超大国日本国召喚   作:一般通過愉悦部

44 / 47
投稿遅れたので初投稿です。

課題が終わらないっピ!(割とピンチ)


第4話 フォーク海峡迎撃戦 前編

中央暦1642年4月23日午後7時──

《神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス 外務省》

 

 

神聖ミリシアル帝国外務省統括官であるリアージュは困惑していた。

彼は先進12カ国会議の議長である為、本来であればカルトアルパスに一週間滞在せねばならない。

 

だが、外務省から緊急の連絡とされて、此処帝都ルーンポリスに招集されることの理由がわからなかった。彼は、豪華な模様が施された廊下を進み、大会議室へ着く。

 

戸を開けると、帝国の上層部の錚々たるメンバーがいた。

情報局長アルネウスを始め、国防省長官であるアグラ、貴族出身である軍務大臣シュミールパオの姿も確認できる。

 

リアージュは、軍に関するトップが二人もいることに、軍事上で何か重大な出来事が起きたに違いないと断定し、中央の円卓に着く。

 

 

「それではこれより、緊急会議を開催します」

 

 

海軍の担当官が声を上げて、全員にレジュメが配られる。また、円卓の中央部から光が出て立体モニターの用に展開する。

 

担当官は口頭で概要を説明するが、それよりもリアージュは、レジュメに記された内容に驚いていた。

 

 

「報告いたします。先日11時頃、マグドラ群島で訓練中の第零式魔導艦隊より『我艦隊国籍不明艦隊より攻撃を受けている』との魔信と共に消息不明になっています」

 

「また、同群島に駐留する海軍航空隊地方基地も『現在攻撃を受けている、救援を請う』の後に、連絡が取れなくなっています」

 

「現在、陸軍離島防衛隊のみが唯一連絡が取れる状況下であり、防衛隊によると第零式魔導艦隊は敵艦隊の砲撃と空襲により()()()()。基地も敵航空機による爆撃で壊滅状態に陥ったとのことでした」

 

 

リアージュは、ガバッと列席する軍関係者の中の海軍将校を見る。彼は、顔が真っ青を通り越して死人の顔になりそうであった。その時、アグラ国防長官が、驚きながら担当官に告げる。

 

 

「待ってくれ、第零式魔導艦隊が()()だと…一隻も残らず撃沈されたのかね!?」

 

「はい、事実だと思われます。最初の艦隊決戦では五分五分でしたが、その後の航空機による空襲によって壊滅に陥ったと…」

 

「…敵国の正体は掴めているのかね?」

 

 

シュミールパオ軍務大臣の問いに、担当官は重重しく口を開ける。

 

 

「はっ…敵国は──グラ・バルカス帝国だと思われます」

 

「グラ・バルカス帝国だと!?」

 

「あやつらは西の果てにある文明圏外国であった筈!!レイフォルを滅ぼすだけの力はあると思うが、蛮族の艦隊に第零式魔導艦隊は敗北したと言うのかね!?」

 

 

その時、情報局長アルネウスが手を挙げる。

 

 

「聞きたいことがある…リアージュ君。グラ・バルカス帝国は先進12カ国会議で全世界に宣戦布告したのだね?」

 

「はい」

 

「我々は気が狂ったと思っていたが…本当であったか」

 

「して、リァージュ君、グラ・バルカス帝国はどのような艦で来ていたのだね?」

 

「…確かミスリル級を超える戦艦だったと思います」

 

「なっ…ミスリル級を超えるだと!?」

 

「それならば艦隊が敗北したのもうなづけるな」

 

「待ってください…リアージュ君、グラ・バルカス帝国の船が出港したのは?」

 

「午後2時近辺だったと思います」

 

 

その言葉に、会議の全員があることに気がつく。

 

 

「時間があわないぞ…つまり…」

 

「グラ・バルカス帝国は、使節団を乗せた船以外の艦隊を派遣していると言うことか!」

 

「くそっ!やつら最初から宣戦布告する気満々だと言うことか!!」

 

 

その時、アグラがふと担当官に尋ねた。

 

 

「そういえば…敵艦隊の針路は?」

 

「…東へ向かったと思われます」

 

「!!!」

 

 

その瞬間、リアージュは真っ青になった。

 

 

「ひ、東ということはつまり!」

 

「はい…現在先進12カ国会議が開催されている場所──カルトアルパスに向かっていると考えられます」

 

 

全員に衝撃が走る。その時、シュミールパオが手を鳴らす。

 

 

「一旦整理しよう」

 

「敵──グラ・バルカス帝国軍は3艦隊に分かれている」

 

「使節団の乗せた艦隊・第零式魔導艦隊を襲撃した艦隊・機動部隊の3つだ」

 

「速力などを考えると…25日の昼にはカルトアルパスに着くぞ」

 

 

その言葉に、リアージュと軍関係者は真っ青になる。

 

 

「防衛状況はどうなっている!」

 

「は、はっ!現在、ベリアーレ海に展開中であった第2魔導艦隊及びゴースウィーヴス港に停泊中の第3魔導艦隊が全速力でカルトアルパス周辺に展開させるように手配を行っていますが…速力的に間に合わないかと…」

 

「現在カルトアルパス防衛に当たれるのは、南方地方隊の魔導巡洋艦8隻のみとなります」

 

「エアカバーとしては制空型天の方舟『エルペシオ3』や爆撃戦闘型『ジグラント2』などを配備しているカルトアルパス空軍基地所属の第7制空戦闘団約40機がありますが… 空軍はともかく魔導艦隊が間に合わない可能性が高いです」

 

「現在カルトアルパスでは先進11ヶ国会議が行われているため、外務省統括官の方の意見も伺いたいと思い、今回の会議にお呼びしました」

 

 

リアージュは顔を真っ青にしながら担当官に淡々と告げる。

 

 

「じ…冗談じゃないです!!()()()()である神聖ミリシアル帝国が、帝国の威信をかけて防衛している会議に、『東の小国が攻めてくるのでお逃げください』など言えるはずがありません!!」

 

「我が国がそんなことを言ったら、文明圏外国の保護国でも我が国を見くびるものが増え、列強や文明圏外国も我が国を軽く見始めます!」

 

「まあ、待ち給えリアージュ君。各国も()()()そして()()()()被害を受けたと説明すれば良かろう」

 

「ここは正直に、各国の代表に事情を説明して一時避難を申し出れば良いだろう?」

 

 

アグラの言葉に、リアージュは反論する。

 

 

「…そんなことをして、各国の外務大臣が移動中に航空攻撃などで狙われて死んだのであれば、『ミリシアルは世界最強なのになぜ敵の襲撃を許したのか』と言われるでしょう」

 

「艦隊が間に合わないのなら、シュミールパオ殿。空中戦艦パル・キマイラか海上要塞パルカオンの投入は可能か?」

 

 

その言葉に、シュミールパオは重々しく首を横に振る。

 

 

1()0()0()%()()()()()

 

「空中戦艦パル・キマイラはまだしも、海上要塞パルカオンは全体の半分程度しか解析終了しておらず、また両方共皇帝陛下の決裁が必要である」

 

「しかし!」

 

「先ずは各国代表をどうするか決めるのが先だ!」

 

 

その後、深夜までに以下のことが会議で発表される事が決定された。

 

 

○グラ・バルカス帝国海軍の艦隊がカルトアルパスに迫ってきている。

○先日()()()()()()()()()()によって壊滅し、また現在展開している魔導艦隊では撃ち漏らしの可能性が高い。

○万が一の場合、会議参加国代表使節団の方々は、東の都市『カン・ブリッド』へ一時退避を願いたい。

 

 

◇◆◇

中央暦1642年4月23日午後──

《日本国・NWTO第1合同特務任務部隊(JSTF-1)旗艦『きい』司令部作戦室(FIC)

 

 

戦艦『きい』の司令部作戦室(FIC)では、フランチェスコ・ミンベッリから送られてきた映像を見る為、艦隊の司令官と艦長、幕僚全員が集まっていた。

 

 

「メインモニターに映します」

 

 

そう通信科の乗員が言うと、カメラによって遠方から撮られた動画が映し出される。

戦艦と思われる艦などが映し出され、海面には砲弾が着弾したと思われる水柱が上がっている。

 

 

「砲撃戦だな」

 

「砲煙が虹色?形的にミリシアル艦か」

 

「魔法文明だからか?」

 

 

そう司令部員たちが話していると、近未来的なフォルムのミリシアル戦艦が撤退するのがわかった。

 

 

「…損害は五分五分か?」

 

「いや…ミリシアルの負けだ」

 

 

そう東郷1等海佐が言うと、ミリシアル艦の乾舷に水柱が上がる。

ゆっくりと傾斜が増え、終いには転覆して海の藻屑になってしまった。

 

 

「東郷1佐、なぜ分かったのです?」

 

「駆逐艦だ、接近した後転進していた。魚雷だ」

 

「ミリシアルは回避行動を取っていない…魚雷を知らないのか!?」

 

 

室内がざわめく中、山本海将が右手を上げて静める。

 

 

「一旦落ち着きましょう…通信員、この場所は?」

 

「フランチェスコ・ミンベッリからの情報によりますと、此処カルトアルパスの西側500kmの地点、マグドラ群島と呼ばれる地点だと言うことです」

 

「オイオイオイ、現代艦船ならば超至近距離じゃないか…」

 

「30ノットならば半日だ…此処も安全だとは言い難いぞ」

 

「…今私たちに出来るのは、最悪の事態を想定して作戦を考えるのみです。全員此処に残ってください」

 

 

対グラ・バルカス帝国会議は深夜まで続いた。

 

◇◆◇

中央暦1642年4月24日正午──

《神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 帝国文化館第一大会議室》

 

 

「只今より、先進1()0()ヶ国会議実務者協議を開催致します」

 

 

参加国が1日で2カ国も減ったこの世界会議。最初に、議長のリアージュが言葉を上げる。

 

 

「開催に先立ちまして、議長国の神聖ミリシアル帝国から各国代表へ連絡があります」

 

 

そういうと、神聖ミリシアル帝国の代表官(初日とは違う人)が席を立ち上がる。

 

 

「昨日、カルトアルパス西方であるマグドラ群島に置いて、我が国の()()()がグラ・バルカス帝国と思われる艦隊による奇襲攻撃を受けて、被害を受けました」

 

「地方隊を奇襲した部隊は、此処カルトアルパスに向かっているとの情報です。ですがカルトアルパスには魔導巡洋艦8隻が配備されており、また空軍のエアカバーもあるため問題ありません」

 

「ですが、()()()()()()カルトアルパスが被害を受けることを考慮して、皆様の安全を確保する為に本日の夕方までにカルトアルパス港から全代表護衛艦隊を引き上げていただき、開催地を東の『カン・ブリッド』に移したいと思います」

 

「お手数おかけしますが、ご理解いただきたく存じます」

 

 

地方隊、また奇襲攻撃と言っても、世界最強の神聖ミリシアル帝国海軍が被害を受けたことに各国代表が驚く中、外務大臣護衛の任に付いている中央国家憲兵団の『松本雄平』は、()()()が、また()()()()()()と曖昧な言い方をするミリシアルへうんざりしていた。

 

 

「(おそらく自身が見くびられるのを守るためか…しかし、もし会議参加国の護衛部隊が戦うと言ったらどうする?)」

 

「(事前に情報を入手していた我が国はともかく、他国も精鋭の艦隊を派遣している筈だ)」

 

「(しかも、グラ・バルカス帝国は列強とはいえ、下したレイフォルが列強最弱の為に見くびられている)」

 

「(あの艦(グレード・アトラスター)を見たならわかる筈だが、華夷秩序のこの世界のことだ。好戦的な奴も現れるだろう)」

 

 

その予想は、見事的中することになる。

エモール王国代表のモーリアウルが立ち上がる。角が生えている顔は怒りの表情に染まっている。

 

 

「あの無礼者が攻撃してきたからと言って、世界の強国である我らが尻尾を巻いて逃げろと申すのか?」

 

「此処に来ている者たちを護衛する艦隊は、精鋭なのであろう?ならば、魔力数値の低い人種如きが使用する艦隊など、殲滅できるだろう」

 

「我が国は内陸国の為艦隊は派遣していないが、控えの風龍22騎ならば、この戦いに投入しても良いぞ」

 

「「「おぉぉお…」」」

 

 

世界最強の航空戦力とされ、列強からも『一騎当千の風竜騎士団』と呼ばれ一目置かれている風龍。各国が一目置く列強エモールの精鋭部隊の投入表明に、場は静まり返った。

 

 

「わ…我が国の戦列艦7隻も無礼な行動をとるグラ・バルカス帝国を叩くならば喜んで手を貸しましょう!!」

 

「我が文明圏ではあやつらは我が物顔で暴れ回っている。中央世界の皆様と共に戦えるのであれば我が艦隊もお貸ししましょう」

 

「我が国もレイフォルで暴れ回っているグラ・バルカス帝国にお灸を据えたいと思っていました。機動艦隊を投入させましょう」

 

 

第一文明圏国のトルキア王国、第二文明圏国のマギカライヒ共同体とムーも参戦も表明する。まあ、トルキア王国はエモールと同盟を結んでいる為、エモールに追従しなければいけないのもあるが。

 

その時、長瀬の隣に座っていた第三文明圏国パンドーラ大魔法公国の代表が目を輝かせながら長瀬に尋ねる。

 

 

「日本国とNWTOの対パーパルディア戦の伝説は数々伺っています。貴国はどうなされるのですかな?」

 

 

この言葉に長瀬は困る。確かに彼は全権委任大使だが、護衛艦隊を動かせる地位ではない。開催場所の移動も本国に問い合わせる必要がある。

 

 

 

「開催地変更と参戦については、本国に問い合わせます」

 

「我が機構も同じくです」

 

 

井上とギーソンは、二人の連絡を受けて、きいとモンタナの通信室に駆け込んだ。

 

◇◆◇

中央暦1642年8月24日午後3時──

《日本国 首都東京 千代田区永田町首相官邸 地下2階内閣危機管理センター》

 

 

首相官邸では、国家安全保障会議(NSC)が開催されていた。

上座に座る阿倍野総理は、茶を啜りながら話を聞いていた。

 

 

「やはりか…大変なことになったな」

 

「世界大戦ですか…」

 

「第三次世界大戦はゴリゴリですよ」

 

 

じつは、2014年の東亜戦争の際、中国がロシアに参戦を依頼しており、ロシアが参戦すれば世界大戦の危機であった。

 

中国と関係が悪かったロシアが、国連側で参戦したので世界大戦の危機は去ったが、この世界ではグラ・バルカス帝国と戦える国はミリシアルやムーなどしかおらず、正面切って戦い勝てるのは日本とNWTOぐらいであった。

 

 

「とりあえず、護衛部隊はどうする?」

 

「参戦させるしかないですが…ミリシアルの地方隊がやってくれるのでないですかな?」

 

 

そう言った法務大臣の言葉を防衛大臣の川野が否定する。

 

 

「マグドラ沖の艦隊がミリシアルの最新鋭艦隊らしいですから…期待できませんね」

 

「正直言ってお荷物です」

 

「それマスコミの前で言わないでね?」

 

 

正直にミリシアルを馬鹿にする川野だが、それには理由があった。

 

 

「ミリシアルが勝てばこのようなことにならなかったんです。世界最強の国ならもっと実力があって欲しかったですね」

 

「それはわかる」

 

 

数時間後、護衛艦隊にこの事態への国家安全保障会議(NSC)の回答が送信された。

 

◇◆◇

中央暦1642年4月25日──

《神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス 帝国文化館第一大会議室》

 

 

「とゆう為に、やはり万が一の場合を考え、早期に移動を願いたい!!」

 

「仮にカルトアルパスが攻撃を受けた場合、時間がありません!此処で話をしている時間はないのです!!」

 

 

リアージュが声を上げるも、会議は紛糾する。

避難に反対する国も、もし最新鋭の外交官護衛艦隊が戦わずに逃げたなど報道されれば、他国に国力をみくびられると共に、国内からも非難の声が出かねない。

 

 

「…大使!!長瀬大使!!」

 

 

元いた世界(地球)と全く違う世界会議に頭を痛めている時、きいへ連絡に行った井上が声をかけてくる。

 

 

「政府見解が出ました!!」

 

「どうなった?」

 

「やはり、交戦を許可すると…」

 

「分かった。ミリシアルに伝えよう」

 

 

そう手を上げようとすると、リアージュが横にいた女性から紙を受け取り、顔が驚愕した表情に包まれる。

 

 

「皆様!ご静粛ください!!重要な発表があります!!」

 

「先程、我が海軍の哨戒機がカルトアルパス南方約150㎞地点を北上するグラ・バルカス帝国戦艦部隊を発見致しました。なお、空母機動部隊はまだ発見出来ておりません」

 

「これより航空部隊による攻撃を行う予定ですが、このままグラ・バルカス帝国艦隊が北上するとカルトアルパス湾入口のフォーク海峡に至ります」

 

「グラ・バルカス帝国艦隊の巡航速度は約20ノットであり、この速度と海峡への距離を考慮すると避難はもう間に合わないでしょう」

 

「それによって皆様の案を採用し、臨時的に世界連合艦隊を編成し、これを迎え撃つことに決定しました」

 

「ですが、我が国の威信と義務をかけて外交官の方々と外務大臣様の身は確保させていただきます」

 

「よって、本会議に出席中の各国使節団の皆様には、早急に鉄道で東の都市カン・ブリッドに避難していただきます」

 

 

その言葉によって会議室内がざわつく中、長瀬とエドワードが手を挙げる。

 

 

「長瀬大使、エドワード大使、どうかなされましたか?」

 

「本国より回答が出ました。我が艦隊もグラ・バルカス帝国艦隊を撃滅するならば、交戦を許可するとのことです」

 

「我が機構も同じく、傍若無人なグラ・バルカス帝国を許してはいけません」

 

「「「おぉぉお」」」

 

 

エモールと同じく、パーパルディア皇国を一方的に下した日本とNWTOの参戦に会議室内は色めく。最終的に、会議では以下のことが決定された。

 

 

○ 会議参加各国の外務大臣護衛艦隊は一丸となって、自衛のためグラ・バルカス帝国軍を迎え撃つ。

○外務大臣及び外交官一向に関しては、神聖ミリシアル帝国の誘導で避難を行う。

○避難先は東部の都市カン・ブリッドとする。

○先進10ヶ国会議を続けるかどうかは、そこで決定する。

 

 

◇◆◇

中央暦1642年4月25日午前8時──

《神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス港》

 

 

「──以上の事から、グラ・バルカス帝国との交戦許可が下されました」

 

「日パ戦争と同じく、我々外交部が情報局の情報を軽く見ていた弊害です。誠に申し訳ありません」

 

「頭をお上げください長瀬大使。その為のこの艦隊です。必ず勝利を掴みましょう」

 

 

頭を下げる長瀬に山本と東郷は頭を上げるよう告げる。

その後、長瀬が退艦した後、山本は通信マイクを掴み、艦隊の全艦に告げる。

 

 

『総員傾注、艦隊司令の山本です』

 

『現在停泊中のカルトアルパスで行われている先進12カ国会議である事態が発生しました』

 

『この艦隊に配備されている諸君は知っているでしょうが、情報部から知らされたグラ・バルカス帝国の全世界への宣戦布告です』

 

『そして先程、主催国である神聖ミリシアル帝国が此処から西にあるマグドラ諸島の()()()が被害を受けたと公表しました』

 

『実際はミリシアルの最新鋭艦隊が全滅した事を確認しました。大本営発表です』

 

 

その言葉に艦隊が笑いに包まれる。大本営発表は第二次世界大戦の中国軍の総司令部が発表した戦果の事であり、大きな誇張が含まれていた。

 

 

『話が逸れました。この攻撃はグラ・バルカス帝国艦隊によって行われ、此処アルトカルパスに向かっている可能性があるとの事です』

 

『神聖ミリシアル帝国を筆頭とした9ヶ国が、この事態に対し臨時に世界連合艦隊を結成する事を決定しました。我が国もこれに参加する事を決定し、我が艦隊は臨時世界連合艦隊の1隻となります』

 

『相手は今までの木造船やワイバーンと違い、第二次世界大戦レベルの航空機と戦艦群がカルトアルパス湾の先、フォーク海峡に展開していると予想されます』

 

『しかも相手の規模から、我が艦隊以外はおそらく役に立ちません』

 

『ミリシアルの航空部隊だけが性能が不明ですが、対等以上の敵との実戦経験が無いパイロットで、果たしてどれだけの戦果が期待出来るのかは不確定です』

 

『ですがこの艦隊は世界最強の艦隊、全艦の能力を持ってすれば第二次世界大戦文明程度の艦隊など鎧袖一触で屠れると私は信じています』

 

『総員、第二種戦闘配置』

 

 

◇◆◇

1時間後──

《神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス港》

 

 

港湾監視局長であるブロントは『恐怖』と『期待』が混じった感情を抱きながら、出港してゆく世界連合艦隊を見ていた。

 

恐怖は、あの巨大戦艦を保有するグラ・バルカス帝国が此処カルトアルパスに向かってきていると言う事。

 

だが、彼は恐怖こそ感じていれど、冷静であった。それは期待を感じる世界連合艦隊である。

既にカルトアルパス上空には空軍カルトアルパス基地から離陸した制空型天の浮舟『エルペシオ3』や爆撃戦闘型『ジグラント2』が飛来している。

 

 

「マギカライヒ共同体、機甲戦列艦隊出港!」

 

 

『マギカライヒ共同体』。世界でも珍しい各州がそれぞれ独立した政府を持ち、単一の国家であることを主張していない為に学院連合の『マギカライヒ学院連合』が国として認められている国家。

 

ムーから入手した機械技術を魔導技術と融合させ、世界的にも珍しい『魔導機械工学』という機械と魔法の良いところを掛け合わせた技術を専攻しており、一部列強を上回る技術力から準列強とされる強国。

 

この国の機甲戦列艦は、レイフォルには数は劣るものの、速度と防御力は上であり、第二文明圏周辺はもちろん、世界的に見ても高い戦闘力を持っていた。

 

 

「アガルタ法国、魔法船団出港します!」

 

 

『アガルタ法国』。マギカライヒと同じ学院制であり、冷涼な気候のせいでワイバーンが棲息できない為に一人一人の魔法の強化に力をいれている中央世界の国家。

 

今出港している魔法船団は、第三文明などの帆船にしか見えないが、アガルタの意地をかけた魔法が搭載されているという。

 

 

「トルキア王国、魔導戦列艦7隻出港しました!」

 

 

『トルキア王国』エモールと同盟を結んでおり、かつての神聖ミリシアル帝国が宥和政策に切り替えることとなった国家。

 

その魔導戦列艦は、王国東部の森林で伐採された最高品質の木を使っており、性能は高い。

 

 

「ニグラート連合、戦列艦4隻、竜母4隻出港中!!」

 

 

『ニグラート連合』。第二文明圏文明国の一つであり、連邦制を採用している国家。

かつてのムーに侵攻した住人が、急成長を遂げたムーに危機感を感じて構成された国であり、今ではムーとは仲が良いが、ムーに対抗する為に竜母を多数保有しており、この戦いではミリシアル、エモール、ムー、日本に次ぐ航空戦力を保有しており、期待度は高い。

 

 

 

「パンドーラ大魔法公国、魔道船団8隻出港していきます!」

 

 

『パンドーラ大魔法公国』。パーパルディア皇国の属国であったのにも関わらず、文明国の中でも軍事力が高い国家。

 

パーパルディアには劣るものの、レイフォル並みの戦力が期待されている。

 

 

「ムー国、機動部隊出港!!戦艦2隻、装甲巡洋艦4隻、巡洋艦8隻、空母2隻、計16隻!!」

 

 

『ムー国』。この戦いでは、最大の隻数を保有しており、列強2位の為に期待されている。

特に空母2隻に搭載されている『マリン』はワイバーンロード以上の戦闘力を秘めており、艦隊防空に役に立つだろう。

 

 

「日本国及びNWTO、外交官護衛艦隊出港準備完了との報告です!!」

 

「了解した、出港許可を出す。武運長久を祈ると返信してくれ」

 

「分かりました!」

 

 

『日本国』『新世界条約機構(NWTO)』。本戦いで最も期待される東の新興国家。日本が有する大戦艦はミスリル級をも上回っており、各国はあの戦艦の戦闘力がどのようなものかと大きく期待している。機械文明の為に機関の始動、巨艦ゆえの大きさから1番最後の出港となったが、艦隊の勇壮は圧倒的だ。

 

 

「…頼むぞ…」

 

 

ブロンドは、彼の愛するカルトアルパスが被害を受けないように、世界連合艦隊へそう祈った。

 

 

               【9か国臨時世界連合艦隊】

 

[艦船]

 ──○神聖ミリシアル帝国海軍南方地方魔導巡洋艦艦隊 《シルバー巡洋艦8隻》

 ──○ムー国海軍外交官護衛艦機動部隊 《ラ・カサミ級戦艦2隻・ラ・デルタ級装甲巡洋艦4隻・ラ・ホトス級巡洋艦8隻・ラ・ヴァニア級航空母艦2隻、計16隻》

 ──○トルキア王国海軍先進12カ国会議護衛部隊 《オールコック級魔導戦列艦7隻》

 ──○アガルタ法国海軍外交官護衛魔法船団 《ラスオコアガ級魔導戦列艦6隻》

 ──○マギカライヒ共同体海軍外交団護衛機甲戦列艦隊 《ハナサケス級機甲戦列艦7隻》

 ──○ニグラート連合海軍外交部隊護衛艦隊 《ヴェーベルン級戦列艦4隻・ハルネス級飛龍母艦4隻、計8隻》

 ──○パンドーラ大魔法公国海軍外交部隊護衛魔導船団 《ナナボーゾ級魔導戦列艦8隻》

 ──○日本国海上自衛隊第1合同特務任務部隊(JSTF-1) 《きい型戦艦1隻・ひりゅう型原子力航空母艦1隻、すずや型ミサイル巡洋艦2隻・やまと型ミサイル護衛艦2隻・ながと型ミサイル護衛艦2隻・ふぶき型ミサイル護衛艦2隻・あきづき型汎用護衛艦2隻・ゆうぐも型汎用護衛艦2隻、計14隻》

 ──○ 新世界条約機構(NWTO)海軍 外交官護衛合同任務部隊(DEJMU-1)《モンタナ級戦艦1隻・アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦2隻・45型駆逐艦1隻・フォルバン級駆逐艦1隻・デ・ラ・ペンネ級駆逐艦1隻、計6隻》

計88隻

 

[航空戦力]

 ──○神聖ミリシアル帝国空軍第7制空戦闘団 《制空戦闘型天の浮舟『エルペシオ3』42機》

 ──○神聖ミリシアル帝国第15爆撃戦闘団 《爆撃戦闘型天の浮舟『ジグラント2』36機》

 ──○ムー国海軍外交官護衛艦機動部隊第6空母戦闘機部隊・第8空母戦闘機部隊 《『CM-16 マリン』48機》

 ──○エモール公国外交部隊護衛第16風竜戦闘団 《風龍22騎》

 ──○日本国海上自衛隊第1合同特務任務部隊(JSTF-1)第5空母打撃群第5空母航空団 《『F-14E』12機、『F-35C』12機、『F-2C』12機、『F-2D』12機、『E/A-18G』4機、『E-2D』4機、『SH-60K』6機、『SH-60I』3機、『C-2A』2機》

計215機

 

 

◇◆◇

同時刻──

《グラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊先進11カ国派遣部隊第5機動部隊 旗艦アクイラ級航空母艦『アクイラ』艦橋》

 

──第5機動部隊、それはグラ・バルカス帝国が前世界『ユグド』で初めて編成した空母打撃群である。空母を集中運用することによって、ユグドで3番目に海軍が強かった『聖リタブニア教国』の第1艦隊を空襲して艦隊の全戦艦を葬ったことから、他国に加えて自国の大艦巨砲主義にも多大なる影響を与えた部隊である。

 

空母6隻、計480機もの艦載機が所属するこの部隊の指揮官、『ウィルネックス・スルドルフ』中将は、旗艦の第1航空艦隊第1航空戦隊所属、アクイラ級航空母艦『アクイラ』の艦橋で今まさに発艦しようとする艦載機を見ていた。

 

アンタレス07式艦上戦闘機、シリウス07式艦上爆撃機、リゲル07式艦上雷撃機ね順番で飛行甲板に並べられ、それが一斉に暖気運転している様子は圧巻であった。

 

だがウィルネックスは一つ疑問に思っている事があった。

 

 

「主席参謀、なぜ上層部は空母を6隻も投入したのだね?」

 

「…わかりません、ですが上からの命令です。我々はそれに従うしかないでしょう」

 

 

ウィルネックスの言葉に、主席参謀は肩を竦めて答える。

当初は、第2・5航空戦隊のみを投入し、最精鋭の第1航空戦隊は投入しないつもりであった。

 

だが、海軍上層部と情報部からの強い提言によって、艦隊の規模は倍にまで膨れ上がっていた。

 

 

「世界最強とされるミリシアルは弱かっただろう?何を上層部と情報部は恐れているのだね?」

 

「…もしかしたら日本とNWTOが関係してるのではないでしょうか?」

 

「ああ…確か我々と同じ転移国家だという国々か。なら彼らの何を恐れてる?」

 

「さあ?」

 

「まあ、我々にできるのは職務を全うするということだけだ」

 

「そうですね」

 

 

彼らはカルトアルパスに停泊しなかったため、きいとモンタナ、ひりゅうの事を知らないのである。

その時、艦載機の暖気運転が終わったという報告と共に、一本の電信が入る。

 

 

「第1戦艦部隊、グレード・アトラスター座乗のカイザル大将から伝達、『グティマウンザンノボレ、0900』!」

 

「了解した、第1次攻撃隊発艦せよ!」

 

 

前述の聖リタブニア教国を空襲する際に出された帝国最高峰の山であるグティマウン山を意味する隠語が通達される。ウィルネックスは、艦橋横のブリッジで航空隊を見送った。

 

◇◆◇

30分後──

《神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス湾》

 

 

日本及びNWTO外交官護衛艦隊は、出港してから直ぐに艦隊を二分していた。空母ひりゅうを主とした機動部隊と戦艦きいを主とする水上打撃群である。理由は、300mもある艦が戦闘運動をすると戦列艦などが横転しかねない為であった。

 

 

『此方シャークス1より司令部へ、敵編隊確認。機数189、相対方位220°、距離約130km』

 

「了解」

 

「日本国外交官護衛艦隊司令部より、ミリシアル、ムー、ニグラートに連絡する」

 

「我が警戒機がグラ・バルカス帝国航空部隊を機数189、相対方位220°、距離約130kmの地点に確認した」

 

「迎撃を要請する」

 

『了解した、神聖ミリシアル帝国空軍第7制空戦闘団42機離陸する』

 

『ムー、マリン33機、発艦体制に入った』

 

『ニグラートより艦隊へ、ワイバーンロード12機、間も無く発艦する』

 

 

主席幕僚の東郷は、CICのモニターから発艦するムーのマリンとワイバーンロードを見る。

 

 

「(何分持つか…10分で御の字だな)」

 

 

だが彼はこの航空部隊が戦果を上げるのを期待していない。ワイバーンとグラ・バルカス帝国の主力戦闘機だと確認されている零戦もどきとでは100%勝てる筈がないし、マリンでも複葉機特有の旋回性能の高さで落とせるかどうかだ。

 

そのままレーダーを見ていると、不可解な事を見つけた。I()F()F()に反応があるのだ。

 

 

「レーダー担当士、IFFに反応があるのはどこの国だ?」

 

「ムーだと思われます。確か試作戦闘機に我が国製のIFFを載せていると」

 

「…これ以外は期待できんな」

 

 

唯一未確定なのはミリシアルの航空部隊である。魔法文明の為に国力が分からないが、ジェット機のような航空機は衛星で確認されていた。だがマグドラ群島沖の海戦の結果からあまり期待していなかったが、その予想はレーダーモニターを覗いて確信した。

 

 

「オイオイオイ…これがミリシアルの航空部隊か?」

 

「はい、時速400kmです」

 

「…これでジェット機なのか?」

 

「ええ、確か正式には魔光呪発式空気圧縮放射エンジン?とかだったはずです。燃料が違うだけで原理は同じだと思っていましたが…」

 

「…やけに遅いですな…」

 

 

艦隊幕僚らがミリシアルの航空部隊について考察している時、レーダー員が言葉を発する。

 

 

「ミリシアル、ムー、ニグラートの混成航空部隊。空戦開始しました」

 

 

その言葉に、幕僚はもう一度レーダーモニターに釘付けになるが、すぐにその顔は達観に変わる。

 

 

「レシプロ機より遅いジェット機なんて…1940年代の実験機ではあるまいし…」

 

「比較対象がムーのマリンだけだったから良かったのかもしれんが…ミリシアルは魔法帝国の打破を目指しているんだろう?」

 

「お荷物がまた増えたな」

 

 

東郷のその言葉に、CICにいた全員が同感する。

 

 

「司令、このままでは全滅いたします。ひりゅうの戦闘飛行隊の発艦許可を具申します」

 

「分かりました。通信士、ひりゅうへ一個飛行隊を発艦させるように伝えてください」

 

「了解致しました!」

 

 

通信士が通信室に駆けていく様子を横目に見ながら、東郷はレーダーモニターに目を戻した。

 

◇◆◇

5分前──

《神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス湾 上空》

 

 

ムー試作艦上戦闘機『XCM-1』に乗るパイロット『アルノス』は、眼下のマリンとワイバーンロード、エルペシオ3の編隊を見ながら、1ヶ月の事を思い出していた。

 

 

「これが…」

 

「ええ…我が国の試作艦上戦闘機、XCM-1になります」

 

 

技術士官のマイラスと一緒に、飛行場の格納庫に収納された戦闘機を見た1番初めの感想は、随分ずんぐりとした機体だと思った。

 

 

「この機体は、日本から情報提供してもらい製作されたムー初の近代型戦闘機になります」

 

「そういえば、スピットファイア戦闘機だかはどうなるんですか?確かあれが次期主力戦闘機だと噂されていた筈ですが」

 

 

スピットファイア戦闘機は、アルノスが所属する飛行隊の飛行場で試験を行なっており、高性能さに『あれに乗れるのか』とワクワクしていたが、あれは廃案になったのかに思った。

 

 

「いいえ、スピットファイアは確かに高性能ですが、日本からの完全輸入なので、ムー国内の航空機産業か衰退してしまう可能性もあります」

 

「また、一機当たりの値段も高いので、ハイローミックスという形で、スピットファイアは陸軍は首都防衛飛行隊、海軍は本国艦隊第1空母部隊のみの配備に決定されました」

 

「以上の事から、この機体が製作されました」

 

「ほう、武装はどんな感じですか?」

 

「12.7mm機関銃が4門、20mm機関砲が2門となっています」

 

「高火力ですね」

 

「対グラ・バルカス帝国のアンタレス戦闘機を主軸に考えてありますから。防御力も折り紙付きです」

 

「して…あの棒のようなものは?」

 

 

アルノスは、機体の脇で整備士が整備している、棒のような物体を指す。

 

 

「ああ…あれは…訓練の時のお楽しみです」

 

「??」

 

 

その時は不思議に思ったが、訓練で操作するとその理由がわかった。

この機体なら十分アンタレスと張り合える。

 

 

『左下!!敵機!!』

 

『散開しろ!ブレイク!』

 

『うわぁ!!助けてくれぇ!!』

 

 

魔信に入った言葉に驚きながら、眼下を見ると、マリンやワイバーンロードが一方的にアンタレスに屠られているのが見えた。あの神聖ミリシアル帝国のエルペジオ3も虫を叩き落とすかのようにやられている。

 

 

『隊長!』

 

「おう!いくぞ!!」

 

 

魔信から聞こえた、相棒兼2番機パイロットの『ノルース』の言葉に同調し、左下のフットペダルを踏む。機体が180°回ったところで、操縦桿を手前に引き、急降下させる。

 

前方中央に設置された光学照準器をアンタレスの少し先に合わせ、操縦桿の引き金を引く。

数秒後、アンタレスの右翼が爆発して、大きな火焔を上げながら墜落する。

 

 

「次!」

 

 

直ぐに、違う敵機に合わせて短く一連射。今度は操縦席付近に当たり、風防が赤く染まる。

操縦者を失った機は、急降下をして重力(G)に逆らえずに空中分解する。

 

 

「(これは機銃を撃つ暇がないから…ロケットで!)」

 

 

距離から計算して、機銃を当てる時間が無いと判断したアルノスは、操縦桿のボタンを押す。

機体左翼内側に搭載されたLAU-3から、Mk4 FFAR(マイティ・マウス)を模したムー製空対空ロケット弾『R-1 ズールド』が発射される。

 

近接信管が備えられたこのロケットは、回避行動を取っているアンタレスの近くで爆発し、それに耐えきれなかったアンタレスは、黒煙を撒き散らしながら地面に激突する。

 

一方、グラ・バルカス帝国軍のパイロットは大慌てだった。これまで不敗を誇ったアンタレスが一方的に落とされたのだ。

 

 

『ノーン!!ムーの新型機だ!!』

 

散開(ブレイク)散開(ブレイク)!!』

 

「くそっ!!」

 

 

慌てるパイロットの声が聞こえる無線に、グラ・バルカス帝国海軍アリエス級航空母艦『アリエス』戦闘機隊長の『ノースポリアール』大尉は悪態をつく。

 

 

「落ち着け!敵機は速度はアンタレスより上だが格闘性能は低い!各個で格闘戦に持ちかけろ!」

 

『『『了解!』』』

 

 

最初は慌てていたグラ・バルカス帝国のパイロットも、ベテランであるため落ち着きを取り戻す。

ノースポリアールは、操縦桿を動かし、XCM-1の後方へ回る。

 

 

「喰らえ!!」

 

 

前方の7.7mm機銃を操作して、敵機に撃ち込む。これでやったと確信したが──

 

 

「なっ!」

 

 

全く効いていなかった。実際には白煙を吐いているが、彼にそれを確認する暇はなかった。

 

 

『大尉!後ろに敵機!』

 

「なに!!」

 

 

上を向くと、急降下してくる敵と、機銃を発砲する閃光が見えた。数秒後、大尉の意識が永遠に戻ることは無くなった。

 

 

「ノルース!助かった!!」

 

『ちょろいもんですよ。帰ったら酒一本奢ってください」

 

「勿論だ」

 

 

そう言って敵編隊から遠ざかる2機。アンタレスも追ってはくるが、最高速度がXCM-1のほうが上の為、途中で追撃を止める。既に2機とも残弾は無く、帰還しようとしていた。

 

 

『ムー艦隊司令部よりアルノス編隊へ、どうぞ』

 

「こちらアルノス、感度良好どうぞ」

 

『日本艦隊の艦載機が攻撃を開始するそうだ。誤射を防ぐ為に退避してほしいと連絡があった』

 

『至急帰還してくれ』

 

「了解、帰還する」

 

「──見せて貰おうか。日本軍の戦闘機の性能とやらを」

 

 

アルノスはそう呟いた。

 

◇◆◇

同時刻──

《神聖ミリシアル帝国海軍 南方地方隊巡洋魔導艦隊旗艦『ゲイジャルグ』艦橋》

 

 

神聖ミリシアル帝国海軍の主力巡洋艦『シルバー級』の6番艦、ゲイジャルグの艦橋で、南方地方隊巡洋魔導艦隊司令のパデスは、魔信探知機の画面を覗いていた。

 

 

「ま……魔力探知機から、第7制空戦闘団の反応が消えました」

 

「まさか…全機撃墜されたのか!?」

 

「はい…レーダーに反応はありません」

 

「なんてことだ!我が神聖ミリシアル帝国が誇るエルペジオがこうも一方的に!?」

 

 

艦橋内がざわめく中、日本艦隊から一本の通信が入る。

 

 

『日本艦隊司令部より世界連合艦隊全艦へ連絡する。我が航空部隊が上空を通過する。敵機と間違えて誤射をしないように注意してください。方位…』

 

「日本機はどこから来る」

 

「はっ……この方角です」

 

「…何も反応が無いではないか」

 

 

この魔信探知機は距離60km離れている敵を探知できる優れ物だ。それが探知できないということはおかしい。

 

 

「ブラフか?いや、そもそも戦闘機を出したというブラフを流すか?」

 

 

そう考えている時、見張員が大きな声で報告して来る。

 

 

「飛行機械確認!日本艦隊が示した方角と一致します!」

 

「なに!!魔信探知機に反応は!?」

 

「ありません!!」

 

「(探知機に反応が無い!?魔力が無いのか!)」

 

 

魔信探知機の短所として、魔力を伴っていない機械は反応が薄くなったり、なくなる場合があった。だがこれまでは機械文明のムーでも魔法は使っており、運用には支障はなかった。

 

だが、彼に考える暇はなかった。

急いで見張場に向かい、魔導双眼鏡を除くと高速で接近して来る飛行機械が目に入った。

 

 

「!!」

 

 

パデスが驚いているのも束の間、飛行機械は高速で艦隊上空を通過する。

轟音が鳴り響き、戦列艦の中には傾いているのもいる。

 

 

「あれが!日本機!」

 

 

パデスは、冷や汗を流しながら空軍の皇都防衛飛行隊にも勝る練度で、そして見たこともないような速度で上昇する日本機を見送った。

 

◇◆◇

数分後──

《神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス湾》

 

第5空母航空団第27戦闘飛行隊(VF-27)『トップガン』は、F-14Eを操作して世界連合艦隊上空を通過した後、敵編隊の方角へ向かっていた。

 

第1飛行小隊4番機パイロット、竹中義雄2尉は、隊長の1番機パイロット、氷室零2佐に話しかける。

 

 

「隊長、ミリシアルの艦。随分近未来的でしたね」

 

『ステルス性持ってるぽいけどレーダーには反応してるんだよね』

 

 

ミリシアルの艦は近未来的であったが、些かステルス性は無かった。海自は、今後対決するであろう魔法帝国用にミリシアル艦を解析するのだが、それは別の話。

 

 

『此方シャークス1よりトップガンSQ(スコードロン)へ。方位2-1-0、距離42km、高度32,000に空中目標を確認。機数169、ミリシアルらが迎撃に当たったグラ・バルカス航空部隊と思われる』

 

『各機に割り当てを送る。攻撃を許可する(Cleared attack)、繰り返す、攻撃を許可する(Cleared attack)

 

『トップガン1-1より、SQ(スコードロン)へ、聞こえたか?割り当ての目標に対して16式空対空誘導弾(AAM-7)を発射しろ。全機攻撃開始!』

 

 

E-2Dからの攻撃許可が下され、パイロットは各々でJHMCSによってレーダーを照射する。

既に探知距離150kmを誇るAN/APG-81によって敵編隊は捕捉されており、いつでも攻撃が可能な状態であった。

 

機体の機首方向から左右60度以上に位置している敵機に対して、顔を向ける(つまり敵機を見る)だけでミサイルのロックオンができるようになっているJHMCSの特徴を使い、敵をロックオンする。

 

 

「レーダー照射、ロックオン」

 

「(169機…1機あたり空対空ミサイル(AAM)が8発だとして…撃ち漏らしは73機か…)」

 

「まあ良い…FOX-1!発射(Fire)!」

 

 

◇◆◇

同時刻──

《グラ・バルカス帝国 第5機動部隊 第1次攻撃隊》

 

第1次攻撃隊長を務める『ノリドーズ・フィルトス』は、司令部型に改造されたシリウス07式艦上爆撃機に搭乗していた。

 

シリウス爆撃機は旧海軍の彗星艦爆に酷似しており、また、周囲の編隊を構成するアンタレス07式艦上戦闘機は零戦21型、リゲル07式艦上雷撃機は97式艦攻に外見が酷似している。

 

 

「此方第1次攻撃隊より、アクリラ管制へ次ぐ…繰り返す、第1次攻撃隊より、アクリラ管制へ。応答どうぞ」

 

「ダメです…通じません」

 

「クソったれ…何で無線が使えないんだ!?」

 

 

ノリドースは悪態をついていた。先程は、ムーの複葉機、ミリシアルの戦闘機、ニグラートのワイバーンは難なく撃退したものの、途中で参戦してきたムーと思われる新型機によって、アンタレスが4機、シリウスが3機、リゲルが1機撃墜されていた。

 

そのことを報告するために、母艦であるアクイラに連絡しようとしたが、何故か繋がらないのである。

 

東部方面艦隊司令カイザル大将が直々に指揮する第1戦艦部隊とは繋がり、また戦艦部隊から機動部隊は繋がるので、全く理由が分からなかった。

 

実際には、F-14Eが発艦してから順に発艦した第247電子攻撃飛行隊(VAQ-247)『バーボン』所属の『E/A-18G グラウラー』による電子妨害(ECM)によって、空母艦載機から機動部隊、機動部隊から空母艦載機の連絡を完全に遮断していたのだが、そもそも電子戦(EW)を知らないノリドースにそれを理解する術は無い。

 

 

「どうしますか中佐?一旦母艦へ帰還しますか?」

 

「いや…そのままだ。作戦中止の命令は未だ出ていない」

 

「了解しました」

 

「通信士、湾までの距離は?」

 

「凡そ35kmです!!」

 

「そうか──ん?」

 

 

その瞬間、ノリドースは編隊の前方から黒い矢のような物が向かって来るのを目にした。

一回の瞬きの後、アンタレスとシリウスが、理解の及ばない僅かな時間を置いて一斉に爆散した。

 

◇◆◇

3分後──

《神聖ミリシアル帝国 カルトアルパス湾 日本国海上自衛隊第1合同特務任務部隊(JSTF-1) )旗艦『きい』》

 

 

「F-14Eから発射された16式空対空誘導弾(AAM-7)及び04式空対空誘導弾(AAM-5)96発、全弾着弾。敵編隊残機数73機」

 

「了解」

 

 

元々司令塔であった戦闘指揮所(CIC)では、山本がレーダー画面を見ていた。

96機もの機数が失われた編隊は、そのまま突撃を開始していた。

 

全滅の定義は、部隊の30%が消耗した時であり、この編隊は事実上崩壊しているわけだが、勇猛果敢にも突撃を開始していた。

 

 

「敵編隊さらに接近!」

 

「──対空戦闘用意!」

 

「対空戦闘用意!」

 

 

艦内に対空戦闘を知らせるブザーが鳴り響く。既に戦闘レベルが第二種から第一種に変わった時に、乗員全員が持ち場についているため、水密扉が閉められる。

 

第5空母護衛隊に属するやまと型ミサイル護衛艦『やまと』艦長『瀬戸 衛』は、対空戦担当士官からの情報を聞いていた。

 

 

「我が艦の攻撃目標は?」

 

「此方です。方位25、距離34、機数15」

 

「これより目標を目標群a(アルファ)とする」

 

「了解」

 

 

既に、きいに搭載されている戦闘型人工知能『高天原』によって瞬時に各艦に迎撃目標が振り分けられている。

 

 

『各部、対空戦闘用意よし』

 

 

艦橋から全員が配置についたことを知らされる。

 

 

「各部、対空戦闘用意良しとの報告です」

 

「了解」

 

「艦橋、第三船速」

 

「面舵──030度宜候」

 

『第三船速、面舵030度宜候』

 

 

既に護衛艦全艦が世界連合艦隊を囲むように輪形陣で展開している。

右方向から飛来する敵機に対して90°になるように、やまとも右に針路を変える。

 

 

「25度仰角45に備え!」

 

「前部VLS、1番から15番発射準備」

 

「目標攻撃諸元入力完了!」

 

「目標群a(アルファ)に対し前部VLSよりSM-6、15発発射用意、発射管制は手動で使用!」

 

「発射管制手動(マニュアル)で使用!」

 

「攻撃を開始します」

 

「了解、やってくれ」

 

「TDS指示の目標、SM-6攻撃初め」

 

「目標、a(アルファ)編隊。前部VLS1番から15番、SM-6発射用意!」

 

「SM-6、攻撃初め。斉射(サルボー)、てぇ!」

 

 

やまとの主砲(62口径5インチ単装砲)と艦橋の間に設置されたVLS(垂直発射システム)であるMk.41 垂直発射システム(VLS)のセル・ハッチが開く。

 

ミサイル・ハッチ内のSM-6(RIM-174スタンダードERAM)のブースターが起動して、発射炎がUの字になっている通路を通り、アップテイク・ハッチから噴き上がった。

 

落下防止用のカバーを突き破り、神の盾(イージス)によって制御されるミサイルは、グラ・バルカス帝国海軍艦載機を撃滅しようと牙を剥いた。

 

──この戦いは、各国で名称が異なる。

迎撃側である神聖ミリシアル帝国では、『カルトアルパス防衛戦』と呼ばれる。

 

また、攻撃側のグラ・バルカス帝国では、『Z作戦海戦』と呼ばれる。前世界で戦いが多かった為に、作戦の名前がそのまま戦いの名前になるのだ。

 

だが、日本など大多数では、『フォーク海峡海戦』と呼ばれ、また、海戦は4段階に区分される。 

 

その最初の戦い『フォーク海峡迎撃戦』は、日本艦隊のSM-2、SM-6の発射によって幕が開かれた。

 

 




XCM-1の外見はF6Fを想像してください。
もうすぐで日本国召喚の総合評価で1ページ目に来るので評価オナシャス

あとコパノリッキー来ませんでした(半ギレ)サイゲ許さん
でもジュエル来れたしSSRタキオン無料十連で引けたから許したる(テノヒラクルー)
だけどシリウスとCB実装されないからやっぱり許さん(大胆な暑い掌返しはホモの特権)

あと結構重要な作品の名前に関するアンケートやっているのでぜひ投票してください。

感想評価お待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。