カオスなメガテン世界で頑張る土師さん 作:名無しの土師
今回は別視点です
異界探査チームからの報告を受け、ガイア連合内部で我々は毎日様々な議題について話し合いが行われていた…
「それでは、今回の件はどうしますか?」
「そうですね……」
メンバーの1人の言葉に私は腕を組みながら考える……次の議題海城の異界攻略については、ほぼ確実に『夜魔』にカテゴライズされている悪魔が中心の異界であるため慎重に検討している
(このまま他の転生者に知られたら一大事だわ……下手するとまたあの魔人になった、例の馬鹿の二の舞になりかねない)
私が思案していると、他メンバーがそれぞれ発言した
「現地霊組織に頼むことは無理なのか?」
「異界探索チームリーダー曰く、あそこの異界は推定レベルは軽く30を超える高レベル異界だぞ……」
「マジかよ……低レベル異界だったら俺が直接行って、可愛い女悪魔ちゃんを……ゲヘへ」
「お前って奴は……まぁ気持ちは分かるが……」
「いや、それよりも問題なのは御立派な悪魔がいた場合だろ?
確かあの悪魔レベル60オーバーだと聞いたぞ」
「うげっ! それはヤバいな……」
「最悪だな……もう帰って良い?」
「駄目です」
「あーもう! 面倒くせぇ!」
「ちくわ大明神」
「ちょっと皆落ち着いて!」
「誰だ今の」
メンバーの暴走気味な雰囲気に私は大きくため息をつく
(本当に大丈夫かしら……)
私の不安を余所に会議は続いていった ──────
「それで、結局どうするんだ?」
「やっぱり、現地の霊組織に協力要請するのは無理ですね……下手したらマリンカリンで背後から襲われてしまいますし」
「でもさっきの話を聞く限りじゃ、ショタおじ案件じゃないか?」
「さっき連絡があったんだけど、占星術の結果今回の件では魔王クラスが出現する可能性は無いみたいだぞ?」
会議室に集まったメンバーが思い思いの意見を口に出す
そんな中、私も考えをまとめつつ話に加わることにした…しかし、やはり問題は魅了耐性持ちと、女悪魔に惑わされない転生者が少ないことが問題ね……
特に後者は致命的すぎる欠点だから何とかしたいところだけど……
そう私が悩んでいると、メンバーの1人が何かを思い出したかのように口を開いた
「あっそうだ、前にショタおじが言っていたあの人ならもしかすると……」
「えっ? 何々? もしかして心当たりがあるの?」
「おい! 早く教えてくれよ!」
「ちょ、待ってください! 今思い出しますから!」
メンバーの期待を込めた視線を受けながら彼は必死になって記憶を掘り起こす……そして、暫くして漸く絞り出した答えは意外なものだった
「えっと、埴輪製造を一手に引き受けている技術系転生者の埴師『土師』さんなら或いは……」
「埴輪!? あの式神の下位互換を作っているあの?」
「技術系のオレらに無茶振りだろw」
「あれ、戦闘能力は弱々だけど荷物搬入と警戒に便利な仲魔枠だよね?」
「あの人の作る埴輪は凄いの? だって式神と比べて見た目が基本的にただの埴輪だし、代わり映えしないじゃん」
「だよな…それに最近式神製造チームの作る式神は、本物の人間と見間違えるほど精巧に出来ていて、内臓も搭載しているとかなんとか……噂ですけど」
「何それkwsk」
「ちょっと皆……」
メンバー達が式神談義を始めてしまったので、私は話を戻すことにする そもそも何故、埴輪製造一筋で有名な土師さんの名前がここで出てきたのかしら?
そんな疑問を抱きながらも、私は彼に質問を投げかけた……
どうやら彼の話によると、土師さんは埴輪製作において有名な人物ではあるものの、その真価を発揮するのは自身のレベルに強く依存するらしい
その為、彼が扱う新型埴輪の多くは彼自身のレベルアップによって造られたとか
(要はレベルが高いほど、強力な埴輪を生み出すことができるということね)
(そして、普段から異界探索をしてレベル上げにも専念していると…)
確かに、彼の生産能力は非常に高く、レベルが低い状態で作成した埴輪であっても、その性能は決して低い物ではなかった……
(戦闘能力自体は低いが、寧ろ下手な式神よりも異界探索に便利なくらいである)
ただ、彼が持つスキルとステータスに問題があり、それはスキルの殆どが補助系なのに、力・体・速型なステータスであるということである……つまり、ステータスとスキル構成が合っていないということだ
そのため、今まで彼は自身のレベルを上げることにあまり積極的ではなく、主にレベルの低い現地霊能力者と異界探索する転生者の戦力強化やサポートをしてきたのだという
しかし最近の彼はショタおじとの能力強化の為の厳しい修行を行っており、レベルアップの為に異界探索を希望しているとの事だとか……
「成程ね……」
私はメンバーの報告を聞き終えると、他のメンバー達を見渡した
「そういう事なら、早速彼に依頼しましょう…勿論彼をサポートするために何人か見繕うように支部に通達して」
「そうですね」
「了解」
「おっしゃ! これでめんどくさい会議は終了だな!」
「いや、まだ仕事が残っているぞ」
「マジかよ……また書類作成とか嫌なんだが」
「仕方ないですよ……これも我々の役目ですし」
「えっと次の案件は……新興宗教施設『猿の手』の家宅捜査によって保護した生け贄用人間達について……」
次の議題である案件を聞いて、皆は顔を歪めた…
「どうすんだよこれ……」
「一応アナライズで調べた結果、全員に魅了が付与されている報告があったぞ」
「うわっ! 本当だ! しかもご丁寧に逃亡防止用の自害用術式が付与されいていたのかよ…」
「これだから現地霊的組織よりも厄介なんだよ、新興カルトは!」
メンバー達は次々と愚痴を言い始める……私も思わずため息をついてしまう
私達の手元の資料には10名程の少年少女……全員が小学生~中校生といった所だろうか? 彼等は皆、首輪や手錠などの拘束具を嵌められており、中には腕を欠損している子もいた
私は資料に添付されていた写真に写っている子供達の姿を見ながら、胸の奥から湧き上がる嫌悪感を抑えていた……
(こんな幼い子供を洗脳して強制的に信者と生け贄に仕立て上げるなんて……)
私は改めて、今回の案件の酷さを再認識する そして、私は資料に書かれている内容を確認する……
(それにしても、この教団は何でこんな事を? 本来ここまで強い霊能力者は、私達転生者と上位のダークサマナーに限られている筈……)
「あのー、ちょっと良いですか?」
「ん? どうしたの?」
「このの案件って、結局解決したのですかね?」
「ああ、そっか……貴方は知らなかったんだっけ?」
「ええ……どうも最近、忙しくて最近の情報に疎くて」
「あーまぁ良いんじゃない? どうせ直ぐに分かるだろうし……」
「どういうことでしょうか?」
「ふっ……俺の勘が正しければ、この事件はこの場で終わりじゃないと告げている!」
「いや、お前の勘とか信用できないから……」
「でも確かに……何か違和感を感じるんですよね……」
「ねぇ、帰って良い?」
「駄目だって!」
「ええ……そうね……」
「おいおい! 何だよ2人とも! 折角人が格好良く決めているっていうのによぉ!!」
「はいはい、すごいすごい」
「いいから、早く説明してくれよ」
「ちぇ……分かったよ」
メンバーの1人が口を尖らせながら、渋々答える
「実はこの『猿の手』なんだけど、過去に何度か警察が家宅捜索を行っているんだよ」
「そうなんですか?」
「えぇ……現地霊的組織とは違い、最近出てきたばかりの新興カルト団体ですからね……」
「大方生け贄用の為に人身売買違法取引が発覚したとかそんな感じじゃねえのか?」
「まぁその辺の事情は自称最強国家霊的組織の根願寺でも詳しく知らなかったぜ」
「根願寺ぇ……」
メンバーの1人が呆れ顔を浮かべるが、他のメンバーは特に気にしていないようだった……
いつもの事なのだろう…そんなことを考えながらも、私は被害者の資料に疑問を抱く
今回、資料を見る限り、この宗教団体の被害者は皆子供ばかりである、そんな子供達を生け贄にして、一体何をするつもりなのかしら?
私は疑問を抱きながらも、メンバーの説明を聞くことにした
「まず、こいつらの教団の名前の『猿の手』……知っている人はいるよな? これはとあるイギリスの作家が書いた短編ホラー小説が由来になっているらしい」
「へー、そうなんだ」
「確かその小説では、3つの願いを歪めて叶えてくれるとか何とかっていうストーリーだったよね?
それをモデルにした宗教なのかな?」
「あー……実は何故かこの世界、猿の手が実在しちゃっているんだよねぇ……」
「え!?」
「マジかよ……」
私達は驚きの声を上げる まさか異世界に、あの有名なホラー作品のあの『猿の手』が存在するとは思わなかったのだ
私はその事実に衝撃を受けながらも、メンバーの話に集中することにした
彼は続けてこう言った……そもそも、猿の手という存在は、都市伝説のようなものであり、その存在が確認できたのは、日本のオカルトネット板だけであるという
その為、猿の手の逸話自体は存在するものの、実際に猿の手が存在しているかどうかは定かではなく、あくまでネット上の都市伝説的な存在として扱われているのだとか……
しかし、この教団は実際に存在している『猿の手』を所持しているといわれている……
この世界のオカルトネット掲示板に、この教団の教祖がアップした動画が存在し、そこには信者と思われる集団が、猿の手に向かって祈りを捧げる姿を撮影されていたという……
更に、この教団は、猿の手の力で新なる神を召喚し、そこで生け贄を捧げることで旧き世界を滅ぼし、教祖と選ばれし人類で新たな世界を作り上げることができると説いているのだという
「いやいやいや……マジで意味わかんねぇぞ」
「流石に嘘だろ?」
「いやいや、この世界ならあり得るかもよ? ほら、メシアとかメシアとかメシアとか……」
「メシアばっかじゃんw」
「いやでも、メシアとは違くね?」
「だよなぁ……」
「でも、もし仮にそうだとしたら、本当にヤバかったんじゃないか?」
「それに、この教団はどうやって猿の手を手に入れたんでしょうか? 少なくとも霊的能力がクソザコな日本では入手困難な筈だけど……」
「うーん……まぁそこについては分からないけど、とにかく、今分かっているのはこの宗教団体の奴らが猿の手を使って何かをしようとしていたんだよな」
「そうだよな……件の『猿の手』は、ショタおじによって、消滅させたし」
「ああ……」
「最初は掲示板の禁則事項に則ったペナルティとしての家宅捜査だったんだけど、ここまで話が大きくなるとは……」
「全くだよ……しかも、生け贄用人間達を保護するのにも一苦労だし……」
メンバーの皆が議論を交わしていた…捕らえた新興カルト団体の教祖について、他構成員について、保護された少年少女達について
思い思いに話し合っている時に、1人のメンバーが質問を発言した…
「あの……ちょっと良いですか?」
「どうしたの?」
「さっきの話に戻るのですが、この新興カルト団体『猿の手』は、誰が解決したのですか?」
「あーそれは……あれ? 誰だったっけ?」
「えーっと……確か高レベル転生者が解決していたような……」
「いや、違うな……俺は記憶が正しければ、あの件はショタおじが対応した筈だ」
「そうだっけ?」
メンバーは首を傾げながら悩む……私はそんな彼等を見てため息をつくと、あることを思い出す……
情報統制がされているこの状況……例の邪神案件に関わっている可能性は極めて高い……
「あー! 面倒くせぇ! ショタおじを召喚して、サボりたい!! 嫁式神といちゃいちゃしてぇ!!」
「お前なぁ……」
「はぁ……ショタおじを呼ぶにしても、この案件は後回しだな……次の案件を片付けよう」
「えぇー! もうちょっと待ってくれよぉー!」
「駄目だ……これは上司命令だ」
「ちぇ……」
「Zzz…」
「寝るなよ……」
メンバー達は渋々了承する……そして寝ている奴、後でお仕置きね…
私はそんな彼等を横目で見ながら再び資料へと視線を向け、会議を続けるのであった…
尚、彼女達は毎日のように会議をしている模様…
ショタおじと同じ様にブラック環境だとか…