆撃機と、1発で街ごと100万人を灰にする新型爆弾を作ってるみたいよ。爆撃機は今ホワイトマン基地にあるの。そこの整備士達は、何も知らされずに爆撃機のメンテナンスを毎日してるわ。教えたらストライキは待ったナシだもの」
宮藤「・・・・・・」
宮藤は驚きのあまり、言葉を失っていた。
チェイム「恐ろしいでしょ。ホワイトマン基地の整備士達が本当に可哀想よ。真実を知る頃には、もう手遅れなんだから。元々あの爆撃機は、ネウロイの警戒網をすり抜けて直接巣を叩くために開発されていたのよ。ただそのために使ったコーティング材が、実はウィッチの魔力による感知もすり抜けられる事に気づいたのよね。だから、それを使って一撃講和を狙うのがリベリオン軍の目的よ。だから、リベリオンは今表向きには兵力を用意していない。全てその爆撃機に賭けているから」
サーニャ「取り敢えず、私はオラーシャ空軍の基地に赴く必要があるからこれで一旦失礼するね。」
宮藤「うん、サーニャちゃんも気をつけてね。向こうはこっちの動きを逐一監視しているようなフシもあるみたいだから」
サーニャ「うん。気を付けるね」
その頃ローザンヌ大学病院に残ったハルトマン達は・・・
ハルトマン「ヴェール教授、宮藤達から何か新しい情報は来ましたか?」
ヴェール「一応伝手のメカモズから手紙はもらったよ。これを読んでくれだって。重要な事は直接話したいから、手紙に出来る内容だけ書いたみたいだよ」
ハルトマン「メカモズさんですか?・・・あの、達筆なのか汚いのか分かりませんけど、全く読めません。」
ヴェール「どれどれ、あー、これはエルデ教授の字だね。あの人、字だけは異常に汚いから。ふむ…、まずいね。オラーシャで情報収集していたら、世界大戦の可能性を掴んだみたい。ガリアの元帥は、ブリタニアの各都市を叩いて講和を促すつもりって書いてある。それと、リベリオンのホワイトマン基地に、新型爆撃機と新型爆弾があって、音の速さでブリタニアにレーダーをすり抜けて突入し、1発で街ごと100万人を灰にする爆弾を投下する準備がされてるみたい…。それと、扶桑の空母で、コードネーム「スーパーX」こと秋水を欧州に派遣したって…」
ハルトマン「は!街を消す爆弾だって!それは、流石に不味いでしょ!」
ヴェール「元々その爆弾は、対ネウロイ用に作られていたのよ。『学習能力が追いつかない速度で、数百万℃の熱量をぶつけて巣を街ごと焼き払う』ってコンセプトでね。当時は巣のある街に人なんていなかったから、誰も気にせず開発してたけど、試作品が完成した頃にはもうモスクワ解放が終了しちゃったんだよね。爆撃機も、それに付随して開発されたもの。ネウロイの探査能力をすり抜けて、音速で巣に爆弾を落としに行くためのね。リベリオンとオラーシャが共同開発した爆弾の名は『ツァーリ・ボンバ』。1発だけリベリオンのどこかに保管されてるらしいよ?そして爆撃機の名は『スピリットオブリベリオン』。これはホワイトマン基地に1機があるのみ。そこの整備士達は、何も知らずに毎日機体のメンテナンスをさせられてるみたい」
ハルトマン「もしかしたら、既に別基地に運んだ可能性もありますよね?それに、その爆弾があるという確証的な証拠が無いから取り合ってもくれないでしょうね。」
ヴェール「そうだね。爆撃機の整備士や基地の軍人には何も知らせてないだろうし、爆弾についても大事な情報は伏せてると思う。ただ、そのレーダーや魔力をすり抜けるコーティング材は、温湿度条件が少しでも狂うと全張替えになるくらいデリケートだから、爆撃機を置ける基地は限られるんだよね。ホワイトマン基地以外だと、多分片手で数えられるくらいしかないはず」
ハルトマン「そうなんですね。ていうか、証拠を掴んだ所でリベリオンに談判しに行っても証拠を揉み消されるか私達自信が消されるでしょうね。」
ヴェール「そうだね。だから、飛んできた爆撃機を海の上で撃ち落とすしかないよ。あと、手紙には宮藤達とシャイタンの秘密を共有した事が書かれてるね。そして、産婦人科は宮藤達と組むことにしたってさ」
ハルトマン「シャイタンの秘密ですか?」
ヴェール「うん。大事を考えて、それは宮藤くん達が直接話してくれるってさ。自分は研究室が張り込みされてるから暫く戻れない。だから後は宮藤くん達から聞いてねだって」
ハルトマン「分かりました。宮藤達はどれくらいで戻るんでしょうかね?もう、各国が臨戦態勢なら、明日にでも火蓋が切られてもおかしくないでしょうから。」
ヴェール「2日もあれば帰ってくるみたい。ただ、リーネ達がこっちを監視しているような動向があるから、もしかしたら今後は病院外に拠点が必要になるかもって」
ハルトマン「病院外か・・・ちょっと心当たりがないかトゥルーデに聞いてみますね」
ヴェール「万が一の時は、アレイスターにでも頼んでみるよ。アレイスターを吹き飛ばせば、世界中にその死が伝わるようにインプットされた屋敷に住んでるから。手は出しづらいしね」
ハルトマン「ありがとうこざいます。取り敢えず電話してきますね。」
ヴェール「うん、気をつけてね~」
ハルトマンが電話をしに行こうとすると、1人の人物がハルトマンを止めた
???「いいえ、姉さまその必要はありません。」