七慾のシュバリエ ~ネカマプレイしてタカりまくったら自宅に凸られてヤベえことになった~   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第67話 はじめてのランドセル

 1号氏に今すぐストライカーフレームで来てほしいと言われたスノウは、嬉しそうに笑いながらも問い返す。

 

 

「ここで持ち場を離れてもいいの? 大分押し込まれてるけど!」

 

 

 【騎士猿(ナイトオブエイプ)】の攻略拠点は現在【氷獄狼(フェンリル)】に絶賛攻め込まれ中で、もうすぐ敵に集団でタッチダウンされそうな瀬戸際の状態。彼らを撃墜できそうなスノウもアッシュに足止めされて身動きが取れないでいる。

 一言で言って大ピンチであった。

 

 

「いいです、構いませんぞッ! こちらも正直状況はいいとは言えませんが、そちらと合わせて一気になんとかできるのです! そう、吾輩の“天狐盛(てんこも)り”ならね!!」

 

「マジかー、“天狐盛り”すごいじゃない」

 

「ンンンwww 吾輩のマシーンは控えめに言って完璧ですぞwwww」

 

『この人、自慢するときだけすごいニチャアって笑顔になるな……』

 

 

 人の心を抉る一言を平気で言い放つディミちゃんである。

 もっとも1号氏はそれでめげるようなメンタルはしていないのだが。

 

 

「まあそういうわけですので、早く来てください!」

 

「オッケー、すぐ行く!」

 

 

 スノウが1号氏にそう返した瞬間、ブラックハウルが例の頭部を変形させる大技を使い、大顎でシャインの腕に噛みつこうと飛びかかった。

 

 チッと舌打ちしながらバーニアを噴かしてバックステップしつつ、“ミーディアム”を抜き放ってその口の中に牽制射撃するスノウ。

 しかしアッシュのその動きもまたフェイク、素早く顎を格納しながらシャインに向けて爪を振るう。その爪を高振動ブレードで受け止め、激しい火花が飛び散った。

 

 

「俺と戦いながら誰かとお話かい? 随分と余裕だなッ!」

 

 

 ギリギリの接近戦を繰り広げる中で通信するスノウに、アッシュが凄みのある笑みを浮かべる。

 

 

「俺と戦ってるときは俺だけを見ろや、シャインッ!!」

 

「お兄ちゃんったら、嫉妬してるの? クスクス、みっともな~い♥」

 

「ぬかせッ!!」

 

 

 引きつった笑みを浮かべながら煽るスノウに、アッシュが牙を剥きながら殺意の籠った一撃を叩き込む。ブラックハウルの右腕の爪を受け止めているシャインに繰り出される、左手の爪の青白い一閃!

 

 

「まるで天然の二刀流だな……!」

 

 

 その腹にヤクザキックを叩き込み、無理やりブラックハウルの体を押し返しながらスノウがぼやいた。

 

 

『騎士様、早く後退しませんと!』

 

「わかってる。でも今のこいつに背中を向けたくないな……」

 

 

 ディミと会話するスノウに、アッシュがちろりと唇を舌で舐める。

 

 

「へっへっへ……どこにも行かせねえぞシャイン。ここでずっと俺と遊んでようぜェ」

 

『なんか束縛系の重い女みたいなこと言い出したぞ』

 

「はー!? 別にそんなんじゃねえし!?」

 

 

 ディミの感想に何故か動揺するアッシュ。そんなやりとりに、スノウが真顔で突っ込む。

 

 

「いやいやいや……何キモいこと言ってんの、アッシュは男だよ」

 

「キモくもねえし!! ざっけんなよお前!!」

 

「えっ、何でキレたの。煽ってないよね今……?」

 

 

 困惑するスノウの頭の上で、ディミが空中で腹を抱えて笑い転げた。

 リアルのお互いの姿を見せてやりてえよ、まったくよぉ!

 

 こんなやりとりをお互いに必死で切り結びながらやっているのだから、極まったチンパン同士の戦いというのは度し難いものがある。

 

 両手の爪を振り回して連撃を叩き込むブラックハウルの猛攻はすさまじく、投げ技を積極的に使えない今のシャインでは接近戦は分が明らかに悪い。

 ワイヤーを使った投げ技を使うと関節部がイカれる可能性があり、これからレイドボスに挑もうとする局面で使うわけにはいかなかった。

 

 スノウは顔に焦燥を浮かべながら、つつっと額から汗を垂らす。

 

 

「それにしてもどうする、このままじゃどこにも行けないぞ……!」

 

「ハッハア、焦ってるなシャイン! その嫌そうな顔、最高にクるぜ!!」

 

「ちぇっ、有利な状況に乗って随分とイキってくれるじゃない! 自分で描いた絵図でもないくせに!」

 

「確かにな。今の状況はスカルが作った展開だ。なら画ェ描いたスカルの……ひいては【氷獄狼(俺たち)】の勝利ってわけだな、シャインよぉ!!」

 

「まだ勝ってもないだろッ!!」

 

「勝つねッ! 今ッ!!」

 

 

 叫ぶスノウに獰猛な笑みを浮かべながら、ブラックハウルが爪を振りかざして飛びかかる。致命傷を与える一撃必殺の攻撃!

 その瞬間のことだった。

 

 

「アッシュ! 避けろッッ!!」

 

「!?」

 

 

 スカルの叫びを受けて、とっさにその場から飛び下がるブラックハウル。

 直前まで彼がいた空間を、ビームの蒼い軌跡が抜けていった。

 

 完全にアッシュが把握できていない、あらぬ方向からの狙撃を行ったのはビームライフルを手にしたスナイパー機だった。

 全体を俯瞰して見ているスカルが警告しなければ、シャインの自爆でHPを削られていた今のブラックハウルでは撃墜されていたかもしれない。

 

 スナイパーはビームライフルを構えながらスノウへと呼びかける。

 

 

「さあ、行ってくれスノウさん! ここは俺が食い止める!」

 

「……! ありがと、任せたよ!」

 

「クソッ、待てシャインッ!!」

 

 

 シャインを追いかけようとしたブラックハウルの目の前を、さらなるビーム射撃が通り過ぎる。

 アッシュは誰とも知れない突然の助っ人に、ギリギリと歯を食いしばった。

 

 

「三下がァ!! 俺とシャインの戦いを邪魔するんじゃねえッ!!」

 

「おいおい、確かにスノウさんやアンタに比べりゃ俺はモブもいいとこかもしれないけどよ。まあ実力差があるのは仕方ないわな」

 

 

 スナイパーはビームライフルを肩に担ぎ直して、ニヤリと笑う。

 

 

「だが、赤ずきんを悪いオオカミから助けるのは名もなき狩人の仕事だぜ? ちょっくら足止めさせてくれや」

 

「速攻でブッ殺してやるよォッ!!」

 

 

 アッシュの気迫に満ちた叫びが、ビリビリとスナイパーの肌を総毛立たせる。

 肌が粟立つ感覚に、こんな殺気を叩き付けられて楽しそうに笑えているスノウはやっぱりとんでもねえなとスナイパーは苦笑した。

 だが、それでも子蜘蛛の群れに全身を八つ裂きにされる恐怖には及ばない。

 

 

「まったく、ここまで攻め込まれてて不幸中の幸いだったぜ。せめてひとつくらいは勝利に貢献しなきゃ、みんなに面目が立たねえからよ。赤ずきんをオオカミから逃がせりゃ大金星だろうぜッ!!」

 

 

 子蜘蛛に八つ裂きにされて拠点にリスポーン(死に戻り)したスナイパーは、復活した直後に襲い掛かった脅威に笑みを浮かべて立ち向かう。

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

 ストライカーフレームの格納庫に移動したスノウは、そこで初めて“天狐盛り”を直で視認した。

 

 

「はえ~でっかい……」

 

 

 思わずそんな間の抜けた呟きをしてしまうほど、巨大なサイズであった。

 シャインの全長が10メートルに対して、20メートル近くもある。シュバリエがアバターの纏う騎士甲冑だとしたら、これは甲冑が乗り込む攻城兵器。堅牢な増加装甲にゴテゴテと強力な兵器を取り付けたその威容は、まさしく“着る要塞”だ。

 

 そしてその背には、データにはなかった巨大なランドセルを背負っていた。ランドセルの下部からは、2本の円筒が伸びている。まるで2基のスペースシャトルをランドセル型にして背中に括り付けたかのような、異様なフォルム。

 

 

『……なんでしょう、アレ? スペックを説明されたときにはなかったですよね』

 

「ンンンwww よくぞ聞いてくれましたwww あれこそが“天狐盛り”を短時間で我々の元に送り届ける秘密兵器! “バスターランドセル”ですぞ!!」

 

『すごく嫌な予感がしてきましたが、何ですかそれ……!?』

 

「一言で言いますと、ロケットブースターです! その速度はマッハに到達し、超音速でストライカーフレームを最前線にデリバリーしてくれますぞ! さらにさらに、飛行時にはランドセルの中から小型ミサイルをバラまいて周囲の敵をまとめて粉砕! 頭部の超高性能な狐耳センサーによって広範囲に展開した小さな敵機も逃さずロックして、確実に粉砕してくれるのですッッッ!!!」

 

 

 つまりマッハ1で飛行しながら小型ミサイルを雨あられとばら撒き、進路上に存在する敵は一切悉くを破壊するすごいロケットブースターということであった。

 

 わあーすごーいとディミは白目を剥きながら呟く。

 1号氏はそんな称賛に胸を張って大威張りである。

 

 

「どうです、これなら即座に我々の元にたどり着きますぞ! しかも襲い来る子蜘蛛や【氷獄狼】もまとめて始末できてしまうのですッ!!」

 

『私、びっくりしました! マッハ出ちゃいますか!』

 

「出ちゃいますなぁ!!」

 

『で、狭い峡谷の中をマッハで飛べと?』

 

「…………あっ」

 

『しかも飛びながらマルチロックして雑魚も倒せと?』

 

「………………」

 

 

 明らかに人類には早すぎる機体であった。

 もし仮に【騎士猿】が重力制御技術を持っていたとしても、こんなストライカーフレームを扱いこなせる人材はいないだろう。どう考えても峡谷の壁面に衝突して即死である。相当な命知らずの大馬鹿野郎でなくては、チャレンジする気にもならないはずだ。

 

 

「面白いッ!!」

 

 

 だがここに大馬鹿野郎がいたのである。

 スノウは瞳をキラキラと輝かせながら、ランドセルを見上げた。

 

 

「いいねッ! やりたいことだけ詰め込んだその設計思想、大好きだッ!!」

 

『騎士様、正気ですか!? いや、正気じゃありませんでしたね失礼しました!!』

 

 

 まあ今更のことであった。

 

 

『でも騎士様、本当にいいんですか? これ明らかに第二次世界大戦期の英国面がごとき失敗兵器の様相ですよ! 具体的にはパンジャンドラム……いえ、PIATですねこれ』

 

 

 PIATとはその当時ブイブイ幅を利かせていた新兵器・戦車を破壊するためにイギリス軍が作り出した対戦車擲弾投射器である。なんと動力にバネを採用しており、発射した反動で次弾以降を射出できる、それはそれはエコなうえに連発可能なすごい兵器なのだ。

 そして1発目の装填は人力なうえに、装填ミスると自爆する失敗兵器である。

 

 肝心な部分を人力に頼るうえに凄まじく扱いが難しい点がそっくりであった。

 

 

「いいじゃん、それくらいのじゃじゃ馬の方が楽しいよ」

 

「さ、さすがはシャイン氏ですな! 今吾輩やらかしたと思って血の気が引いてましたが!! ……えっ、マジでできるんですかマッハ曲芸飛行」

 

『死にますよ。マッハで飛んだことないでしょ……!?』

 

「いけるいける。いやー、前作以来だなマッハで飛ぶの! 2年ぶりだから勘が鈍ってなきゃいいけど!」

 

 

 完全にイカれてやがる。ディミは白目を剥いて呟いた。

 

 

『あ、あのー……私、ちょっとお腹が痛くてぇ……』

 

「逃がさないよ♥」

 

 

 そそくさと離脱しようとしたディミを、むんずとスノウの細い指がつかむ。

 

 

「今更どこに逃げるって言うのさ。自爆にまで付き合っておいて」

 

『いやー!! 戦術的に納得できる自爆とかならまだしも、こんなバカみたいな自殺行為に付き合って死ぬのはいやーーーっ!!』

 

「ボクたちは“相棒(デミ)”だって言っただろ! 生きるも死ぬも一緒だぞ!!」

 

『その決め台詞、もっと感動的な場面で使いましょう!?』

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