精霊幻想記~もう1人の転生者~   作:伊達 翼

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第五十四話『顔合わせ』

 リオ達が精霊の民の里からシュトラール地方へと向かって15日後。

 リオとネクサスの先導もあってか、一行は無事シュトラール地方へと辿り着いていた。

 

 それからさらに数時間後の日が暮れる前。

 一行はガルアーク王国の王都近郊の岩場地帯へと辿り着き、岩の家を捜すのだった。

 

「えっと…確か、この辺りに…」

 

 リオが岩場地帯を見回している中…

 

「なんで、こんな捜しにくい場所に…?」

 

 ネクサスに抱えられているサラが素朴な疑問を口にする。

 

「なに。木を隠すなら森の中というだろう? それに倣ったんだが…逆に俺達の捜す手間があったな。まぁ、あのサイズの岩が平原にポツンとあっても不自然だしな」

 

「な、なるほど…」

 

 ネクサスの説明にサラも何と言っていいのか、微妙な表情を作っていた。

 

 ちなみに補足しておくと、この15日の移動の間、何故かネクサスだけはサラ、フレイシアス、シンシアをローテーションして抱えて飛んでいたりする。

 ネクサス自身、別にいいと承諾もしたので問題はないのだが…まぁ、察してほしいところではある。

 

 すると…

 

「お? ハルト」

 

「え? あ…」

 

 リオが先導する一行の右斜め前方からアイシアの気配がしたのをリオのすぐ後ろにいたネクサスが気付き、リオを呼ぶ。その呼び声にリオもアイシアの存在に気付き、口許をほころばせる。

 

「お帰りなさい」

 

「ただいま、アイシア」

 

 帰還や再会の挨拶を一通り済ませた後、アイシアの案内で一行は岩の家へと向かう。

 

「あそこ」

 

 アイシアが指差す方向に岩の家が向かい合っており、そこの前にセリアと朝陽の姿があった。セリアの方は大きく手を振っているものの、朝陽の方は見上げているだけだった。

 そうして一行がセリアと朝陽の前まで着陸すると…

 

「「………………」」

 

 その人数の多さにセリアも朝陽もどう反応していいのか、ちょっと困惑していた。

 リオとネクサスはいいとしても、そこに加えてラティーファ、サラ、オーフィア、アルマ、フレイシアス、シンシア、美春、亜紀、雅人と合計で9人も増えているのだから、そういう意図がないとしても圧倒されてしまうだろう。

 

「ん~…これ、片方の家に入り切るか?」

 

 今更感のあるネクサスの一言。

 

「諸々の事情説明や顔合わせも必要だし、そこはちょっと我慢してもらおうか?」

 

「そうだな…いちいち分かれるのも面倒だし、一度に済ますか」

 

 リオの言葉にネクサスも頷き、とりあえずはリオの岩の家へと入ることになった。

 

 

 

 そして、いざリオの岩の家へと入り、それぞれの所属ごとに一旦グループを作ることになり、リオとセリア、ラティーファやサラ達精霊の民の里組、美春達異世界転移組、朝陽とシンシアのネクサス関係者組の4つのグループができ、給仕役としてアイシアとネクサスが全員分のお茶を用意するために動く。

 本来なら朝陽やシンシアの事情説明もあるのでネクサスもリオと一緒に進行をするべきなのだろうが、人数が人数なのでアイシアだけに任せるのは気が引けたのか、自分の関係は後でもいいと考えたのか、アイシアの手伝いをすることにしたらしい。

 

「では、まずは自己紹介と事情説明の時間を取りましょうか」

 

 そう言ってまずはリオが隣にいるセリアから紹介することにした。

 

「俺の隣にいるのが、セリア先生。俺の恩師にあたる女性です」

 

「ど、どうも…」

 

 ちょっと遠慮がちに会釈するセリア。

 ちなみに補足しておくと、セリアや精霊の民の里の面々は本来の姿ではなく偽装魔道具で姿を偽った状態である。

 これはまだお互いの事をよく知らないからというのもあるが、無用な誤解を避けるという意味合いも含まれている。

 まぁ、おそらくは杞憂になるとリオは思っているが…。

 

「えっと…」

 

 どこまで自己紹介で話したものかと、セリアが困ったようにリオをチラリと見やる。

 

「大丈夫ですよ。先生の事情はある程度までなら彼女達にも話していますし、彼女達がそれをむやみに口外しないことも保証します。それに彼女達にも彼女達の特殊な事情もありますから、そのことも後で本人達の口から話してもらいますから」

 

「……わかったわ」

 

 セリアの視線を受け、リオも大丈夫だというと…

 

「セリア=クレールです。リオの元先生で、シュトラール地方のベルトラム王国の貴族なんだけど…今は訳あってリオのお世話になってるの。あ、リオ。その辺の事情は…?」

 

 セリアも改めて自己紹介をしたのだが、結婚式での騒動のことも話したのかとリオに尋ねる。

 

「はい。すみません、勝手に話してしまって…」

 

 リオも少しバツが悪そうに答える。

 

「いいのよ。なら、本当の姿も見せた方がいいかもね」

 

 そう言うと、セリアは髪をおろし、偽装魔道具を外すと金になっていた髪が元の白銀へと戻っていく。

 

「ほへ~」

 

『………………』

 

 セリアの本来の姿を見た面々は、その姿に見惚れていた。雅人なんかはちょっと間の抜けた声を出していたが…。

 

「人目に触れる時はさっきみたいに変装してるんだけど……って、あれ? 私、どこか変かな?」

 

 誰も特に何にも反応しないことからセリアは少し慌てているが…。

 

「どこもおかしくありませんよ。ただ…皆さん、セリア先生が想像以上に可愛らしいので、緊張してるんだと思います」

 

 リオがそんな風にセリアをフォローしていた。

 

「も、もう、リオ!///」

 

 そんなリオのフォローに顔を赤くするセリア。

 

「はっ!? し、失礼しました。凄くお綺麗だったもので、つい見惚れてしまいました…」

 

 そんな中、いち早く正気に戻ったサラがセリアにぺこりと頭を下げ、固まっていた理由を告げる。

 

「え、あ…ありがと」

 

 サラの言葉にセリアもやや驚き気味に礼を述べる。

 

「では、次はサラさん達を紹介しますね。人数も多いですから、込み入った話は後でフリータイムを作るので、そこで話してもらえれば」

 

 進行役のリオがそのように進める。

 

「はい」

 

 精霊の民の里組の代表としてサラが頷く。

 

「じゃあ、改めて…こちらの女性がサラさん。俺と同い年で、俺がベルトラム王国を出奔した後…ネクサスと出会った後に出会った方です。以降はネクサス共々、お世話になっているんですが…彼女と隣にいる他の3人はシュトラール地方の人間ではないんです」

 

 リオはそう言ってオーフィア、アルマ、フレイシアスに視線を送る。

 ラティーファも今でこそ精霊の民として生活しているが、元はシュトラール地方…もっと言えばベルトラム王国で生まれた奴隷の身…その辺りの事情はまた今度個別に話すとして、まずはサラ達精霊の民のことを説明するのが先だろうと、リオも説明を控えた。

 

「彼女達が…未開地でひっそりと暮らしてるっていう…?」

 

 セリアもリオからある程度の説明を受けていたので、それが目の前のサラ達なのか、とリオに確認する。

 

「はい。彼女達も彼女達の事情があって、今回旅に同行してくれることになりまして…」

 

「そう、なの…?」

 

 リオの言い方にセリアが小首を傾げる。

 

「えぇ。彼女達の正式な民族名は『精霊の民』と言います。ただ、これはその民族の総称であって彼女達を表す種族名は…」

 

「リオさん、そこから先は私が」

 

 リオがさらに踏み込んだ話をしようとしたが、サラがその先は自ら語ると言う。

 

「わかりました」

 

 リオもそれに頷くと、その先をサラ達に任せることにしたらしい。

 

「……ふぅぅ……よし」

 

 小さく深呼吸したサラは、自らの手で首飾り型の偽装魔道具を外す。

 外した途端、今まで偽装魔道具で隠されていた狼耳と狼尻尾が姿を現す。

 

「っ!?」

 

 サラの変化にセリアは目を見開いて驚く。

 

「あなたが私達のことを信じて素性を明かしてくれたように、リオさんの…私達の盟友の恩師であるあなたを信じて私達も、その素性を明かしました」

 

 サラが正体を明かしたことで、隣にいたオーフィア、アルマ、フレイシアス、ラティーファも少し緊張した面持ちで、セリアを注視する。

 

「あ、え? 獣、人…?」

 

 ただ、当のセリアは本当に驚いているだけなのか、変に欲に目がくらんだりとか、蔑視の念があるとか、そういった悪感情は一切なかったように見える。

 

「改めて…銀狼種の獣人のサラさんです」

 

 リオが間に立ってサラをセリアに改めて紹介する。

 

「よろしく、お願いします…」

 

「あ、はい。こちらこそ…」

 

 なんだか妙な雰囲気での挨拶だが…。

 

「ん? ということ、そっちに一緒にいる4人の娘達も…?」

 

 セリアが何かに気付いたらしく、サラの隣に陣取るオーフィア達に目を向ける。

 

「私はハイエルフのオーフィアと言います!」

 

「私はエルダードワーフのアルマです」

 

「私は狐獣人のフレイシアスと申します。気軽に『シア』とお呼びください」

 

 オーフィア、アルマ、フレイシアスが順に偽装魔道具を外しながらセリアに挨拶していき…

 

「私は狐獣人のラティーファっていいます! えっと、お兄ちゃんの妹です! よろしくお願いします!」

 

 最後のラティーファも挨拶してからちょっと慌てながら偽装魔道具を外していた。

 

「こちらこそ、よろしく……って、妹!? あなた、妹がいたの!?」

 

 挨拶を返したセリアだったが、最後のラティーファの妹発言に驚き、リオを見やる。

 

「えっと、これには色々と事情がありまして…」

 

 リオがセリアに説明をしようとした時…

 

「お~い、茶の用意ができたぞ~」

 

「もうちょっと蒸らせば飲み頃」

 

 ネクサスとアイシアがキッチンから戻ってきて、それぞれ茶器一式を載せたトレイをテーブルに置き、アイシアはしれっとリオの空いている隣へ腰を下ろし、ネクサスもシンシアと朝陽のところに向かった。

 

「で、どこまで話したんだ?」

 

 キッチンでお茶の用意をしてたため、話には今から参加するネクサスはリオに状況を聞く。

 一応、サラ達がセリアに正体を明かしているのを見たので、ある程度は進んでいるとは思っているが…。

 

「今、先生にラティーファが俺の妹になった経緯を話すとこだよ」

 

「なるほどね」

 

 などと男2人で会話していると…

 

「ちょっとリオ! ちゃんと説明しなさ~~い!!」

 

 アイシアとネクサスの登場で落ち着いたかと思ったセリアがリオに詰め寄る。

 

「は、はい。えっと…詳しくは省きますけど…ラティーファもベルトラム王国から出奔した後に出会いまして…ちょうどネクサスと出会ったのも同じくらいで、一緒に旅をする内に俺が兄として面倒を見ることになったんです」

 

「ま、保護者みたいなもんですな」

 

 リオの説明とネクサスの補足にセリアは…

 

「な、なるほど…?」

 

 やや納得したようなしてないような、微妙な反応を示す。

 

「そういう事情で、ラティーファを含め、サラさん達の暮らしていた里で美春さん達を匿ってもらっていたんです。しかし、今回の勇者召喚…その内の1人であり、美春さん達の知る沙月さんがガルアーク王国にいると判明したので、美春さん達をシュトラール地方へと呼び戻す運びになったんです」

 

「そんでまぁ…こっちまで美春ちゃん達を運ぶための労力が足りず…見聞を広めるためにサラ達が一緒に来ることで足を確保。こうしてシュトラール地方に戻ってきたわけなんすよ。まぁ、方法がなかったわけじゃないんですが…ちょっと事情がありまして」

 

 人型精霊であるアイシアはセリアと朝陽の護衛をしていたし、話す機会が多かったからそこまで気にしてないが、逆にネクサスの契約精霊であるファングのことはあまり話してないと思ったので、ネクサスは自分の事情説明の際に少し話すつもりでいた。

 

「ふむふむ。ということは、そっちの3人が朝陽さんと同じ境遇の?」

 

 やや呆れを混じった表情のセリアは美春達を見る。

 

「はい。勇者召喚に巻き込まれた、美春さん、亜紀ちゃん、雅人です」

 

 リオが美春達をセリアに紹介する。

 

「はじめまして、美春=綾瀬です」

 

「亜紀=千堂です」

 

「え~っと…せんど、じゃなかった。雅人=千堂です」

 

 美春達もセリアに挨拶したところで…

 

「よろしくね。あら? ということは…そちらの娘は?」

 

 セリアが最後に残ったシンシアに目を向けた。

 

「あ~、そこからは俺が話しますよ」

 

 ここから進行役が一時的にリオからネクサスに変わることになる。

 

「こいつはシンシア。俺と同じ元奴隷で、暗殺を生業にしてました」

 

「あ、暗殺!? こんなまだ…」

 

 何とも不穏な言葉にセリアが驚く。

 

「まぁ、元奴隷で国の暗部育ちですからね。感情の起伏があんまりないんですが、これでもだいぶマシになりましてね。あ、ちなみに俺も元は奴隷で暗部育ちです」

 

「っ!?」

 

 衝撃的な言葉を言うものだからセリアは絶句する。

 他の皆はネクサスの過去について少し触れたことがあるので、あまり驚いていないが…。

 

「まぁ、任務失敗で死んだように見せてトンズラしたわけですがね」

 

 と、なんともないように笑いながら言うネクサスに対し…

 

「ちょ、ちょっと待って!? シノブ君ってそういう過去があったの!?」

 

「面白くもない話なんであんま吹聴はしてないだけで、事実は変わりませんから。あ、ちなみに自分、本名は『ネクサス』って言います。セリアさんにはまだ言ってなかったですよね?」

 

「は、初耳よ!」

 

 とセリアが吠えると…

 

「私も聞いてない…」

 

 朝陽も聞いてないと言う。

 

「あれ? そうだっけか?」

 

 ずっと『アンタ』呼ばわりだったからか、特に気にしてないようだが、よくよく考えると言ってなかったかも…とネクサスは考える。

 

「………………まぁ、細かいことはいいさ」

 

 結論、細かいことは気にしないことにしたらしい。

 

「「細かくない!!」」

 

 セリアと朝陽が叫ぶ中…

 

「で、さっきの美春ちゃん達を運ぶ他の方法なんですが…」

 

 ネクサスは2人のツッコミを無視して話を優先させた。

 

「ファングに乗せてもらう予定だったんですよね。ただ、ファングって見た目的に凄く目立つし、本来の大きさもわからなかったもんだから…こうしてサラ達の同行になったわけなんですよね」

 

『クゥン?』

 

 ネクサスの頭の上に顕現したファングが小首を傾げる。

 

「た、確かに個性的な見た目をしてるし…見つかったら大騒ぎになるわね」

 

 そこはセリアも納得していた。ツッコミを無視された件に関してはジト目でネクサスを見ているが…。

 

「とまぁ、そんな感じですね。俺も里ではリオと同じく盟友扱いなので、シンシアの世話もお願いしてたんですが…この度、シンシアも同行してきたんですよ。自分の意思でね」

 

 そう言いながらネクサスは優しい表情でシンシアを見る。

 

「ま、まぁ…そういうことなら………うん。ミハル、アキ、マサト。それにサラ、オーフィア、アルマ、フレイシアス。最後にシンシアね。全員の顔と名前は覚えたわ」

 

 セリアは最後に一人一人の顔と名前を確認しながら、それを覚えたことを告げる。

 

「流石は先生ですね。そういうわけで、例の夜会が始めるまでは俺とネクサスの家で共同生活をすることになります」

 

「まぁ、一気に賑やかになった感じだな」

 

「先生も、それで大丈夫ですかね?」

 

 リオがおずおずとセリアに尋ねると…

 

「全然平気よ。最近はアイシアと朝陽さんとの生活だったから、一気に賑やかになるのは結構楽しみなのよ?」

 

 セリアからも共同生活の承諾をいただき…

 

「じゃあ…とりあえず、家決めからか?」

 

 とネクサスが言うと…

 

「私はお兄ちゃんと一緒がいい!」

 

 ラティーファが真っ先に自分の希望を口にした。

 

 

 

 それから色々と話し合った結果。

 リオの岩の家にはアイシア、セリア、ラティーファ、美春、亜紀、雅人。

 ネクサスの岩の家にはサラ、オーフィア、アルマ、フレイシアス、シンシア、朝陽。

 という感じになった。

 

 元々荷物を置いていたということもあってラティーファや美春達、それにセリアは自動的にリオの家に決まったのもあるのだろう。

 となると問題は精霊の民とシンシアだが…シンシアに関してはラティーファ達と同じ理由で、ネクサスの家に決まっているし、それは朝陽も同じだ。

 となると、精霊の民の4人はどうするのか?

 という問題が浮上した。サラとフレイシアスは元々ネクサスの家に行こうとしていたが、オーフィアとアルマがリオの家に行くと、リオの方に負担が多いのではないかと考える。

 オーフィアは若干残念がっていたが、人数的にネクサスの家の方に世話になることにしていた。

 別にそこまで気にすることでもないとリオもネクサスも言ったのだが、ちょうど人数も6人ずつでいいということで決着したのだ。

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