精霊幻想記~もう1人の転生者~   作:伊達 翼

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第三十六話『戦い方は人それぞれ』

 アイシアやファング、美春達が精霊の民の里へと訪れ、歓迎の宴を受けた日の翌日の午後。

 

 庁舎前の広場にはリオを始めとしたネクサス、サラ、オーフィア、アルマ、フレイシアスがそれぞれ模擬戦用の得物を持って集まっていた。

 傍には審判役のウズマ、少し離れたところにラティーファ、シンシア、美春、亜紀、雅人に加え、噂を聞きつけたベラやアルスランに、10歳前後の里の子供達も観戦している。

 ちなみにアイシアとファングはドリュアスの元へと行っているので、この場にはいない。

 

「さてはて、久々の模擬戦だが…どういう組み合わせでやるよ?」

 

 ダガー二刀流のネクサスが得物を逆手に持ちながらサラ達に尋ねる。

 

「まずはリオさんと私達4人で手合わせをお願いできますか? その後にネクサスさんとも同じようにやってみたいです」

 

「つまり、連携の確認をリオで試して、俺で反省点も活かすと…俺の方が辛くね?」

 

「そんなこと言ってるから、そういうことになるんだよ。俺は構いませんよ。一対多の戦闘訓練も想定しておきたかったですし」

 

「まぁ、俺も変則的な戦い方だってのは自覚してるしな。わぁったよ」

 

 サラの提案にリオが頷くと、ネクサスも肩を竦めながら一旦その場から離れる。

 

「1対4…って、勝負になるのか? サラ姉ちゃん達ってそんなに強くないとか?」

 

 リオの戦闘を間近で見たことない雅人が首を傾げていると…

 

「バカ、サラ姉ちゃん達も普通に強ぇんだよ。けど、リオの兄貴やネクサスの兄貴の方が強過ぎるんだよ」

 

「そ、そうなのか…」

 

 アルスランがそう言って雅人誤解を正す。

 

「ははは、そう言ってくれるのは嬉しいがな?」

 

 一旦戻ってきたネクサスがアルスランの頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。

 

「やめてくれよ、ネクサスの兄貴!」

 

「まぁ、よく見とけ。リオの戦いっぷりをな?」

 

 そうこうしている内に…

 

「始め!」

 

 ウズマによる開始の合図が下された。

 開始の合図と同時にサラが尋常じゃない速度でリオに迫って攻撃を仕掛ける。

 

「速っ!?」

 

 その速度に雅人もそうだが、美春と亜紀も唖然としていた。

 

「………………」

 

 この後、リオと交代して1対4をやることになるネクサスもその連携練度を真剣に見るべく黙って観察する。

 

 サラがダガーを振るい、果敢に攻め立てていく。そんなサラの背後に隠れて接近していたアルマがメイスで重い一撃を加えようとするが、リオはサラの攻撃を最小限の剣捌きと体捌きによって受け流したり躱したりしており、アルマの一撃もバックステップで余裕をもって回避する。

 そうしてサラとアルマがスピードとパワーのコンビネーションでリオを釘付けにする。その間に二手に分かれていたオーフィアとフレイシアスによる精霊術攻撃も開始される。オーフィアが変幻自在な軌道の光弾を撃つのに対し、フレイシアスは直線的で鋭い光弾を撃ってリオの動きを制限しようとする。

 

「ッ!」

 

 リオは足に魔力を流して足を伝って精霊術を発動させ、土壁を2枚ほど出現させてオーフィアとフレイシアスの光弾を防ぐ。

 だが、防がれるのは想定内だったのか、2枚の土壁の間へとサラとアルマが駆け出し、左右から挟撃を仕掛けようとする。

 しかし、リオは剣を地面に突き刺し、無手で迎撃するフリ(・・)をして2人の動揺を誘う。

 

「「!?」」

 

 サラとアルマもそれには驚き、一瞬だが動きが鈍る。

 その隙を逃がすリオではなく、素早く剣を引き抜くとアルマの迎撃に向かう。アルマもすぐさまメイスを振るうが、リオも横薙ぎの構えを取ると身体を回転させ、遠心力を加味した一撃でアルマのメイスを受け止める。ドワーフの怪力と拮抗した一だが、リオは素早く剣を引いてアルマのバランスを崩し、深く懐に入り込むと、メイスを奪って遠くに放り投げる。ついでにアルマの方もサラの方へと向けて投げ飛ばしていた。

 

「ちょっ!?」

 

 アルマとの衝突と、一網打尽にされることを嫌い、サラがアルマを避けるが、アルマ的には避けないでほしかったようだった。

 そんな2人を援護すべくオーフィアさっきリオが作り出した土壁を逆に利用して細かな土塊にして広範囲に飛ばしていた。さらにフレイシアスも土塊の合間を縫うようにして軌道を変える光弾でリオへと攻撃を仕掛ける。

 リオは剣で光弾を、足で土塊をそれぞれ迎撃する中、オーフィアが特大の水球を作り出して放物線を描くようにリオへと投げつける。

 その水球をリオは跳び上がって斬り裂く。

 

「今度は外しませんよ!」

 

 空を飛べるとしても、既に空中で迎撃してる最中なら、という感じでサラとアルマが再び挟撃し、下からフレイシアスの光弾も迫る。タイミング的にいずれかを迎撃しても、どれかが当たるはずだった。

 

「ッ!」

 

 だが、突如リオを中心として暴風が巻き起こり、挟撃してきたサラとアルマが吹き飛ばされ、暴風で視界が悪くなったせいでフレイシアスの光弾の軌道も逸れてしまう。

 そして、リオは吹き飛ばされて倒れたサラに剣を突きつける。

 

「うぅ…参りました…」

 

 どうやら決着が着いたようだ。

 

「そこまで勝者はリオ殿とします!」

 

 審判役のウズマの合図もあり、試合は終了する。

 

「……これとやるのか…だいぶ厄介になってきたな」

 

 真剣に観察してたネクサスが溜息交じりに独り言ちる。

 

「じゃあ、次はネクサスだな」

 

「あいよ」

 

 リオと入れ替わるようにネクサスが広場へと向かい…

 

「休憩とかいいのか?」

 

 一応、そのように聞く。

 

「いえ、体力もついてきたので、このままお願いします!」

 

「身体も温まったので問題ありません」

 

「私達はサポートだったから、そんなに疲れてないですし」

 

「よろしくお願いします、ネクサス様」

 

 サラ達もまだ大丈夫そうだった。

 

「了解だ。んじゃ、やりますかね」

 

 ダガーを逆手に持った二刀流で試合開始の合図を待つ。

 

「ハルト兄ちゃんが強いのはわかったけど…シノブ兄ちゃんもあれぐらい派手にやるのか?」

 

「う~ん…ネクサスの兄貴の戦いは…地味ってか、静かなんだよな」

 

 雅人の疑問にアルスランは微妙な評価を下す。

 

「地味?」

 

「まぁ、見てりゃわかるって」

 

 そんな風に雅人とアルスランが話してると…

 

「アルスラン。後で俺なりにしごいてやるから覚えてろよ?」

 

「げっ!?」

 

 どうも聞こえてたらしくネクサスからの指名が入った。

 

「では、始め!」

 

 ウズマの合図が響くと、再びサラが尋常じゃない速さでネクサスに接近して攻撃を仕掛けるが…

 

「よっ、と!」

 

 そのサラの動きを読み、その場から跳躍すると、そのままサラの頭上を越えて背を蹴り…

 

「わっ!?」

 

「先にお前らから仕留める!」

 

 その勢いのままオーフィアとフレイシアスへと接近しようとする。

 しかし…

 

「ネクサスさんならそう来ると思いました…!」

 

 今回はサラに追従してなかったアルマがオーフィアとフレイシアスの護衛に残ってたらしく、ネクサスを迎撃する構えを取る。具体的にはメイスをフルスイングするような感じだ。

 

(俺は野球の球か?)

 

 そんなことを思いつつも、そのまま迎撃しようとするアルマへと向かう。

 

「おいおい、やべぇんじゃ!?」

 

 雅人もその光景をハラハラしながら見ていた。美春と亜紀なんかは顔を手で覆っていた。

 

「ふっ!!」

 

(ここだ!)

 

 アルマがフルスイングするメイスが当たる直前、ネクサスは風の精霊術で下から突風を生み出し、ダガーをクロスさせてメイスの一撃を受け流しながらアルマの頭上へと舞い上がる。

 グルグルと縦に回転しながらもネクサスはアルマの近くにいたはずのオーフィアとフレイシアスがいないことを確認すると…

 

「流石にこれなら!」

 

「防げないはずです!」

 

 左右に分かれていたオーフィアとフレイシアスが回転が終わったタイミングでネクサスに向け、下から光弾の雨を撃ち出す。二方向から迫る光弾に対し、ネクサスが行った行動は…。

 

「ッ!!」

 

 ネクサスは自由落下に身を任せながら目で迫る光弾を追い、最小限の動きで回避する。その様は、まるで光弾がネクサスの身体をすり抜けたようにも見えた。

 

「「そんな!?」」

 

「サラ姉さん!」

 

「わかってます!」

 

 驚くオーフィアとフレイシアスをよそに、自由落下してくるネクサスの前後からサラとアルマが挟撃を仕掛ける。

 

「シッ!」

 

 すると、ネクサスは素早く前後にダガーを投擲する。

 

「「っ!?」」

 

 ダガーが迫ったことでアルマは防御、サラは回避でそれぞれ対応した。しかし、ネクサスの方は地面に素早く着地すると、フレイシアスの方へと狙いを定める。

 

「いけない!? シアちゃん! 逃げて!」

 

 オーフィアがネクサスに向けて光弾を撃つが、後ろに目でもついているかの如く、ネクサスはそれを曲芸のように回避していき…

 

「悪いな、シア」

 

「ひぁっ!?」

 

 後退しようとしたフレイシアスの手を引っ張り、そのまま回転しながらフレイシアスをアルマの方へと投げ飛ばす。

 

「わわわ!?」

 

 まだ空中にいたアルマは慌ててメイスを捨ててフレイシアスを受け止める。

 

「アルマ!? シア!?」

 

 着地したサラがそちらに気が向いてる隙に…

 

「ほい、油断すな」

 

 サラへと急接近したネクサスがサラへと手刀を突きつける。ちょうど、オーフィアからもサラが盾になるような位置だった。

 

「うぐっ…」

 

 光弾を変幻自在に操れば対処も出来るが、その前にネクサスの動きの方が早くサラを捉えるだろう。

 

「そこまで、勝者はネクサス殿です!」

 

 すると、ウズマが試合終了の宣言をする。

 

「また負けました…」

 

「いや、なかなか良い連携だったぜ? 俺達がいない間に随分と練度を上げたな?」

 

 しょんぼりするサラの頭をネクサスが優しく撫でる。

 

「うっ…///」

 

 頭を撫でられ、サラが顔を赤くする。

 

「相変わらず、ネクサスさんは動きが読めませんね」

 

「どうして、アレを避けれたんですか!?」

 

「後ろに目でもついてるのですか?」

 

「ははは。まぁ、散々気配を探る訓練はしてたからな。それの応用さ」

 

 アルマ、オーフィア、フレイシアスも合流しつつ会話に加わり、リオ達の元へと向かう。

 

「リオ殿、ネクサス殿。相変わらずお強いですね。次は私とも戦ってください!」

 

 戦士としての血が騒ぐのか、ウズマも近寄ってきてそのように言う。

 

「えぇ、お願いします」

 

 リオがウズマとの試合を快く引き受けていると…

 

「よ~し。じゃあ、その間、俺はアルスランをしごいてやろう」

 

「げっ!? あんなのと戦えってのか!?」

 

「あんなのとは失礼な! いい経験を積ませてやるんだから、ありがたく思え!」

 

「あんな動き…ネクサスの兄貴しかしねぇって!」

 

 アルスランの抗議を無視し、ネクサスは訓練用のダガーを拾ってアルスランを追いかけ始めた。

 

 

 

 結局、リオとウズマの試合の間、アルスランはネクサスの変幻自在の武器すら投げて接近してくる戦い方に翻弄されて、しごかれたという。

 その間、雅人は雅人でリオとウズマの試合を輝いた目でしっかり見ていた。

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