精霊幻想記~もう1人の転生者~   作:伊達 翼

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第三十三話『ようこそ、精霊の民の里へ』

 リオ達が精霊の民の里の近くへと転移したのを察知し、里から出迎えの者達がやってくる。

 出迎えの者達はエアリアルとスカーレットに乗っており、リオ達を発見すると急降下し、ゆっくりと旋回しながら頭上へと高度を下げていくのだが…

 

「お帰りなさい、お兄ちゃん!!」

 

 着陸が待ちきれないのか、出迎えに混ざっていたラティーファが身体強化を用いていち早く飛び降り、リオへと抱き着いていた。

 それから少ししてエアリアルとスカーレットが着陸し、サラ達も降りてくると…

 

「ラティーファ! 高いところから飛び降りたら危ないでしょ!?」

 

 スカーレット側に乗っていたサラが降りた直後にラティーファの行動を叱り付ける。

 

「大丈夫だよ。ちゃんと肉体を強化してたし」

 

「そういう問題じゃありません!」

 

 ラティーファが言い訳すると、サラが腰に手を当てて説教を始めようとするが…

 

「まぁまぁ、サラも落ち着けよ。お客人の前だし、な?」

 

 そこにネクサスが間に入って、美春達へと視線を向ける。

 

「うっ…ネクサスさんがそう言うなら……ごほん。失礼しました」

 

 ネクサスに言われ、気を取り直して美春達に向き直ると…

 

「ようこそ、精霊の民の里へ。皆様の来訪を歓迎いたします」

 

 サラが代表して美春達に挨拶する。

 

「今挨拶してくれたのが銀狼種の獣人でサラっていうんだ。この中ではリーダー格でもあり、里の上役に連なる家系の出だ。立場上、色々と気苦労が多くてな」

 

「ひ、一言余計ですよ! えっと、サラと申します。初めまして」

 

 ネクサスの紹介にサラが微妙に顔を赤くして美春達に改めて挨拶する。

 

「それと狐獣人のフレイシアス。こいつも里の上役に連なる家系の出だな」

 

「初めまして。『シア』と呼んでいただければ幸いです」

 

 フレイシアスも丁寧にお辞儀しながら美春達に挨拶する。

 

「それからハイエルフのオーフィアさんと、エルダードワーフのアルマさん。お2人もサラさんやフレイシアスさんと同様に里の上役の家系に連なる方です」

 

「よろしくお願いしますね」

 

「よろしくお願いします」

 

 リオがオーフィアとアルマを紹介し、2人も挨拶する。

 

「こ、こちらこそ…その、綾瀬 美春です。よろしくお願いします」

 

 美春もやや緊張した感じで挨拶を返す。

 

「私は千堂 亜紀です。よろしくお願いします」

 

「ほへぇ~…」

 

 美春に続き、亜紀も挨拶する中、雅人は変な声を上げながらサラ達に見惚れていた。

 

「ほら、アンタもちゃんと挨拶しなさい」

 

 雅人に肘打ちをしながら亜紀が呆れたように雅人に言う。

 

「あ、っと…えっと…せ、千堂 雅人です! よろしくお願いします!」

 

 美春とは違った意味で緊張しながらも雅人も挨拶していた。

 

「そして、この子はラティーファ。血の繋がりはありませんが、俺の大切な妹です。年齢的には亜紀ちゃんと同じくらいかな?」

 

 リオは美春達に未だ抱き着いているラティーファを紹介する。

 

「えっと…ラティーファです。狐獣人だけど、お兄ちゃんの妹です。よろしくお願いします」

 

 ラティーファも少し照れながら美春達に挨拶する。

 

「こちらこそよろしくね。ラティーファちゃん」

 

「うん、こちらこそ」

 

 美春の微笑みにラティーファも見惚れながら素の反応を返す。

 

「それじゃあ、今度はサラさん達にこの子を紹介しますね。もうおわかりでしょうが、彼女が俺の契約精霊のアイシアです」

 

「で、俺の頭に乗っかってるのが、俺の契約精霊のファングだ」

 

 リオとネクサスがそれぞれ自らの契約精霊を紹介すると…

 

「よろしく」

 

『………………』

 

 アイシアが簡潔に答え、ファングも頭を下げていた。

 

「お初にお目にかかります。アイシア様、ファング様。我ら精霊の民一同、あなた様方を歓迎いたします」

 

 再びサラが代表して言葉を贈り、畏まった様子でサラ、オーフィア、アルマ、フレイシアスが跪く。その様子に、アイシアとファングは揃って小首を傾げ、美春達も面食らった様子になる。

 

「まぁ、精霊の民にとっちゃ精霊は共に暮らす存在であっても、人型になれる高位の存在に関しちゃ神聖視して崇めている部分もあるからな」

 

 ネクサスがかなり噛み砕いた説明を美春達にする。

 

「別に堅苦しいのはいらない」

 

 と、アイシアが言うが…

 

「精霊の民としては『はい、わかりました』、という訳にもいきませんよね。ですが、アイシアの意思も尊重したいので、善処していただけると幸いです」

 

 リオが若干困ったように呟き、サラ達の心情を汲もうとする。

 

「じゃあ、アイシアさん、って呼べばいいんですか?」

 

 しかし、物怖じしないラティーファがアイシアに尋ねる。

 

「もう、ラティーファは…。人型精霊であるアイシア様にあまり馴れ馴れしく…」

 

 と、サラが苦言を呈す中…

 

「ラティーファの好きに呼べばいい。別に私はアイシアでも構わない」

 

「うぐっ…」

 

 アイシアの言葉にサラが言葉を詰まらせる。

 

「じゃあ…アイシアお姉ちゃん?」

 

「ん、いいよ」

 

「は~い! これからよろしくね、アイシアお姉ちゃん!」

 

 なんとも気軽な感じでラティーファはアイシアの呼び方を決める。

 

「ほ、本当にいいんですか? リオさん…」

 

 サラが流石に畏れ多そうにリオに確認を取る。

 

「大丈夫ですよ、。美春さんなんて『アイちゃん』と呼んでるくらいですから」

 

「え…そ、そうなんですか…?」

 

 リオの説明にサラが美春を見る。その眼は、なんて畏れ多い、と言いたそうであったが…

 

「え、っと…い、いけませんでしたか?」

 

 サラの視線を感じ、美春が若干慌てたようにするが…

 

「別にいいんじゃね? 俺だって、普通に呼び捨てにしてるし」

 

「ね、ネクサスさんまで…」

 

「本人がいいと言ってるから大丈夫ですよ」

 

「そ、そんな~…」

 

 ネクサスとリオの援護にサラがへたり込んでいると…

 

「あ、あの! さっきから皆さん、リオさんとか、ネクサスさんって言ってますけど…それってハルトさんとシノブさんのことですか?」

 

 リオとネクサスの名前が違うことが気になったのか、亜紀がそんな質問をする。

 

「そういえば、その辺の事情を話してなかったね」

 

「ま、面白い話でもないしな?」

 

「とは言え、そろそろ説明は必要だろう」

 

「まぁな」

 

 リオとネクサスがそのように話をしてからリオが事情を話す。

 

「美春さん達には出会った時に軽く言ったと思いますが、ハルトというのは、俺がシュトラール地方で活動するにあたっての偽名です。本当の名前はサラさん達が呼ぶように、『リオ』と言います」

 

「俺も本名は『ネクサス』ってんだ。シノブってのは…まぁ、何となく頭に浮かんだのをそのまま使ってるようなもんさ」

 

 前世のことは触れてないが、事情を知るラティーファ以外がその説明を聞くと、新たな疑問が浮かぶ。

 

「何故、名前を使い分けてるのですか?」

 

 代表してサラがおずおずと尋ねると…

 

「俺の場合は…数年前。シュトラール地方のとある国の王侯貴族のごたごたに巻き込まれまして。スケープゴートとして、無実の罪を着せられて…その上、指名手配までされましたから…」

 

『えっ!?』

 

 リオの事情説明にサラ達や美春達も驚いて声を上げる。

 

「俺は…そうだな。俺も国に買われた奴隷だったんだが、暗部に回されてな。そこで色々とあったんだが…とある任務からの帰還途中に追手に迫られてな。まぁ、自爆したように見せかけ、トンズラしてな。ただ、髪とか瞳が独特だったからな…知ってる奴がいないとも限らないから、こうして偽名を名乗ってるんだよ」

 

『えぇっ!?』

 

 さらにネクサスの事情説明も受け、美春達に衝撃が走る。

 

「まぁ、簡単に信じてはもらえないでしょうが…」

 

「な? 面白くもないだろ?」

 

 リオもネクサスもそんな悲愴な体験をしたとは思えない態度をしていたが、リオは若干バツが悪そうな表情をしていて、ネクサスも肩を竦めるだけだった。

 

「ネクサスさん…」

 

 サラが何とも言えない表情でネクサスを見る中…

 

「酷い話ですね。リオさんの指名手配は今も有効なのですか?」

 

「ネクサス様の方も大丈夫なのですか?」

 

 アルマとフレイシアスがリオとネクサスに尋ねる。

 

「さて、どうでしょう? その国にはまだ戻ってませんからね。それに罪が罪なだけに時効というわけでもなさそうですが…表立っての捜索はなくても、今も記録は残ってるかもしれませんね」

 

「そうさな。当時一緒に訓練してた奴等の顔なんてもう覚えてねぇし…向こうも無能な俺のことなんて記憶から削除してるだろ。ただ、シンシアがな…」

 

 それぞれの見解を述べた後…

 

「まぁ、シュトラール地方では、黒髪が珍しくて目立つのもありますからね。ですが、指名手配が有効だった場合の備え、という点もあります。なので、美春さん達はシュトラール地方に戻る際には、俺達のことをハルトとシノブと呼んでくれると幸いです」

 

「ま、里にいる間は別にどっちでもいいけどな?」

 

 そう締め括っていた。

 

「う~ん…でも、俺の中ではもうハルト兄ちゃんもシノブ兄ちゃんも呼び馴れちまってるし…今更リオ兄ちゃんやネクサス兄ちゃんってのもな……混乱しそうだから、今まで通りでいいよな?」

 

「私も、ハルトさんとシノブさんと呼ばせてもらいます。なんだか、慣れちゃったので…」

 

「じゃあ…私も…」

 

 そう言って美春達は今後もリオをハルト、ネクサスをシノブと呼ぶことにしたらしい。

 

「それにしても…シノブさん、っていうのは珍しい名前ですよね?」

 

 ネクサスの偽名に対し、サラが珍しそうに呟く。

 

「私達の世界では男性にも女性にも使われてた名前なんですが…」

 

「そうなのですか?」

 

 美春の言葉にフレイシアスが反応する。

 

「シュトラール地方では珍しいだろうが、ヤグモ地方の方で聞いた単語を頭に思い浮かべたのかもな?」

 

「ヤグモ地方?」

 

「ま、その話も追い追いな? そろそろ行かないとじゃないか? それなりに喋ってるぞ?」

 

「あ、はい! そうでした。皆さんを里に案内しますね」

 

 ネクサスが適当に誤魔化しつつ、そろそろ里に行った方がいいんじゃないか、と提案する。その提案にサラもハッとして、美春達を里へと案内するのだった。

 

………

……

 

 それから一行は空を飛んで里の庁舎前の広場へと辿り着く。

 空の旅を満喫した雅人は興奮気味にはしゃぎ、亜紀も空にいる間は興味深そうに空の景色を楽しんでいたりするが、雅人ほどはしゃぎはしなかった。そんな2人を見て美春は微笑ましそうにしていた。

 

 すると…

 

「待っていたわよ」

 

 庁舎前にドリュアスが顕現し、皆を出迎える。

 

「ドリュアス様。いらしたんですね?」

 

 そう尋ねながらもサラ達は恭しく頭を下げる。

 

「えぇ。結界の中に強力な精霊の反応を2つも感じたからね。リオとネクサスが契約精霊を連れてきたと思って飛んできたのよ」

 

 そう言ってドリュアスの視線がリオの隣にいるアイシアとネクサスの頭に乗るファングを捉える。

 

「あなた達がそうね? 私はドリュアスよ」

 

「アイシア。よろしく、ドリュアス」

 

「こいつはファングです。ほら、お前も挨拶しな?」

 

『クゥン…』

 

 人型精霊であるアイシアはともかく、動物…キメラっぽい見た目のファングはそのように鳴いて答えていた。

 

「う~ん…どっちも私の知らない精霊ね? それに、なんだか…」

 

 ドリュアスがアイシアとファングを見て何かを感じたらしいが…

 

「まぁいいわ。積もる話は中でしましょう。長老達に会うのよね?」

 

「はい。では、皆さん、こちらへどうぞ」

 

 ドリュアスも庁舎の中へと入り、その後をサラ達が案内する形でリオ達もついていく。

 

 

 

 それから十数分後。

 庁舎の最上階にある会議室にて、アイシアとファング、美春達は長老陣からの歓迎の挨拶を受けていた。

 

「アイシア様、ファング様、我らが里へようこそいらっしゃいました。我ら精霊の民一同、あなた様方を心より歓迎いたします」

 

「ありがとう」

 

『クゥン』

 

 最長老3人の自己紹介を経て、シルドラが代表してアイシアとファングに改めて挨拶がなされた。

 

「異界の子らもよくいらっしゃった。歓迎しよう」

 

「は、はい! その、この度は面倒を見ていただくことになって、なんとお礼を申せばいいか。ありがとうございます」

 

「「あ、ありがとうございます!」」

 

 もちろん、美春達にも声を掛け、美春達もお礼の言葉を返していた。

 

 その後、シルドラはサラ達に美春達の案内を任せ、リオ、アイシア、ネクサス、ファングはそのまま会議室に留まるように言われる。

 ここから先の話の機密性を考えての配慮だろう。

 

 そして、リオとネクサスは語る。

 自らの過去と、前世についての概要を…。

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