◇◆
2022/7/19 大規模修正・追記
2022/9/9 大規模修正(大幅追記・フォント)
2019年5月3日。
日本各地は、お祝いムードが支配していた。
理由はこの国の象徴である天皇陛下が即位をしたからである。それに従って元号は『令和』になり、4月30日が天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律という長っ苦しい法律のために休日、5月1日も即位記念日として休日となり、4月27日~5月6日まで10連休という一大ビックイベントの為に、各地は観光客などが大勢襲来した。
そして、即位礼正殿の儀に先立ち新天皇に会談を申し込む外国首脳らが大勢来日し、一種の外交の場ともなっていた。
また、15日から開始される即位パレードの為に多くの外国軍らが来日、自衛隊の基地などでは一般公開などが行われ、盛り上がっていた。
その1日が終わる時、ある家族は、自分の家で皆と過ごし、あるカップルは、こたつで蜜柑を齧りながらテレビで即位記念の歌番組を見ていた。
その頃、日付変更線が最初の2019年の5月4日を迎えた時、
初めに気がついたのは国立天文台であった。
空が霞んで、霞が取れた後に星の位置がまるっきしり変わっていたのだ。
また、インターネットの異常、国際電話が繋がらない、GPSの使用不能などが全国で一斉に起こる。
日本各地は混乱に包まれた。
◇◆◇
中央暦1639年5月4日 午前9時──
《日本国 東京都 千代田区永田町 総理大臣官邸》
「難しいことは良い、つまり海外の何処とも連絡がつかないんだな?」
廊下を多数の人々が進む。苛立った声を発したのは内閣総理大臣『阿倍野真三』。
普段は外見は真面目で優しいとネットなどでは評判だが、知る人ぞ知る内面はただのオタクである。普段はふざけるのだが、この状況に顔から読み取れるように怒りを覚えていた。
「はい。詳しく言うと北海道・沖縄などの多数の島々です。九州・四国は例外で通信が取れます。青函トンネルが途切れているとの情報もありますが未確認です。確認を急いでいます」
「ですが、北海道の空自千歳基地、沖縄も空自那覇基地と通信が取れることから両島とも無くなった事では無いようです。群島はいかんせん数が多いので空自・海自で協力して通信を取っています」
総理の問に答えるのは内閣官房長官『須賀秀義』。内閣の女房役とも言われている役で、普段は弾ける総理の暴走ストッパーでもある。
「他にも全衛星が通信が不可能です。海底ケーブルも同様です。近海で全ケーブルが途切れているのが確認されています」
「…日本以外の国がなくなったって言うのは…」
「可能性はありますが情報が少ないので何とも…」
二人と黒服の護衛は官邸地下の危機管理センターに入る。
「総理及び官房長官入られます」
「立たなくて良い、今の状況を教えてくれ」
「はっ」
二人が入ると中にいた人員が起立しようとするが手で抑える。
中央のテーブルに座ると内閣危機管理監が二人に報告する。
「防衛省によると、現在電波などは全く観測できず、太陽フレアによる通信障害も視野に入れているそうです」
「太陽フレア?
「ありません」
「…全く解らんな」
官房長官の言葉に危機管理監と総理は頷く。
「総理、デフコンはどうしますか?」
「3が妥当だな、これよりデフコン3を発令する。あと、
「分かりました」
「防衛大臣、在日米軍は?」
「こちらと同じく混乱状態であるとのことです」
「中国の新兵器か?」
総理はウケると思ったが、状況が状況なので危機管理センターの職員は『もしかして…』と思っている。
つまり滑った。
「自衛隊の展開状況は?」
「はっ、陸上自衛隊は全方面隊が警戒体制であります。命令が有ればいつでも行けます」
「東北方面隊の第2騎兵師団・東北即応機動師団が緊急派遣要請があれば派遣できます」
「第1・2空挺軍全軍もいつでも出発できるということです」
「うん、海上自衛隊はどうなっている?」
「第1・2艦隊の哨戒隊・フリゲート隊が各諸島へ連絡を取っています」
「同じく第1・2艦隊の全護衛隊群は出撃準備を整えています」
「最後に航空自衛隊ですが、此方も全航空団か厳戒態勢です」」
「了解した」
総理と官房長官がこれからのことを考えていると、会議室に声が響いた。
「防衛省から報告です。三沢基地から離陸した空自のRC-340偵察機のレーダーが未確認飛行物体を捉えたとの報告です」
「護衛機は?」
「つけていませんが」
「ゑ…それ大丈夫なん?」
「大丈夫です。もし撃墜されたら報復するんで」
その時、職員が緊迫した声を上げる。
「未確認飛行物体、無線にて呼びかけるものなお反応なし。更に接近します!」
「
「無いとの事です」
「中国か?それともロシアか?はたまた北朝鮮か?」
会議室内が緊張に包まれる中、職員が声を上げる。
「防衛省より未確認飛行物体の画像来ます」
メインモニターが切り替わり、未確認飛行
コウモリのような皮膜の翼、鏃のように尖った尾。東方の同じ言葉とよく間違えられるが、これは前肢と翼が一体化しているために、こう呼ばれる──
「──ワイバーン」
総理大臣か、官房長官か、防衛大臣か、はたまた危機管理センターの職員か。誰が発したか解らないが、その言葉は静まり返った室内に、よく響き渡った。
◇◆◇
中央暦1639年5月4日午前9時──
《クワ・トイネ公国 首都マイハークより350km北の方角 クワ・トイネ公国軍第六飛龍隊》
よく晴れた朝、地球人が見たら目を疑う光景があった。
大きい黒い鱗を持った物体──ワイバーンが空を飛んでいた。
その背中に乗るのは『マールパティマ』、クワ・トイネ公国の竜騎士だ。
彼はこの仕事に誇りを持っており、真面目な性格であった。
「ん?なんだ!あれは!」
彼の目は自分以外いるはずのない空に何かが飛行しているのを確認していた。
「我、未確認騎を確認、これより要撃し、確認を行う。」
通信用魔道具を使っている間にも未確認騎はどんどん近づいてくる。
しっかり見える距離になった時、よく見るとワイバーンでないことがわかった。
そもそも羽ばたいておらず、中央には何かわからない大きな円盤が回っている。
翼には2個で1つにまとめられている円柱状の何かがあり、大きな音を立てている。
そして──とてつもなく大きい。
かつて777-200LRが登場するまで、世界最長の航続距離性能を持つ航空機であるエアバスA330-500。それの軍用機型の偵察機であるRC-340は異世界でもその直大な航続距離を活かして羽ばたいていた。
マールパティマはRC-340を見て呆然としていたが、敵
「(不味い!未知の敵対国家であったらマイハークが攻撃される!!)」
彼はのどかであり、温かい人々がいるマイハークを気に入っていた。だからこそ、この騎を止めなければならない。領空に近づいてきた騎は、後ろを取って海に追い返すのが基本だ。そのため彼は後ろに着こうとするが──追尾できない。
「なっ!こちらマールパティマ!未確認騎に追いつけない!」
『こちら司令部、ワイバーンが追いつけないわけがないだろう、もう一度報告せよ』
「事実だ!しかも未確認騎はマイハーク方面へ進行中!繰り返す、未確認騎はマイハークへ進行中!」
この報告により、司令部は大混乱になったが、第六飛龍隊が発進する様に命令が下った。
◇◆◇
10分後──
《マイハーク近郊 RC-340 コックピット内》
RC-340の機長と副操縦士は先ほど見たあり得ない光景に自分の目を疑っていた。それもそうだ。目の前に
「俺ももう歳かな....龍みたいなのが飛んでたように見えたんだが」
「僕まだ30代なのにおじさんと呼ばれるのはきついんですけど.....」
「今の世代だともう25過ぎたらおじさんらしいぞ」
「マジすか」
軽口を叩いていてもしっかりと操縦桿を握り、前方の窓を望む。ワイバーンの鞍上には人間がいた。ならばここから近い地点に大陸か島があるだろう。
「写真を撮れたのは大きいな」
「でも上は全く信用しないでしょうな」
「そりゃそうだろ、俺がその立場だったらまず第1にデマを疑うぞ」
「まあ、そうなりますよね」
「しかし…この世界はどうなっちまったんだ?」
機長は、そうつぶやいた。
◇◆◇
15分後──
《RC-340 情報解析室》
14台ある状況表示コンソールが集められた情報解析室では、機器操作員らが操作をしていた。
ここではA340の元々旅客機であった機体構造を生かし、偵察によって得られた情報やレーダー情報を使い情報分析の高速化を可能にしている。
「応答はあったか?」
「いいえ何も」
「同じく」
「ん?レーダー
「戦術航空士、電波発信はあるか?」
「確認できません。近代国家では無いのかも」
「レーダー長からパイロットへ、陸地だ、針路2-2-5。変針してくれ」
『こちらパイロット、了解』
「あと陸地の写真を撮りたいんだが、高度500mまで降下可能か?」
『了解した、
機長の手の操縦桿が押され、水平尾翼の昇降舵が下へ傾く。249kNもの推力を誇る4基のロールス・ロイス Trent 500ターボファンエンジンが唸り、辺りに音を撒き散らす。
RC-340偵察機は、この世界を知るために降下していった。
◇◆◇
午前10時──
《クワ・トイネ公国 マイハーク守備隊》
貿易で栄えるクワ・トイネ屈指の都市、マイハーク。いつもはのどかな都市であったが、今日は違った。
「総員戦闘配置!これは訓練ではない!繰り返す!これは訓練ではない!」
「敵騎は相当速い!矢の照準を見間違えるなよ!!」
皆が空を見上げていると大きな音を上げながら黒く大きい物体が降りてきた。そしてそれを見た人々は驚愕する。
──それはワイバーンと言うには、あまりにも大きすぎた。うるさく黒くそして大きすぎた。それは正に化け物だった
「なんだこの音は!?」
「魔法攻撃かもしれない!全員耳を塞げ!」
そういう間にも、敵騎はぐんぐんとこの都市に近づいてくる。近づくごとに敵騎の大きさが露呈し、人々はあまりの恐怖に立ち尽くしたり、ズボンの股が濡れたりしていた。
「ヒィッ!」
「神よ....」
「なんで大きさだ!」
「びびるなぁ!総員矢を構えよ!」
それまで呆然としていた兵士たちもマイハーク防衛騎士団団長でいる『イーネ』の言葉に勇気づけられる。彼女の言葉に矢を構えて敵騎に狙いをつける。
「撃てぇ!!」
大量の矢がRC-340に撃ち出されるが、機体の速度は早すぎ、当たらない。
「む!去っていったか…」
「(攻撃が目的ではないのか?ならばなぜ…)」
◇◆◇
5分後──
《クワ・トイネ公国マイワーク近郊 高度2500m地点 第六飛龍隊》
迎撃命令を受けた第六飛龍隊は高度2500m地点で待機していた。敵騎を低空で捕捉し、導力火炎弾を撃ち込むと、市街地に被害が出かねない。
「目標発見!」
「導力火炎弾用意!」
導力火炎弾とは体内の粘性のある燃焼性の化学物質に火炎魔法で点火し、炎を風魔法で包み込むものである。
その導力火炎弾を撃ち込もうとするが──
「なっ!」
敵騎は高度を上げ逃げてしまった。その高度はワイバーンの上昇限界の4,000mよりも高く、そして速く飛んでいる。
「ワイバーンよりも上に登れるだと…一体どんな国の竜なんだ…」
第六飛龍隊の竜騎士達は、呆然と敵騎を見送っていた。
◇◆◇
5分後──
《クワ・トイネ公国 マイハーク近郊上空 RC-340コックピッド内》
「はっはっは!危なかったな!」
「危なかったなじゃすみませんよ!あの姿勢完全に火炎弾を撃ち込もうとしてたじゃないですか!」
「うるせー!だからお前は童○なんだよ!」
「なっ、貴方だって○貞じゃないですか!」
「残念だったな、この前捨ててきた」
「なん…だ…と…」
『こちら情報解析室、全て丸聞こえだ。しょうもない話をせずにさっさと基地に帰れ』
「うるせー!イ○ポチェリー野郎が!」
「そうだそうだ!」
『私はE○でも童○でもない、それに結婚している』
「「Fu○k!!」」
上層部に聞かれたら怒られそうな会話をしながらRC-340は帰還した。
◇◆◇
中央暦1639年5月25日──
《日本国東京都東京都千代田区首相官邸
国家安全保障に関する重要事項および重大緊急事態への対処を審議するための会議である
「我が国の南西に大陸か…」
総理大臣はそうつぶやいた。RC-340が偵察した画像は確認した国家の文明レベルの判別に大いに役立った。
だが、それを調べる過程でコックピットのボイスレコーダーにパイロット二人のお喋りが混ざり、上官の丸秘エピソードが入っていたためにパイロットと情報解析長は減俸の上に左遷された。
「確認できた情報では中世レベルの国家があるようです、あとエルフなどの人種もいるようです」
「本当に異世界なのか…ラノベかな?」
「真面目に仕事してください」
「とゆうことは低身長爆乳エルフ耳少女がいる可能性が微レ存?」
「
近くの大臣たちは官房長官と総理の漫才をスルーしていることから、この内閣の総理へのイメージがわかる。
「こんな国は地球上に存在しないでしょうからこれは…」
「異世界…なのか…」
「バカ言え、そんなことがあることないでしょ」
「ではどうやって説明するのんだ!」
「それは…」
「ほら!言えないだろ!冗談なのはお前の髪だけにしろ!」
「なんだァ?てめェ......」
禿げ大臣たちの喧嘩が始まるが防衛大臣の『川野小太郎』の一喝で終わった。
「ぐじぐじしてからないも始まらないだろ!これじゃあ国内の食料も時期になくなるぞ!」
「貯蓄された食料だけでは到底足りない!これでは外からではなく内から滅亡する!」
「海自を派遣してその国家と連絡を取るのが先であろう!」
「うん、そうだな。防衛大臣、空母打撃群を見つけた大陸に派遣せよ」
「はっ」
これによって海上自衛隊第6艦隊第10空母打撃群が派遣されることになった。
《第10空母打撃群編成》
第6艦隊 第10空母打撃群 CVN-73ずいほう
第10空母打撃群直属ミサイル巡洋艦 CG-65かわかぜ
CG-67うみかぜ
第91空母護衛隊 DDG-155 むらくも
DDG-164 しののめ
DD-115 はやなみ
DD-116 はまなみ
DD-104 きりさめ
DD-106 さみだれ
◇◆◇
新世界暦1639年5月26日──
《クワ・トイネ公国 マイハーク沖30kmの地点》
クワ・トイネ公国海軍第二艦隊所属の哨戒船『ピルーティー』はいつもの哨戒をしていた。
ピルーティー船長、『クルフォリス』は獣人の特徴である視力の良い目で水平線上を見ていた。
うっすらと見える大きな艦影。それも確認するべく彼は双眼鏡を覗く。
「なっ!」
彼の目に映ったのは100mを超える9隻の艦船。どれもがクワ・トイネの主力艦船より大きく、強大であった。
彼は直様通信員に魔信を打つよう伝える。
◇◆◇
10分後──
《クワ・トイネ公国 マイハーク港 クワ・トイネ公国海軍基地》
クワ・トイネ公国海軍第二艦隊司令『ノウカ』は、クワ・トイネ公国海軍基地司令室で副官らと話していた。
「ノウカ司令はどう考えますか?マイハークの未確認飛行物体の事?」
「やっぱり緑の神が使わした太陽神の使いではないですかねぇ」
「うむ、北東海域は小さな島々があるだけだっただろ…ならば列強『パーパルディア皇国』、あるいは我が国と対立関係にある『ロウリア王国』だろうが…」
「飛行機械をパーパルディアがムーから輸入した可能性もあるな」
「だが…ムーの飛行機械は50mも無いしなぁ」
「失礼します」
その時、部屋の扉が開き、通信兵が勢いよく入ってくる。
「どうした?」
「哨戒中のピルーティーから通信。『マイハーク沖にて所属不明の大型船を発見。至急応援願う…』」
「今度は大型船か?まあ良い、近くにいる船は?」
「ミドリ少佐の『ピーマ』です」
「ミドリか…奴ならば適任だろう。ピーマに至急魔信を打て。未確認大型船を臨検させろ」
「はっ」
◇◆◇
30分後──
《クワ・トイネ公国 マイハーク沖 公国海軍第二艦隊 軍船『ピーマ』》
「なんだあれは…船の化け物か…?」
公国海軍第二艦隊所属ピーマ船長『ミドリ』は、目の前の不審船団に対し臨検せよという命令を受け、報告の海域に向かった。そこには100mを大幅に超える船がおり、あまりの大きさに距離を見間違えるほどであった。
「副船長、あの旗に見覚えは?」
「…神聖ミリシアルの国旗に若干似てますが、見覚えはありません」
「あれ程巨大な艦は?」
「数十年前、パーパルディア皇国の皇帝即位式典に参加した時、パーパルディアの100門戦列艦やムーの戦艦、ミリシアルの魔導戦艦を見ましたが、前方の艦には到底及びません」
「そうか…これより臨検を行う!2名ついてこい!!」
「「はっ!」」
だが、自分が臨検しなければ愛すべき国が滅ぼされるかもしれない。そう思ってミドリは小型船に乗り込んだ。
◇◆◇
同時刻──
《第10空母打撃群 旗艦『ずいほう』艦橋内》
「国籍不明船団接近!敵対の意思はない模様」
「まさかこの年代でガレー船を見ることになるとは…」
「やはり異世界と言うのは本当なのですね…」
国内では漁師たちが捕れる魚の種類が違うと騒いだり、星の位置が違くて新しい星があると国立天文台が発表したことによって異世界に転移したのではないかと言う意見が多くなってきていた。
事実、日本国政府は異世界に転移したと断言しており、自衛隊高官や内閣には事実を公表したが、国民や国会には混乱を招くとし、公表していない。
だが、接触する第10空母打撃群には公表したが、殆どの人物が疑っていた。
「よし、外交団達をエレベーター3近くに待機させ、エレベーター3を下ろして国籍不明船団と対話を試みろ。」
「そして特殊作戦任務部隊と各艦はMITを展開、不意の乗船に備え、各艦はM2重機関銃をいつでも発射できるようにしろ」
「ただし交戦は攻撃を受けた場合とし、こちらからの攻撃はしないように厳命しろ!」
「了解、MITの展開及び交戦規程を各艦に送信します」
これによって第10空母打撃群は異世界艦隊との接触に対応した。
◇◆◇
3分後──
《第二艦隊主力船『ピーマ』船長 ミドリ》
近づいた時にまず思ったのはデカい。自分が近づいている艦は目測で300m。その他の艦も100m以上あり、公国海軍の主力船の何倍もある。
さらに意味のわからない兵装。我が軍の主力武器は弓矢やバリスタであるが、不審船は
「しかし…どこから入るか…」
不審船は入る所がなく、何処から入って良いかわからない。その時、不審船の横についてある大きな甲板が下に動いた。
「む!魔法装具か!?」
「人です!人がいます!手を振っているようです!」
「敵意は無しか。行ってみよう」
オールを漕ぎ、降りてきた甲板に近づくと、近くに居た人間が港の荷物運搬用の機械のようなものを動かして、即席の階段を作り上げた。
「あそこから入れと言うことか…行くぞ!」
「「はっ!」」
ミドリは恐る恐る階段を上がり、付いてきた水夫もそれに従う。乗った後、階段を作った兵士に尋ねる。
「私はクワ・トイネ海軍、第二艦隊ピーマ船長ミドリである。貴船の所属と目的は?」
「!?言葉が通じる!?」
「??」
なぜか驚いた兵士は、直ぐに再起動し、ミドリに向けて話し始める。
「私は日本国海上自衛隊、空母ずいほう所属航海科の橋上慎也です。私に外交権は御座いませんので、甲板上の外交官殿とご会談いただきたい」
「ほう…そうか。わかった」
どうやら外交権──我が国と国交を開きたいらしい。だが、このような巨船を作れる国があったら、とっくに見つけられているはずだ。そう考察している時、ハシガミが黒い箱に向けて何かを喋り始めた。
「(ん?なんだ?)」
「動きます。ご注意ください」
「なんだn…うおぉぉおぉぉお!?」
「地面が動いたぞ!?」
魔法装具が動き、地面が浮き上がった。ミドリらは信じがたい出来事に瞠目する。装具が上がると、そこは騎馬戦ができるほどの大地であった。
「(こんなに広いとは!!一体どんな国なのだ!)」
ミドリが困惑していると、紺色の整った礼服を着た男が、黒い筒を持った青色の服装をした兵士に脇を固められ、出て来た。
礼服を着た男が一歩踏み出した時、ミドリの脇の部下が一瞬身構えたが、ミドリが諌めるように手で遮った。
「私は、クワ・トイネ公国海軍 第2艦隊所属船、ピーマ船長のミドリである」
「現在我が軍は警戒体制にあり、貴船はクワ・トイネ公国の領海に接近している」
「貴船の所属並びに航行目的を教えて頂きたい」
ミドリの言葉に礼服の男は一瞬驚いた表情に包まれたが、直ぐに切り替えられる。
「私は日本国外務省、アジア大洋州局大洋州課長の田中一久です」
「この度は日本国政府を代表して、貴国と国交を樹立したくこの様な方法を取らせて頂きました」
「貴国外交関係者との会談を早期に臨みます」
「やはり貴方達は使者ということだな?」
「はい、そうなります」
「てすが…日本国と言う国名を私は存知でないのだが、何処にある国ですかな?」
その言葉に、田中は一瞬言葉に詰まる。
「…我が国は一週間前、この世界に転移をして来たのです」
「なんと…」
転移という言葉にミドリも不思議そうな顔をし、後ろの海兵も困惑していた。
「勿論我が国もそれを信じられませんでしたが、AWACSや哨戒機による情報収集の結果、そう断定しました」
「哨戒
「はい、あれは予期せぬ領空侵犯でありました」
「我が国に敵意無しと断言できます」
「承知した。先ほどの国交開設の兼、政府に連絡をしときます」
「ありがとうございます。ご返答を頂くのに何日ぐらい掛かるのでしょうか?」
「船に戻り次第艦隊司令部に魔信で連絡するので…少々お待ち頂ければ」
田中達は15世紀~16世紀のレベルの文明にその様な連絡機器があることに驚く。
「(興味深い世界だな…)」
田中は率直に、そう考えた。
◇◆◇
2時間後──
《クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 政治部会会場『蓮の庭園』》
国花である蓮が所々に生え、他の花も美しく生える蓮の庭園。
クワ・トイネ首相官邸に隣接するこの庭園では、議会に相当する政治部会が開かれている。
「皆のもの、今回の鉄竜は何処の国だと考えますか?」
今回の会議では、数日前にマイハークに飛来した鉄竜の事であった。
味方ならば普通魔信で連絡を取る。領空侵犯をすると言う事は敵対国家の可能性も高い。
クワ・トイネ公国の首相『カナタ』である。彼はエルフ族の細身で長身の若い男性である。
カナタの右側に座っている情報分析部長が手を上げ、発言を許可される。
「我々情報分析部の分析担当官によると、ムーなどの機械文明国が扱う飛行機械の内、大型機に分類される物だそうです」
「ですが、ムーの飛行機械は、最大の機でも全長は28m、侵入騎の全長は50mに及びます」
「また、ムーなどではプロペラ──風車の羽根のような物ですね。それを回して導力を得るレシプロエンジンを使いますが、侵入騎はプロペラが無く、筒型の騒音を立てるものが付いています」
「そして侵入騎の速度はおそらく700~800km/h。ムーの最新鋭戦闘機の速度でも約350km/hだと聞いています」
「そうか」
「それと…」
「どうした?」
言うのを躊躇った情報分析部長にカナタは声を掛ける。
「はっ、ムーの遥か西、文明圏外で新興国家が誕生し、付近の国を荒らし回っているそうです」
「彼らは、自らを第八帝国と名乗り、第2文明圏の大陸国家群連合に対して、宣戦を布告したと昨日諜報部に情報が入っています」
円卓を囲む男たちに笑いが灯る。文明圏外の国が列強国2カ国がいる第2文明圏に宣戦布告するなど気が狂った事である。
「その何が今回の件と関係あるのだ?」
「はい、実は第八帝国と名乗る国の侵略を受けた国に我が組織の職員がおりまして、その男は逃げ帰って来たのですが、その時20mの飛行機械を見たと言うのです」
「ふむ、おそらく気が錯乱しとるのであろう。兎も角その第八帝国?とやらは我々と遠く離れておるし関係無い。直ぐにレイフォルかムーに倒されるであろう」
分析部長の報告に軍務卿が反応する。会議は平行線を辿っていた。
その時、パイプを口に咥えた第二艦隊司令、ノウカがやって来る。
「お待ちください、司令。この部会は招待された方しか入れません…」
「緊急の要件だ。良いであろう」
「ちょっとま…ゲホッゲボッ!煙たいです!」
防ごうとしたエルフもノウカが持つパイプの煙にやられて立ち止まる。
彼は円卓の前で敬礼し報告する。その前に外務卿『リンスイ』が彼に噛み付いた。
「何事か第二艦隊司令!!あんたはお呼びでない筈だ!!」
「おやおやこれは外務卿。あなた方が話している未確認騎のことについて報告に来たのですよ」
リンスイも負けずと反論しようとするが、カナタの声で制止される。
「おやめなさい外務卿。未確認騎と関連した報告だと言っています」
「ありがとうございます首相、報告いたします」
ノウカは一息ついてから話し始める。
「数刻ほど前、第二艦隊の哨戒艦が大型船9隻と接触」
「その後、我が第二艦隊司令部の方で臨検を命令し、軍船ピーマが臨検に向かいました」
「臨検した大型船は所属を日本国と説明。自身は転移国家だと名乗り、先日のマイハークへの未確認侵入騎も自国の物だと説明しています」
「また、現在我が国の外交担当者との対談を求めております」
「なんだと!敵対的な行動を取りながら会談を求めるだと!!」
「日本国!?なんだ?聞いたことがないぞ!!」
「首相、転移国家などとほざく連中のことなど聞く耳を持たなくて大丈夫ですぞ」
だが、首相はゆっくりと話し始める。
「近年、ロウリア王国は、亜人の殲滅と此処、ロデニウス大陸の征服を求め、近隣諸国を制圧。残るは我が国と同盟国のクイラ王国の2カ国のみとなりました」
「クイラ王国は、竜を持たない貧しい国ですが、国は天然の要塞、ロデニウス大山脈で囲まれ、山岳行動に優れた精鋭部隊の獣人部隊を保有しています」
「なのでロウリアは我が国と対立を深め、近頃は挑発も激しくなって来ています」
「ですが…」
「ノウカ司令、海軍代表として聞きたいことがあります」
「…なんでしょうか?」
まだ反抗しようとする外務卿に対し、カナタはノウカに尋ねる
「海軍はロウリアとその日本国、両国海軍と戦えますか?」
数秒の思考の後、ノウカは答える。
「…難しいでしょう。ロウリア海軍は14万人の兵と4000隻の船を揃えています」
「日本国にしても報告では、全船が100mを超える超巨大船。最大の船は300mに近いと報告にあります」
「武器は用途は不明なものが数多くあれど、大砲を装備していると聞きました」
「実際に開戦しましたら、全力は尽くしますが…苦戦は免れないかと…」
「…むぅ…」
「このように我が国は2方面作戦で戦う余地はありません」
「まず、謝罪を受け入れると言う形で日本国との会談をしましょう」
◇◆◇
15分後──
《第6艦隊 第10空母打撃群 空母ずいほう 飛行甲板上》
ずいほうの飛行甲板では、第10空母航空団
クワ・トイネと数度更新し、公都クワ・トイネの郊外にあるワイバーンの飛行場に着陸させてもらうことになっていた。
「間も無く出発します!宜しいですね!!」
「はい!よろしくお願いします!!」
パイロットと外交官リーダーの田中が喋り、ヘリコプターは発艦体制を整える。
機内には、外交団7名と、海自
『こちら管制室よりフォージャー1へ注ぐ、発艦許可が降りた。発艦せよ』
「フォージャー1、コピー。離陸する」
上部に取り付けられたローターが回転し、揚力を生む。
そのままSH-60Kは離陸してクワ・トイネ公国へ向かって行った。
◇◆◇
20分後──
《クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ郊外 ムスリント飛行場》
ムスリント飛行場司令を務める『メルポルスト』は、司令塔の上から向かって来る馬車に気がついた。
急いで下に降りて、馬車を迎える。
「外務局さん達ですか?何が御用で?」
メルポルストの問いに、外務局のリーダー『スルト』が答える。
「実は、我が国と会談をする予定の使節団が飛行場が周囲にないか確認されてね。そこで此処が使われることになったんだ」
「はぁ…」
メルポルストは、事前に知らされてなかったため、困惑していた。
後ろにいる司令部要員達もかなり困った顔をしている。
「しかし…外交官がワイバーンで来るんですか?」
「いや~…詳しくはなんとも…」
その時、海の方角からパタパタと言う風を切る音が聞こえて来た。
皆が不思議に思い、音の聞こえる方角を見つめる。
「なんだあれは!?」
「風車の羽が回転している!!?」
謎の騎は上空で静止し、周囲にパタパタと言う音と砂嵐を巻き起こす。
そのままゆっくりと、地面に車輪をつけた。
その後、横からドアが開き、外交官と及ばしき制服を着た男たちが降りて来る。
彼らは周囲を見渡し、此方を向いた。
スルトは意を決して、その男らに話しかける。
「日本国の皆様でお間違い無いですか?」
「はい、日本国外務省アジア大洋州局大洋州課長の田中一久です」
「私はクワ・トイネ公国外務局のスルトです。本日はよろしくお願いします」
いきなり課長クラスが出て来たことにビビるも、スルトは自然的に対応する。
「では早速公都の方へ馬車で向かいたいと思いますが…後ろの方々もお連れの方でしょうか?」
スルトは田中の後ろに、黒い筒を持った青い服の男たちがいた。男達は黒い軽鎧を着ており、周囲を見渡していた。
「ああ、彼らは護衛です。念のため連れて来ましたが…ご迷惑でしたか?」
「いえいえ、大丈夫です。ですが全員は連れて行けず、会談場所への入室は出来かねませんが…」
「大丈夫です。ありがとうございます」
その後、外交団7名と護衛の
◇◆◇
1時間後──
《クワ・トイネ公国 公都クワ・トイネ 首相官邸 大会議室》
クワ・トイネ公国首相カナタは大会議室の椅子に座りながら考えていた。
我が国は貧弱であり、ロウリアとは戦争間近だ。
日本国は、軍務局からの報告によると300mの巨大船や高速・大型の飛行機械など、我が国と技術力が隔絶していると思われる。
もし、日本が北のパーパルディア皇国のような覇権主義国であったら、我が国は最も簡単に潰されてしまう。
クワ・トイネを愛する者としてはそれは必ず避けたい。
幸いにも、軍事力を盾にした恫喝外交は行われていない為、もし味方に付いてくれたら強力な味方を得るであろう。
「日本国の使節団の皆様入られます!!」
クワ・トイネの参加員は立ち上がり、使節団を待つ。
扉が開き、日本国の使節団が入ってくる。
クワ・トイネ側の服装よりは装飾は付いてないが、布の質感は良く見える。
「どうぞお座りください」
「ありがとうございます」
カナタが使節団に着席を促す。
そして双方が腰を下ろした所で日本国の外交官が口を開いた。
「日本国外務省アジア大洋州局大洋州課長の田中一久と申します。本日はお忙しい中、このようなお時間を頂き、感謝いたします」
「クワ・トイネ公国首相カナタと言います。遠いとこからよくいらっしゃいました」
「私はクワ・トイネ公国外務卿リンスイです。この度の会議では司会進行を務めさせていただきます」
「先ず、我が国の
「公に謝罪を受け入れます。その上で貴国についての誠実な説明を求めたい」
「ごもっともです、不確かな情報による誤解は双方にとって損失となるでしょう」
「そこで本日は資料を作成しましたので配布させていただきます」
日本側の側に控えていた職員が、カバンの中から数枚の資料を取り出し、クワ・トイネ側に配布する。
公国の参加者は、紙の薄さと綺麗さに瞠目する。
「(なんだこの紙の質は!!このような紙、これまでに一度も触ったことがないぞ!!)」
驚くままリンスイは、資料を読み始めようとするが、すぐに顔を顰める。
「なんですかな?この文字は?我々は全く読めませぬぞ」
「なんと…日本語を話せるのならば読めると思っていましたが…間違いでしたか…」
「私からするとあなた方が世界共通語を話してるように聞こえますぞ」
直ぐ様、田中はカバンから大きなボードを取り出し、説明を始める。
「では、口頭で説明をさせていただきたいと思います」
「我が日本国は貴国から北東に1500kmに位置し、76万8000km2の国土と3億2700万人の人口を有する島国です」
「あそこの海域は無人か有人の島々しか無かった筈ですぞ!」
「原因は不明ですので客観的事実から…この世界に国土ごと転移したと考えられます」
リンスイはフン、と鼻を鳴らし強めの口調で田中に声を上げる。
「そらまた始まった、あなた方はおとぎ話を元にしたホラ話を吹聴しておるのか!?」
「確かに、我々のいた惑星でもこんな事を言っている国がいたら馬鹿にするのも当然ですが… ですが我々は星の座標、惑星の大きさ、大気の成分などの客観的証拠を集めた上で申し上げております」
田中はそう言った後、一旦言葉を区切り話し始める。
「我々は貴国使節団をお迎えする用意があります。私が言うより貴方方が選抜した使節団に見ていただければ信憑性は遥かに上がるでしょう」
「もちろん移動手段や滞在に掛かる部分は我が国が責任をもって行わせて頂きます」
「そんなこ…「よいと思います」首相!?」
「リンスイ、貴方ならわかると思うがあのような我々より劣る小島が集まっても大型船など到底建造できない」
「我々を超える文明の国がせっかく招いてくださるのだ。これを拒否する理由はない」
「それに日本国の方々の話ぶりは誠実で礼節を弁えておられる。国交開設も良いと私は思う」
その言葉に、リンスイは黙り込み、田中に国のトップから国交を開設しても良いという言質が取れたことに安堵する。
「して、貴国は我が国と国交を結ぶについて何が希望事項はありますか?」
「まず、この世界についての情報が欲しいです。我が国も総力を上げて情報を収集していますが、流石に全部は分かりません」
「地理情報や把握してる限りの国家に関する情報などです。こちらとしましてはある程度の物品や技術の輸出、インフラ整備などを考えております」
「──それに希望があれば安全保障条約もです」
「「!!」」
カナタとリンスイは驚愕する。その言葉は公国が願っていた言葉であった。
カナタは慎重に言葉を選びながら尋ねる。
「タナカ殿、本当ですか?」
「勿論。ですが国会──つまり議会の審議を通すことになりますが、元いた世界でも数カ国と安全保障条約を結んでいたので、それと同じ範囲であったら不可能では無いと思います」
その言葉にカナタとリンスイは喜色の表情を浮かべる。
クワ・トイネにとってロウリア王国との緊張状態に光明が見えた瞬間であった。
「タナカ殿、国交締結を前提に使節団の派遣をお受けいたします。リンスイ、早急に使節団の編成をしなさい。大使には全権を委任します」
「はっ、早急に取り掛かります」
「では、タナカ殿。宜しくお願いします」
「此方こそよろしくお願いします、カナタ首相」
2人は硬い握手を結んだ。
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