精霊幻想記~もう1人の転生者~   作:伊達 翼

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第十七話『狩猟とその後』

 村長宅から出たシンを追い、リオとネクサスは村の南にある山林の麓までやってきていた。その間にネクサスが同い年というのもあって積極的に話し掛け、リオもそれに便乗して話題を振ったことでシンの機嫌も少しは良くなっていて、こうして話もしてくれている。

 

「ほら、着いたぜ。この山林が俺達猟師の仕事場だ。基本的に午前から昼過ぎくらいまでは山林に籠って狩りをして、午後からは時間が空くから農作業を手伝うことが多い。詳しいことは猟師頭の……と、噂をすればだな。ドラの親方だ」

 

 こんな風に着いた時にも2人に簡単な説明をしてくれる辺り、シンも少しは警戒を解いてくれている、と解釈したいが…そこはもう少し親睦を深めてからだろう。

 と、その前にシンの言う通り、そこへ1人の大柄でガッシリとした身体つきの男性が現れる。

 

「おお、シン。早いな。で、そっちの見慣れない坊主2人がリオとネクサスだな?」

 

 年齢は40歳前後くらいだろうか、なかなか貫録のある見た目である。

 

「なんだよ。もうこいつらのことを知ってるのか?」

 

「あぁ、うちの娘が今朝会ったらしくてな。だが…なるほどな。こりゃ確かに、女共が騒ぐのも無理はないな。ま、俺ほどじゃないがな!」

 

 「わはは!」と豪快に笑いながらドラがそんな風に言う。

 

「初めまして。リオと申します。しばらくこの村に住まわせてもらうことになりまして、ユバさんの言いつけで猟師業をお手伝いをさせてもらうことになりました。ネクサス共々、よろしくお願いします」

 

「ネクサスだ。これからしばらく厄介になるんで、よろしくお願いします。シンみたく親方って呼んだ方がいいっすか?」

 

 リオが丁寧な挨拶をしてネクサスが気さくな感じで挨拶する。

 

「おぉ、こちらこそな。あと、呼び方は好きに呼べばいい。ちなみに2人は狩猟の経験は?」

 

「えぇ、あります」

 

「まぁ、俺もあるけど…独学だからな。至らない点があったら言ってくれると助かる」

 

 ドラの質問にリオとネクサスは正直に答える。

 

「ほっほぉ、そいつは重畳だ。実はもう2人ばか猟師がいるんだが、怪我しちまってな。今は動けるのが俺と見習いのシンしかいねぇんだよ」

 

 その答えにドラが嬉しそうに頷いていると…

 

「ユバの婆ちゃんが、こいつらの分だけ余裕があるようなら、村の若手を適当に引っ張ってきて後進を育てておけってよ。まぁ、お手並み拝見といこうぜ」

 

「なんで半人前のお前が偉そうなんだよ」

 

 シンの少しムスッとした態度にドラが呆れたように肩を竦める。

 

「う、うるせぇな! 俺の方がそいつよりも大物を狩ってやるさ!」

 

「おうおう、期待してるぜ。ま、ほどほどにな?」

 

 勇み立つシンにドラは呆れた表情から真面目な表情に変わると…

 

「さて、2人の腕前を見ておきたい。そこの小屋に俺らの狩猟道具と予備が保管してある。準備が出来次第、すぐにでも山に入るとしようか」

 

 そう言って小屋へと向かう。それに続くようにシン、リオ、ネクサスもドラの後を追う。

 

 

 

 小屋で身支度を整え、早速山へと入る4人。

 ただ、その前にドラがリオの口調について苦言を呈すが、ネクサスの弁護もあってリオも努力すると言っていた。さらにリオやネクサスが普段使ってる簡単な手話をドラとシンに伝えてもいたりした。

 そうしてからやっと山に入り、狩りを始める4人。

 

(ふむ、シンがまだまだなのは仕方ないが…リオもネクサスも立ち回りが上手いし、良い連携だ。2人共、経験があると言ってたが、こりゃ想像以上だ。あとは仕留める力があれば、明日からでも2人に任せておけばいいな)

 

 ドラはリオとネクサスの立ち回りを高評価していた。

 まぁ、リオはこちらに来てからの経験が活き、ネクサスも前世の記憶と今の経験が合わさった結果なのだが…。

 ただ、先輩であるはずのシンとしてはあまり面白くない状況である。しかも相手は余所者だ。それに気を良くしろ、というのも酷な話ではあるのだが…。

 

 すると…

 

「いました」

 

 短く呟くとリオが矢を番えて1射する。

 

ヒュン…

 

 風を切る音と共に、その矢は獲物である鳥にまるで吸い込まれるかの如く的中していた。

 ちなみに距離で言えば、20メートル以上は離れていただろうか。

 

「お、おお! レンオウ鳥か。こいつは警戒心が強くて狩るのが難しい鳥なんだが、よく仕留めたな!」

 

 ドラが少し興奮気味に言う。

 

「すみません。こちらのやり取りに気付いたのか、飛び立とうとしてたので独断で矢を射ってしまいました…」

 

「気にするこたぁねぇよ。しかし、凄い腕前だな。矢を番えてからほとんど時間を置かずにとは…大したもんだ!」

 

 リオの謝罪をドラは褒めることで返す。ただ、その様子を見てシンはややふてくされているようだったが…。

 

「ありがとうございます」

 

 リオもドラに礼を言うと、素早く仕留めたレンオウ鳥の元へと向かい、足を掴んでから反対側の手でダガーを抜いて首を落として血抜きを行う。その際の表情は真剣そのもので、犠牲になった獲物に対して短い黙祷も捧げているようだった。

 

「ほう」

 

 その手慣れた作業光景に感心したドラの唸り声がする。

 

「よし。俺らも負けてられねぇぞ、シン、ネクサス」

 

「わかってるよ。負けるもんか!」

 

「まぁ、ほどほどに頑張りますか」

 

 ドラの掛け声にシンとネクサスが答える。しかし、シンの心情を察したドラはやや肩を竦めていたようだが…。

 それから、その場で行うべき処理を済ませると、一同は次の獲物を探しに移動を再開する。

 

 

 

 その後、行く先々でリオとドラが獲物(野鳥や野兎など)を仕留めていく。

 シンもリオに対抗意識を燃やして躍起になるものの、結果が伴わずに自分の手では獲物を仕留められなかった。

 仕留めていないのはネクサスも同じだが、リオとの連携やシンのフォローといった影で色々と働いていたりする。決して仕留める力がないわけではないが、今回は裏方に徹した結果とも言える。

 

 そんなこんなで時間は午後になって少し経った頃。

 

「うっし。少し早いが、今日はこんなとこだろ。3人ともよくやってくれた。いつもより多めに村の連中に肉を回してやれるな」

 

 ドラは上機嫌で本日の狩猟の終了を宣言する。

 

「…俺は仕留めてねぇけどな」

 

「それは俺も同じさ。なに、2人が仕留めてくれたんだから、良しとしようや」

 

 シンの苦言にドラが何か言いそうになる前にネクサスが話し掛けていた。シンと同い年で、同じく仕留めた数は0なのに、どこかあっけらかんとしている。

 

「……お前は、それでいいのかよ?」

 

「別にいいんだよ。人にはそれぞれ役割があるってことさ。追い込みだって立派な仕事だろ? 何も仕留めるだけが狩猟じゃないからな。俺達みたいな裏方がいるからこそ、親方も仕事がしやすいのさ」

 

「……そういうもん、なのか?」

 

「そういうもんだと、俺は思うけどな?」

 

 そう言ってニカッと笑うネクサスに毒気が抜かれたのか、シンは山を下っていった。それをネクサスが追い掛ける。

 

「なんというか…あいつ、本当にシンと同い年か?」

 

「観察眼には自信があるそうですからね。それに同い年だからこそわかることもあるのかと」

 

 ドラがリオにネクサスのことを聞いてみると、リオはそのように返していた。

 

「そういうもんかね?」

 

「まぁ、ネクサスにも色々あったみたいですから…」

 

 リオはそう答えると、シンを追い掛けて下ったネクサスに視線を向ける。

 

「そうか。あぁ、そうそう…それとお前とネクサスの2人なら明日から狩りを任せられそうだ。ネクサスの腕前を見れてねぇが…まぁ、あの動き方からすれば問題ないだろ。俺は後進の面倒を見ないとだからな。出来る範囲で、こっちの分まで狩りを任せたいんだが…」

 

「えぇ、任せてください」

 

「よし。なら任せたぜ? そんじゃ、さっさと小屋に戻って解体作業をするか」

 

「はい」

 

 そんな受け答えをしてからリオとドラもまた山を下るのだった。

 

………

……

 

 その後、獲物の解体を済ませ、食肉の配当をドラとシンに任せてリオとネクサスは一足先に帰宅していた。ちなみに手土産として食肉も貰っている。

 

「ただいま戻りました」

 

「ただいま~、っと…流石に誰もいねぇか…」

 

 玄関先で帰宅の挨拶をしてみたが、返事は返ってこない。気配を探ってみても、今は家に誰もいないことがわかった。

 

「まぁ、今は仕事中だろうし」

 

「それはそうだけどな。とは言え、流石にサッパリしたいしな。裏で湯浴みでもするか?」

 

「そうだな…とは言っても、風呂桶は1個しかないし…」

 

 ネクサスの誘いにリオも頷くが、台所に置いてあった風呂桶を見ながらちょっと困った様子だった。

 

「外に浴室でも作ってみるか?」

 

「浴室か…」

 

 ネクサスの提案にリオも思案顔で考える。

 

「あって困るもんでもないだろ? なんなら村の人にも貸すのもアリだ。まぁ、問題はお湯をどうするかだけど……どうよ?」

 

「悪くはないな。あとでユバさんに聞いてみよう」

 

 そんな会話をしつつ台所に貰った食肉を置いて風呂桶を持ち、家の裏へと向かう。

 

「先に入ってこいよ。俺は待ってるからさ」

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 ネクサスがリオに先を譲ると、リオは精霊術を用いて地面を隆起させて壁を作ると、その中へと風呂桶を持って入っていく。

 

「………………」

 

 リオを待っている間、ネクサスは手持ち無沙汰であり、特に何もせずに空をボーッと見ている。

 すると…

 

「あ、ネクサス」

 

「ん?」

 

 声を掛けられ、ネクサスが声のする方を向くと、そこにはルリとサヨがいた。

 

「お~、ルリとサヨか。どした?」

 

 片手を挙げて適当に挨拶していると、2人が近寄ってきて…

 

「どした、じゃないよ。さっき、ドラさんとシンを道端で見かけてさ。多分、2人も戻ってるだろうけど、薪の場所とか勝手がわからないと思ってさ。そしたら、サヨが手伝った方がいいんじゃないかって、ね?」

 

「なるほどな」

 

 ルリの説明にネクサスが納得する。

 

「それで…これは?」

 

 ルリが土壁を見てネクサスに尋ねてくる。

 

「あぁ、これはリオの精霊術で作った…仕切りだな」

 

「仕切り?」

 

 ネクサスの説明にサヨが首を傾げる。

 

「そ。こん中でリオが湯浴みしてんだよ」

 

「へぇ~…って、これをリオが!?」

 

「リオ様がこの中で!?」

 

(食いつくとこが違うなぁ…)

 

 ルリとサヨの反応を見てネクサスが内心で苦笑している。

 

「ま、俺もリオが出たら入るから、詳しいことが聞きたいならリオに直接聞けばいい。その内、出てくるだろうしな」

 

 そうしてしばらくネクサスは2人と他愛のない会話をしていると、リオが土壁の中から出てきた。

 

「ネクサス。次…あれ? ルリさんにサヨさん?」

 

「おう。じゃあ、リオ。2人の相手は任せた」

 

「え?」

 

「リオに色々と聞きたいんだと。俺はさっきまで喋ってたし、今度はお前の番だよ」

 

 そう言って手をヒラヒラさせて土壁の中へと入っていくネクサスを見送り、リオが困ったようにしながらもルリとサヨの話し相手となる。

 会話の内容は自作した石鹸のことや、精霊術でお湯を作ったこと、精霊術でお湯を作るコツを教えることなどといったものだった。

 

 

 

 そして、時間は流れて夕食時となり、ネクサスが食肉や朝に交換した野菜を使い、その腕を振るっていた。

 朝食を作ったリオと同様にそれなりに好評だったので、戦力して数えられたとか…。

 

 そうしてリオとネクサスは村での生活を送っていくことになる。

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