中央暦1639年8月31日 午前12時ーーー
ダイタル高原 クワ・トイネ派遣軍基地 ダイタル飛行場
「こちらオウラ特急便1号、ダイタルグラウンドへ。滑走路への進入の許可をリクエストする」
『こちらダイタルグラウンド 滑走路21Rへの進入を許可する、進入後滑走路で停止せよ』
「了解、オウラ特急便1号、滑走路への進入を開始する」
ダークグレー色のB-52Hの巨体がゆっくりと誘導路から滑走路へと進入する。
そしてその後ろにもB-2、BP-1、B-1Bが列を成している。
最初の一機が滑走路の端に到達し完全に停止した。
「こちらオウラ特急便1号、滑走路上で停止した。離陸許可をリクエストする」
『こちらダイタルグラウンド、Cleared for Takeoff、離陸を許可する』
「ラジャー、これより離陸を開始する」
機長がコックピットの中心にあるエンジンスロットに手を掛け、少しずつ100%に上げてゆく。
スロットルを上げるとエンジンの唸る音が大きくなり機体が軋む音がする。
「Eighty!」
「Check!」
「V1!」
副操縦士が速度を読み上げていく。
それに比例して窓の外の景色が速く流れていく。
「VR!」
「ローテート」
機首引き起こし速度に到達し、操縦桿を引いて機体を空に向ける。
B-52Hの巨体が陸から離れ浮き上がる。
「V2!」
「Positive!」
「Gear up!」
副操縦士がランディングギアのスイッチを下げると、ランディングギアを格納する音がコックピットの下から聞こえ格納されたことがわかる。
『こちらダイタルグラウンド、無線周波数をクワ・トイネ管制に変更せよ』
「ラジャー、こちらオウラ特急便1号、周波数をクワ・トイネ管制に変更します。こちらオウラ特急便1号、クワ・トイネ管制へ」
『こちらクワ・トイネ管制、オウラ特急便1号へ 高度6000フィートまで上昇、方位268に機首を向けよ』
「オウラ特急便 了解」
『その後ポイントαにて高度12000フィートまで上昇しオウラ特急便 2、3、4、5、6、7、8号、護衛機のラプターオウラ急行便1、2、3、4、5、6、7、8号と合流せよ』
「こちらオウラ特急便1号、了解」
『こちらクワ・トイネ管制、当該空域には現在、貴隊を除き航空機は皆無である。ポイントα通過以後、任意のルートで飛行せよ。貴隊の作戦成功を祈る。幸運を。』
「こちらオウラ特急便、了解。誘導感謝する。オーバー」
オウラ特急便1号以下 護衛機のF-22Jを含めた16機はロウリア王国中部有力諸侯本部、オウラに向かって飛行して行った。
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1時間後ーーー
「機長、そろそろ沖の駆逐艦が敵航空戦力に向け、巡行ミサイルを発射する時刻です」
「そうか、そろそろ高度を落とすぞ。高度12000フィートから6000フィートまで下降」
「了解」
「こちらオウラ特急便1号より攻撃チーム各機へ、衛星写真で敵は長方形に密集して野営地を気づいていることが判明。特急便2、3、4、5、6、7、8号は我に続き一列に編隊を組め。護衛機の急行便は先行して巡行ミサイルの爆撃判定と露払いを頼む」
『ラジャー、急行便1号、2号は先行してBDAと生き残りのワイバーンの始末を行う』
投下予定地点まであと10分となった。
「レーダーに感多数 、トマホークが本機直下を通過します」
レーダーナビゲーターが淡々と報告する。
洋上のふぶき型駆逐艦群が地上で翼を休めている竜騎兵団たちに向かって放った物だ。
「こちら、オウラ特急便1号、巡行ミサイルの通過を確認、着弾まで30秒」
コックピットの中は緊張が張り詰めた。
レーダーナビゲーターが巡行ミサイルの着弾のカウントを始める。
「トマホーク着弾まで、5 、4 、3 、2 、1 今っ!」
それまで暗闇だった地平線の先に幾つもの閃光が現れた。
「Nice shot!」
「こちらオウラ特急便1号、現在目標地点上空を飛行中。巡行ミサイル全弾の着弾を確認。BDA良好、BDA良好。敵航空戦力全滅判定。敵航空戦力に動き無し完全に沈黙!」
トマホークによる敵航空戦力の殲滅は成功した。次は戦略爆撃機による通常戦力の殲滅である。
「こちらオウラ特急便1号、敵航空戦力の殲滅は成功し、制空権を確保した。予定通り、投下を開始する。各機準備に入れ」
「投下用意、爆弾倉開け」
胴体中央にある爆弾倉が低い機械音を響かせながらゆっくりと開いていく。
「爆撃管制システムスタート!」
「進入コースよーし」
着々と機内では投下の準備が行われている。
「投下1分前」
「目標コンタクト!」
「管制システムオールグリーン」
「投下カウント、秒刻みに入ります」
「30、29.......5、4、3、2、1 投下開始」
ガコンッ
まずはパイロンに搭載された18発のMk82通常爆弾が次々と投下されていく。
幾つもの不気味な風切り音を立てながら、地上でトマホークの攻撃で混乱の真っ只中の軍団に向かって無慈悲に振り注ぐ。
そして、1発が着弾する度に半径400メートルの範囲に熱と爆風の絶対的な暴力を撒き散らす。
それが連続して幾つも起こる。後続の機も同様に投下しているため無数の閃光が地上に確認できる。
「続いて、胴内ドラムマガジン投下開始」
胴体内に納められた27発が縦一列に小刻みに投下される。
再び、幾つもの風切り音を立てながら殺到する。
そして、後続のB-52Hも同様に通常爆弾をばら撒く。
当たり一面の地形を変える程の圧倒的威力の絨毯爆撃である。
もちろん野営を張っていた諸侯の20万名は上陸戦同様密集していたため効率よく刈られていく。地上では阿鼻叫喚の光景が再び作り出された。
一方、上空のB-52Hのコックピットに彼らの恐怖に慄く表情も絶叫する声も届かない。
ただ、白と黒のモノトーンで彼らが吹き飛ばされるのが映し出されるだけだ。
遮るものが全くない平野、死んだ者は自分が死んだ事も自覚せずに逝き、生き残った者の多くが手足を吹き飛ばされたりしていた。
ものの数分で、20万もの威容を誇っていた諸侯は消し飛ばされ、地上から姿を消した。
「全弾投下完了。BDA良好。敵地上主力部隊 壊滅判定」
「HQ、HQ こちらオウラ特急便1号ミッションコンプリート。敵地上主力部隊の壊滅を確認。こちら被害無し」
『こちらダイタル基地統合作戦司令部 ミッションコンプリートを確認 ご苦労 。基地へ帰投せよ』
「ラジャー、オウラ特急便RTB!基地へ帰投する」
B-52HとF-22Jの編隊は機体を傾け何事も無かったかのように、元の巣へと戻っていった。
また、スフーラル、メアリ、アエゴジス、ヴァクーの各諸侯本部にも同じような爆撃がなされ、ロウリア諸侯軍は自分が戦う軍も見ず壊滅した。
護衛についていた戦闘機からビラが撒かれ、日本国の仕業だと知った生き残った諸侯は日本国と戦わないことを決めた。
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中央暦1639年8月31日 午前2時
ロウリア王国 王都ジン・ハーク王城 軍部緊急会議---
「先日の竜騎士団の壊滅に加え、各諸侯が壊滅するとは一体どういうことだ!」
王都防衛騎士団将軍パタジンは吠える。
「返す言葉も御座いません…」
竜騎士団大隊長は、力無く項垂れる。
「日本国が参戦してから、敗退に敗退を繰り返している!このままでは、奴らはやがて王都まで来るぞ!」
「航空戦力を全く持たずに、空からあれほどの攻撃をできる相手に一体どうやって戦うのだ!」
緊急会議の場を沈黙が満たす。作戦最高指揮官の怒りに応えられる者はいない。
「日本国に関してですが…」
時間だけが無駄に過ぎていくのは避けなければと、若手の幹部が話し始めた。
「未だ陸軍を見たものがおりませぬ、空からの猛烈な攻撃、そして海の魔神が如き巨船。これらを見た者はおりますが、未だ陸軍は確認していないのです」
「王都に来る前に南東の工業都市ビーズルを必ず落としに来るでしょう。そこで日本国陸軍の強さを図り、王都防衛に役立てるしかありませぬ」
「陸軍が弱ければ、付け入る隙もあるかと」
空からの攻撃のみでは、決して王都は落ちない。
街を陥落させるには、必ず陸の兵士による力が必要である。
若手幹部はビーズルに自ら足を運び、日本軍の弱点を見出すことを決意した。
いくらか意見が出て頭を冷やしたパタジンは、ひとまず継戦を宣言する。
ロウリア王国王都ジン・ハーク東側の工業都市ビーズルにおいて日本国陸軍を迎え撃ち、そこで陸軍の強さを図り、王都防衛に役立てるという事だけは結論に至った。
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中央暦1639年9月1日
ロウリア王国 王都ジン・ハーク 早朝ーーー
ロウリア王国王都防衛騎士団の管轄である城壁監視塔は現在、24時間体制で監視員を増員中だ。
監視員マルパネウスは交替の時間が来たため、仮眠室を出て王都の最も外側にある城壁の、北側にある塔に向かっていた。
「あ~~眠いな」
東の地平線が白み始め、建物が濃い影を作る時間。鳥が起きるにはまだ早い。
周囲を見渡すと、丘にある街並みは見えるが、平地に近い城壁の部分は白い霧に包まれている。
「今日は視界が悪いな」
監視する身としては、霧の発生は視界が遮られていて最悪である。
マルパネウスは少し嫌な予感がした。
「おっと…交代が近いな、早く行かないと。先輩に怒られる」
彼は小走りで塔の上に急ぐ。
塔の上について先輩と交代すると、平原をぐるりと見渡した。
監視員は目の良い者から採用されるため、視力には自信がある。
特に東側と北側は敵部隊の接近が予想されるため、マルパネウスも気が抜けない。
「…ん?」
一瞬だけ見えた緑色の何か。平原の色に混じって見えづらいが、確かになんらかの違和感を感じた彼は、その方向に意識を集中する。
距離は4kmくらい離れているだろうか。異形の何かが視界に出現した。
角張った体を持ち、角を生やしているものや、馬のいない荷馬車のような物が多数、王都の方向を向いて整然と並ぶ。
「ま…まさか!まさか!」
クワ・トイネ公国に攻め込んだ東部諸侯団の敗北。そして先日は港と王都上空、有力諸侯本部を襲い、海軍と王都防衛竜騎士団と諸侯に甚大な被害を与えた、正体不明の存在が彼の脳裏に浮かぶ。
マルパネウスは魔信のスイッチを力一杯に押し込み、送話口に向かって吠える。
『第17監視塔より王都防衛本部!北側第1城壁から約4km地点の平野部に、正体不明の物体を多数確認!繰り返すーーー』
報告を受けた王都防衛本部の通信使は報告を受け、眠い頭が一斉に冴え渡る。
通信使は仮眠中の当直指令を叩き起こし、兵舎全体に出動準備指令をかけた。
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同時刻ーーー
陸上自衛隊第7機甲師団と中央方面軍第42自動化師団は特科連隊を除き、ロウリア王国北側城壁から約4kmの位置に展開していた。
「揺動作戦で敵から見える位置まで近づく必要があるとはいえ、距離4kmはやはり近過ぎてストレスが溜まるな」
「はい。イラクの感覚からすると、近過ぎて距離が耐えませんね」
「迫撃砲なら余裕で届いてしまうからな…ところでこちらに完全に注意を引き付けるとしたら、あそこの塔を破壊するか」
「石材の強度が不明です、射線軸からして戦車砲で今この角度で撃つと、撃ち抜いた挙句城壁を破壊して市街地に被害を与える可能性があります」
「市民の反発を招いて75年前の爺さんやイラクの時みたいなことをするのは勘弁だぞ…」
「なので特科の榴弾砲を使い、塔だけをピンポイントで撃ち抜くことは可能です」
「そうするか」
「司令部より連絡、城壁から出た塔を攻撃してほしいと」
「了解、撃ち方用意」
特科連隊長は一台の99式自走155mm榴弾砲に指示を出す。
「初めっ!!」
ビルを一撃で粉砕する52口径155mm榴弾砲が火を吹いた。
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同時刻ーーー
99式自走155mm榴弾砲が放った弾は第17監視塔を直撃、マルパネウスは絶命した。
砲撃着弾の轟音は王都全域に響き渡り、王都に住まう者たちは、命の危機を感じて飛び起きた。
緊急事態を知らせる鐘が遅れて鳴り響き、町中に人々が溢れ、瞬く間に喧騒に包まれる。
「何だ!何が起こっている!」
王都防衛騎士団将軍パタジンは爆発音を聞くなり一瞬で覚醒し、寝巻き着のまま廊下に飛び出した。
マルパネウスの報告はまだ彼に伝わってなかった。
就寝している将軍、副将軍を起こしてまで報告する事態か、大隊長以下が判断しかねていたためである。
何も情報が得られていないパタジンは、音のした方向の北側廊下へ走り、バルコニーからその光景を見て愕然とする。
「なっ!」
最も外側に位置する城壁の一部から煙が上がっていた。
「王都奇襲だと!馬鹿な!ビーズルを無視してきたというのか!」
実際は陸上自衛隊特殊作戦軍団第1特殊作戦部隊がビーズルを奇襲していたのだが、彼にそれを知る術はない。
防衛騎士団が戦闘体制に入ったことを告げる鐘の音が王城まで届く。
パタジンは急いで軍服に身を包み、王より授かった黄金の鎧を身に纏って、彼は準備を整える。
そのまま彼は緊急時の作戦室へ向かった。
マクロススキーさん、リュンさん、れれれさん、ご感想ありがとうございます。
夜天雪兎さん、よこしゅうさん、nkoさん、巫碧さん、TAIL°さん、ユウsさん、お気に入りに登録ありがとうございます。
次回は旅行から帰ってくるので明日から明後日ぐらい更新です。
多分本編次話か更新が止まっている設定集の海自の艦艇になりそうです。
(海自艦艇=第10話→海自編成[艦艇の前に編入]=第11話[ロウリア戦終了?]→陸自車両=間話[グ帝の情報部への特殊作戦群の突入]=第12話になりそうです)