キッチンから炊煙が上がってくる。今日の朝食は焼き魚のようである。
「さて、そろそろみんなを起こしてくれるかしら。」「承知した、甲姉!」朝餉の支度をしているのは長女、甲(キノエ)。エルエリア空軍中将を務めていて、立てた武勲は数知れず。
「起きろー!今日は魚だー!早い者勝ちで好きなものを食えるぞー!」
長男、乙(キノト)の力強い声が、兄弟姉妹で共有してる目覚ましだった。
「おはようございます…今日もお早いですね。姉さんに、兄さん。」
次女、丙(ヒノエ)。エルエリア陸軍中佐。日がな一日銃と剣を握るその手は、絆創膏だらけだ。
「んんー…まだ眠いよぉ…」「戊、無理に起きなくてもいいのに。」
三女、戊(ツチノエ)はとにかくドジな海軍少佐だった。先日、凍った甲板で足を滑らせ、頭に瘤を作ったばかりだ。無理矢理体を起こしてきた戊に呆れる丙。そこに次男の丁(ヒノト)、三男の己(ツチノト)が現れる。
「…起きた。」「焼ける匂いがしてきたから降りてきた!」
丁は口が重く、最低限の言葉しか言わない。こんな男がエルエリア陸軍大尉なのだから、部下はおっかなびっくりしているに違いないだろう。
そして己はすぐ調子に乗る莫迦。羽目を外して大失敗しては、丙の説教を受けるのが日常茶飯事だった。そんな対照的な2人が、なぜ馬が合うのかは、本人も知らない。
「おはようお兄ちゃん。何か手伝うことはある?」
降りてすぐに乙に寄ったのは、五女、壬(ミズノエ)。エルエリア空軍候補生で、来年に向けて勉学に勤しんでいる。
「うむ、そうだな。まだ庚と癸が降りてきてないから、起こしに行ってくれるか?」「わかった!ふふっ、任せてよ!」
四女、庚(カノエ)と五男、癸(ミズノト)は寝坊常習犯だった。何を隠そう、この2人が定刻通りに起きたことは一度もない。
「お姉ちゃん!癸くん!起き…て…あれ?辛お兄ちゃん?」「壬か。ちょうどいい。この2人を起こすの手伝ってくれよ。」
四男、辛(カノト)は2人の寝坊を最小限に抑えている縁の下の力持ちだった。彼がいなければ昼まで2人を寝過ごさせかねないと兄弟姉妹口を揃えて言うほどである。
「ふわふわ…やわらかい…ふふふ…」「すぅ……んぅ…」
庚は夢の中で猫と戯れているのだろうか。癸に関しては庚に抱き枕にされている。全く困った2人だ。
「おい!起きろお前ら!メシが冷めちまうぞ!」「おねがい、起きてよ庚姉ちゃん!癸くん!」
結局、庚と癸には余った小さな焼き魚があたった。ご馳走を食べそびれた辛と壬は、不満そうな視線を2人に向けていた。
これが、霧島家の日常である。