「藤丸、立香だって・・・?」
「は、はい」
「そいつは俺の親友の名前だよ。あいつ一年もどこに行ったのかと思ってたら、まさかの南極とはな!」
マシュが日本のことに詳しい理由。
それは彼女が慕ってしたのが、俺の親友である藤丸立香であったからだった。
彼女の話を聞く限りでは元気そうではあるようだった。
「ただなあ、あいつ一人で抱え込んでたりしないか?あいつお人好しだから何でも引き受ける性格だし、結構強がれるから心配なんだよな」
「そう、ですよね・・・、先輩は意図せずにカルデアにやって来ました。戻れたらもう一度聞いてみないと・・・」
マシュとの話は俺に目標を作った。
それは何が何でも二千年後まで生き延びて、立香のやつに会うという物だ。
俺は元の世界に帰りたいし、そのためには二千年後に立香達が乗ってきたカルデアの乗り物に乗ることが一番安全だろうから、今の俺に出来るのは二千年生きる方法を見つけることだ。
とはいえ、今はトネリコに手紙を届けるのが仕事だ。
俺はトネリコに手紙を渡し、スタさんに乗ると彼女達に別れを告げた。
次に俺がトネリコに会ったのはウーサーの戴冠式の日だった。
「よう、トネリコ!マシュ!久しぶりだな」
「シン君、こんにちは。久しぶりですね」
「はい、お久しぶりです、シンさん」
その日、トネリコとその仲間は全員がロンディニウムに集まっていた。
「そろそろ戴冠式の時間だ。席は用意してあるから、着いてきてくれ」
「すっかりこの街にも慣れましたね」
「まあ、一年も暮らしていればな。おっとここの席だ」
俺はウーサーの席の近くに座り、しばらくすると戴冠式が始まった。
式は厳かな雰囲気の中進み、ついにウーサーが王になる瞬間が来た。
ウーサーに王冠が乗せられる。
それと同時に会場は大歓声に包まれる。
誰もが平和な時代の到来を祝っていた。
先ほどまでの厳かな雰囲気はどこに行ったのか、大騒ぎの中宴会が始まった。
「うぐっ!?」
そんな時、ウーサーが倒れた。
近くにはウーサーが食べたであろう食べかけの料理。
「ウーサー君!?」
「毒だ!毒が盛られてるぞ!」
ウーサーが倒れた瞬間、会場に大勢の妖精が突っ込んできた。
「人間の王なんて認められるわけないだろ!全員殺してしまえ!」
それからは地獄だった。
人間も妖精も殺しあい、歓声は悲鳴に変わった。
「うわあああ!やめてくれえええ!」
「痛い、痛いよぉ!」
「そんな・・・、どうして・・・」
そんな惨状にトネリコは崩れ落ちてしまっていた。
俺とマシュちゃんはそんな状態のトネリコと毒で弱っているウーサーを部屋の端に連れていった。
「マシュちゃんはトネリコとウーサーの側にいてやってくれ!俺は他の連中の様子を見てくる!」
トトロットとエクター達は騒ぎが起きてすぐに入ってきた妖精達を外に叩き出していたので外で戦っていた。
「お前ら、大丈夫か!?」
「大丈夫じゃない!モースまで出てきやがった!」
「嘘だろ・・・!?」
街が燃えている。
おそらく反ロンディニウム派の妖精達の仕業だろう。
怒号や悲鳴が飛び交っている。
良く見ると、妖精や人間に混ざってモースがいた。
モースが襲うのは基本的に妖精だけだが、追いかけられた妖精によってさらなる混乱が起きている。
俺は近くにあった剣を取ると、モースを斬る。
「弱いやつならともかく、大型なんかはどうしようもねえな・・・」
「おい!こっちだ!爆破されて何人も生き埋めにされた!」
「誰か助けて!友達が中に閉じ込められてるんだ!」
モースに妖精による襲撃、それに伴う火事、ウーサーを狙った暗殺。
一瞬で俺が一年過ごした街は地獄になった。
「クソ、なにかないのか?この状況をなんとかする方法は?なにもしないなんて、出来ねえよ・・・」
仲のいいやつもいる。
世話になった人もいる。
なにより、俺には平和を望むだけの人々が死んでいく様を例え偽善なんだとしても許せなかった。
その時、空から光が落ちた。
「なんだ・・・?」
「そ、それは!」
ショックから多少は回復したのか、トネリコがウーサーとマシュと共に出てくる。
「選定の、槍・・・」
それは光輝くなにかだった。
「何がなんだかわからないが、使えって言うなら使ってやる!」
「っ!待ってシン君!それは使っちゃ・・・」
トネリコがなにかを叫んでいる。
槍はよく手に馴染んだ。
そのあとのことは覚えていない。
一つはっきりしているのは、次に俺が正気を取り戻したのが数時間がたったあとの頃であり、
俺が右腕を失い、心臓もつぶれているということだった。
「シンさん!」
「シン君!これは、まずいです・・・!私が魔術で何とかします!マシュは回りの警戒を!」
「は、はい!」
遠くで、友人達の声が聞こえる。
だんだん体が冷たくなっていく。
意識も次第に薄れていき・・・、
俺は死んだ。
選定の槍が反応したのは主人公の血筋が理由です。