超大国日本国召喚   作:一般通過愉悦部

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第7話 皇都大空襲

中央暦1640年7月某日

日本国 首都 東京ーーー

 

 

防衛省の一室で、日本国内閣総理大臣『阿倍野三晋』は、防衛省と外務省合同でのパーパルディア皇国戦に関する今後の作戦概要について、説明を受けていた。

 

 

「それでは説明を開始いたします」

 

 

プロジェクターに映像が写され、重要部はレーザーポインターを使用し、説明が進む。

日本からは遠いが、アルタラス王国からは近いパーパルディア皇国、皇都エストシラントとその周辺の地図が画面に表れる。

 

 

「航空自衛隊戦略爆撃機隊の準備が整った後の話になりますが…」

 

 

幹部は前置きをして話を進める。

レーザーポインターで、皇都エストシラントから北側に少し離れた部分を指示する。

 

 

「この位置に極めて大きな基地が存在します。パーパルディア皇国は幸いな事に、街から少し離れた場所に大規模な要塞や基地を作る性質があるようです」

 

「武力を集中させすぎるのは、皇国が近代戦を行った事が無いからだと思われます」

 

「このような極大サイズの基地は、パーパルディア皇国に3つあり、中央国家情報庁によると皇国内では『三大陸軍基地』と呼ばれ、この部隊は首都防衛の要となっているようです」

 

 

 話は続く。

 

 

「この基地には多数の航空戦力、ワイバーンも確認されています」

 

「また、エストシラントの南方の港には、数百隻の戦列艦が停泊しており、正に第三文明圏の覇者にふさわしく、19世紀の大英帝国も真っ青になるほどの戦力が存在します」

 

「8月6日頃に、港の船に対しては、NWTO海軍と海自の合同部隊で対応し、陸軍・海軍基地に対しては『A-10』や『F-15E』『F-2』『A/T-4』及び『B-52』『B-1』『B-2』『B/P-1』戦略爆撃機隊を大量に投入、無誘導爆弾を使用した大規模爆撃を行い、これを殲滅します」

 

「このとき皇国内で唯一連絡の取れる第3外務局長カイオス氏の邸宅周辺は誘導爆弾を使用し、誤爆を防ぎます」

 

「陸軍・海軍基地殲滅後、パーパルディア軍を強化させないよう、東の工業都市、デュロの北にある陸軍基地に攻撃を行います」

 

「8月19日には、デュロに航空自衛隊の『MOAB』を使用し、敵を完全に崩壊させます」

 

「なお、デュロの港に多数いる戦列艦も、1個護衛隊群を投入します」

 

「皇国周辺の陸軍基地を排除した後、8月23日頃に、まずは属国の『ルーアルス共和国』の『スミッド』と『ホペゲヴ』に陸自とNWTOの空挺部隊を投入し、敵の目を引きます」

 

「この作戦を『トンガ作戦』と呼称します」

 

「本命の作戦はエストシラントまでを陸上兵力で進行し、早期決着を目指します」

 

「そうしないとパーパルディア皇国の属領の反乱を先に片付けてしまうかもしれないからです」

 

「その後、8月25日に、アルタラス基地から自衛隊、NWTO混成上陸軍を皇都エストシラントの前の都市『ノルマディン』に上陸させます」

 

「また、上陸作戦の6時間ほど前にヘリコプター部隊により『ノルマディン』周辺の基地『エンベ基地』『ロデコロイツ基地』を制圧し、援軍を防ぎます」

 

「このヘリコプターでの制圧作戦を『キルゴア作戦』と呼びます」

 

「え?え?」

 

「なにか?」

 

「いや…なんでもない」

 

 

阿倍野総理は発言した自衛隊幹部に目を向けるもスッと目を逸らす。

きっとヘリコプター部隊の司令官はワーグナーとサーフィンが好きなんだろうなぁ…と思いながらも発言を促す。

 

 

「エストシラント解放までの作戦全体の名前は『ニュー・オーヴァーロード作戦』、上陸作戦単体の名前を『ニュー・ノルマンディー作戦』とします」

 

「パーパルディア皇国解体の作戦名は『オペレーション・フリーダム』です」

 

「また、皇国民の戦意を削ぐため、作戦中は定期的に皇都エストシラントを爆撃します。もちろん最初の爆撃をする前には退去命令を出します」

 

「解った」

 

「これで、作戦の概要説明を終わります。修正をする場合については、外交状況にもよりますので、後日説明いたします」

 

 

防衛省と外務省の総理に対する説明は終了した。

 

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中央暦1640年7月下旬

皇都エストシラント 第1外務局ーーー

 

 

第1外務局長『エルト』は、その情報を受け、外れてほしかった推察が当たり、落胆していた。

そして肝を据える。

 

日本国と戦争状態に突入したパーパルディア皇国、その列強たる皇国内に住まうムーの民。

第2文明圏列強ムー政府は自国の民に対し、日本国と本格的戦争状態に突入した事を理由として、パーパルディア皇国に対する渡航制限と、皇国からの避難指示を出した。

これを受け、皇国内に住まうムーの民は、続々と国外に脱出を図っている。

 

 

「やはり……そうか!!!」

 

 

彼女は執務室でつぶやく。列強たるパーパルディア皇国と文明圏外の蛮族の国、日本国。

この2カ国が戦争状態になったところで、列強の本土が脅かされる事は無い。

まして、皇国本土から自国民に退去を呼びかけるなど、通常であれば狂人の判断だ。

 

しかし、ムーはそれを行った。

考えられる可能性はただ1つ、ムーが本格的に日本を支援し、皇国にけしかけているとしか考えられない。

 

 

「まさか……列強同士の戦いになるとは……何故ムーは、このような措置を取るのだ!!」

 

 

ムーの民が国外退去を始めているといった情報は、すでに皇族レミールにも知られている。

間もなく、ムー国大使が皇国の召喚に応じ、出頭してくる。

 

レミール様がどう動き、ムー大使がどのような言い訳をするのかが楽しみだ。

今回は、レミール様が主体となって外交を行うため、私はその様子をゆっくりと見学させてもらおう。

エルトは、まるで人事のようにそう考える。

 

レミールは、第1外務局の小会議室で、第2文明圏列強ムーの大使『ムーゲ』を待っていた。

すでに事前情報として、ムー国政府が日本国とパーパルディア皇国が戦争状態に突入した事を理由として、パーパルディア皇国内のムー民に対し、避難指示を出しており、国外へ退去するムーの民が港に長蛇の列を作っている。

 

ムーは日本に自国の兵器を輸出しているからこその避難指示と思われる。

でなければ、列強と蛮国の戦争で列強側の国に対して避難指示が出る事は考えられない。

 

会議室にはレミールの他に、第1外務局長を筆頭とした幹部の面々が顔をそろえる。

そろそろムー国大使の到着時間だ。

 

少し経った時、小会議室のドアがノックされる。

 

 

「ムー国大使の方が来られました」

 

 

案内の声が聞こえる。

 

 

「どうぞ」

 

 

重厚な扉を開け、ムー国大使『ムーゲ』と職員3名の計4名が入室する。

 

 

「どうぞお座り下さい」

 

 

案内に促され、ムー国大使一行は席につく。

 

ムーゲは思う。

おそらく今日自分たちがパーパルディア皇国に召喚された理由、日本と皇国の戦争により、本国から避難指示が出た件で、何故そんな事をするのか問われるのだろう。

 

ムーは皇国と敵対している訳でも無く、特に仲が良い訳でも無いが、大切な国交を有する国だ。

 

皇国も、さすがに日本の技術については気付いているだろうから、説明すれば解ってもらえるはず。

いかに皇国のプライドを傷つける事無く、一時的とはいえ、ムー大使までもが本国に引き上げる事実を説明しなくてはならない。

しかし……

 

僅かに心に引っかかる事がある。皇国は日本に対し、殲滅戦を宣言してしまっている。

日本の強さ、技術力の高さを上が認識していたら、こんな事を宣言するとは思えない。

 

考えたくも無いが、まさか皇国は日本の強さを認識していない可能性すらある。

 

 

「(いや、それは流石に無いか……認識が無いならば、皇国が日本に連敗した説明がつくまい)」

 

 

ムーゲは皇国との会談の前に気を引き締める。

 

 

「それでは、会談を始めます」

 

 

進行係の言葉により、会議は開始された。

レミールが最初に発言を行う。

 

 

「我が国が日本国と戦争状態に突入している事は、知ってのとおりだと思う。今回のムー国の一連の対応について説明を願いたい」

 

 

レミールの問いに対し、ムーゲが対応する。

 

 

「はい、このたびパーパルディア皇国と、日本国が戦争状態に突入いたしました」

 

「今戦争は、激戦となる可能性があります。ムー国政府は、ムーの民の安全を確保するため、貴国からの避難指示を発令するに至りました」

 

「今回の指示には、大使館の一時引き上げをも含みます。この措置は、皇都にも被害が及ぶとの判断からなされています」

 

 

この発言を受け、レミールの表情が曇る。

 

 

「いや、上辺は良いのです。調べはついています。本当の事を話してはもらえませぬか?」

 

「?」

 

 

レミールの発言が理解出来ずに、ムーゲは戸惑う。

 

 

「我々が日本国との戦闘の際、飛行機械を目撃しているのです。本当の事を話してください」

 

「……いったい何がおっしゃりたいのか、理解出来ないのですが……」

 

 

ムーゲは困惑するが、レミールの顔は赤く染まる。

 

 

「解らぬのか?これは、ムーもとんだ狸を送り込んで来たものだ」

 

「私は今、飛行機械を日本が使用しているのを目撃したと発言した」

 

「飛行機械が作れるのは、あなた方ムーくらいのものだ」

 

「前回の会談の時の魔写の戦闘機、あれは貴国が開発し、何かの対価として日本に輸出したのであろう」

 

「そして、今回の皇都からの自国民の引き上げ、これが何を意味しているのかは馬鹿でも解るだろう」

 

「何故日本に兵器を輸出した!!そして何故我々の邪魔をするのだ!!!」

 

 

 ムーゲは今にも襲い掛かってきそうなレミールの表情に萎縮すると同時にパーパルディア皇国のあまりにも斜め上の推論に戸惑う。

 

 

「あなた方は、何か重大な勘違いをしている。我々ムーは、日本に兵器を輸出などしていない」

 

「彼らは我々よりも機械文明が進んでいるのです」

 

「文明圏外の蛮国が、第2文明圏の列強よりも、機械文明が進んでいる。そんな話が信じられるか!!」

 

「彼らは……転移国家という情報は、掴んでおられないのですか?」

 

 

レミールは過去に読んだ報告書の片隅に記載されていた文を思い出す。

しかし、彼女は現実主義者であり、そんな物語を本気になど出来なかった。

 

 

「転移国家などと……貴国はそれを信じているのか?」

 

「信じます。我が国以外の国では、神話としか思われていないが、我が国もまた転移国家なのです」

 

「1万2千年前、当時王政でしたが、歴史書にはっきりと記録されています」

 

「日本について調査した結果、我が国の元いた世界から転移した国家であり、1万2千年前の異世界での友好国です」

 

「当時の友好国ヤムートは、ヤマトやヤマタイコク等、様々に名を変え、日本となりて現在に至ります」

 

 

「これは、日本の戦車と言われる車両の『74式戦車A(初期生産型)型』の写真です」

 

「戦車というのは貴国の地龍に分厚い装甲を纏わせ、我が国の内燃機関で動かし、砲を積んだものです」

 

「火力は大魔道士級、速度は時速53km、装甲はガエタン70mm歩兵砲を0mで射撃しても貫通できませんでした」

 

「我が国にこれを作る技術はありません。構想段階です」

 

「長い交渉の末、やっとこの戦車を3輌輸出してもらえましたが、これでもスペックは落ちています」

 

「ですが、これでも驚異的であり、我が軍の士官は『戦場の常識が変わる』とも言っていました」

 

「そして、これは何と日本では旧式で、45年ほど前のものらしいのです」

 

「それよりもっと前の戦車は簡単に輸出してもらいましたが、それも驚異的な性能で、1輌で1旅団並みの戦力です」

 

 

次に、超高層建築物が立ち並ぶ、見た事が無いほどの栄えた街の写真を取り出す。

 

 

「これは、日本の首都、東京の写真です。日本は転移前、地震の多い国だった。これほどの高層建築物の全てが、強い地震が来てもビクともしません」

 

 

パーパルディア皇国側の面々の顔色が一気に悪くなっていくのが解る。

 

ムーゲはさらに話を続ける。最後に、ムーゲは筒状の物体の魔写を取り出した。

 

 

「な…何だこれは?」

 

「これは『ICBM』、『大陸間弾道ミサイル』とも言います」

 

「弾道…?みさいる…?」

 

「…我が国も把握しかねていますが…」

 

 

ムーゲは途轍もないことを言うような姿勢になる。

 

 

「…これは『古の魔法帝国』の『コア魔法』。それそのものです」

 

「「「「!!!!」」」」」

 

 

これまでよりも上の衝撃がパーパルディア側を駆け巡る。

 

 

「日本国はそれを実用化しており、また『僕の星』も打ち上げている様です」

 

「………」

 

 

パーパルディア側は衝撃で声も出ない。

 

 

「軍にしても、技術にしても、日本国は我々よりも遥かに強いし、先を進んでいるのです」

 

「『神聖ミリシアル帝国』よりも上、いや、『古の魔法帝国』と同等かそれ以上と言っても過言ではありません」

 

「そんな国にあなた方は宣戦を布告し、かつ殲滅戦を宣言してしまいました。殲滅戦を宣言しているということは、相手から殲滅される可能性も当然あります」

 

「ムー政府は国民を守る義務があり、このままでは皇都エストシラントが灰燼に帰する可能性もあると判断し、ムー国政府はムーの民に、パーパルディア皇国からの国外退去命令を出したのです」

 

「我々も間もなく引き上げます。戦いの後、皇国がまだ残っていたら私はまた帰ってくるでしょう」

 

「あなた方とまた会える事をお祈りいたします」

 

 

パーパルディア側は絶句し、全く声が出ない。

皇国側が沈黙する中、ムーゲ達はそそくさと第1外務局を後にし、会議は終了した。

 

会議の後、小会議室に残された第1外務局の者たち。

ムー国大使の言が正しかったとすれば、自分たちは超列強国相手に侮り、挑発し、そしてその国の民を殺してしまった。

 

さらに、最悪な事に国の意思として殲滅戦を宣言してしまっている。

列強国の大使の言は重く、あまりの衝撃に全員が放心状態となり、具体的な対策は一切思いつかない。

 

 

「さて、これからどうするかな」

 

 

レミールが発言する。

 

 

「ムー大使が言っていた事が本当とは限りませぬ。ムーが代理戦争を行うために日本を利用していた場合は、勝機はあります」

 

「フハハハハハ!!!」

 

 

レミールが突然笑いはじめる。

 

 

「最悪の想定が、唯一の望みになるとは!!これほどの喜劇があろうか!!フハハハハ!!」

 

「レ……レミール様!?」

 

 

エルトは、レミールの精神が壊れたのではないかと心配する。思い返せば、何度も何度も日本の国力に気付く機会はあった。

しかし、その全てを無駄にしてしまった。

 

日本が自ら力を示さなかった事がもどかしい。行った行為は消せず、失った時間はもう戻らない。

 

パーパルディア皇国外務局、この日の会議は深夜にまで及んだ。

 

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中央暦1640年8月5日

日本国 中華地方 北京府 航空自衛隊北京基地ーーー

 

 

日本最大の航空基地、航空自衛隊北京基地。

 

大量の戦闘機と、集められた『B-52』『B-1』『B-2』『B/P-1』などの戦略爆撃機が駐機する。

戦略爆撃機の爆弾倉と主翼には、対地攻撃用の無誘導爆弾が満載されている。

 

次々と飛び立つ爆撃機達、空港から少し離れた場所で旋回し、編隊を組む。

 

日本国とアルタラス王国のNWTO・自衛隊共同基地から飛び立った戦略爆撃機は、合流し、皇国へ進路をとる。

敵にとっての破滅の行軍。

 

第2次世界大戦以降、見た事が無いほどのジェット戦略爆撃機の大編隊、総数370機にも及ぶ戦略爆撃編隊は、パーパルディア皇国、皇都エストシラント北方に位置する皇国軍の基地を殲滅するために、飛び去って行った。

 

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ある夜

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 皇族レミールの邸宅ーーー

 

 

「う……うう!!やめろ!やめろ!!やめろぉぉぉぉ!!!」

 

レミールは自室で目を覚ます。

息は乱れ、体中の汗腺から汗が噴出している。

 

ムー国大使との会談の後、何度も見た悪夢、今回も皇国が日本軍によって蹂躙される悪夢を見た。

自分を処刑しようとする日本人の顔、フェン王国で私の命により殺された者たちの顔だった。

 

 

「ちっ!!」

 

 

レミールは再びベッドに倒れこみ、うつ伏せになる。自分はやってしまった。

皇国のためになると思い、仕事に打ち込み、突き進んできた。

 

しかし、自分は……結果として皇国の存続さえも危うくなるほどのミスを犯してしまった。

 

ムー大使は言った。

 

 

○日本はムーより遥かに強い。

○神聖ミリシアル帝国よりも上である。

○古の魔法帝国と同程度かそれ以上

○皇都が灰燼に帰する可能性もある。

○日本の戦闘機は音速を超える。

○日本の鉄竜はムーの砲を持ってしても貫通できない。

 

 

信じられない!どう考えても信じられない。

 

しかし、過去に2度もの日本との戦いでの大敗を見るに、おそらくは……真実。

我が国は、古の魔法帝国……神話の帝国のような装備を持つ国と、現実に戦わなくてはならない。

 

レミールは戦いを回避するため、思考を廻らす。彼女は独り言をつぶやく。

 

 

「属領の献上、いや、領土の割譲……日本は何を望むのか…」

 

「はっ!!!」

 

 

レミールは朝田大使の言を思い出す。

 

 

『フェン王国での虐殺について、犯罪者と関係者の身柄引き渡しを要求する。なお、犯罪者には当然貴女も含み、皇帝も重要参考人となっているため、身柄を引き渡してもらう』

 

「だめだ!だめだ!!絶対にだめだ!!!

 

 

自分は皇族だ。しかも、世界5列強国の皇族、将来は皇帝ルディアス様に嫁ぎ、皇妃となって、共に世界征服に向かって突き進み、世界の女王となる予定だ!!

こんな事で、たかが文明圏外の民間人を数人処分した程度の事で、あきらめてたまるか!!!

 

 

「私は、日本には絶対に捕らえられんぞ!!!」

 

 

レミールは最後まで生き残る事を決意する。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

皇都エストシラント 皇城ーーー

 

 

皇帝ルディアスは、第1外務局長エルトからの報告を受けていた。

 

 

「以上、ムー国大使の言によれば、目撃された飛行機械は、日本国自ら開発した事が判明いたしました!!

 

「陛下に今後の方針を仰ぎたく、本日御報告にあがりました。」

 

 

ルディアスは沈黙する。エルトにとっては、なんとも耐え難い時間が流れる。

 

 

「エルトよ」

 

「ははっ!」

 

「日本を怖がっておるのか?」

 

「い……いえ、決してそのような!!ただ、私は真実の報告に参ったまででございます」

 

「エルトよ、おぬしは大事な事を3つ忘れている」

 

「と、申しますと?」

 

「1つ目、戦いは攻めるよりも、守るほうがずっと楽に戦えるという事だ」

 

「過去2回の戦い、1回目は攻める側、そして2回目は、完全な油断からの奇襲だった。皇国が本格的に構えるのだ、もう奇襲も通用しないだろう」

 

「ははっ!!」

 

「2つ目、日本は軍備に国内総生産のたった1%前後しか金をかけていないという事実、これではいかなる大国であっても、大した軍は持てまい」

 

「おそらく日本軍は、兵器に関して質は良くとも、量は少ないだろう」

 

「そ……それは、お言葉のとおりと思いますが」

 

 

それでも我が軍は2回も日本に大敗している!!

彼女は叫びたかったが、言葉をぐっと飲み込む。

 

 

「3つ目、今戦は相手がたとえ神聖ミリシアル帝国、いや、古の魔法帝国であったとしても、超えなければならぬ」

 

「これは世界を統べるべき皇国に、神が与えた試練だ。日本国と戦ったのは、主に海軍であり、陸軍の大部隊は健在、最新兵器があり、錬度も高い皇国陸軍は無傷ではないか!!」

 

 

話は続く。

 

 

「アルタラスに打って出るのは海軍主力だ。万が一これが敗れても守りに入った皇国陸軍を倒せる国は、この世には存在しない」

 

「おお!!」

 

 

彼女は皇帝ルディアスの言葉に光明を見る。確かに、主力のほとんどが健在であり、陸軍主力は1度も日本軍と戦っていない。

精鋭皇国陸軍が守りに入り、地の利を生かした際の強さは、たとえ神聖ミリシアル帝国を相手にしても、引けをとらないであろう。

 

 

「っ!!さすが皇帝陛下にございます!!!」

 

 

エルトは皇帝ルディアスに平伏するのだった。

 

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パーパルディア皇国 皇都エストシラント 第3外務局長カイオス邸ーーー

 

 

第1外務局と、皇族レミールの動きがおかしい。

ムー国大使との会談後に、変な動きが続いているため、おそらくはムー国から日本の真の姿に関する情報が伝えられたのだろう。

 

常識的に考えれば当然の事であるが、大きな動きが無い所を見ると、皇帝ルディアスと皇族レミールは、日本に犯罪者として行く気は無いらしい。

 

 

「奴らが行けば、皇国臣民の被害は少なくなるというのに!!」

 

 

カイオスは自室で苛立つ。

 

 

「やはり、早期に動くか?……いや、まだ軍の大半が残っている状態でそれを行っても、臣民の支持は得られまい」

 

 

皇国が少し弱らなければ自分の策は使えない。しかし、弱るという事は、守るべき皇国臣民の多数が犠牲になるということ。

 

カイオスはその矛盾に、自分の無力さに腹が立つ。そして、彼のもう1つの懸念。

 

 

「(もしも、日本が初撃で、皇国が再起不能となるほどのダメージを受けた場合、属国が次々と日本に同調する可能性があり、そうなってしまうと、皇国は国そのものの維持が出来なくなる可能性もある)」

 

 

彼は焦る。

 

 

「どうすれば……どうすれば良い!!」

 

 

カイオスは思考を廻らす。

 

 

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アルタラス王国 王都ル・ブリアスーーー

 

 

王城の一室からルミエスは王都を見下ろす。何度思い返しても、奇跡としか言いようの無い事態が彼女には起こった。

彼女は思い帰す。

 

パーパルディア皇国の大使は、自分を奴隷身分まで落とし、大使に献上するよう、王である父に迫ると同時に、王国経済の大黒柱である、魔石鉱山シルウトラスを皇国に譲渡するよう指示を出してきた。

 

父はこれを拒否し、列強パーパルディア皇国との戦争が始まる。

アルタラス王国海軍は、パーパルディア皇国軍を前に全滅、そして精強な陸軍も、皇軍を前に全滅してしまう。

 

私は父の采配で、日本の特殊部隊に確保され、私は日本に身を寄せる。

 

日本は凄かった。

 

天を貫く高層ビル群、鉄道と呼ばれる大規模流通システム、そして夜も明るい街。

御伽噺の中にいるようだった。

 

しかし、パーパルディア皇国は、東の果てであるこの国にも魔の手を伸ばし、フェン王国で、皇国軍に日本人観光客が殺されてしまう。

ここで、皇国は日本国の逆鱗に触れる。

 

アルタラス王国を滅ぼしたパーパルディア皇国軍は、日本国の自衛隊と呼ばれる軍を前に全滅、信じられない事に、日本側の被害は1人もいなかったという。

ニュースを聞いたとき、私は神に祈った。日本と同盟を結び、アルタラス王国から皇軍を追い出すという奇跡を夢見た。

 

奇跡は実際に起こった。

日本はパーパルディア皇国への報復、また、日本で設立した亡命政府と安全保障条約によって自衛隊を参戦させると言った。

 

私はその時、嬉しさでその場で泣き崩れそうになった。

後日、日本はアルタラス王国内の皇国軍を駆逐して、私は今ここにいる。

 

そして……

 

ルミエスは上空を見上げる。

美しく、黒く塗られ、黒地に赤丸のマークが描かれた大きい飛行機が多数、上空を通過していく。

 

飛行機械の吼える音(ジェットエンジンの音)の轟音は力強く、そして飛び去っていく量は圧巻の一言。

 

悪魔のような国パーパルディア皇国、そして魔を滅するために飛び去る太陽の軍、彼らはついに皇国本土への攻撃を行う。

皇国にとっては、破滅の行軍。

 

アルタラス王国ルミエス、そしてアルタラス王国国民は、日本国航空自衛隊戦略爆撃機隊の大編隊を、特別な感情をもって見守るのだった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

中央暦1640年8月6日早朝ーーー

 

早朝、透き通るような青い空、空気は澄んでおり、涼しい風が吹く。僅かに明るくなり、遠くまで見通せる空。

 

 

皇都エストシラント南方約300km上空で、空気を裂き、それは付近を旋回する。飛行機の上には大きな円盤状の物体が取り付けられ、ゆっくりと回転している。

 

目視ではとても確認できないほどの、遥か遠くを見通せる目、航空自衛隊のE767早期警戒管制機(AWACS)は皇都上空を監視していた。

AWACSの上にある円盤状のレーダーは、1分間に6回転し、内部の3次元レーダーは、高度9000mで半径800kmの空域をカバーする。

 

同機のレーダーには、皇都の南側上空に20機近い飛行物体を捉えており、戦闘空域の情報は、リアルタイムで本作戦の参加機に伝えられる。

 

早期警戒機の北側約100kmの空には、かつてF-22と世界最強を争った航空機、『F-3』戦闘機10機が先行する。

『F-3』の後方約50kmには無誘導の爆弾を満載した『F-2A』と『F-15E』が20機。

 

また、『F-2A』と『F-15E』隊の右20kmには、洋上の合同任務部隊のアメリカ・日本の空母から発艦した『F/A-18E』とイギリスの空母艦載機の『F-35B』、フランスの空母艦載機『ラファールM』など50機が亜音速で皇都北方の陸軍基地に向かい飛行する。

 

皇国に初撃を与えるために『F-3』隊は向かう。同機の主翼翼端では、気圧差により主翼下部から上部に空気が回りこみ、白い航跡を引く。

 

『F-3』各機には、E767早期警戒機(AWACS)で得られた戦闘空域の情報が、リアルタイムで伝えられ情報を共有している。

皇都エストシラント南方上空には、敵航空戦力が20機近く飛び、警戒している。

 

 

「(警戒だけで、これほどの量を常に飛ばしているとは……)」

 

 

パイロットは、皇国の国力に少し呆れながらも仕事は確実に行う。敵との距離が100kmをきる。

一斉指令の無線が、はっきりと聞こえるように繰り返し流れる。

 

 

「攻撃を開始セヨ」

 

 

10機の『F-3』のウェポン・ベイの扉が開き、16式空対空誘導弾(AAM-7)が数秒自由落下した後、固体燃料に火が灯る。

射程100km以上にも及ぶミサイルは、マッハ4以上の速度で、皇都南方上空を飛行するワイバーンオーバーロードを滅するため、轟音と共に飛び去っていった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

数分後ーーー

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 南方空域

 

 

パーパルディア皇国軍第10竜騎士団第2中隊のワイバーンオーバーロード20機は、皇都エストシラントの少し南方に位置する空域を、警戒飛行中だった。

 

中隊長のデリウスは、中隊の中で一番ベテランの騎士、プカレートに魔信で話しかける。

 

 

「もう少しあちらの海域も警戒しましょう」

 

「そうですね」

 

 

ワイバーンオーバーロードの編隊は、一糸乱れぬ動きで、錬度の高さが伺える。

 

 

「中隊長殿、敵についてなのですが……」

 

「何でしょうか?」

 

「数日前の通達文のとおりであれば、日本はムー国の飛行機械で戦いに来るでしょう」

 

「しかし、それにしては、先の2回の戦いで、我が方の被害が大きすぎるような気がするのです」

 

「軍の上層部に今の疑問を呈しても、言葉の歯切れが悪くなった後、通達文のとおりとしか言わない」

 

「中隊長はどうお考えか?」

 

 

皇国上層部は、軍の士気の大幅低下を恐れ、一部の幹部を除き、日本に関する情報を遮断していた。

 

 

「確かに、今回の戦いについて、上層部は何を聞いても歯切れが悪い」

 

「何かを隠しているようにも見えたが、何かは解りません。しかし、ムー以上の敵って、何が考え付きますか?」

 

「『古の魔法帝国』か、『神聖ミリシアル帝国』、まあ無いですな」

 

「ところで……」

 

「何だ!!!あれは!!!!」

 

 

目の良い部下の一言で、会話は途切れる。各竜騎士は、何かを発見した竜騎士の指差す方向を注視する。

透き通るような青い空に、数点の斑点が見える。

 

綺麗な写真に落とされた汚れのような斑点は、徐々に大きくなり、それが飛行物体である事を認識する。

 

 

「は……速い!!各騎回避せよ!!!」

 

 

常軌を逸した速度で竜騎士隊に向かってくる『ソレ』を見たデリウスの本能は危険信号を全力で鳴らす。

散開したワイバーンオーバーロード竜騎士隊、しかし『ソレ』も向きを変え、彼らに迫る。

 

 

「そ……そんな!!!」

 

 

16式空対空誘導弾(AAM-7)は、先端から斜め後方に向かい、衝撃波をまといながら、ワイバーンオーバーロードに向かう。

同衝撃波境界層では、空気が粘性発熱を起こし、高温となる。

 

日本国航空自衛隊の『F-3』戦闘機から発射された16式空対空誘導弾(AAM-7)20発は、1発も外れる事無く、皇都エストシラント南方空域を警戒中の第18竜騎士団第2中隊のワイバーンオーバーロード20騎に命中した。

大爆発を起こし、声を発する間もなく、絶命する竜騎士。そして列強となった後、1度として本土が戦場となる事は無かったパーパルディア皇国。

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント全域に、確実に平時とは違う不気味な炸裂音が鳴り響く。

 

ある者にとっては、恐怖。そしてある者にとっては破滅の目覚まし時計となった、空対空ミサイルの炸裂音、すでに目を覚ましており、上空を見上げた皇国臣民は、信じられない光景を目にする。

 

列強たるパーパルディア皇国、そしてその中でも最強の皇都防衛軍、その最強なはずのワイバーンオーバーロードが雨のように上から降ってくる。

ある者は、ワイバーンの首、胴体、足、羽等のパーツとなり、ある者は胴体から上の無い状態、そして人の原型を留めたもの、多数の肉と血が落ちていく。

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「キャャャャャャャャャャ!!!」

 

 

エストシラントの様々な場所から、その凄惨な光景に耐え切れなくなった人々の悲鳴が上がる。

住民はざわつき、様々な建物の扉や窓が開く。彼らが上空を見上げた時、矢のような形の何かが10機、見た事も無い高速で、上空を通過する。

 

その物体からは、2本の炎が後方に向かい、噴出している。直後、耳を覆いたくなるような轟音が鳴り響く。

物体の通過した近くの建物では、その衝撃波により、窓ガラスが全て割れる。

 

エストシラントの人々は恐怖に纏われる。

 

 

「何だ!何だ!!何が起こっているんだ!!!」

 

「皇都守備軍!守備軍は何をやってるんだ!!!」

 

 

住民が恐怖に怯える中、『F-3』の起こした衝撃波音は、皇都エストシラントに木霊する。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

同時刻ーーー

皇都エストシラント北方陸軍基地

 

 

装飾が施された豪華な石作りの建物の1階で、女性魔信技術士の『パイ』は、魔力探知レーダーを確認していた。

 

ワイバーン等の空を飛べる高魔力生物は、その存在そのものから、人間とは比較にならない魔力があふれ出ている。

その魔力を探知出来るように作られたのが、魔力探知レーダーであり、これは対空のみではなく、対地としても有効に機能する。

 

上空に関して、現在レーダーには友軍の騎影しか表示されておらず、付近上空にも高魔力生物は確認できない。

 

 

「ん?何かしら?」

 

 

レーダー画面の変化にパイは気付く。今まで綺麗に隊列を組み、飛行していた友軍のワイバーンの動きが乱れ始める。

彼女が上司に報告しようと思ったその時、レーダー上に写されていた友軍の点20騎が大きく光り、画面から消えた。

 

その現象が意味する意味はただ一つ……撃墜!!!彼女はすぐに隣に置いてある魔信機に向かって叫ぶ。

 

 

「緊急事態発生!緊急事態発生!!皇都南方空域を警戒中の第18竜騎士団第2中隊20騎がレーダーから消失!!」

 

「撃墜された可能性大!!待機中の第3中隊にあっては、緊急離陸を実施し、皇都上空の警戒に当たれ!!」

 

「なお、レーダーに敵機影は確認出来ず。飛行機械の可能性大!!」

 

 

パイが指令した直後、陸軍基地に連続した炸裂音がこだまする。異常事態の発生は、この炸裂音により、すべての者が認識するに至った。

 

 

「20騎すべての反応が消えただと!?」

 

 

パイの上司が血相を変えて、画面の前に来る。

 

 

「はい、短時間に次から次へと、連続して反応が消失しました!!!」

 

「20騎!20騎もだぞ!!!警戒隊としての数は申し分無い量であり、しかも世界最強のワイバーンオーバーロードだぞ!!!」

 

「そんな短期間でやられてたまるか!!!」

 

「しかし、事実です!ものの15秒もかからずに消えました!!」

 

「故障ではないのか?」

 

「ありえません!!」

 

「くっ!!我々はいったい何と戦っているんだ!!!」

 

 

レーダー室でそんな会話がされる中、指令を受けた第3中隊は滑走路から離陸しようとしていた。

 

 

「第2中隊がやられただと!?ちくしょう!!油断した第2中隊を殺ったところで、いい気になるなよ!!!!」

 

 

翼を広げ、ワイバーンオーバーロードは離陸するために走り出す。今回は緊急のため、縦1列に連続して走る。

 

 

「敵接近!!!」

 

 

誰かが魔信で叫ぶ。騎士は空を見上げる。

 

 

「なっ!!!」

 

連続した爆発音、『F-3』の放った04式空対空誘導弾(AAM-5)は離陸滑走中の竜騎士団に襲いかかった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

同時刻

パーパルディア皇国皇都防衛軍基地ーーー

 

 

パーパルディア皇国皇都防衛軍陸将『メイガ』は、不気味な炸裂音がした後、窓の外を眺める。

部下がノックも無く、部屋に転がり込んでくる。

 

 

「メイガ様!!第18竜騎士団第2中隊のレーダー上の反応が消えました!!至急作戦室にお願いします!!!」

 

「!!解った」

 

 

メイガは、小走りで隣の作戦室に移動する。移動後、すぐに部下が報告に来る。

 

 

「先ほどエストシラント南方空域を警戒中の第2中隊がレーダー上から消えました」

 

「同レーダーでは、反応が消える直前にレーダー上の光点が大きく光っており、撃墜された可能性が高いため、現在第3中隊を緊急離陸させています」

 

 

部下は、窓の外を指差す。指示された先の滑走路では、第3中隊のワイバーンオーバーロードが離陸するため、滑走を開始していた。

 

 

「敵は……どの程度の強さがあるのか……」

 

 

メイガはつぶやく。

 

 

「あれは何だ!!」

 

 

誰かが叫ぶ。

 

次の瞬間、飛翔してきた多数の光の矢が、離陸滑走中の竜騎士隊に襲い掛かる。光の矢は、ただの1発も外れる事無く、第3中隊の竜騎士に着弾し、彼らはメイガの眼前で爆音と共に、肉片となる。

 

 

「!!!」

 

 

声の出ないほどの驚愕、直後に後方から炎を2本噴出しながら、飛行機械が猛烈な速度で通過する。

およそ10機の飛行機械は、急上昇をはじめ、信じられない上昇力で空に消える。

 

その後、基地全体に、緊急時のみ使用が許される最大級の警戒アラームが鳴り響き、基地内の人間は、慌しく動き始める。

 

 

「早急に戦闘態勢に移行しろ!!!竜騎士隊で、上がれる者はすべて上がれ!!!」

 

 

メイガは吼える。

 

その頃、皇都エストシラントでは皇国臣民たちが、先ほどの爆発について、話をしていた。

 

 

「今のは何だったんだ?」

 

「南の方角で、竜騎士がやられているのを見た!!少なくとも、味方でない何かが皇国を攻撃しようとしている!!!」

 

「いったい何処だ?戦争中の日本か?」

 

「馬鹿な!!文明圏外の蛮国がいくら背伸びをしたところで、列強であり、第3文明圏最強のパーパルディア皇国の、しかも皇都に攻撃など、無理に決まっている!!」

 

「では、いったい何処が?」

 

「他の列強か、……まさかとは思うが、古の魔法帝国だったりしてな」

 

「そんな馬鹿な事が…」

 

 

住民たちの会話は、突如として現れた轟音によってかき消される。

地上高50m付近といった、超低空を、爆弾を主翼と胴体に抱えた『F-2』『F/A-18E』『F-35B』『ラファールM』が50機、亜音速で通過する。

 

 

「なななな……何だ!!!」

 

「ひぃっ!!!」

 

「何の音だ!!!」

 

 

腰を抜かして動けなくなる者、逃げ惑う者、混沌とした状況がそこに生まれる。皇都上空に低空侵入してきた攻撃隊は、上昇に転じ、上昇しながら爆弾を投下する。

放物線を描きながら、Mk.82爆弾(無誘導爆弾)は飛翔する。

 

ヒュュュュュという、かん高い風きり音が多数木霊する。聞いた事の無い音、それを聞いた人間たちの本能は全力で警笛をならす。

 

爆弾を投下した攻撃隊は、後方から太い炎を1~2本噴出しながら、雷鳴のような轟きと共に、上空へ消えていった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

同時刻

皇都北側 陸軍基地ーーーー

 

 

「何だ!!!何の音だ!!!」

 

 

ヒュュュュュという、聞いた事の無い不気味な音が鳴り響き、メイガは吼える。

音源は1つや2つではなく、多数の音源がある。

 

メイガは窓の外を見る。次の瞬間、猛烈な光……光の連続……耳を劈く爆音が彼を襲う。

攻撃隊から投射された爆弾は、攻撃目標から誤差数十メートルで、ワイバーン用の滑走路に着弾した。

 

連続して猛烈な爆発が起こる。メイガの眼前の窓ガラスは、爆発の衝撃で四散し、ガラスの破片が彼の目に突き刺さる。

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!目がー!!!目がぁー!!!!」

 

 

彼は目を押さえ、その激痛からその場を転げまわる。メイガは、痛みのあまり、1度は我を失ったが、気力をもって我に帰る。

 

 

「状況は!!!状況はどうなっている!!!!」

 

 

陸将の目からは血が流れ、視力を失っているのが見て取れる。だが、彼は指揮能力を失ってはいなかった。

 

 

「今の爆発は、空中から投下された爆弾だと思われます。現在滑走路が爆炎に包まれており、被害状況を視認できません」

 

 

ゴホゴホと咳を吐きながら、幹部はメイガの問いに返答する。

 

 

「空から爆弾を投下だと!?なんて威力だ……しかし、とんでもない事を!!!」

 

 

パーパルディア皇国には、爆弾は存在するが、ワイバーンに搭載出来る爆弾は無い。

飛竜は重たい物を持つと、飛べなくなってしまうため、上空から打ち下ろす導力火炎弾といった支援火力はあるが、空から爆撃するといった事例が無く、その場にいた全員が衝撃を受ける。

 

 

「煙が晴れます」

 

 

そよ風が吹き、煙が晴れてくる。

 

 

「なっ!!!こ……これでは!!!」

 

「どうした!?何が見えている!!!」

 

 

彼らの前に、月面のように穴だらけとなり、絶対使用不可能となった滑走路だったものが姿を現す。

 

 

「か……滑走路をやられました。これでは他の竜騎士は離陸出来ません!!」

 

 

悲鳴のような報告。メイガはそれを聞き、絶望に包まれる。

 

 

「そ……それでは!!!皇都上空はどうする!!!何か方法は無いのか!?」

 

「ありません。ワイバーンオーバーロードの数はそろっていますが、離陸出来なければ意味がありません」

 

「少なくとも現時点において、我々は皇都上空の制空権を失いました…」

 

 

メイガ他、幹部全員の心を絶望が支配した。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

数分後ーーー

皇都エストシラント

 

 

「おい!見ろ!!!」

 

「き…基地がぁぁぁぁぁ…」

 

 

興奮した臣民が北方向を指差す。言われるまでも無く、住民たちは、猛烈な爆発音がした方向をすでに見ている。

見た事も無いほどの大きな爆煙が陸軍基地から上がっている。汗が吹き出る……言葉が出ない。

 

あまりの光景に、泣き出す女性もいる。しかし、彼らに更なる恐怖が聞こえる。

 

何処からだろうか?ゴゴゴコゴゴコと大地が唸る様な重低音が多数聞こえてくる。

 

 

「いったい次は、何なんだ!!!」

 

「あそこだ!あそこ!!」

 

 

目の良い者が、南の空を指差す。

 

 

「なっ!!!」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ひ…ひぃっっっっっ!!!」

 

「……」

 

「はっ…ははははっ…」

 

 

先ほどとは、比べ物にならない量、灰色で途轍もなく大きな機体が多数、上空から侵入してくる。

灰色の機体は、後方に白い雲を引き、その機体から発せられているであろう重低音が、皇国臣民の恐怖をかき立てる。

 

先ほどからとてつもなく速い機体を見た皇国臣民にとって、上空を侵入してくるそれは、ひどくゆっくりに見える。

そのゆっくりとした行軍、飛行機の大きさ、そして量が皇国臣民にさらなる恐怖をもたらす。

 

 

「あれは!!まさか竜か!!!?」

 

「なんだ!!あの量は!!300騎以上いるぞっ!!!」

 

 

『F-15J改』8機の護衛を伴い、戦略爆撃編隊は皇都上空を通過する。総数370機にも及ぶ戦略爆撃編隊の後方からは、1機1機が雲を引き、多数の飛行機雲は皇国上空の空の様子を変える。

パーパルディア皇国に、彼らを防ぐ手段は全く無い。皇国臣民は自らをも破滅に導く行軍を、なす術も無く見つめる。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

同時刻

日本国航空自衛隊第3戦略爆撃隊『B-52H』コックピット内ーーー

 

 

『B-52H』のコックピットでは機長と副操縦士が会話する。

 

 

「間もなく目標投下地点に達します」

 

「了解…」

 

 

眼下には異世界の地、栄えた都市が見える。覇権主義を抱え、驕り高ぶった文明。

日本に対し、民間人を含む全てを殲滅すると宣言してきた国。ならば自分達も容赦する気は無い。

 

しかし…異世界最初の接触のAWACSコックピット内でふざけたら、上層部に見つかり、戦略爆撃隊に左遷され、異世界初の爆撃に参加することになるとは思いもしなかった。

だが、今は目の前の仕事に集中する。

 

 

「3.2.1.投下!!!」

 

投下!投下!(drop!now!)

 

 

日本国航空自衛隊の戦略爆撃編隊は、爆弾の投下地点まで、予定どおりに到着、殲滅目標である皇都北側の陸軍基地に対し、多数のMk.82爆弾(無誘導爆弾)を投下した。

 

 

「今回はおふざけなしだぜ!」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

同時刻ーーー

 

 

「敵が!!敵が侵入してくるぞ!!!」

 

皇都防衛隊の幹部が叫ぶ。滑走路が破壊され、多数のワイバーンオーバーロードは地上にいる。

敵の高度まで届く武器は無く、現時点出来る事は無い。

 

 

「デカイ飛行機械を送り込んできやがったか!!しかも、量が多いぞ!!!」

 

「奴らは一体何をするつもりなんだ!!!」

 

 

基地にいる多くの者が上を見上げる。

 

 

「ん!!?」

 

「あっあれは!!!」

 

「何か黒い物を落としたぞ!!」

 

 

先ほど、滑走路を猛烈な爆発で破壊した時に使用された兵器の音がする。だが、先ほどよりも、遥かに音の数が多い。空を見上げる者の目が見開かれる。

何百機もの敵機から、非常に多くの黒い物体が連続して投下される。音の量は加速度的に増え続ける。

 

 

「先ほどの高威力爆弾!!!!」

 

「爆弾の雨がくるぞ!!!!」

 

「退避ーー!!!退避ーー!!!」

 

「くそ!!量が多すぎる、何処に逃げろというんだ!!!」

 

 

パニック状態となる基地、しかし、爆弾は彼らが避難するまで待ってはくれなかった。

 

 

またもや連続する炸裂音。猛烈な光。建物の何十倍もの高さまで吹き上がる爆炎。

基地全体が爆煙に包まれる。しかし、爆発はまだ続く。表面を舐めるように、繰り返し爆炎は吹きすさぶ。

 

爆弾の投下を終えた戦略爆撃編隊は、上空で旋回し、南方へ飛び去っていった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

上空ーーー

 

航空自衛隊の偵察機『RF-15J』は、今回の攻撃に関する効果測定のため、皇都北方の陸軍基地上空に向かい、飛行していた。

陸上基地の破壊状況が不足していた場合は、第2次攻撃を要請する。

 

偵察機は高空から基地の状況を確認する。カメラに写る状況、そこに構造物は無く、昔基地だった場所には多数のクレーターが存在するのみ、動くものの気配すら微塵も無い。

基地だった場所と、その周辺区域ですら構造物は確認できない。

 

 

「敵基地の殲滅を確認、第2次攻撃の必要無し」

 

 

偵察機は無線で第1報を送り、アルタラス王国の基地へ飛び去った。

 

パーパルディア皇国、皇都防衛隊の大規模陸軍基地は、日本国航空自衛隊とNWTO合同任務部隊艦載機により滑走路を破壊され、航空自衛隊戦略爆撃隊の猛爆撃によって、原型を留めずに全滅、この世から姿を消した。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

数時間後ーーー

パーパルディア皇国 皇都エストシラント 南方海上

 

それは、波を裂き、突き進む。2列に並んだ金属で出来た船、総数60隻は、航跡を引きながら北へ向かう。

 

艦隊の姿は勇ましく、元の世界(地球)でこの艦隊が国の近くを航行したら、中小国は勿論の事、大国もビビるであろう。

日本国・NWTOの第86合同任務部隊の大艦隊は、パーパルディア皇国海軍主力を滅するため、皇都エストシラントの南方にある大規模な港へ突き進むのだった。

 

 




猿でも分かる今回のあらすじーーー


日本「パーパルディア…ゆるさねぇからな…都市に通常兵器最強爆弾落として本土蹂躙してやるぜ」

パーパルディア「すいません許してください、何でもしますから!」

日本「ん?今何でもするって言ったよね?それじゃぁ…」

パーパルディア「はっ!はい!」

日本「こいつも混ぜてくんね?」

NWTO「おっ( ^ω^)やってんじゃ~ん!おっすおっす!よろしくニキーwwwwwwwwwwww」

パーパルディア「」

◇◆◇

マクロススキーさん、51-2さん、提督兼指揮官兼トレーナーさん、知らんやつさん、リュンさん、雪之雫さん、ご感想ありがとうございます

どらごんずさん、にっぽっぽさん、whitecubeさん、フィリップ・ペタンさん、赤眼ミルクティーさん、ZNVさん、猫屋敷黎さん、暇奈椿さん、にんてんたろうさん、Shell→さん、ニコライトさん、 naviさん、豆侍さん、チビさん、HIROさん、sar_fewfさん、大羽志則さん、日夜 悠さん、イワリンさん、トロンザムさん、Swallow283さん、モスクワの人さん、猿飛サスケ(二代目)さん、カイル012さん、セリアさん、soto6さん、お気に入り登録ありがとうございます

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ルシアさん、トリアーエズBRT2さん、誤字報告助かります、ありがとうございます



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