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2022/7/26 大規模修正
中央暦1639年5月10日──
《クワ・トイネ公国 マイハーク港》
公国の最重要貿易拠点となっているマイハーク港。
そこには、日本へ派遣される、クワ・トイネ公国使節団の姿があった。
使節団の人員は、各部門の第一人者であり、多くの権限が与えられている。
既に、日本国外務省の職員が来国しており、使節団に挨拶していた。
「今回、使節団の皆様の引率を任されました、日本国外務省職員の平田と言います。よろしくお願いします」
「此方こそ、宜しくお願いします」
「では、今回のスケジュールを説明します」
そう言うと、平田はIpadを鞄から取り出し、地図を開く。
その光景に、使節団は驚愕する。板に色の付いた地図が現れたのだ。
「ヒラタ氏、その板は何ですかな?」
「ああ、これはIpadと言われる電子機器です」
「あい?ぱっど?不思議な物ですな」
その後、スケジュールの説明が始まる。
「先ず、我々は我が国の豪華客船で中華地方南部の都市香港へ入港します」
「一泊した後、ヘリコプターで江西大演習場へ移動。そこで陸上自衛隊の演習を見ていただきます」
「演習後は南昌駅から新幹線で上海国際空港へ移動。空港隣接のホテルで一泊します」
「その後、内閣総理大臣専用機で東京へ移動、会談をします」
そこまで質問した後、1人の男が手を挙げる。
「質問よろしいでしょうか? 内閣総理大臣専用機とはどのようなものでしょうか?」
「貴方は確か…外務省のヤゴウさんですね」
「内閣総理大臣専用機とは内閣総理大臣──我が国の政治的トップ専用旅客機、この世界風に言うなら鉄竜…でしょうか」
「ありがとうございます」
「では、ご案内いたします」
平田が使節団を先導し、ヤゴウも続こうとした時、クワ・トイネ公国軍務局から外務局に出向している将軍ハンキが話しかけてくる。
「ヤゴウ君、私は船旅が嫌いなのだが…どうすれば良いかね」
「ですよね、船旅はじめじめし、船内は暗く、疫病も流行りますもんね」
「うむ。私は事前に日本へは2日で行けると聞いたが、伝達ミスではないかね?」
「はい。ですが、そこは『鉄竜』を運用する国なので…」
「『鉄船』と言うことか?それでは沈んでしまうではないか」
2人が話している時、平田が声を上げる。
「皆様、あれが今回ご乗船いただく豪華客船『飛鳥Ⅵ』です」
「「「「(デカイ!)」」」」」
それはもう、船ではなく一つの小島である様だった。
──『飛鳥Ⅵ』総トン数256,580トン、乗客定員6,547人、乗組員数2,890人、全長368m、全幅69mの世界最大の豪華客船である。
「帆は?帆は何処にあるんだ?」
「帆はこの船にありません、ディーゼル機関と言う機械によって動かします」
「なっ、帆がいらないなんて…是非とも見てみたいですな」
「あちらの小舟で乗船します、ついてきてください」
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5時間後──
《マイハーク港より北に100kmの海上》
ハンキとヤゴウは興奮していた。
それもそのはず、公都クワ・トイネよりも発展した一つの
「これが船の上なのか…とても明るい、まるで光の精霊でも住んでいるかのようだ」
「全くだ。食事も豪華なのであろう」
2人は別れ、各々の部屋に入る。
ヤゴウは部屋に入ると、感嘆の声を挙げる。
「……城の様だ」
天井では硝子が光り輝き、部屋を照らしている。
そっとベットに触れた時、ヤゴウに電撃が走る。
「(なんだこの柔らかさは!!雲に座ったかの様だ!!)」
フカフカとしたベットはすぐに寝れそうであるが、彼はまだ部屋を探索しようとする。
「おお!熱湯が!熱湯がすぐに出てくるぞ!!…熱っ!!!」
風呂を沸かして、火傷したり、
「この箱は…涼しい!!これであれば生肉も腐らせることはないぞ!!」
冷蔵庫を開け閉めしたり、
「む?これはなんだ?中央にボタンがあるな。押してみよう」
『トゥトゥトゥン…自動で掃除を開始します…』
「ぬぉぉぉぉお!動いたぁ!喋ったぁ!!??」
ル○バに驚いたり、彼はワクワクが止まらなかった。
子供の頃に戻ったかの様で、彼は日記を書いていた。
「(こんな物を作り出してしまう日本国とはどんな国なのだろうか)」
「(列強国に匹敵する力を有しているのか…)」
「ワクワクが止まらない!童心に戻ったかの様だ!」
一方、ハンキは荷物を置いた後、船体後部のバーに来ていた。
「ふむ…どれが1番美味しいですのかな?」
「私はこれがおすすめです」
「ではそれを一杯頂こう」
彼は、バーテンダーからカクテルを貰い、プールの側のデッキチェアに座る。
カクテルを一口飲むと、とても美味く、溢してしまいそうになった。
「軽食を提供できますが…どれにしますか?」
「メニューは何かね?」
「『黒毛和牛のハンバーガー』、『銀ダラのフィッシュ&チップス』、『北海道産高級ハムとチーズのサンドウィッチ』がありますが…」
「うむ、では黒毛和牛のハンバーガー?とやらを頂こう」
「畏まりました。少々お待ちください」
ハンバーガーと言う食べ物は食べたことが無く、ワクワクする。
数分後、パンの間に厚い肉が挟まれた物がやって来た。
「ほう…これがハンバーガーか」
一口口に入れると、幸福感が口に広がる。
柔らかく、肉汁が溢れて旨味が存在を発揮する。
「美味い!美味いぞ!」
これほどの美味い食べ物が船で食べれる日本国とはどの様な国なのだろうか。
ハンキはおかわりしたカクテルを飲みながら考える。
「帆もオールも無く動く巨大船…」
「良い物だな…」
◇◆◇
中央暦1639年5月12日──
《日本国中華地方香港市 香港港沖》
「皆様、見えてまいりましたのは、日本国中華地方香港市香港港です」
「この後はリムジンバス──大型の自動車でザ ペニンシュラ 香港まで移動していただきます」
ヤゴウ達は興奮のあまり甲板に朝早くから立ち、早くつかないかと待ち侘びていた
使節団の前に現れたのは見渡すばかりの大都市、50階以上ある建物が並び立つ姿はとても幻想的であった。
「(な、なんだこの都市は!マイハーク、いや第一文明圏の都市よりも巨大だ!)」
香港港に着岸してリムジンバスに乗り、一行はザ・ペニンシュラ香港へ向かった。
車内から見渡すと数えきれないほどの車達、『内燃機関』で動く車のことを聞かされているが、こんなにいるとは思いもしなかった。
「明日は陸上自衛隊総合火力演習を見ていただきます」
「そうごうかりょくえんしゅう?とはなんだね?」
「総合火力演習はクワ・トイネで言うと陸軍のパレード…です」
使節団は優れた技術力を持つ日本国の陸軍が観れると知り、寝れない夜になるな、と思った。
(ベットがフカフカで即落ちした)
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中央暦1639年5月13日──
《ザ・ペニンシュラ香港 ロビー》
「皆様おはよう御座います」
時間は午前8時、使節団は美味しい食事とフカフカベットでご満悦だ。
「まず、空港に移動していだだき、その後ヘリコプターにて江西大演習場に移動していただきます」
江西大演習場は人工的に作られた演習場であり、広さは地球でもトップクラスであった。
一向は、リムジンバスで香港国際空港へ向かった。
空港の駐機場には、大きな音を立てながらEC-225政府専用ヘリコプターが駐機していた。
「こちらです!着いてきてください!」
「なんだね!この風は!?」
「ローターの風です!」
大きな音を立てるヘリコプターに使節団は戦々恐々し、ゆっくりと乗り込む。
機内は清潔感があり、外の爆音もあまり聞こえなくなった。
「うぉっ!飛んだぁ!?」
「ヘリコプターはローターの浮力で上昇します!」
「すごい技術だ!是非とも我が国でも導入したいな!」
使節団を乗せたヘリコプターは江西大演習場に向けて出発した。
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1時間後──
《日本国中華地方江西県 江西大演習場》
使節団を乗せたヘリコプターは、演習場の司令室の屋上へ着陸する。
「到着しました!ここが江西大演習場です」
「ほぉ、これはすごいですな」
「見ないものがたくさんあるぞ」
「彼方ですか?あれは陸上自衛隊の現役戦車です」
田中が指す先には陸上自衛隊の現役戦車である
『10式戦車A型』
『90式戦車A型』
『74式戦車G型』
『74式戦車H型』
の姿があった。
「おぉ、すごい外見ですな!とても強そうだ」
「カッコいい!とってもかっこいいぞ!」
使節団には角張っており、重戦車のような威容な90式戦車が人気のようだ。
他にも『16式機動戦闘車』や『89式機動戦闘車』『89式装甲戦闘車』『10式装甲戦闘車』があった。
一向は、一般観客から離れたVIP席に座り、演習開始を待つ。
南部方面総監の訓示が終わり、演習が始まる。
「皆様、まもなく10式戦車による射撃演習が始まります!」
平田の声により使節団は右側より侵入してきた戦車に目をやった。
『3、4の台、装甲車、1班、対りゅう、撃て!』
大きな音を立て10式戦車の戦車砲から成形炸薬弾が発射される。
そして大きな音と共に的に着弾した。
「すごい!威力が大魔道士並みだぞ!」
「あれがかの魔導砲とやらか!凄まじい火力だ!」
「しかし、あれであれば大魔導士を呼べばよいだろう?わざわざああゆうのを作らなくては良いのでは?」
戦争の方法を知らない外務省の人間が陸軍の人間に語りかける。
「いや、あれのすごい所は何両もおり、しかも見た感じ鉄で覆われている」
「おそらく魔法を跳ね返すだろう…、ヒラタ殿、あの地龍は何匹いるのだね?」
「ええと、我が国にはあの10式戦車A型がおよそ1,200両ほど、全部の車両を含めると予備役含め3,817両います」
「「「!!!」」」
平田の言葉に使節団は日本に来てから何回かわからない程の驚愕をする。
大砲の爆発は大魔道士級。一国に大魔道士など3人しかいないので、3,800人など夢の様な数字である。
「凄まじいな…魔道士が3,800人など…」
「我が国も是非導入したいな!」
「それにつきましては今夜協議しますので暫しお待ちください」
その後も演習は続き、陸上自衛隊の実力を目にした使節団は日本と友好を結んだのを神に感謝すると共に、日本の兵器を導入したいと考えた。
◇◆◇
午後12時──
《日本国中華地方江西県南昌市 南昌駅》
一向は、南昌駅に来ていた。
駅には多くの人々がおり、人々は見慣れぬ格好をする使節団に驚いたり、黒い板を向けている。
ホームに入ると、アナウンスが聞こえて来た。
『中華新幹線をご利用頂きましてありがとうございます』
『間も無く12番線に12時15分発、みらい239号、上海国際空港行きが到着いたします』
『安全線の内側まで、お下がりください』
『Thank you for using the Zhonghua Shinkansen…』
到着を知らせるアナウンスが聞こえ、使節団は右を見て来る新幹線を探す。
遠くの方で、うっすらと見える気がした。
「む!早いぞ!!」
「うおおおおぉぉお」
強烈な速度で来たソレは、急激に速度を落とし、ピタリとドアが使節団の前方へ止まる。
それを見た使節団は、固まっていた。
「…私は凄い所へ来ましたな…」
「…夢だと言ってくれよ…」
一向は新幹線に恐る恐る乗り込み、上海国際空港へ向かう。
◇◆◇
中央暦1639年5月14日──
《日本国中華地方上海府 上海国際空港》
隣接のホテルで一泊した使節団は東京へ移動する。
空港内を移動するバスの中でハンキとヤゴウは会話していた。
「わしは驚き疲れた。もう一々驚かないぞ」
「私も驚きまくりましたし、もう何も怖くありません」
2人はぐったりとした表情で呟き、周りの使節団もうなづく。
バスが止まり、平田が一向へ告げる。
「着きましたので、移動します」
「あれがエアバスE380 内閣総理大臣専用機です」
そこには、クワ・トイネの家より巨大な飛行機があった。
とてつもない大きさの鉄竜に使節団は驚愕を隠せない。
「(一体何なんだこの国は!)」
「ミリシアルでもこれは作れまい。何という事だ…」
使節団は茫然自失となりながら、旅客機に乗り込んだ。
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午後5時──
《日本国関東地方東京都 迎賓赤坂離宮【花鳥の間】》
羽田国際空港に降り立ち、また東京観光を終わらした一向は旅館へ泊まっていた。
一室では、今まさに実務者協議が開かれようとしていた。
「それでは協議を開催します。まず食料についてですが──」
「日本国は転移以前、年間7550万トンの食料を輸入していました」
「勿論数多の国からの総量をとなりますので、貴国のみを交渉対象とはしていませんが…」
「我々はこの危機を打開するために相応の対価を支払う用意があります」
「安全保障も…検討できます」
「「「「「!!!!」」」」」
使節団は驚愕する。ロウリア王国との危機が目前に迫っている中、その言葉は途轍もなく欲しい言葉であった。
日本軍の実力も今回見た結果、とんでもない実力を誇っている。
「そうですね…正直、品目の多さに戸惑っています」
「聞いたことのない様な品もあるので、それらを除く、あるいは代替品で良いのであれば──」
「7550万トン、我が国だけで賄えます」
「「「「「!!!!」」」」」
今度は日本側が驚愕する。
7550万トン、それを一国で賄えるなど、とんでもない国だ。
「ただし、ただしです」
「これほどの量を定期的に運び出す設備を我が国は持ち合わしていません」
「…成程…これは両国にとってまたとない幸運なのかもしれません」
「幸運?」
「我が国の
「我が国がインフラ整備・安全保障、貴国が食物を輸出する。如何でしょうか?」
「「「「「!!!!!」」」」
「(日本国の技術は途轍もない!ならば、産業革命が起きるぞ!!)」
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中央暦1639年5月20日──日本、クワ・トイネ国交開設、同時に日桑安全保障条約締結。
日本は転移危機を脱するべく、クワ・トイネ公国から農作物の輸入を開始。同時にクイラ王国からの石油採掘権を取得。
それに伴い、両国のインフラ整備に着手。文化交流も盛んになり、この時までは順調に進んでいた。
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