超大国日本国召喚   作:一般通過愉悦部

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第14話 ニュー・ノルマンディー 中編

中央暦1640年8月25日午前11時58分──

《パーパルディア皇国 都市ノルマディンより15km南の地点》

 

 

ずいかくから発艦した第55戦闘飛行隊と第112戦闘攻撃飛行隊は上空約15,000mを飛行していた。

 

 

『こちら司令部、トップガン1-1へ次ぐ。攻撃を許可する、繰り返す攻撃を許可する』

 

「こちらトップガン1-1、コピー。攻撃を開始する」

 

 

第1次攻撃隊長も務める氷室2佐から攻撃命令が出される。

 

 

「どうやら敵さんは気づいて無いな…いや、気づく方が些か酷か?」

 

「いいかお前ら、攻撃開始!攻撃開始!」

 

「ロックオン!Fox2!!」

 

 

F-14EのハードポイントからAIM-9Lが発射され、上空のワイバーンへ向かう。

ヨコバイガラガラヘビ(サイドワインダー)の名を持つ短距離ミサイルは、マッハ2.5の速度で敵へ向かった。

 

 

「ターゲット、ダウン!撃墜確認!」

 

『こちらヴァーチュアー1-1、ナイスキル。我が隊はこれより飛行場爆撃を行う。ユーコピー?』

 

「トップガン1-1、アイコピー。貴隊の武運を祈る」

 

 

氷室の右側では、第112戦闘攻撃飛行隊が転針して飛行場を目指しているのが見えた。12機ものの編隊が一斉に同じ方向へ向くのは絵画の様な綺麗さだ。

 

 

「良し、俺らも飛行場へ向かう!トップガン1-1よりトップガンSQ(スコードロン)へ次ぐ。トップガン2は西側の飛行場、3は東側の飛行場へ向かえ」

 

『トップガン2-1、了解』

 

『トップガン3-1、了解した』

 

「派手にぶちかまして来い。トップガン1-1よりトップガン1各機へ。突撃陣形作れ」

 

『1-2、了解』

 

『1-3、OKです』

 

『1-4、了解しました』

 

 

4機の小隊が菱形の編隊から左下下がりの編隊になり、編隊を作る。編隊を作るまでの速度は素早く、練度を思い知らされる。

 

 

「飛行場視認!攻撃開始!」

 

 

4機の雄猫(トムキャット)は獲物を求め、翼を翻した。

 

◇◆◇

同日12時00分──

《パーパルディア皇国 都市ノルマディン 北飛行場》

 

ノルマディンの北飛行場の待機場では、迎撃係の竜騎士『メルボス』が待機していた。彼は元々予備役の騎士であったが、日本との一連の戦闘で竜騎士を大量に失った為、予備役の騎士も現役に差し戻すことになった。

 

 

「お~よしよし。ここが気持ちいんだな」

 

「グルグルグ~ルルル」

 

「よしよし」

 

 

メルボスは相棒のワイバーンの頭を撫でる。なぜワイバーンロードではなくワイバーンが使われているのかというと、こちらも大量にワイバーンロードを損失し、またワイバーンロードは戦闘能力強化の代償として、生殖能力が失われており一代限りな為、補完がつかなかった。

 

ワイバーンロードやワイバーンオーバーロードもある程度残っているものの、殆どが皇都防衛隊に回されている。

 

 

「(しかし…ロード種やオーバーロード種でも勝てなかった相手にワイバーンで勝てるのか?…)」

 

 

メルボスは皇都攻撃事件(エストシラント空爆のパーパルディア側の呼称。空爆という概念がない為)で日本の戦闘機を目にしており、日本軍が途轍もない高性能の飛行機械を持っているのも把握していた。

 

 

「はぁ…どうすれば良いんだ…」

 

 

溜息を付き、その悩みを断ち切る為に空を向く。上空には警戒体制のワイバーン25騎が上空を飛んでいた。ワイバーンの編隊はいつもは悩みを断ち切ってくれるが、今はそうではない。

 

その時、メルボスの目の端に高速で飛翔する矢の様なものが映った。彼は現役を退いてから何年か経っており、ワイバーンに騎乗するのも久しぶりであったが、現役時代はパーパルディア1とも言われる竜騎士だった。

 

そのため動体視力は良く、今でも通用した。彼はそれを仲間に伝えようとした時──上空のワイバーンが飛散した。

 

 

「──は?」

 

 

飛散し肉片になるワイバーンだった物、四肢が捥げ、臓物を撒き散らす人間の原形をとどめていない物。それを目で把握した瞬間、彼は本能的に一つの単語を思い浮かべる。

 

 

「敵襲!敵襲!」

 

「つっ!!」

 

 

その言葉は自分ではなく、北飛行場の管制長によって放たれた。言葉を把握すると共に、彼は日本国の攻撃だと確信する。

 

 

「メルボス急げ!緊急発進だ!!」

 

「はっ!!」

 

 

旧知であった管制長の言葉で彼はワイバーンに跨り、手綱を握る。急いで滑走路へ向かい、発進位置についたらワイバーンの羽を羽ばたたかせ、離陸可能な速度まで上げる。

 

 

「よし!行くぞ!」

 

 

手綱を動かし、ワイバーンに離陸を伝える。それを感じたワイバーンは走り、離陸する。

 

 

「──ん?」

 

 

その時、左側の待機場近くで兵士達が空を指で指しているのが見えた。彼もそれに釣られて左上の空を向く。

 

 

「なっ!!」

 

 

左の空には、敵機がいた。戦勝祭(パーパルディア皇国がパールネウス共和国だった時、初めて勝利した事を祝う皇国最大の祭り)の時に見たワイバーンオーバーロードの編隊よりも綺麗に飛んでいる。オーバーロードの編隊飛行を見た時はオーバーロード種の力強いフォルムに感動し涙も流したが、この敵機の姿も綺麗で見惚れてしまいそうであった──それが自分を攻撃しようとするもので無ければ。

 

 

「うぉぉぉおおおぉぉぉぉお!!!!!」

 

 

手綱を力の限り手前に引っ張り、離陸させようとする。その時、後ろから莫大な力と熱を感じ、前に回転する。

 

 

「うおっ!」

 

 

視界が反転し、体の節々に痛みを感じる。どうやら滑走路の端に転がった様だ。彼は力を入れて立ち上がる。

 

 

「──は?」

 

 

彼の視界の先には無惨に破壊された滑走路と粉砕された待機場。そして命を散らしている軍人達がいた。現実を理解できずに見つめていると、ドンという音と共に遠方にキノコ雲が見えた。

 

 

「……」

 

 

おそらくあの辺には陸軍の弾薬庫があった。そこが破壊されたのであろう。メルボスは呆然と破壊された場所を見ることしかできなかった。

 

◇◆◇

同日午後12時15分──

《パーパルディア皇国 都市ノルマディンより南方の海域 旗艦はるな司令部》

 

 

「第一次攻撃隊長氷室2佐より通信!『トラ・トラ・トラ。我奇襲に成功せり。敵軍陣地被害大、再攻撃の必要無し』」

 

「おぉ。流石氷室2佐だ」

 

「エースパイロット様様だな」

 

 

通信員の報告に司令部の司令部幹部達が反応する。

 

 

「司令、これより第825-1合同任務部隊と第825-2合同任務部隊に分割します。宜しいですね」

 

「ええ、やって下さい」

 

「はっ、全艦に下令。第825-2合同任務部隊は上陸部隊を援護せよ。なお、指揮権は第1護衛隊群司令に委ねる」

 

「了解しました。『第825-2合同任務部隊は上陸部隊を援護せよ。なお、指揮権は第1護衛隊群司令に委ねる』打電します」

 

◇◆◇

5分後──

《第1護衛隊群旗艦 しらつゆ型ミサイル巡洋艦『しぐれ』戦闘指揮所(CIC)

 

 

第1護衛隊群旗艦を務めるミサイル巡洋艦の戦闘指揮所(CIC)で第1護衛隊群司令『松本大輔』下級海将は、艦隊司令部から届いた命令を見ていた。

 

 

「ふむ、では行こうか」

 

「はっ、艦隊へ通達。全艦針路0-4-5、第2船速。第826合同上陸任務部隊と合流せよ」

 

「了解、おもぉぉかぁじ45度。両舷第2船速」

 

「おもぉぉかぁじ45度。両舷第2船速!!」

 

 

司令の言葉に艦長が答え、それが航海長から航海員に舵が伝えられる。艦は右に旋回し、針路を一路第826合同上陸任務部隊の方角へ向かう。

 

前面の大型モニターには各艦の現在位置が映し出される。それを見ながら司令は艦長へこう伝えた。

 

 

「私は司令部作戦室(FIC)に向かうよ。ここ(CIC)は頼んだ」

 

「はっ」

 

 

この合同部隊の指揮権は司令にあるので、針路や作戦を決める幕僚達がいる司令部作戦室(FIC)へ向かった。

数分後、戦闘指揮所(CIC)に一つの報告が入る。

 

 

レーダー(AN/SPQ-9B)探知(コンタクト)。目標、速度15ノット、針路1-3-5、距離45km!」

 

敵味方識別装置(IFF)に応答無し。味方艦ではありません」

 

「…第3文明圏の船か?敵味方識別装置(IFF)に応答しないしな。だが、政府から作戦行動中、当該海域の侵入を控えるよう通達しているだろう?」

 

「確認の為、F-35を上げた方が宜しいかと…」

 

「うん、司令に具申してみよう」

 

 

艦長の具申はすぐさま取り入れられ、第5軽空母護衛隊群『いぶき』から発艦したF-35Bが現場に向かった。

 

◇◆◇

同時刻──

《パーパルディア皇国海軍第1艦隊 装甲艦『パーパルディア』》

 

 

パーパルディア皇国海軍の新鋭艦『パーパルディア』はノルマディン沖を航行していた。パーパルディアは国自体の名が付けられている通り、皇国海軍の最新・最強艦であり、ムーの旧式艦『ラ・センティバル』級とマギカライヒ共同体の機甲戦列艦『フォスドルフ』級、ミリシアルの『クロム』級魔導戦列艦をベースにパーパルディア製の新型対魔弾鉄鋼式装甲を乗せて開発された艦であり、皇帝ルディアスも期待している艦であった。

 

だが、エストシラント沖海戦で海軍が全滅し、この時パーパルディアは大型の洞窟基地に隠れていた為無事であったが、護衛する艦がいない為出撃の機会がなかった。(またアルタラスが陥落した為、魔石の在庫が無かったのも関係した。この艦は燃費が悪いのである)

 

そのまま出撃の機会は無いと思っていたが、皇国軍上層部は日本軍の本格侵攻が近いことを予測してこの艦を哨戒用として使うと決定した。

 

だが、普通に哨戒すると日本海軍に直様撃沈されるので、()()()をしていた。

 

 

「はぁ…」

 

 

パーパルディア艦長、『フォレスタル』は哨戒を始めてから何度目か分からないため息をついた。理由は彼が見上げる旗にあった。

 

 

「まさか我が国の艦が蛮族の旗を掲げることになるとは…」

 

 

マストには()()()()()()()()()()()ではなく、第1文明圏の()()()()()()()が掲げられていた。フォレスタルは皇国の中でも差別思想が強く、自国と対等の立場を認めるのは列強国のみで、他の国には文明国・文明圏外国を問わず、自国の国民に対する治外法権を認めさせるというパーパルディア皇国自身の具現化のようでもあった。

 

性格は最悪だが、戦略面では優秀であるので、本艦の艦長を務めていた。

 

 

「日本め…皇国に泥を塗るなど…だが、彼の国の兵器はムー以上だと聞く。慎重に戦わなければな」

 

 

◇◆◇

5分後──

《海上自衛隊第1艦隊第5軽空母護衛隊群第5軽空母航空団 アルバトロス1 コックピット内》

 

第5軽空母護衛隊群第5軽空母航空団のアルバトロス小隊の隊長を務める『迫水洋平』3等海佐はレーダーを見ながらAN/AAQ-40 EOTSのカメラを見ていた。

 

 

「あれか」

 

 

カメラの中に、大型の戦列艦が見えた。迫水は本物の戦列艦を見たことは無いので内心興奮する。

 

 

「アルバトロス1より司令部、敵艦確認。国旗は恐らく中央法王国だと思われる」

 

『了解、確認した。アルバトロス1は上空で待機していてくれ』

 

「アルバトロス1、コピー」

 

 

アルバトロス1の報告を聞いた司令部は、台湾公国海軍の第1部隊第11駆逐中隊に臨検命令を出した。

 

◇◆◇

15分後──

《パーパルディア皇国海軍第1艦隊 装甲艦『パーパルディア』》

 

 

「敵艦発見!」

 

「遂に来たか」

 

 

フォレスタル艦長は首に下げていた双眼鏡を除いて報告にあった方角を除く。そこには第11駆逐中隊の丹陽型駆逐艦『咸陽』が近づいてきていた。咸陽は日本のやまぎり型護衛艦を輸出した艦である。

 

 

「よし、攻撃用意。決して気づかれるなよ、許可あるまで発砲不許可」

 

「了解」

 

 

魔信で現在位置を送り、敵艦の位置を伝える。これでワイバーン部隊が攻撃を開始するだろう。

パーパルディアの魔導砲はミリシアル製を模倣した砲であり、精度も良く連射も効く。

 

その時、敵艦が手旗で世界共通の通信を試みてきた。

 

 

「艦長、敵艦から『我、新世界条約機構(NWTO)所属、台湾公国海軍『咸陽』である。貴艦の所属と目的を知りたい』とのことです」

 

「日本では無いのか…だが良い。手旗信号は無視しろ」

 

 

フォレスタルは咸陽が魔導砲の射程に入った時、射撃命令を出した。

 

 

「てぇ!!!」

 

 

砲門を塞いでいた板が外れて、魔導砲は射撃を開始した。

 

◇◆◇

5分前──

《台湾公国海軍第1部隊第11駆逐中隊『咸陽』艦橋》

 

 

「おお…あれか」

 

「はい、外輪を付けた『ウォーリア』に見えます」

 

 

咸陽艦長『品睿』は、双眼鏡で中央法王国の旗を掲げた船を見ていた。

 

 

「哨戒に来た船かな?まあ、とりあえず手旗信号で交信を試みてくれ」

 

「はっ」

 

 

哨戒員が手旗で信号を伝えるものの、返答はない。品は、臨検隊に立ち入り命令を出す。その時、船の側面が動いて中から砲が現れた。

 

 

「なっ!」

 

 

片舷40門ある砲が咆哮し、咸陽の舷に弾が当たって弾ける。碌な防御を施していない現代艦艇は装甲が薄く、簡単に貫通する。

 

 

「ぐおっ!くそっ!76mm単装砲用意!」

 

「ダメです!壊れました!」

 

「なにっ!」

 

 

近距離では最強クラスの艦前部に設置されている76mm砲は、最初の砲撃で破壊されていた。

 

 

ブローニング(M2 12.7mm機関銃)はどうだ!」

 

「ダメです弾かれました!!」

 

 

パーパルディアの舷には、最新の対魔弾鉄鋼式装甲が施されており、12.7mm弾では貫通できなかった。

 

 

「くっ!そうだ!25mm(Mk 38 25 mm 機関砲)を使え!」

 

「分かりました!」

 

 

艦橋側面のMk 38 25 mm 機関砲が動いて、パーパルディアに射撃を開始する。

 

◇◆◇

同時刻──

《パーパルディア皇国海軍第1艦隊 装甲艦『パーパルディア』》

 

 

フォレスタルは、1射目は当たったものの、その後は全く当たらない事にイライラしていた。

 

 

「敵艦撃ってきました!!」

 

 

敵艦発砲の報に一瞬フォレスタルは身構えるも、撃ってきたのは20mm級の魔光砲であり、船体を貫通するだけで炸裂はしない。

 

 

「ふははははは、私の勝ちだな。死ぬのならばすぐ死なせてあげよう」

 

 

そうフォレスタルは言うと、全門一斉掃射の伝令が行き渡る。

 

 

「撃てぇ!!」

 

 

40門の砲が唸るが、海面は荒れており、精度が悪くあまり当たらなかったが、1発が後部のヘリコプター格納庫上のファランクスに被弾して大きな火花が上がる。

 

 

「はははははははは…ふはははははははははははははは」

 

 

一方的にやられた仲間の仇だ。そう思って炎上する敵艦の姿を見ていると、ふと右側の空を見上げた。

 

 

「ん?」

 

 

矢のような物体が此方に向かってきているのが見えた。

 

 

「なんだ?」

 

 

そう思っている時、その矢が超高速で艦中央部に突き刺さった。

 

 

「──は?」

 

 

大きな爆発と共に、艦が揺れ、フォレスタルは腰を甲板に打ちつけられる。

 

 

「ぐぉぉぉおぉおお…何がぁ…」

 

「ひ…被弾しました!」

 

 

それは解っている──そう言おうとした時に、2弾目を被弾した。2弾目は…被弾した位置が不味かった。

機関用魔石の集積所。そこに被弾したパーパルディアは大爆発を起こした。

 

艦中央から真っ二つにされたパーパルディアは、フォレスタル艦長と共に、深い海へ沈んでいった。

 

 

「ターゲット、デストロイ。撃沈確実」

 

『了解、よくやった。帰還せよ」

 

「了解、RTB(Return To Base)

 

 

F-35Bから発射されたAGM-65Gマーベリックによって、パーパルディア皇国海軍装甲艦『パーパルディア』は沈没した。

 

◇◆◇

10分後──

《パーパルディア皇国 都市スミントン ラストルコ洞窟基地》

 

 

「離陸準備!離陸準備急げ!!」

 

 

大規模な洞窟を基地にしたラクストルコ洞窟基地。その中では、装甲艦『パーパルディア』からもたらされた情報をもとに、現在パーパルディアに残っているワイバーンの80%を使った総攻撃をしようとしていた。

 

また、今回の作戦は()()()()()()()()が模索されていた。

 

 

「基地長殿に敬礼っ!」

 

 

竜騎士達は基地長に敬礼をした後、酒の入ったグラスを飲み、飲み切った後叩きつける。

 

 

「出撃!出撃!!」

 

 

滑走路の脇では、軍人達が離陸する騎に向かって敬礼したり、手を振ったりしていた。

パーパルディア皇国軍のワイバーンら950騎は、第825-2合同任務部隊に向かっていった。

 

◇◆◇

同日13時50分──

《第825-2合同任務部隊旗艦『しぐれ』戦闘指揮所(CIC)

 

 

「ECH-53Gより通信、『敵編隊捕捉、編隊数950機、方位2-8-0、距離368km、速度200km』」

 

「950機!?そんなに隠していたのか!!」

 

「既に場所がバレているので即急にトマホークが撃ち込まれるでしょう」

 

 

しかし場所を破壊しても離陸したものは破壊できない。この950機を撃墜せねばならない。

 

 

「もうすぐ本艦のレーダー(AN/SPY-1A)でも補足できるでしょう」

 

「軽空母艦載機で数を減らした方が宜しいかと…」

 

「そうだな… 第2・5両軽空母打撃群司令に発艦命令を出してくれ」

 

「了解しました。第2軽空母打撃群・第5軽空母打撃群に迎撃命令を出します」

 

 

松本の指示は第5軽空母打撃群司令『涌井継治』海将補の耳にも入った。

 

 

「迎撃命令か…秋津1佐。どうする」

 

「はっ、アルバトロス隊は迫水3佐が帰還していないので待機。他の隊は全て離陸させた方がよろしいかと」

 

「うん。完璧だ」

 

「淵上1佐。スパロウ・ターキー・アウル隊は直ちに発艦せよ」

 

「了解しました」

 

 

『いぶき』艦長『秋津竜太』1佐の具申に涌井は賛同し、第5軽空母航空団司令『淵上晋』1佐に発艦命令を出す。

 

 

「発艦!発艦!」

 

「急げ!」

 

 

飛行甲板上が忙しくなり、乗員達が忙しく動き回る。

 

 

『こちらCATCC(空母航空管制室)よりスパロウ1へ、離陸を開始せよ』

 

「スパロウ1、離陸を開始する」

 

 

第2軽空母打撃群・第5軽空母打撃群の『かが』と『いぶき』は合計25機のF-35Bを離陸させた。

 

◇◆◇

同日14時──

《第825-2合同任務部隊より350kmの海上》

 

パーパルディア皇国攻撃隊長『エルヴィネス』は前方に目を光らせていた。

彼はパーパルディアでは殆どいない熟練の竜騎士。

 

そのため、乗るワイバーンもノーマルのワイバーンではなく、ワイバーンオーバーロードである。

彼は今までの情報から、日本軍は高速で飛行する矢で我々を撃墜する事を知っていた。

 

 

「っっ!!来た!」

 

 

前方には50ほどの光の矢。あれ全てが的確に我々に突っ込む魔矢である。

エルヴィネスはオーバーロードを低空にやり、編隊に指示を出す。

 

 

「密集するな!騎と騎の間を取れ!」

 

 

密集するほど連なってやられる。そう考えたエルヴィネスは指示を出した。

 

 

「ぐおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉお」

 

 

程なくして矢が着弾し、凡そ100騎程が命を刈り取られる。

 

 

「(このペースなら敵艦隊まで十分届く!!)」

 

「よし!突撃ぃいぃぃいぃぃいぃいぃぃ!!!!」

 

 

約850騎のワイバーンは突撃を開始した。

 

◇◆◇

5分後──

《第825-2合同任務部隊旗艦『しぐれ』戦闘指揮所(CIC)

 

 

「F-35Bの16式空対空誘導弾(AAM-7)04式空対空誘導弾(AAM-5)計100発着弾。全弾命中」

 

「敵編隊依然進路変わらず」

 

「まだSM-2の距離ではないな、『とさ』に主砲射撃命令」

 

「了解、『とさ』に主砲射撃を命令します」

 

 

とさ艦長『松田美麗』1等海佐は、司令部からの命令を聞いていた。

 

 

「ふふふ…来たわ!ついに来たわ!『対地だけする女』『艦砲射撃だけするデブ』と言う不名誉なあだ名を撤回する日がね!!」

 

「誰から言われているんですかそれ…」

 

 

とさ副長『京極隆史』2等海佐の言葉を耳から削除して、松田は主砲射撃の命令を伝える。

 

 

「主砲右砲戦用意!弾種対空拡散榴弾!目標、敵編隊」

 

「右砲戦用意、弾種対空拡散榴弾。目標、敵編隊」

 

「主砲射撃稜線確保!」

 

「撃ち方始め!」

 

「撃ち~方、始め。てぇ!!!」

 

 

連続して放たれた12発の46cm砲弾は、砲弾下部のロケットモーターで位置を修正して敵編隊に突っ込む。

戦闘AI『高天原』によって計算された、86式対空拡散榴弾は、対空攻撃に於いて大きな攻撃力を発揮する。

 

数秒後、敵編隊の前で近接信管が作動し、996個の焼夷弾子は3,000度で約5秒間燃焼する。

高速の粒子は、ワイバーンを容易く貫通し、海に屍をばら撒く。

 

◇◆◇

5分後──

《第825-2合同任務部隊旗艦『しぐれ』戦闘指揮所(CIC)

 

 

「とさの主砲弾、敵機105機を撃墜。残り745機!」

 

「敵編隊、SM-2の射程圏内に入りました!」

 

全兵装使用自由(オールウェポンズフリー)!1機も逃すな!!」

 

「了解、全兵装使用自由(オールウェポンズフリー)

 

 

司令部の命令を受けた各艦は、艦長の元次々と命令を下す。

 

 

「745機…だがイージスシステム(神の盾)の前には無力だ」

 

 

あたご型護衛艦『あたご』艦長、『西村和良』1等海佐は、迎撃命令を出す。

 

 

「我が艦の迎撃担当目標は?」

 

「この編隊です。編隊数15機、高度100m、速度200km/h、距離165kmです」

 

「この目標を目標群a(アルファ)とする」

 

「対空戦闘、方位3-2-0、距離160kmに備え!前部VLS、1番から15番発射準備」

 

「目標攻撃諸元入力完了!」

 

「目標群a(アルファ)に対し前部VLSよりSM-2、15発発射。発射管制は手動で使用!」

 

「発射管制手動(マニュアル)で使用!」

 

「撃ちぃー方始め」

 

 

艦長の指示に、砲雷長が直様反応する。

 

 

「目標、a(アルファ)編隊。前部VLS1番から15番、SM-2発射用意!」

 

「SM-2、斉射(サルボー)!てぇー!!」

 

 

あたごの艦前部に設置されたMk.41 mod.20 VLSの内、15のミサイル・セルからSM-2ブロックIIIBが発射される。

全長4.72 m、直径0.34m、重量708 kgのスタンダードミサイルは15機のワイバーンに的確に突っ込む。

 

近接信管が作動し、先ほどまで生きていた物は物言わぬ死体になる。

 

◇◆◇

10分後──

《第825-2合同任務部隊旗艦『しぐれ』戦闘指揮所(CIC)

 

 

「『あたご』SM-2第5波、全弾命中。30機撃墜!」

 

「『しののめ』のSM-2、18発。敵編隊へ向かいます」

 

「残り機数は?」

 

「残存機数、423機!」

 

「上陸開始までには間に合わんな」

 

「はっ、ですが第826合同上陸任務部隊には『きい』や『ひぜん』、『モンタナ』も居ます。上陸作戦は確実に成功するかと…」

 

「そうだろうな。今は目の前の敵に専念しよう」

 

 

そう言って、松本は目の前のモニターを見る。1秒ごとに数十個の光点が消える。

その一つ一つに人間が乗っていると思うと気持ち悪くなるが、すぐにその思いは消えてなくなる。

 

 

「(静香…)」

 

 

松本の娘の静香は、フェン王国虐殺事件で亡くなった犠牲者の1人であった。

フェンへの旅行は丁度松本が航海に行っている時であり、知っていたら100%止めていた。

 

 

「やられている君たちには関係はないが…この恨み。晴らさせてもらおう」

 

 

◇◆◇

5分後──

《合同艦隊より50kmの海上》

 

パーパルディア皇国攻撃隊長『エルヴィネス』はワイバーンオーバーロードを必死に操り、SM-2の攻撃を回避していた。

 

 

『ああっ!ちくしょう!!』

 

『うわぁぁぁぁぁあ!くそぉぉぉぉぉぉお!』

 

 

魔信では、竜騎士達の決死の叫びが聞こえていた。

 

 

「(ああくそっ!我々ベテランがやらなければならない時に!新兵がやられて行く!)」

 

「(なにか…演説を…)」

 

 

考えついた瞬間、彼は魔信を掴んで話し始める。

 

 

「死んでいった竜騎士達はみな意味がなかったのか!!!いや違う!」

 

「騎士達に意味を与えるのは我々だ!!あの勇敢な死者を!!哀れな死者を!!想うことができるのは!!」

 

「生者である我々だ!!我々はここで死に次の生者に意味を託す!!」

 

「それこそ唯一!!この残酷な戦場に抗う術なのだ!!」

 

「騎士よ怒れ!!!」

 

「騎士よ叫べ!!!」

 

「騎士よ!!」

 

「戦えぇぇぇえぇえぇえぇえ!!」

 

 

その瞬間、エルヴィネスの近くでSM-2の近接信管が作動。エルヴィネスは爆発に巻き込まれ、高速で海上に叩きつけられた。

 

 

◇◆◇

3分後──

《合同艦隊より1kmの海上》

 

 

パーパルディア皇国の新人竜騎士、『ヒルトラスト』は、ワイバーンを未熟な手で操り此処まで来ていた。

この空域の迎撃担当はクワ・トイネ海軍であり、練度が低いため、此処まで突入できた。

 

 

「(サフィルさんも!ソラトスルもやられた!)」

 

 

ヒルトラストの目の前には、突撃前30騎もいた仲間は4騎しかいなくなっていた。

一方の迎撃側のクワ・トイネ海軍第1艦隊第1鉄竜艦隊第11護衛部隊所属駆逐艦の『エージェイ』は、RIM-7 シースパローや76mm速射砲、90式30mm機関銃を撃って応戦していた。

 

エージェイは、元中国海軍の広州級駆逐艦であり、東亜戦争で日本が鹵獲品として獲得、その後海上自衛隊国防予備役艦隊にモスボール保管されていた所を復活させ、クワ・トイネ海軍に譲渡していた。

 

 

「撃て撃て撃て!一騎も通すな!!」

 

「右舷より4騎突破!」

 

「くそっ!」

 

 

まだ練度が十分でないエージェイは、4騎のワイバーンを取り逃す。

 

 

「4騎全機こちらに突っ込んできます!」

 

「後部30mm機関砲射撃開始!」

 

 

獣人の艦長が後部の30mm機関銃の射撃を指示する。直様後部の砲塔が回転し、4騎の内3騎の命を一瞬で刈り取る。

ヒルトラストだけが残り、彼は死を覚悟したが、その時30mn機関砲の残弾が切れた。

 

 

「30mm残弾無し!!」

 

「何ぃ!!」

 

 

ヒルトラストはチャンスだと思い、最後の力を振り絞って突撃を開始する。

 

 

「パーパルディア皇国!皇帝陛下ばんざぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぃいぃぃ!!!」

 

 

エージェイの舷側に突っ込む寸前、ヒルトラストは魔法でワイバーンの体内を爆発させる。その爆発によってエージェイの舷は大破する。

 

 

「ぐおぉぉぉおぉ…被害報告!」

 

「敵騎が舷側に突っ込み、魔法でワイバーンの体を爆発させました!!」

 

「なんと!…捨て身の攻撃か…」

 

 

ヒルトラストが突っ込み、エージェイが大破するところは旗艦の『しぐれ』でも見えていた。

 

 

「敵機は回避行動を取らずにそのまま突っ込んだそうです」

 

「…特攻か。クワ・トイネの艦にはCIWSがついていないからな」

 

「だが脅威になり得る。一機も逃すな」

 

「はっ」

 

 

数分後、突撃したパーパルディア皇国攻撃隊950騎は全て撃墜された。

 

 




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