精霊幻想記~もう1人の転生者~   作:伊達 翼

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第七話『里でのゴタゴタ』

 意識を失ったリオと、リオに眠らされていたラティーファと異なり、意識がしっかりと残っていたシンシアと、やっと視界が回復したネクサスは揃って里の庁舎と呼ばれる場所に連行されていた。

 

(改めて見ると、デカいな…それに立派なツリーハウスというか…)

 

 改めて見た大樹にネクサスはそんな感想を抱いていた。

 

(にしても、ここでも珍獣扱いかね?)

 

 もう夜なので気にしないが、それでも少なからず様子を見に精霊の民の大人達が群がってるようにも見えた。

 

(ともかく、リオの奴を回復させてやりたいが…多分、無理だろうな…)

 

 ネクサスの予感は的中することになる。

 ラティーファが別の場所へと運ばれた後、リオとネクサス、シンシアも牢屋へと連れていかれた。リオは気絶しているせいで身ぐるみを剥がされてベッドに寝かされたが、ネクサスとシンシアはそれぞれ自らの意思で武装を解除し、それぞれ別の牢屋へと入れられたのだ。

 また、リオ、ネクサス、シンシアの3名には『魔封じの枷』と呼ばれる装着者の魔力を抑え込む魔道具で拘束されており、下手な動きは出来ないでいた。

 

「さてはて、どうしようかね?」

 

 一応、抜け出すことは出来る。これでも裏組織の人間でその手の拘束を解く手段も会得しているが…正直、ここで脱走してもあまり旨味がないのも事実。なので、ネクサスは事態が動くのをじっと待つことにした。

 

(別に悪いこたぁしてねぇしな。リオが起きれば弁明の余地もあるだろ)

 

 ベッドの上で横になってしばらくゆったりしていると、隣の部屋…リオが収容されている部屋が少し騒がしくなってきた。

 

(……ん? 動きがあったか?)

 

 ぼんやりと何もしてなかったせいで少し反応が遅れたが、ネクサスがベッドから上半身を起こして待っていると…

 

コンコン…

ガチャリ…。

 

「失礼します」

 

 牢屋の扉が開かれ、そこから緋色の髪と朱色の瞳を持ち、幼さが残った可愛らしい顔立ちの…ラティーファと似た狐の耳と尻尾を生やした狐獣人の少女が恐る恐るといった感じで入ってくる。

 

「何か御用で?」

 

 そんな少女に少し意表を突かれたが、ネクサスは平常心を取り戻して質問する。

 

「お連れ様と一緒にご同行願えませんか? お話を伺いたく、既にお隣の男性の方も移動を開始するようですので…」

 

「ふむふむ。わかりました。とりあえず、リオも無事のようですし、シンシアには俺から声を掛けましょうかね」

 

「よろしくお願いします」

 

 そんな狐獣人の少女と共に牢屋を出た後、ネクサスはシンシアに呼びかけるとすぐに反応を見せて牢屋から出てきた。

 

「………………」

 

「話があるそうだ。そこでリオ達と合流だな」

 

 コクリと頷いたシンシアを見てネクサスは少女に案内を頼んだ。

 それからしばらくしてゲストルームへと案内されたネクサスとシンシアは、そこでリオとラティーファと合流を果たす。

 

 そこでお互いの自己紹介を行い、リオを中心に話を進めていくことになる。

 リオがラティーファを連れていた理由を皮切りにその周辺事情やネクサスとシンシアが旅に同行した理由など、色々と答えていった。その際、ネクサスもリオと同じように『精霊術』が使えるらしいということも説明されたが、当のネクサス自身も魔法と精霊術の違いはよくわかっておらず、名称も初耳だった。

 ただ、小難しい話になってきたところからラティーファがリオの膝の上で眠ってしまったが、その懐き具合が証拠になった部分も少なからずあった。

 

 その結果、リオを気絶させた張本人である翼獣人のウズマが土下座したのを皮切りに銀狼種の獣人のサラ、ハイエルフのオーフィア、エルダードワーフのアルマ、狐獣人の『フレイシアス』も同様に土下座して謝罪する事態に陥った。

 

「……気にしていないといえば、嘘になりますが…謝罪を受け入れます」

 

「リオがこう言ってる以上、俺からは何もないな。ま、お互い不幸な擦れ違いだと思えばいいんじゃね?」

 

「勝手についてきたネクサスが言うことか?」

 

「あいたたた…それを言われると耳が痛い…」

 

 という一コマもあって少しだけ空気が和らいだような気がしてリオが改めて頭を上げるように土下座してる人達に言う。

 そして、最長老の1人である狐獣人のアースラから翌日に長老陣を集め、改めて正式な謝罪の場を設けると伝えられ、その場は解散となる。

 

………

……

 

 その後、真夜中。

 里の庁舎の最上階にある会議室にて長老陣による緊急会議が行われた。

 議題はもちろん、リオ達のことだ。

 事のあらましを説明したアースラの言に他の長老陣も複雑な表情を浮かべていたが、残る最長老の2人…ハイエルフのシルドラと、エルダードワーフのドミニクがそれぞれの見解を述べ、その提案に他の長老陣も異論は出さなかった。

 だが、事態はそれに留まらず、大樹の精霊にして準高位級の人型精霊である『ドリュアス』が会議室に降臨し、とある質問をしていた。

 

「ついさっきこの辺で知らない精霊の気配がしたのよね。あなた達、何か知らない?」

 

 その問いに答えたのは、アースラだった。

 アースラはとりあえず、心当たりがあると言い、その者が明日この場に来ることも伝えると、ドリュアスはその時には自らも同席すると言ってその場を後にした。

 少し緊張感が抜けた会議室でシルドラとドミニクがアースラに問い掛けると、アースラも確信を持ったように頷いていた。

 

 

 

 そんな長老陣の慌ただしい夜が明けた翌日。

 装備一式や着替えはとりあえず返還してもらい、一夜を過ごした一行はアースラやサラ達と共に朝食を食べていた。

 ただ、朝食前にリオの部屋に訪れたサラが激昂したような声を聞き、ネクサスは恐らくラティーファの過去でも話したのだろうと思っていた。推測混じりだろうが、奴隷の扱いなんて自分もよく知っていたので、特に口を挟むことはなかったが…。

 それに朝食時にそんな暗い話をするのも嫌だったので、スルーしていた部分もある。

 

 そして、ラティーファとシンシアをサラとアルマ、フレイシアスに任せ、リオとネクサスはアースラとオーフィアと共に庁舎の最上階へと向かっていた。

 

「連行される時にも見たが、立派なもんだよな~」

 

 ネクサスがそのように言っていると、リオが一際巨大な大樹に目を向ける。

 

「あれは…」

 

「大樹の精霊、ドリュアス様の宿っておられる世界樹です。私達がこの地に暮らすよりも遥か前から存在していたと言われてるんですよ?」

 

 リオの視線に気付いたのか、オーフィアが少し誇らしげに説明してくれる。

 

「そうなんですか。俺達はあの樹を目指してここまでやってきたんです」

 

「ま、俺とリオ以外には見えてなかったっぽいけどな」

 

 その何気ない2人の一言に…

 

「お二方とも凄いですね。あの樹には高度な幻影魔術の結界が施されているので、普通は見えないんですけど…」

 

 驚いたようにオーフィアがリオとネクサスを見る。

 

「そう、なんですか?」

 

「へぇ~」

 

 2人共、まだ実感が湧いていないようで、微妙な生返事になっていた。

 

「ふむ。リオ殿もネクサス殿も誰かに師事して精霊術を身に着けた訳ではないのよな?」

 

 そこにアースラからの質問が入る。

 

「えぇ、きっかけは……ありましたが、その後はほぼ独学です」

 

 リオはそのように答えたが…

 

「俺は大したきっかけがあった訳じゃないんだよな。魔力が見えるようになった時は半信半疑だったし、魔法が使えないと言われた時も漠然と魔力の流れを掴むくらいは出来てたから…ほとんど手探りだったかな?」

 

 ネクサスの答えに、リオ以上にネクサスの方が見識が足りないとわかった。

 

「リオ殿はともかく、ネクサス殿の方は一から学んだ方が良かろうな。どちらにせよ、どちらも末恐ろしい才覚を有していそうだが…」

 

 アースラは苦笑しながらも歩を進める。

 

「リオ殿、ネクサス殿、ここじゃ。オーフィア、お主も入りなさい」

 

 そして、最上階の会議室に着くと、アースラが会議室へと3人を招き入れる。アースラの指示でリオとネクサスは隣り合って座ることとなり、オーフィアは昨夜急遽決まったドリュアスの隣に座っておもてなしをするように言われたのだが、そのオーフィアも少しだけ固まり、ぎこちなくそちらへ向かうこととなった。

 

 それから程なくしてリオやネクサスという異邦人を招いた長老会議が始まる。ちなみに進行に際してリオとネクサスがいる関係上、人間族の言葉で進められることとなる。

 まずは最長老の2人…シルドラとドミニクが自己紹介を行う。アースラに関しては既に自己紹介を済ませているので省略したが。

 

「はじめまして。私はリオと申します」

 

「ネクサスです。まぁ、俺はリオのおまけと考えて頂ければ結構ですので」

 

 次にリオとネクサスが簡単な自己紹介を行った。ネクサスに関しては本心からリオのおまけだと考えているので、そう答えたのだが、それをどう受け取ったのか、長老陣から少し笑みが浮かぶ。

 

(ん~…わりと本気なんだがな…)

 

 それからリオに対しての謝罪が行われ、感謝の言葉も送られた。

 それを受け、リオも謝罪と感謝の言葉を受け入れ、この件は不幸な行き違いだから水に流そうと提案し、それに長老陣も再度感謝の念を覚え、同時にリオの大人顔負けの対応に感心した様子で息を呑んだようだ。

 

 しかし、それではリオに恩を仇で返すようなことをしておいて言葉だけでは足らないと感じていたシルドラが、リオに望みを聞いていた。

 種族の価値観の違いもあり、どのようなモノで謝意を表していいのか、長老陣も思い悩んでいたようだ。そこで昨夜のドミニクの提案もあって、リオの望みを聞いてそれに応えようという形にしたいらしい。

 

「えっと…」

 

 リオは困ったようにネクサスをチラッと見る。

 

「ふむ…こういう時は素直にするのが一番だぜ? 確かに種族間の価値観はあるが、それでも今の俺達…というよりもリオがやってほしいことを願うのがベストだろ? 例えば、そうだな…精霊術の知恵を教授してもらうとかな?」

 

 その視線にネクサスがそのように答えると…

 

「それはネクサスがしてほしいことだろ?」

 

「お前さんだって必要なことだろ? 知らないと知ってるとじゃ、大きく違うんだからよ」

 

 リオの反論にネクサスは肩を竦めていた。

 

「むぅ…」

 

 なんだか釈然としない気持ちもあったようだが、リオは素直な願いを口にすることにした。

 

「では、ラティーファをこの里で引き取ってもらえませんか? 私の本来の目的はこの先の…ヤグモ地方へ向かうことなので」

 

 それが率直な願いだったのだが…。

 

「う~む。リオ殿。それは我々の方から頭を下げて願い出るべきことじゃ。もうちっと欲を出してくれんと…」

 

 困ったような表情でアースラがリオに言う。

 

「ですが、私は無責任にも人一人の命を預けるようとしているのですから…」

 

「リオ…」

 

「リオ殿…」

 

 そんなリオの真摯な言葉に隣にいたネクサスも、最長老を含めた長老陣も少しばかり驚いていた。

 

「ですが…もし叶うのならば…」

 

「リオ」

 

 リオが何かを続けようとした時、ネクサスが立ち上がってリオの肩に手を置いて声を掛ける。

 

「ネクサス…?」

 

「それ以上は言うな。向こうさんの心情も加味してやらんとな」

 

 優しい表情でリオに語り掛けるネクサスを見て…

 

「すまぬな、ネクサス殿。リオ殿。改めて儂らからお願いしよう。ラティーファと一緒にこの里で暮らしてはくれんかの? もちろん、ネクサス殿達も一緒にの」

 

 アースラがネクサスから引き継いだ言葉をそのままリオに伝えていた。

 

「……よろしいのですか?」

 

 リオが種族的な問題も出てくるかもしれないと恐る恐る聞くが…

 

「なに、構わぬよ。昨日の内に話し合った結果じゃ。この場にいる長老達も全員承服しておる。あの子のためにもお願いしたい」

 

 アースラを含め、長老陣もそれぞれに頷いていた。

 

「おうよ。遠慮なんてするんじゃねぇよ。坊主、なかなかに気に入ったぜ。アースラから話は聞いてたが、実際に面と向かって会わないとわからんこともある。聞いてた以上の男だぜ」

 

「うむ。アースラとドミニクの言う通りだ。里での暮らしは不自由がないように最大限の配慮を行うつもりだ」

 

 ドミニクも歓迎の意を示し、シルドラも好意的な答えを言っていた。

 

「よかったな、リオ」

 

 ネクサスもリオに祝福を送るが…

 

「おっと、確かネクサスとか言ったな?」

 

「はい?」

 

 ドミニクがネクサスにも矛先を向けてきた。

 

「お前さんのことも気に入った。よくあの場面でリオの坊主を引き留めた。普通ならなかなか言い出せないだろうに。あと、シレッと自分の要求まで口にした胆力は実に良い。リオの坊主も少しくらい見習ってもいいかもな?」

 

「いやぁ、それはどうでしょう? リオはこのままだから良いんだと俺は思いますけどね? まぁ、多少は直した方がいい部分もあるのは事実ですが」

 

「がはは! そういうところがいいんじゃねぇか」

 

「そうですか?」

 

 最長老の1人でもあるドミニクに対して委縮した様子もなく、軽口を叩くほどの胆力を持つネクサスに周りの長老陣も少し驚いたような表情を見せる。

 

 すると…

 

「ドミニク。話が纏まったのなら、そろそろ私の要件を片してしまいたいのだけれど…いいかしら?」

 

 オーフィアの隣に座っていた妙齢の女性が口を開いた。

 

「おお! これはドリュアス様。申し訳ありませんな。なかなか話せる小僧だったもので、つい」

 

「いいのよ」

 

 妙齢の女性は席を立つと、リオとネクサスの方に歩いていった。

 

「では、ドリュアス様。リオ殿とネクサス殿にあなた様を紹介したいのですが、よろしいですか?」

 

「じゃあ、よろしくね」

 

 一言断りを入れてからアースラがリオとネクサスに妙齢の女性を紹介する。

 

「リオ殿、ネクサス殿。こちらにおわす方は大樹の精霊、ドリュアス様じゃ。先程、オーフィアから少し聞いたじゃろ?」

 

 そう言われ、リオもネクサスも驚いたように妙齢の女性『ドリュアス』を見る。

 

「え、精霊…ですか?」

 

「人にしか見えなかったぞ?」

 

 2人揃ってドリュアスを見てそう漏らす。

 

「はじめまして。リオ、それにネクサス。私がそのドリュアスよ。よろしくね。あら?」

 

 すると、ドリュアスはリオとネクサスを交互に見て首を傾げていた。

 

「どうかなされましたか?」

 

 アースラがドリュアスに質問すると…

 

「微弱だけど、精霊の反応を感じるわ。昨日感じた反応は一つだけだったけど……こうして面と向かってみるとわかるのよ。リオと、それにネクサスからも…」

 

 ドリュアスがそのように答えていた。

 

「え…精霊ですか? 俺の中に?」

 

「ん? 俺も?」

 

 その言葉を聞き、2人は呆然と疑問を口にする。

 

「どちらも眠ってるのかしら? 反応が微弱だから目視するまでわからなかったわ」

 

 そんな2人に構わず、ドリュアスは首を傾げていた。

 

「あ、別に不安がらなくてもいいわよ。おそらく2人共、それぞれの精霊と契約してるかもだけど…契約で生じる義務とかは基本的にないから。むしろ、恩恵の方が大きいくらいかしら?」

 

 ドリュアスの言葉に、「はぁ…」と2人は生返事をしてしまう。

 

「ねぇ、ちょっと調べてもいいかしら? 身体に害はないから安心して」

 

「……はい。お願いします」

 

「じゃあ、失礼して」

 

 リオが少し逡巡してから承諾するのを確認してドリュアスがリオの顔を両手で包み込み、そっと額を押し当てる。

 

「うわぁ、あなた、凄い量のオドを秘めているのね。美味しそう。本当に人間族?」

 

(今、美味しそうって言った?)

 

 横でその様子を見ていたネクサスが内心で少し驚いていると…

 

「あ、やっぱりパスが出来てる。契約しているのは間違いなさそうね。それに…っ!?」

 

 ドリュアスが目を大きく見開いて身体をビクリと震わせていた。

 

(なんだなんだ?)

 

「何かあったのですか?」

 

「あったというか…なんというか…あなたの中に人型精霊が眠ってるというか…」

 

 そのドリュアスの一言に会議室にいた者達が騒めき出す。

 

「人型の精霊、ですか?」

 

「う~ん…その様子だと人型精霊の稀少性がわかってないわね」

 

 簡潔に言うと、精霊にも階級があり、人型になれるのは準高位級と呼ばれる極僅かな精霊だけだという。ドリュアスもその例に漏れず、稀少性が高くこの里では神格化されているほどだ。

 もしそれが高位精霊だった場合、リオも聖人扱いされる可能性もあるというのだ。まぁ、それでも人型精霊がいる時点で、準高位級精霊なのは確実だろうから里の人間にとっては一大事なのだが…。

 

「こうなると、ネクサスの中の精霊も凄く気になるわね」

 

「いや、流石にそんな稀少な精霊が2人に宿るなんてのはないでしょ? 俺のは多分、普通ですよ、普通。まぁ、俺もリオと同じように契約した記憶なんてないんですが…」

 

 会議室の騒めきを目の当たりにし、ネクサスは逃げるように後退りするものの…

 

「それを調べるのも大事なことよ。さ、大人しくしなさいな」

 

 ドリュアスに先回りされ、リオと同じように調べられることになった。

 

「あら、あなたも美味しそうなオドを持ってるじゃない。量もリオに比肩する程だわ。ただ、色が不思議ね?」

 

「あ~、やっぱり色は不思議なんですか?」

 

 自分で見た時も不思議と思っていた魔力の色は、精霊から見ても不思議だったようだ。

 

「えぇ、こんな色彩のオド…初めて見たわ。あ、パスも出来てるわね? やはり、あなたも契約して……え?」

 

 ドリュアスの動きがピタリと止まる。

 

「な、なにか…?」

 

 ドリュアスの様子にネクサスが不安げに尋ねると…

 

「ドリュアス様?」

 

 ドリュアスの様子が変だと思ってアースラ達も声を掛ける。

 

「……これはまたとんでもない精霊と契約してるわね」

 

「と、とんでもないとは…?」

 

 ネクサスが不安をさらに募らせて聞くと…

 

「ん~……そうね。なんと言ったらいいのかしら? 7つの生き物の特徴を持った、1つの生命体が具現化したような?」

 

「……はい?」

 

 ドリュアスの言葉を受け入れるのに幾分か時間が掛かった。

 

「う~ん…ベースは狼かしら? そこに6体分の他の生物の特徴が反映されたような精霊が眠っているのよね。少なくとも中級か、これだけ複雑な構造をしていると準高位級かもしれないわね? 私も見たことも聞いたこともない精霊だわ」

 

「………………」

 

 ドリュアスの説明にネクサスを含め、リオや会議室にいた者達も沈黙を貫いていた。

 だが、『準高位級かもしれない』という言葉が、室内に浸透したのか…。

 

『おおっ!』

 

 リオの時と同じような反応が返ってきた。

 

「いやいやいや、待て待て待て! え、なに!? 俺と契約してる精霊ってそんな凄いの!? 聞いてるだけだと禍々しい印象が強いんだが!?」

 

 ネクサスはドリュアスの言葉をじっくり咀嚼し、理解した上で前世で地球にいた頃、オタクの友達から聞いた合成獣…いわゆる『キメラ』の存在を思い出して、精霊とはかけ離れたような存在と禍々しさを感じていた。

 なので、長老陣の反応に物凄く狼狽した反応を示したのだが…

 

「確かに見た目はちょっと禍々しいかもだけど…精霊なんだから大丈夫よ。特に身体に不具合なんかもないでしょ?」

 

「いや、まぁ…確かに不調とかはないですけど…」

 

「なら大丈夫よ。自分と契約した精霊を信じてあげなさいな」

 

「は、はぁ…」

 

 なんか上手く言いくるめられた感が拭えないが、ネクサスはガックリと項垂れながら席に座る。

 

「がはは! こりゃいい。準高位級と高位級の精霊と契約した人間とはな!」

 

「あくまでも可能性ですからね!?」

 

 ドミニクの言葉にネクサスがすかさずツッコミを入れる。

 

「だとしても、めでたいことには変わりねぇよ!」

 

「うぐぐ…」

 

 確かにちょっとしたお祭りムードを感じなくはないので、ネクサスもそれ以上の無粋を働くつもりはないのか、押し黙ってしまった。

 

 

 

 こうしてリオとネクサスの中に精霊がいることが判明した。

 リオは人型精霊を、ネクサスは…構造が複雑なキメラっぽい精霊だという。

 この結果、2人の里での扱いが良くなるということをドミニクから言われたが…あまり実感が湧かなかったのが正直なところだろう。

 ともかく、当分は精霊の民の里で暮らすことは決定したので、2人の思考はとりあえずそちらにシフトし、いつ起きるとも限らない眠っている精霊のことは今は考えず、役立ちそうな知識の習得や里での暮らしに思いを馳せるのだった。

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