七慾のシュバリエ ~ネカマプレイしてタカりまくったら自宅に凸られてヤベえことになった~   作:風見ひなた(TS団大首領)

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今回は【氷獄狼】のお話。


EXTRA ARCHIVE このスカルの目をもってしても一目瞭然

 ぴろん♪

 

血髑髏スカル

≪アッシュって最近変じゃないですか?≫

 

 職場の昼休み時間。

 周囲の目を盗んで【氷獄狼(フェンリル)】の副クランリーダー、血髑髏(ちどくろ)スカルはSNSアプリでメッセージを送っていた。相手はクランリーダーのヘドバンマニアである。

 

ヘドバンマニア

≪変ってどういう風に?≫

 

 

血髑髏スカル

≪あのシャインってガキに負けてから異常に執着してるじゃないですか≫

 

 

ヘドバンマニア

≪まあ10万も課金した武器を奪われたら誰でも怒るだろ≫

 

 

血髑髏スカル

≪それだけじゃないですよ。なんか口開いたらずーっとシャインシャインって言ってますし≫

≪降格処分受けたら受けたで、自分から【鉄十字ペンギン同盟】に出向していろいろやってるみたいですし≫

皇帝ペンギン(クランリーダー)が泣きついてきましたよ、アッシュが好き放題やってるから止めてくれって≫

 

 

ヘドバンマニア

≪んん……まあ、好きにやらせてやればいいんじゃないのかなあ≫

 

 

血髑髏スカル

≪好きにって……。いや、よかぁないでしょう≫

 

 スカルはクランリーダーの日和見な意見にムッとした。

 ヘドバンマニア、血髑髏スカル、アッシュの3人は2年前にβテストが終了した『創世のグランファンタズム』をプレイしていたときからの仲間である。

 当時はまだ彼らは荒っぽいチンピラのような雰囲気はまとっていなかった。チンピラゲーマー集団と化したのは、『七翼のシュバリエ』に移ってきてからである。

 

ヘドバンマニア

≪アッシュもストレスたまってるみたいだし≫

≪ほら、降格処分だって敗戦の責任を押し付けたみたいな感じだから、私から強く言いにくいんだよね≫

 

 

血髑髏スカル

≪それは……まあ仕方ないじゃないっすか≫

≪あいつがストライカーフレームを持ち出したせいで、レイドボス狩りの予定が台無しになったんですから≫

≪アッシュだって社会人ですし、そのくらい理解してるでしょう≫

 

 

ヘドバンマニア

≪とはいえ、理解できるのと納得するのは別だからなあ≫

≪あんま今のアッシュを下手に刺激したくない≫

 

 ヘドバンの言葉に、スカルはため息を吐いた。

 

 荒っぽいプレイヤーが揃っている【氷獄狼】のイメージにそぐわず、ヘドバンマニアは公人と私人のバランスが取れた政治感覚の持ち主だ。

 いや、そうでなければわざわざ荒くれたゲーマーのリーダーを引き受け、大手クランにまで育て上げることはできなかっただろう。

 

 『七翼のシュバリエ』にやってきた彼らが見たのは『創世(前作)』ではあまり見かけなかった集団……企業クランに占拠された世界だった。とにかく大手クラン界隈はどこを見渡しても企業クランばかり。

 企業クランは大枚をはたいて優秀なプレイヤーを勧誘して回り、腕がよくとも素行の悪いプレイヤーは爪はじきにされていた。

 

 それを見かねたヘドバンマニアが、素行が悪いプレイヤーの受け入れ先として【氷獄狼】を設立したのだ。嫌われ者にも居場所が必要だと、彼はそう思ったのである。

 皮肉なことに、それは企業クランにとっても好都合だった。お行儀の悪い連中はひとまとめにしておいた方が、いろいろと扱いに困らずに済む。

 

 こうして数少ない非営利大手クラン【氷獄狼】は成立するに至った。だがクランを運営するうえで、徐々にヘドバンとスカルの心労は増えていった。

 荒くれて言うことを聞かないプレイヤーたちの統制に、企業クランとの軋轢、所属メンバーの素行の悪さに苦言を呈する他クランとの調整。面倒ごとの種はいくらでもある。クランの経営だってそうだ。

 

血髑髏スカル

≪アッシュもなあ……10万天井するくらいなら、クランに金入れてくれりゃよかったんだ≫

≪それで素材買ってストライカーフレーム量産してレイドボス狩れば、もっといい武器生産できるし、ガチャ武器だってより質がいいのが手に入るのに≫

 

 

ヘドバンマニア

≪まあ、そりゃそうなんだけどね。さすがに個人が何にお金を使うのかまで、こっちが口を出せないでしょ≫

≪うちは非営利クランなんだから≫

 

 

血髑髏スカル

≪非営利で収入のめどが立たないからこそ、幹部が金入れなきゃ話にならんじゃないですか?≫

 

 

ヘドバンマニア

≪確かにそういう見方もあるけども……≫

 

 ヘドバンは疲れているな、とスカルは感じた。無理もないことだが。時期的にも今は新卒社員が入ってくる時期だし、社会人としても忙しいはずだ。

 しかしアッシュにガツンと言えるのは、自分以外ではヘドバンしかいない。

 アッシュのことを友達だと思うからこそ、スカルとしてはここでしっかり釘を刺してやってほしかった。

 

血髑髏スカル

≪一昨日だって天井してSSRショットガン手に入れてましたよ。シャインに復讐するための武器がいるんだとか言って≫

 

 

ヘドバンマニア

≪ええ……? また天井課金したの? 夏のボーナスにしてはちょい早いなあ≫

 

 

血髑髏スカル

≪あいつ絶対どうかしてます。もう止められるのはヘドバンさんだけですよ≫

 

 

ヘドバンマニア

≪まいったなあ。……そんなにロリめの子が好きだったんだねえ、アッシュは≫

 

 

血髑髏スカル

≪冗談で流さないでくださいよ(苦笑)≫

 

 前作でのアッシュのアバターがどんなんだったか知ってるくせに。

 スカルは深いため息を吐いた。

 

血髑髏スカル

≪俺だって最後シャインに15回くらいリスキルされましたけどね。それにしたってそこまで根深く恨んだりとかないですよ。アッシュはおかしいです≫

 

 

ヘドバンマニア

≪まあ、わかった。一言言っておくよ。……そういえばアッシュが【トリニティ】と戦うのっていつだっけ?≫

 

 

血髑髏スカル

≪今ですよ。今この時間にペンギン率いて戦ってるはずです≫

 

 

ヘドバンマニア

≪今? 今日平日なんだけど……代休取った? それともテレワーク?≫

 

 

血髑髏スカル

≪打ち合わせに出かけて、その足でネット喫茶行って戦ってくるって言ってました≫

 

 

ヘドバンマニア

≪えっ、マジで……? なんか、すごいねぇ≫

 

 

血髑髏スカル

≪だからあいつおかしくなってるって言ってるじゃないですかー!≫

≪あ、昼休みもう終わっちゃう≫

≪今晩あたり説教してくださいよ、マジで!≫

 

 まだまだ言い足りないことはあったが、仕事の時間だ。

 同僚たちが席に戻ってくる。

 スカルはスマホを胸ポケットにしまい、昼からの仕事へと頭を切り替えるのだった。

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