中央暦1639年8月30日 19:00
クワ・トイネ派遣軍基地 作戦本部簡易テント内ーーー
「これより、ロウリアの首都ジン・ハークで実施予定のロウリア王捕獲作戦の会議を開催します」
「ロウリア王の捕獲についてですが、国民への大義名分が必要なのでロウリア王に殺人罪を適用し逮捕します」
「そのため、最後は警察官が逮捕行為を担当するので、ヘリによる降下には警視庁のSATも参加します」
「最初にSAT隊長の青木さん、ご挨拶をお願いします」
青木と紹介された警察官が敬礼し、立ち上がる。
「初めまして、警視庁警備部警備課第1課の特殊強襲部隊小隊長の青木と申します」
「本作戦で陸上自衛隊の方々のヘリに同乗させて頂くことになりました、よろしくお願いします」
青木が頭を下げると、参加者も返礼する。
「ロウリア王国の王、ハーク・ロウリア34世には外国人を多数殺害した罪で逮捕状が出ています」
「今回は戦場なので、検察官では不可能。また通常の警察官では捜査の目的を達成することが難しいと判断されたため、我々特殊急襲部隊が派遣されることになりました」
挨拶が終わり、青木が下がる。
テントの電気が消され、プロジェクターからスクリーンに映像が映し出される。
「今回の目標は、ロウリア王の身柄を拘束する事にあります。よって、ロウリア王の身柄を確保次第、すぐに急襲部隊は撤退しなければなりません」
「長期戦になるからな」
長期戦になるとクイラ王国に攻め込まれ資源の確保が困難になる。
また、中央国家情報庁と防衛省の国家情報安全保障局によってロウリアの背景に列強、パーパルディア王国が関与しているとの情報があり、
パーパルディアの兵力は大したことはないが、属国を多数従えており、数で来られると防衛が厳しくなる。
そのため政府は一気にロウリア王国を滅亡させようとしていた。
「当初、ヘリボーン作戦のみで王城を奇襲し、ロウリア王の身柄を確保して指揮系統が崩壊したところで機甲部隊による殲滅を行う作戦が挙げられましたが、時間が経つにつれて王城内に大量の兵士が雪崩れ込み、王の発見に時間が掛かった場合、脱出が困難になることはもちろん、最悪隊員の生死に関わると指摘されました」
「そこで、空自戦略爆撃隊、海自空母打撃群による爆撃によってロウリア軍を分断し、第7機甲師団、第42師団を突入させる作戦を採用しました」
「まず、海上自衛隊第4空母打撃群艦載機による空襲及び第1艦隊第3護衛隊群第32護衛隊に所属する戦艦『とさ』による艦砲射撃によってジン・ハーク北側の港に大量に停泊している木造艦船を破壊し、海上作戦能力を奪います」
「次に、空自のB-52H、B-1B、B-2、B/P-1による戦略爆撃を各諸侯の拠点、オウラ、スフーラル、メアリ、アエゴジス、ヴァクーに実施します」
「各諸侯の王への忠誠心は低いようですが、戦後処理時に戦力を見せつけて内戦を無くしたいので」
「政府はアメリカとかに統治させたいらしいな」
転移時、各国大使館は母国がなくなったとわかった瞬間外務省に駆け込み、それなりの対価と引き換えに異世界でも国土を持ちたいと要求してきた。
「特にイギリスが強く要望したと….」
「「「あっ(察し)」」」
特にイギリスは相手の文明力がわからない時は日本国に賠償金を求めたが、一転異世界の文明力が中世レベルだと分かると『一緒に転移したイギリス軍、自衛隊に編入してもいいから国土と利益頂戴』と言ってきた。
(勿論、日本政府は
「え~再開します。空爆完了後、陸上自衛隊第7機甲師団、第42師団は国境から王都まで進軍し、一気に王都前の大平原に一夜で展開、王都からの目視範囲に部隊を配置します」
「これにより王都内の兵力を陸自に釘付けさせ、兵の注意を引きます」
「この時、適時攻撃を加えて適度な損害・緊張を与え、ヘリボーン部隊が行われる寸前に強めの攻撃を加え、王都本格侵攻であると誤認させます」
「また、王都防衛用のワイバーン約150体への対処ですが、王都は海から約43km離れているのでSM-2により、エアカバーを行います」
「戦闘機は出さないのか?」
「はい。検討したのですが、戦闘機を出すと空に注意を向けられ、ヘリボーンも失敗する確率が低くなるため、中止されました」
「ロウリア王国軍の注意が揺動部隊に向いたら、王城の広間にヘリボーンを実施し、陸上自衛隊特殊作戦軍団第1特殊作戦部隊零作戦分遣隊とSATを降下させます」
「この時、衛兵と戦闘になると思いますので排除し、非戦闘員はゼロフォースが持っているレーザーガンで拘束します」
「その後、おそらく王の間奥の緊急控室にいる王の身柄を拘束、全部隊撤収します」
「城壁外に展開した兵が戻る前に王をヘリに収容させる必要があるので降下後およそ15分以内に身柄確保、できない場合は作戦失敗とみなし一度撤退します」
「何か質問がある方は?」
若手幹部が手を挙げる。
「同見取り図に関してですが、信頼できる物なのでしょうか?入手経路を教えていただきたい」
「王城の図面は中央国家情報庁のスパイによるものです。黒塗りの部分はスパイが入れなかった場所です」
「確認します。全隊落下傘を使用して王城に降下するのですか?」
「いえ、落下傘を使用しての降下は目立つ上に狙い打ちされるリスクも高いのでヘリボーンになります」
「王城突入時刻は昼に遂行する予定でしょうか?」
「いえ。第7機甲師団、第41自動化師団が朝から敵の注意を引き、薄暮期にある程度攻撃を強めていただきます」
「なので降下する際は夜間です。各部隊GPNVG-18夜間暗視装置を付けていただきます」
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中央暦1639年8月31日
ロウリア王国 王都ジン・ハークより北北東の海上約180kmの地点
第3空母打撃群『あまぎ』ーーー
海上自衛隊第1艦隊第3護衛隊群第3空母打撃群は護衛の第32護衛隊を率いてジン・ハーク北側港を空襲しようと準備していた。
「異世界初の任務だ!スコアを上げるチャンスだぞ!」
「そうですね!俺たちに喧嘩売ったこと地獄で後悔さしてやりましょう」
飛行甲板上では第3空母航空団第302攻撃飛行隊第1飛行隊の阿部直樹3等空佐と中村大樹2等空尉のペアが軽口を叩いていた。
「やあ、林ペア。機体の調子は絶好調だよ」
「ありがとう、不調がないように頼むよ」
阿部3等空佐と中村2等空尉のペアは二人とも樹(木)が入っているため木と木で林ペアと呼ばれていた。
「ロウリアには最悪の日になりますね」
「そうだな!よし、発艦だ!」
二人はヘルメットを被り、F/A-18FJに乗り込む。
「風防を閉めてくれ」
「了解、閉めます」
中村2等空尉が風防を閉める。
『ランサー4-6、2番目に離陸しろ』
「ランサー4-6、了解。2番目に発艦する」
『では、ブレーキ、フラップ、スロットの確認を行え』
「聞こえたか、中村?左翼のフラップとスラットだ」
「よし、問題ありません」
「了解、右翼は?」
「こちらも問題無しです」
どうやら整備員の言っていた絶好調の言葉は間違いでは無かったようだ。
「兵装システムを起動。HMDバイザーを起動しろ」
「起動よし!」
「グリーンライト確認、機関砲に切り替えろ」
「機関砲スピンアップ」
「いいぞ、次はミサイルだ」
「ミサイルシステムのトラッキングよし」
「武装とフレアのチェック、よし、兵装及びカウンターメジャー異常なし」
「ラダー、フラップ、スラット、計器全て異常無し、其方の準備はいいか?」
「問題無し、いつでも行けます」
「行くぞ」
「やってやりましょう」
「発艦する」
その瞬間、『あまぎ』のカタパルトが起動し、林ペアの機体は宙へ放出される。
「良い腕だ」
「エンジン良し、速度良し」
「ギアアップ」
『ランサー4-6、旋回して方位290へ迎え、どうぞ』
「ランサー4-6、了解」
『ランサー4-6、こちら4-2。其方の右側を併進中』
「やあランサー4-2、一緒に遊覧飛行を楽しもうぜ」
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5分後ーーー
ランサー4-6はランサー4-2と併進しながら軽口を叩いていた。
「いやー、マジであのシーンは感動しました」
『それな、あの場面は作画最高だったわ』
『今回の作戦終わったら見に行こうかな?』
「やはりuf○tableは最高だな…あと30秒で目標視認圏内」
「レーダーに機影無し、迎撃ありません」
「奇襲成功。こちらランサー4-6隊よりランサー4-1へ、攻撃準備よしいつでも行ける」
『こちらランサー4-1了解、攻撃始め』
「こちらランサー4-6、攻撃開始」
「了解、安全装置解除」
「
F/A-18FJからMk.83爆弾10発が投下された。
『あまぎ』から発艦した第3空母航空団第302攻撃飛行隊はMk.83爆弾60発を投下した。
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同時刻
ロウリア王国 王都ジン・ハーク 北側港
海将ホエイルは、港を眺める。
200隻の軍船が並ぶ姿は、常々艦隊を指揮している彼の目から見てもため息が出るほど壮観だった。
「(しかし…)」
彼はロデニウス沖海戦のことを思い出す。
「(あれは海戦ではない、たった1隻による殺戮だった…)」
自分達の攻撃が全く届かない距離から、とてつもなく巨大な1隻によって撃破される屈辱。
まるで鍛えられた大人と生まれたばかりの赤子が戦ったのような、あまりに無残な戦いだった。
海戦によって彼と上司、シャークンが戦死したため(実際は海自に救出され生きている)権利移譲となって新海将になったホエイルは、200隻の軍船と7万人余りという巨大な力にも関わらず、どう展開しようとしても日本国と戦って勝てる気がしなかった。
「どうすればあの化け物に勝てる?」
彼は思考を巡らす。
そんな中、ふと頭が冴えたホエイルは、足元の水面から頭を上げた、嫌な予感がするーーいや、嫌な予感しかしない。
「なんだ?」
その時、上空から風切り音が近づいてきた。部下たちも気づいている様で何か確認させようとした時、
港に並んでいた軍船数隻が突然木片を散らして木っ端微塵になり、猛烈な音と閃光を散らして爆発、炎上する。
たった1度の爆発で軍船数隻が使用不能になる威力があるというのに、その爆発は続け様に港中を襲う。
「一体何が起こっている!!」
ホエイルは溜まらず叫んだ。
F/A-18FJ攻撃機から投下された60発のMk.83爆弾は軍船に的確に着弾し、次々に破壊を生む。
ある者は肩に拳大の木片が突き刺さり、その余の激痛に呻き声を上げる。
「ぐぁぁぁぁ…痛え、肩がいてぇよぉぉぉ…」
「逃げろぉ!!」
ある者は続発する被害に狼狽する。
「ににに、日本が攻めてきたのかぁ!!!」
次の瞬間、高空を何かが猛烈な速度で通過したのが見えた。
襲撃を知らせる鐘が鳴り響き、水夫たちが無事な船や設備を守るべく、慌ただしく動き回る。
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10分後ーーー
F/A-18FJから遅れること30分、『あまぎ』から発艦した第3空母航空団第301戦闘飛行隊第1中隊F-14E12機は、ロウリア王国王都上空に向かって飛行していた。
彼等の目標は、ロウリア海軍の港を攻撃したことでおそらく出撃してくるであろう迎撃機を排除し、ロウリア王国上空の制空権を確保すること、並びに敵戦闘機を撃滅することである。
各機の下部には中距離用の
F-14Eの編隊は、既にロウリア王国上空とその少しだけ先の港上空に展開する多数の敵航空機を探知していた。
パイロット達は、各々の経験に基づき、迅速的確な攻撃準備を行う。
「敵戦闘機コンタクト、
「攻撃目標、敵迎撃機」
「攻撃開始、攻撃開始」
「
12機のF-14Eに装備されたミサイルに固体燃料に火が灯る。
射程100km以上という99式空対空誘導弾は、胴体下から分離後、マッハ4以上の速度で空を駆ける。
ロウリア王国上空を飛行中のワイバーン達を撃滅するため、轟音と共に飛び去って行った。
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4分後
ロウリア王国 王都ジン・ハーク上空ーーー
第2、第3竜騎士団は王都上空を警戒するため、旋回していた。
100騎ものワイバーン達の姿は壮観で、王都の民たちは雄姿を一目見ようと町に溢れていた。
ロウリア王国新人竜騎士『ターナケイン』も、先輩達に混じって王都上空の警戒に当たっていた。
「ん?」
一瞬何かが見えた様な気がした。視線を動かした直後、右前を飛行していた先輩のワイバーンが消し飛んだ。
飛竜と人だった者はバラバラとなり、重力に従って墜落してゆく。
「なっ!」
ターナケインは驚愕の声を上げる。驚きはそれだけでは終わらなかった。
「お…おい!」
突然、彼の乗るワイバーンが急降下を開始したのである。
「おい!!おい!!勝手に動くな!」
「くっ…!!空の王者ともあろうお前が怯えているのか!」
ターナケインの叱咤もお構いなしに、王都外周にある三重防壁の影に転がりながら無様に着地した。
「グェッ!!」
命綱が千切れたターナケインも、飛竜から落ちて地面を転がる。
口や目に砂埃が入った。
「痛たた…ち、畜生!相棒!、何を勝手に…」
相棒に詰め寄るが、相棒のワイバーンは上空を見ながらカタカタと震えていた。
ターナケインも上空を見上げると、凄惨な光景が目に入る。
「な……何っ!!」
彼等の目線の先には、何らかの攻撃により次々と爆散する仲間達の姿があった。
100騎いたワイバーンはその数を一気に減らし、既に残り3騎になっていた。
爆発、炸裂、そして血と肉の飛散。明らかな異常事態が上空で繰り広げられ、不気味な断末魔の叫びが王都ジン・ハークに木霊する。
王都に住まう人々は、一瞬何が起こったのかさっぱり分からず、誰しもが我が目を疑っていた。
炸裂音が響いた瞬間、見上げていた上空から、赤黒い雨が降り注ぐ。
「うわぁぁぁぁ!!何だ!!何が起こっている!!」
「いゃぁぁぁぁ!!」
血をまともに浴びて狼狽する商人達、凄惨な光景に耐えられず、金切り声を上げる女性。
王都全体が大混乱となり、防衛騎士団か。異変を察知するまで、そう時間は掛からなかった。
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3分後
第3空母航空団第301戦闘飛行隊第1中隊ーーー
「全96発のAAM-4、AAM-3の命中を確認、残存機3機」
「3機?残りはどうなった?」
「ミサイルが2機まとめて葬ったか、動揺して墜落したのでは?AWACSがいないのでよくわかりませんが」
「残り3機か…第2、3分隊!降下してバルカンで仕留めろ!しくじるなよ!」
「了解!残存機の撃墜任務、任されました!」
第2,3分隊は太陽を背に急降下し、HMDバイザーを敵に合わせる。
そうすると敵の未来進路が表され、照準を合わせやすくなる。
「くたばれ!FOX-4!」
4機のF-14E搭載のM61バルカンから20mm弾が発射され、残ったワイバーン3機を撃墜した。
また、同時刻頃、日本国海上自衛隊第1艦隊第3護衛隊群第32護衛隊に所属する戦艦『とさ』の46cm3連装砲4基12門による艦砲射撃により、ロウリア王国の港湾施設は灰燼に化した。
こうしてロウリア王国海軍は完全に消滅した。
nogi-爽汰さん、戦艦紀伊さん、感想ありがとうございます。
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