七慾のシュバリエ ~ネカマプレイしてタカりまくったら自宅に凸られてヤベえことになった~   作:風見ひなた

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第100話 穴があったら爆破したい

『うわあああああああああああん! これ超怖いんですけど!!』

 

 

 キツネ耳を付けたディミが悲鳴を上げながら障害物をすべて回避しているのをちらりと見上げ、スノウは小さくヒュウ♪と口笛を吹いた。

 

 

「やっぱりやればできるじゃん。さすがボクの相棒だね」

 

 

 そう言いながらガチャリとライフルを構え直し、同じく不規則な回避軌道を取りながら追いかけてくるオクトに銃口を向けた。

 お互いにゆらゆらと左右に揺れて相手の狙いを逸らしているので、いかに達人レベルのエイム力があったとしても当てるのはそう簡単なことではない。

 

 半身を後方に向けて射撃しつつ、見てもいない前方の障害物はきっちり避けてくるシャインの軌道は完全に“後ろにも目が付いている”状態で、ハタから見れば異常そのものだ。

 

 シャインが浴びせかけるレーザーライフルの射撃を回避しながら、さすがのオクトも目を剥いた。

 

 

「AIをオートパイロットに使った戦術だと……!? まだそんな仕様は公開されていないはずだ!」

 

 

 サポートAIによるオートパイロットを取り入れた戦闘スタイルは、まさしく現時点における戦術の最先端をひた走っていた。

 何しろそんなことができるなんて、まだスノウしか知らないのだから。

 

 内心9割9分でシャインが本物だと確信しつつあったオクトの脳裏に、改めて疑念がよぎる。

 ……まさかこの土壇場で新しい仕様を見つけ出したのか?

 それとも本当にスノウライトはシャインを模した戦闘AIなのか?

 

 

「わ……わからん……! シャインなら何をしでかしてもおかしくない気がする……!!」

 

 

 思えば昔からシャインは人の予想の斜め上をカッ飛んでいく子だった。

 前作では矢に風をまとわせて加速する魔法を拡大して自分にかけ、運営が飛行魔法を実装する前に世界初の人力飛行を成し遂げたことで界隈をざわつかせたものだ。

 ちなみに音速で飛行するので真似しようとした者は漏れなく障害物や大地にぶつかって爆死し、なんなら本人も最初の十数回ほど地面に突き刺さって死んでいた。

 そしてそれをエッジとエコーがゲラゲラ笑って動画に……。

 

 

「今はそんな思い出にひたっている場合ではない!」

 

 

 戦いながら記憶を半分過去に飛ばしていたオクトは、シャインが回避した円柱の影から爆風が広がるのを察知して慌てて機体を大きく横にスライドさせた。

 

 爆風の直撃はもちろん避けるが、さらに倒壊した円柱の破片が接触するのも危険だ。このスピードではいかなる障害物との接触も致命傷になりうる。

 

 だが、このチャンスを見逃すスノウではない。

 

 

「左右にブレて当たらないのなら、当たるように誘導するまで! ボードコントロールって大事だよね、師匠ッ!」

 

 

 大きく横に跳んで爆風と障害物を回避したその隙を狙い、スノウの狙撃がオクトに迫る。

 

 

「くっ……!」

 

 

 スラスターを起動した直後の硬直のせいでさすがに回避しきれず、スノウの射線に身を晒したオクトは歯噛みした。

 しかしそこはオクト、そのまま直撃を許しはしない。

 

 

「舐めるなぁっ!!」

 

 

 緊急回避用のスラスターが起動できなくても、機体のバランスを操作することはできる。

 一時的に速度をゼロに落としたオクトは、直後に機首を横方向に向けて再加速。機体についた慣性と横方向へ推進力を利用してその場で回転して、直撃を回避する。

 ボンッと音を立ててレーザーが当たった左腕が爆発するが、本来命中するはずだった胸部への着弾は阻止された。

 

 

「ウソでしょ……?」

 

 

 これにはスノウも目を丸くする。

 反射神経と判断力がどう考えてもイカれていた。加えて言うならオートバランサーを切った制御技術も人知が及ぶ範囲を超えている。

 それをこともなげに再び正面へと向き直り、全力でシャインに向けて加速しながらオクトが吼えた。

 

 

「着弾まで0.5秒もかかるなど遅すぎる! それで私を殺れると思ったなら師を見くびりすぎだな!」

 

「クソッ、レーザーならいけると思ったのに……!」

 

 

 ディミに余裕があったら『銃撃戦の距離で格ゲーやってんじゃねえよ、これそんなゲームじゃねえから!』とツッコむこと必至のやりとりであった。

 

 だが、悪くない。

 オクトに命中させた左腕も火花を上げるばかりでもげてはいないが、これは悪くない流れが来ている。

 少なくともバカげた回避力の化け物にダメージを与えることはできる。

 

 スノウは“ミーディアム”の銃口を向け、叫びと共にレーザーを撃ち放った。

 

 

「ダメージが通るなら、いつか殺せるッ!!」

 

「やってみろ小娘! その前にお前が死ぬがなあッ!」

 

 

 オクト機からも放たれるレーザーが中空で交差し、薄闇に覆われた遺跡を照らし出す。

 そのレーザーを互いに回避して、続く射撃を左右にブレる相手に叩き込む。

 

 火線と火線が見えざる火花を散らし、殺気と闘志が互いの位置を割り出しながら交錯する。

 口では罵倒を繰り出しながら、戦意は何より雄弁にその在り方を語る。

 

 時折スノウが仕掛けた爆薬が起爆して、唐突な致命傷を与えんと爆風や破片を撒き散らすが、それは最早オクトには通用しない。

 

 天井に仕掛けられた爆薬が落盤を引き起こしたが、オクトはそれを前方に飛び出して難なく回避。

 加速した先を狙うシャインのレーザー射撃をさらに急上昇してかわし、レーザーを撃ち返すアクロバット飛行を決めた。

 

 

「ぬるいわぁ! 仕掛けられているとわかっているトラップなど用を為すかよッ!! 爆風の範囲も把握したし、避けた先を狙う射撃など今からそこを撃ちますと言っているようなものだぞッ! ワンパターンだな! それ以外の手も見せてみろッ!!」

 

 

 喜悦に顔を歪めながら高笑いを上げるオクトは、現在最高にハイテンションであった。

 少なくともこのゲームに触れてから一番楽しんでいることは疑いようがない。

 

 

「やはり弟子と遊ぶのは嬉しいものだ……! その成長を間近で確かめられるうえに、稽古も付けられるといいこと尽くめだな! お前も楽しいだろう、シャインッ!?」

 

「ああ、楽しいなあ! ついでに師匠をブチのめせばもっと楽しいよッ!!」

 

「うむ、やはりお前はいい。今の部下どもとは大違いだッ! 何故奴らが私と戦うのを避けたがるのか理解できんッ!! やはり【シャングリラ】以外の人間はクズしかおらんわッ!!」

 

 

 願わくばこれが本物のシャインであれば言うことはないが、と心の中でオクトは言い添える。

 だがそれは期待薄かもしれない。

 

 オクトが知っているシャインは、基本的に他人を頼らない。トラップ主体で戦う以上は戦場に自分以外の味方がいれば邪魔になるからだ。

 もちろん前作とはゲーム性が違うし、戦い方も変わっているだろうが。

 

 それでもオクトの脳裏には、あの日()()が経営するネットカフェにやって来た少年の姿が焼き付いている。

 おどおどと委縮しながら、心の奥底で他人を警戒している目つき。

 あれからどれだけ仲良くなり、家族同然……いや、それ以上の存在とまで心を許し合えるようになっても、最後の一線を踏み越えることは許さない。

 

 それがシャインの根幹。

 最後まで彼女にはてなずけられず、そして彼の命を救った在り方。

 

 オクトはギリッと奥歯を噛みしめながら絶叫する。

 

 

「そんな私のシャインがなぁ! 出会って数か月のAIごときにッ! 命運を委ねることなどあるわけがないだろうがあッッ!!」

 

「ッ!? しまった、避けられ……」

 

 

 気迫の籠ったオクトの射撃が、シャインを捉える。

 まるでその言葉に宿った執念に呪縛されたかのように、機体制御をミスしたスノウは目前に迫るその一撃を見つめた。

 

 一秒が何分にも引き延ばされ、スローモーションになったかのような刹那。

 ゆっくりと自機の胴体に伸びてくるレーザー光線を、スノウは見つめて……。

 

 

『わーーっ!? 何ですかこの入り組んだ地形!? き、緊急回避ーーっ!』

 

 

 前からの障害物にビビったディミが、急上昇して障害物を飛び越える。

 オクトの渾身の一撃はスノウを無視して介入したディミの操縦によって空しく虚空を裂き、障害物にぶつかってその表面を赤く焼いた。

 

 

「ナ、ナイスディミ! 今の最高!」

 

『え? すみません、今後ろ見てる余裕なくて! わー!? なんですかこの回路みたいな廊下! 作った人アホなんじゃないですかーーー!?』

 

 

 親指を立てるスノウをスルーして、ディミが悲鳴を上げながら操縦を続行する。

 

 

「ああああああ!! クソッ!! AIが邪魔をしくさってええッ!!」

 

 

 爛々と充血した赤い眼で通信の端に映るディミを睨み付け、オクトはギリギリと血が出そうなほどに奥歯を噛みしめた。

 

 さっきからずっとそうだ。

 この狐耳を付けたメイドとかいうふざけた格好のAIが邪魔すぎる。

 

 シャインの不規則回避軌道を見切ることなど、オクトには不可能でもなんでもない。

 何しろ前作でシャインに空中戦を教えたのは他ならぬオクトだ。

 不規則な回避パターンを作ることで相手の射撃を阻害できると気付いたオクトは、それを徹底的にシャインに叩き込んだ。彼女なりの不器用な教え方ではあったが、シャインはそれを完全にものにしたのだ。

 

 それを手取り足取りずっと近くで見守っていたオクトには、シャインの回避パターンに染みついた癖がわかっている。

 本人でも気付いていない『不規則性を構築する規則』。

 他人を観察して思考を誘導することに長けたオクトは、シャインのそれを掴みながらも本人には指摘しなかった。

 

 自分にしか把握できないような癖を他に利用できる相手など現われそうにないと思えたし、いつか万が一にでもシャインが自分に歯向かったときの保険になると考えたのである。

 

 果たしてその時は今まさに訪れた。

 シャインの回避パターンは2年を経ても変わっておらず、そのままならとっくの昔にオクトの前に膝をついていただろう。

 

 だが……スノウの頭の上に乗ったちっぽけなキツネ耳メイドがそれを台無しにしていた。

 障害物の回避を押し付けられたディミの必死の操縦が、スノウの回避パターンと混じり合って未知の回避軌道を描いていたのである。

 

 

「楽しい楽しい弟子との交流がッ! せっかくの魂の語らいに、雑音を持ち込むなあッッ!! 羽虫がッ! 女狐がああああああッッ!!!」

 

 

 その身に宿る《憤怒(ラース)》の宿業(カルマ)を遺憾なくブーストさせて、激情のままにオクトが吠える。

 

 

『え、なんですか!? なんか背後からビリビリした何かが感じられるんですけど!? ま、まさか私も殺気とやらが感じられるように……!? このキツネ耳のせいなんですかね!?』

 

「ディミは気にしなくていいよ! 前見てて前!」

 

 

 この殺気を感じられなければ知性体じゃねーよ。

 

 AIにすらわかる殺意を撒き散らしながら、オクトはライフルを構えて飛翔する。

 

 

「私のシャインの傍からいなくなれッ!! うああああああああッッ!!」

 

「ぐうっ……!! どうなってんだ、精度がさらに上がってるぞ……!?」

 

 

 普通怒れば怒るほどに思考に不純物が混じって戦闘力が落ちるのがPvP(対人戦)というものだが、オクトの戦闘力はむしろ研ぎ澄まされていく。

 

 より精密なエイム力と読みで繰り出される射撃はスノウをじりじりと追い詰めつつあった。

 

 

『えっ!? わわわっ、騎士様! そっちに動かさないでください、避けるの大変になるんですが!?』

 

「そう言われても! くそっ、これまずいぞ……!」

 

 

 スノウは額からだらだらと冷や汗を垂れ流し、自分たちが追い込まれつつあることを悟った。

 

 オクトの射撃を回避した先には、さらに不利になる地形が待っている。

 軌道を制限されながら回避した先は、より不利な展開。

 

 

「逃げ切れると思うなよ……! 八手先で私の勝ちだッ!」

 

 

 まるでチェスのように積み上げられるボードコントロールの極致。

 詰みへと相手を誘導するお得意の手腕が、シャインの首に手を掛けつつあった。

 オクトの思うように進路を誘導され、攻撃や障害物は回避するものの、思うようにスピードが出せない。

 じりじりとした焦燥がスノウの背筋を伝う一方で、オクトは冷徹な射撃でスノウとディミをチェックメイトへと追い込んでいく。

 

 そして、ついに……。

 

 

「……ッ!! ディミ、前進ストップ!」

 

『えっ、あっはい!』

 

 

 長く続いた回廊の終点、大きな門の前でシャインは静止する。

 ここをくぐればスノウたちが地下へと侵入した大穴まではあと少し。

 あとほんの少しだけ飛べば地上に出られるというところで、スノウはチェックメイトへと追い込まれた。

 

 大門は自動で開閉する仕組みで、開き切るには時間がかかる。

 背後で門が開きつつあるが、それまでにこの逃げ場のない空間でオクトの攻撃をしのがなくてはならない。

 だが……果たしてそれを耐えきれるのか。

 

 過去に正面から戦ってシャインがtakoに勝ったことなど一度もない。

 相手は反射神経と戦略の化け物だ。あまりにもスペックに差がありすぎた。

 正直に言って、同じ人間という枠で括れる存在ではないとスノウは思っている。

 電卓とスーパーコンピューターって同じ計算機だよねと語るくらい無理がある。

 そして一度接近戦に持ち込まれれば、最早オクト(魔王)から逃げ切ることは不可能だろう。

 

 だからこそ、トラップと遠距離戦でなんとか仕留めたかったが……。

 

 

(ちょっと無理かな)

 

 

 道中で距離を稼げなかったのが痛すぎた。

 スノウは覚悟を決めて、オクトへと向き直る。

 

 

「手詰まりのようだな。ここまでか?」

 

「そうだね。さすがに万策尽きたかな……」

 

「そうか」

 

 

 オクトは悠々と飛翔し、シャインとの距離を詰める。

 

 せめてもの抵抗としてスノウは“ミーディアム”で射撃を試みるが、それらはすべて紙一重で避けられてしまう。

 まるで阻むものなど何もない、王者の歩みのごとく。

 

 やがてオクトはシャインの前方100メートルまで接近する。

 いつでも八つ裂きにできる、必殺の間合い。

 

 そこまで近付かせることを許したスノウに、オクトは白い目を向けてふうっとため息を吐いた。

 

 

「少しは期待していたが……こんなものか。まあ、所詮AIとつるむような惰弱が本物のわけもなかったな」

 

 

 師匠から向けられる、あからさまな失望。

 それはスノウ本人が思っていたよりも、心に重くのしかかった。

 

 せめて何か一言だけは反論しようと、スノウは口を開く。

 

 

「tako姉ってさ……ホントそういうところあるよね」

 

「フン。またそれか? 偽物が今更何を騙る。八つ裂きにされる前に言ってみるがいい」

 

「あ、いいの?」

 

 

 勝者の余裕か、哀れな偽物への慈悲か。

 発言を許可されたスノウは、思ったことをそのまま口にした。

 

 

()が女の子と話してたら割って入ってくるところ」

 

「……………………」

 

 

 オクトは何も反応しなかった。

 

 

 コクピットの中で固まっていた。

 

 

 ピクリとも身動きせず、表情筋が完全に固定化している。

 それをいいことに、スノウは続けた。

 

 

「いや、ホントtako姉って僕がエコーやエッジ姉と話してたらすぐに横入りしてきたよね。盛り上がってるといつも音もなく背後に回って唐突に相槌打ったり、お茶持って来たりしたじゃない?」

 

「……………………」

 

 

「でも僕がバーニーやハルパーと話してるときは、なんか遠くからニコニコして見守ってたよね? まあハルパーはいつもつれなかったけど。tako姉って女の子と話してるときだけ割って入るんだよね」

 

「……………………」

 

「あれってガールズトークに飢えてたのかな? 僕は女の子じゃないんだけど……」

 

「……………………」

 

「だからまあ今日もディミと話してたら割って入って来たし、またかーって感じ。tako姉って結構寂しんぼさんだよね。そういうところも面白い人だなーって思うけど」

 

「……し」

 

「し?」

 

 

 オクトはプルプルと全身を震わせ、真っ赤になった顔を両手で覆って喉から声を絞り出した。

 

 

「死にたい…………」

 

 

 ファーーーーーーーーーーwwwwwwww

 

 takoさん今どんな気持ち?

 遠巻きに愛でていたショタっ子に観察を気付かれていたことをカミングアウトされてどんな気持ち??

 イケメン青年とショタっ子がじゃれ合う姿に萌えていたことまで把握されていてねえどんな気持ち???

 

 プルプルしてないで今の率直な気持ちをお聞かせください!

 

 

「……tako姉?」

 

『あの……そのへんで……』

 

 

 固まって動かなくなってしまったオクトに無自覚に追撃しようとするメスガキの肩を叩き、そっと首を振って制止する狐メイド。

 今の断片的な情報からうっすらと事情を察したのだ。

 ディミちゃんにも情けはあった。

 

 

 そしてその隙はあまりにも戦場において致命的であった。

 思わず素になったオクトが硬直している間に、シャインの背後の門が開き切る。

 

 

「……なんかよくわかんないけどラッキー!!」

 

 

 このチャンスを逃さず、門に向かって全力で飛翔するスノウ。

 

 

「ええいアホか! いつまで固まってるんだ!!」

 

 

 自分を叱咤したオクトは、慌ててシャインを逃すまいとバーニアを噴かす。

 

 

「こ、こんなことで勝ちを逃がしてたまるかぁ!!」

 

『騎士様、追って来ますよ!』

 

「わかってる! 焦るなよ……3、2、1……!」

 

 

 そしてシャインが門をくぐった3秒後、オクトの機体が門を通過して……。

 

 

「今だ、タマ! 起爆!!」

 

『ラジャッたニャアアアアア!!!』

 

 

 密かに開いていた通信越しに、タマが門に仕掛けた爆弾を遠隔で起爆させた。

 

 タマが持ち込んでいた爆弾の手持ちの中で、最も破壊力の大きなブツ。

 メイド隊を先に地上に戻らせたのは、これを含めた爆弾トラップの数々を仕掛けるため。

 そして道中で小規模な爆弾をいくつも仕掛けておいたのは、一番の切り札となるこいつの爆破範囲を読み切らせないため。

 

 小規模な爆弾の爆破範囲に慣れさせておけば、その範囲を避ければ安全と刷り込むことができる。

 

 

「ボードコントロールは戦術の基本! そうだよね、師匠ッ!」

 

 

 自らも背後からの爆風に吹き飛ばされ、ガリガリと残り僅かなHPゲージを削りながらスノウが叫ぶ。

 

 

「ああ……そうだなァ!!」

 

 

 そして立ち上る爆炎と土煙で閉ざされた視界の向こうで、対爆シールドを構えたシルエットが吠える。

 

 

 魔王からは、逃げられない。

 


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