【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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アニメ前
思い出した!私は転生者


転生に憧れたことがある。最強の戦士とか、魔法使いとか、チート能力付きの転生だ。あれなら就職難に悩まないで済みそうなんだもん。うう、もう履歴書を書きたくない。帰ったら気分転換にアニメカービィのDVD見よう。

 落ち込んで注意力が散漫になっていたせいで、階段で足を踏み外してしまった。最後に覚えていることは体中の痛みだけだ。

 

 気がつけば、私は五歳の幼女だった。両親は事故と病気ですでに他界している、孤児だった。その日は父親を亡くして、熱が出るほど泣いた夜だった。目が覚めると頭痛と目元の痛みがして、記憶を思い出していた。

 視線を天井からずらすと、ベッドの傍にはハナさんがいた。頭を揺らしながら、うとうとしている。きっと夜通し私を看病してくれたんだ。体をそっと起こす。テーブルの方には村長さんもいる。椅子に深く座り込んで動かない。寝ているんだろう。

 彼らはキャピィ族だった。そして私は外から来た他種族だった。見た目はアニメのフームや、シリカに似ている。髪を左側で分けていて、前髪は長い。後ろの方はお父さんがこの間切ってくれたから、短い。

 お父さんを思い出したら涙が出てきたけれど、唇をぐっと噛んで耐えた。泣いちゃダメだ。これから一人で生きていくんだから。

 

「うん、自立しよう」

 

 齢五歳での決意だった。

 

 

 

「私、自立します!でも、まだまだ一人ではできないことだらけです。だから力を貸してください!お願いします!」

 

 村の広場、大樹の前で深く頭を下げて、ププビレッジの皆に協力を仰ぐ。村人たちは悲しそうに私を見た後、「応援する」と言ってくれた。

 それから、皆は私を見守ってくれた。

朝、山菜を取りに行くと、出会ったおじさんが山菜の見分け方を教えてくれる。取る場所も教えてくれた。「ありがとう」と言うと、頭を撫でてくれた。

洗濯ものや掃除をしているとき、サトさんが来て出来栄えを見てくれた。「よくできたね」と褒めてくれる。だから明日も頑張ろうって思えるんだ。

 昼、コックカワサキのお店で昼食をごちそうになるついでに、料理の作り方を教えてもらう。混雑時からずれていたため、じっくり時間をかけて習うことができた。「おれよりうまいね!うちに来るかい」とお世辞を言ってもらえた。私は両親と暮らした家が好きだから、丁重に断った。

 夕方。たくさんの人から夕食に誘われる。皆に気にかけてもらえて嬉しかった。でも、これも丁重に断った。だって晩御飯はお昼に作った料理の復習の時間だ。二回連続で同じ物を食べることになるけれど、料理の腕が上達するので、しばらくはこのままでいいや。食器を綺麗に洗って、一人でベッドに潜る。外から聞こえてくる何かの鳴き声がとっても怖かったけれど、前世の私が「大丈夫だよ」と慰めてくれる。私は母が作ってくれたぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて眠る。

 

 

 本当にどうしようもなく寂しい日だけは、お母さんと仲が良かったサトさんやハナさんの家に泊まらせてもらった。

 お父さんと仲が良かった人からは日曜大工とか、勉強を教えてもらった。でもあまり時間が取れなかったから、勉強は苦手だ。大人になって、もっと効率よく作業ができるようになったら、少しは時間が取れるだろうか。そしたらもっと本を読めるようになるだろうか。

 

 皆さんに、人に恵まれて私は生きてこられた。村の皆には感謝しかない。同年代の子たちとは遊べなかったから、友達は少ない。でも親友が二人いてくれる!

一人目はアーニャ!私と同じく本が大好きなキャピィ族の女の子だ。私が彼女の本を届けてあげたのがきっかけで仲良くなった。村の本屋さんで働くのが夢らしい。物静かだけど、私が男子にバカされたときはすっごく怒ってくれた。優しい心を持っているの。

 二人目はランタン!こちらもキャピィ族の女の子。流行ものが大好きで、自分の手で村の流行を作りたいと思っているの。村で服屋さんを開くのが夢なんだよ。今は、裁縫上手なお母さんから洋服の作り方を教えてもらっているみたい。私とアーニャも時々一緒に習っている。まだランタンみたいに上手くできないけれど、これがとても楽しいの。

ランタンは、アーニャと私が一緒に本を読んでいるときに現れて「一緒に遊んであげる!」と言ってくれたのだ。彼女は私たちにオシャレを教えてくれた、親切な女の子なの。

 

 

 

 そして私が十歳になった春。両親のお金も少なくなってきたから、働こうと思った頃だ。

 デデデ大王がエスカルゴン閣下、ワドルドゥ隊長、それにたくさんのワドルディたちを連れて、ププビレッジにやって来た。そして大王になる宣言をされた。村人たちは突然の事で困ったけれど、今より文明的になる。近代国家になる、と言われて大王様を受け入れた。ううん、どういうこっちゃ。それでいいのか、大人たちよ。

 

 しかし、これはチャンスだった!

 私はさっそく大王様を口説きにかかった。

 

「偉大なる至高の御方、どうか貴方様にお仕えできる栄誉を私にお与えください」

「いだいなるしこう……なに?」

「立派で素敵な陛下の下で、見習いメイドとして働きたいです。どうか雇ってください!」

「わしが立派で素敵……だっはっはっは!気に入ったゾイ!お前を雇ってやるゾイ!!」

「はあ!?ちょっと、まだ子供でゲスよ!??」

「失礼ながら。私は家事全般こなせます。必ずお役に立ちます!」

「ええ~?本当でゲしょうね?嘘言っていたらハリセンボンでゲスよ!」

「嘘じゃありませんよ、エスカルゴン殿。その子は本当に家事全般できます」

「……村長がそう言うんなら、まぁ、いいでゲショう。使えなかったら追い出すから、気張るでゲスよ!!!」

「はい!!!ありがとうございます!」

 

 こうしてリーノはお城に勤めることになった。その時はまだお城ができていなかったから、まずお城を造り始めるところからお手伝いした。お城は村の大工さんたちの力と、ワドルディたちの働きがあって、一週間後にはできてしまった。アニメの頃から思っていたが、ワドルディたちは器用だな。

 

 お城に移り住むときは、村でお祝いパーティをしてもらえた。皆で食べる立食パーティのような感じだ。おいしい食事に、皆からの激励の言葉をもらえて、私はたくさん泣いた。嬉しかったんだ。アーニャとランタンからお揃いの綺麗な貝のストラップをもらい、それをお守りにしようと決めた。

 村にある実家は、新婚さんに譲る。たくさんの思い出がある場所だが、ここはもう私の居場所じゃない。私はいくつかの思い出の品と、本当に必要な物だけを持ってお城に引っ越しした。

 

 お城に向かう道を、アーニャとランタンの三人で歩いた。村がどんどん遠ざかるあの日の光景は、ずっと忘れないだろう。二人とは橋の所で別れた。「また明日も会おうね」と約束して、二人を見送った。姿が見えなくなるまで手を振った。

新しいうちは、村が一望できる部屋だった。ちょっと階段が多くてきついけれど、これも運動だと思えばへっちゃらだ。窓からはお城の庭もよく見える。素敵で広めのワンルームだった。台所もお風呂もトイレも完備されている。しかも洗濯機まで置いてあるのだ!これで洗濯物が楽になるぞ!部屋にはバルコニーもあるから、洗濯物だって干せる。良い部屋を貰えて良かった。

 その日はお部屋を整えた後、夕飯は食堂でワドルドゥ隊長たちと一緒に食べた。二百人を超えるワドルディたちが一斉に食事をする様子は壮観だ。

 

「こんなに大勢で食べるのははじめてです!とても楽しいですね」

「それはよかった。今回のお食事は、リーノ殿を歓迎しておごらせていただきます」

 

 おごる、ということは食堂で彼らと食事するには、お金が発生するらしい。栄養を考えられて美味しく作られている料理はタダじゃなかった。手間暇かかっているから当然か。

 残念、と思ったけれど次回も食べたければお金を持って来ればいいのだ。また食べられるのは嬉しい。

 

「ありがとうございます!次回お呼ばれされたときは、お金が払えるようにしっかり働きますね」

「はい!お互いに頑張りましょう!」

 

 ワドルドゥ隊長はいい人だ。お城務めは不安だったけれど、なんとかやっていけそうだよ。そう両親に向けて思った。

 

 お城での生活はたいへんだった。仕事じゃないよ、勉強のお話!閣下やワドルドゥ隊長から、メイドの仕事や言葉遣いを学んでいる。本を読むことは慣れているけれど、勉強はあんまりしてこなかったから少しつまづいている。毎日頑張っているけれど、難しい。そうアーニャとランタンに相談したら、ごっこ遊びでもメイドさんが流行った。二人はお城での暮らしにちょっと憧れているみたい。「メイド服が可愛い」と言ってもらえた。似合っていたら嬉しいな。

 

 私がお城に住み始めてから二週間後、素敵なことをワドルドゥ隊長に教えてもらった。なんとお城にはエレベーターなる動く箱があるのだ!これで私が住んでいる階層まで、階段を使わずに済む。これは城勤めの者だけの秘密らしい。アーニャとランタンにも内緒なのだ。ちょっとドキドキする。

 

 それから一週間後に、玉座の間に呼ばれた。玉座には陛下、その隣にエスカルゴン閣下がいらっしゃった。私とワドルドゥ隊長はお二人の前に片膝をついた。

閣下いわく、もっと家来が必要だって話みたい。

 

「リーノ、お前村には詳しいでゲしょう。なんか、いい奴はいないんでゲスか!?」

「はい、閣下。わたくしはパームさんを推薦します」

「誰でゲスか?そいつは」

「村に住む男性です。メームという女性と結婚していらっしゃいます。優しくて、温厚な方で、非常に賢い方です。きっと陛下や閣下のお役に立つかと」

「よし!ワドルドゥ、そいつを連れて来るゾイ!」

「かしこまりました!」

 

 こうしてパームさんはこの国の大臣になった。推しに弱い方だから、断り切れなかったんだと思う。さらに大王様は仰った。

 

「強い戦士もほしいゾイ!!」

「この村に戦士なんていないでゲスよ……そうざんしょ?」

「はい。そのとおりでございます」

「ほらね!」

「うぬぬ……いやゾイ!絶対揃えるゾイ!!!」

「もー!わーがまま言わないの!!」

「それでは、募集の張り紙を出しておきますか?ププビレッジには時々、旅人がやってきます。もしかしたら元戦士の方が村にやってくるかもしれません」

「そうでゲスね。一応、募集ぐらいはかけておいてもいいでゲショ」

 

 私は戦士募集の張り紙を村に貼らせてもらった。張り紙を見た村人たちのうち数人が立候補したが「危険な仕事を押しつけられるかもしれない。やめておいた方がいい」と止めた。面倒事は嫌だったのだろう。男たちは素直に下がってくれた。良かった。家族同然の村人を危険な職に案内できないものね。

 

 年に数回、旅人が村にやって来た。けれど皆、張り紙に興味がないようだった。戦士募集の張り紙は、一年に一回張り替えている。今でも募集していますよ、というアピールだ。村じゃ、時々「どんな人がお城の戦士になるのか」という話題で盛り上がる。

 私とアーニャとランタンの間では“勇者一行みたいなチーム”と“屈強な戦士が一人”と“三人組の戦士”で意見が分かれていた。アーニャはおとぎ話に出てくるような人たちがいいらしい。ランタンは強くてイイ男一択だって。三人組の戦士に期待しているのが私だ。

 

 私が成人した頃。メーム婦人がご懐妊された。二人が首を長くして待っていたのは村中が知っているので、村ではお祝いしようとお祭りが開催された。夜にやっては足元が危険なので、お昼の間のみ行われる。屋台の道案内をかってでた私は村を巡回していた。いつものメイド服姿に、お祭りの実行委員としての証、ガングおもちゃ店の売れ残りを再利用した“花の腕輪”を着用していた。

十二組目の恋人たちを目的の屋台へと案内した頃、その人たちは現れた。

 

 丸い一頭身の戦士、兜がチョココロネに似ている長身の戦士、一番背が低く頭が楕円形の戦士。

 私が待っていた三人組だった。傍にいるアーニャとランタンは三人組の戦士たちを物珍しそうに見ている。村人たちも、遠巻きに彼らを眺めていた。その輪の中から、村長さんが進み出て彼らに話しかけた。何を話しているんだろう。聞き耳を立ててもここからじゃ聞こえない。アーニャとランタンの方を向く。

 

「お話聞こえる?」

「まったく聞こえないわね。誰かしら、あの三人組」

「いかにも戦士様って感じですよね。ちょっと素敵かも」

「アーニャったら、男は皆オオカミなのよ。ちょっとは警戒しなさい」

「し、していますよ!ねえ、リーノ」

「ええ。知らない人について行きませんとも」

「……知っているヤツに対してだって、ついて行っちゃいけない時があるのよ?」

「どうしてでしょうか?」

「……はっ!もうランタンったら」

「リーノはわかりますか?なぜでしょうか?」

「う!い、今はタイミングが悪いから、今度ね……」

「わかりました。今度教えてくださいね」

「あら、村長さんがこっち向いたわ」

 

 ランタンに言われて振り向いてみると、村長さんと目がばっちり合った。そして手招きされる。

 

「リーノに用事かしら?」

「行ってみる。二人ともまたね」

「またね、リーノ」

「さようなら。また今度」

 

 ランタンは髪をかき上げて、アーニャは手を振ってくれた。私は淑女らしく、急ぎ過ぎない速度で歩いた。村長さんのちょっと後ろで立ち止まり、三人の戦士に笑みを見せてから、村長さんに話しかける。

 

「村長さん、何か御用でしょうか?」

「リーノや。この方たちはあの張り紙を見たらしい。それで、陛下にお会いしたいそうじゃ」

「わかりました。皆様、わたくしリーノが城へご案内させていただきます。どうぞ、こちらへ」

 

 仕事モードに切り替えて、花の腕輪を外す。そして彼らに背を向けて、城の方へ歩き出した。後ろで鎧が鳴る音が続いた。

 

 村人たちの視線を抜けて、まっすぐ城までの一本道を歩く。途中私たちを追い抜いて行ったワドルディの一人を捕まえてワドルドゥ隊長への伝言を頼んだ。

 

「隊長に伝えてください。“城の戦士募集に応募があった。今その方々を案内している。陛下に伝えて、指示を貰ってください”と。お代は飴一つでいいですか?」

「わにゃ」

 

 おそらく良いのだろう。ポケットから日頃入れている、ワドルディ用の一口サイズの飴を取り出して、袋を破く。中身をワドルディに差し出して、口に入れてやった。ワドルディはその場でころころと飴を転がすと、すぐさま城の方へ走って行った。これで城に着くころには、陛下から指示を貰ったワドルドゥ隊長が、門前で私たちを出迎えてくれるはずだ。

 私は後ろを振り返り、「お待たせいたしました。参りましょう」と言った。

 

 

 

「陛下は今日、お会いになられません」

「……まあ、どうしてでしょう?」

「公務のためであります!!」

 

 公務???それはエスカルゴン閣下のお仕事では??そのように思ったが、顔には出さない。ただひたすらに笑顔を貫く。

 

「では、お客様にはお待ちいただく必要がありますね。隊長、客室の準備はできているのでしょうか?」

「すでに例の部屋をワドルディたちが掃除済みです」

「かしこまりました。では、そちらにご案内します。皆様、どうぞこちらへ」

 

 城門から中庭側の廊下を通り、一階の客室に案内する。扉を開けて三人を中に招いた。部屋は最大三人が同時に泊まれるようになっており、泊まれる人数の割にはかなり広い。ソファやテーブル、間接照明、洗濯機、トイレ、お風呂場も備えられていた。タオルやアメニティも揃っている。ホテル並みだ。

 

「今日はこちらをご利用ください。後ほどワドルディが、皆様を夕食にご案内いたします。そして、この部屋と中庭以外、立ち入りをご遠慮いただきますようお願い申し上げます。それでは失礼いたします」

「待ってくれ」

「はい。何かございましたか?」

「ここまで世話になった」

 

 そう言って一頭身の仮面の戦士は、手を差し出した。何か握られている。私はとりあえず両手を広げてそれを貰った。お金だ。しかもかなりのお値段。これチップや。

 私は勢いよく首を振って断った。そしてお金を返す。

 

「困ります」

「しかし……」

「ここはホテルではありませんので、わたくしには不要です。お気遣い感謝いたします。それでは」

 

 私は深く一礼をして、部屋の扉を閉めた。再び中庭側の廊下を通り、隠し扉からエレベーター前に出る。そこでやっと肩の力を抜いた。後はワドルディたちに任せよう。私は閣下と明日の予定について話す必要がある。エレベーターで玉座の間がある階層に向かった。

 

 

 玉座の間で見たのは、ゴルフをする陛下と、それを見守る数名のワドルディたちに閣下の姿だった。私は集中する陛下の邪魔にならないように、静かに閣下に近づく。そして隣に並んだ。

 

「閣下、陛下は公務中では?」

「アレがそうでゲスよ……」

「ええ……」

 

 閣下は呆れていらっしゃった。私も、今回ばかりは呆れてしまう。せっかくのお客様を一日も待たせてしまうなんて、なんということだろうか。頭痛がしてきた。今更どうしようもないので、とにかく、明日は何時に三人組の戦士を案内すればいいのか質問する。

 

「あ~、朝の十時でいいじゃないでゲスか?」

「かしこまりました。明日の十時に、玉座の間に連れてきます。ワドルドゥ隊長とパーム大臣にもそのように連絡いたしますか?」

「いや、受かったら会わせればいいざんしょ」

「かしこまりました。そのようにいたします。失礼いたします」

 

 陛下と閣下にそれぞれ一礼し、玉座の間から出る。次に一階にある食堂に向かった。そこに併設されている大きな台所を覗くと隊長が調理の指揮をとっていた。

 

「隊長、お疲れ様です。今よろしいですか?」

「どうぞであります!」

「明日、あの三人組の戦士たちを玉座の間に案内します。三人が採用されれば、隊長と大臣一家に引き合わせるとのことです」

「了解であります。パーム大臣にはわたくしの方から伝えるであります!リーノ殿は今日、我らと共に晩ご飯を食べていきますか?」

「わたくしは自室でいただきますわ。お客様と鉢合わせしたら気まずいから……」

「わかりました。では、また明日!」

「はい。また明日」

 

 そして部屋に戻り休んだ。

 次の日、朝五時に起きる。朝食を食べたり、身支度を整えたり、玉座の間の掃除をワドルディたちと行えばいい頃合いになった。一階中庭の客室を訪ねて、三人の戦士たちを玉座まで案内する。エレベーターは城の者だけの秘密なので、彼らはまだ使えないのだ。だから階段を上った。

 十時ちょうどに玉座の間へ入室する。そこに陛下と閣下の姿はなかった。私は三人を待たせると、部屋を出て陛下の自室方面へ向かう。途中で遭遇した。陛下は閣下と数人のワドルディを引きつれていた。端に避けて、陛下が私を通り過ぎてから、その一団に加わる。

 

「陛下、応募してきた戦士たちが玉座に到着しました」

「すぐ行くゾイ」

 

 玉座の間。私が先に入室する。

 

「デデデ大王がご入室されます」

 

 その言葉を聞いた戦士たちが片膝をつき、顔を伏せた。その姿を確認してから、扉を開く。閣下を連れて陛下が進んだ。私はワドルディたちと下がろうとした。けれど閣下に呼び止められたので、部屋の中に残った。閣下は陛下のすぐお傍にいるけれど、私は離れて柱の傍に立った。

 陛下が玉座に座る。

 

「面を上げよ」

 

 戦士たちは一切の乱れなく顔を上げた。それからいくつかの問答をやり取りした。私は自分に一体どんな仕事が振られるのか、それが気がかりでお話はあまり聞いていなかった。わずかに耳が拾ったのは彼らの名前と、元の職業くらいだ。やはりメタナイト卿、ソードナイトとブレイドナイトだった。アニメで見たときは可愛らしさがあったけれど、実際にこの世界の住人として出会うとわかる。かっこ良さ、気品、鋭さ、渋さが目立つ。とにかく只者じゃないと感じるのだ。

 

「―では、ワドルディ百人切りをしてみせるゾイ!!」

「かしこまりました」

「リーノ!ワドルドゥ隊長に連絡して、闘技場にワドルディ百匹呼ぶでゲスよ!」

「かしこまりました。直ちに行動を開始いたします」

 

 私は早足で玉座の間から出て行った。そしてスカートの裾を持ち上げて廊下を走り、一人のワドルディを捕まえる。その口に飴を一つ放り込んだ。

 

「至急、ワドルドゥ隊長に連絡です。闘技場にワドルディを百人連れて集合してください!」

 

 

 

 闘技場はお城の、中層部分にある。ローマのコロッセオを模した造りになっている。普段は静かな場所だが、今は違う。

闘技場の観客席は村人たちで埋め尽くされていた。なぜ村人たちが闘技場にいるかというと、閣下のお考えだ。元星の戦士の戦いは見ものになる。ならば催しものを開催してしまおう。チケットを販売して、観客を入れれば現金が入る。面接試験もできる、村人たちも喜ぶ、自分たちの懐も潤う。一石二鳥ならぬ三鳥だ。

皆お祭り気分で家族や恋人、友人たちと騒いでいる。娯楽の少ない田舎だから、こういう催し物とか大好きなんだよね。コックカワサキなんてお弁当やお菓子、飲み物を売りまわっている。

 闘技場の控え室モニターで、私はその様子を見てアニメカービィの雰囲気を味わっていた。この様子をフームが見れば呆れかえるだろうな。私は三人の戦いが見られるので楽しみである。

 手に持っていたトランシーバーが受信する。

 

『……リーノ、こちらエスカルゴン。三人を広場まで連れて来るでゲス!』

「こちらリーノ。了解いたしました。三人を案内します」

 

 プツン、という音がしてトランシーバーがオフになった。私は剣の手入れや精神統一をしている三人の戦士に向き直る。

 

「準備はよろしいでしょうか?」

「ああ、いつでも行ける」

「では、闘技場までご案内させていただきます」

 

 控え室から広場までは一本道である。案内役なんていらないくらいだ。迷わないようにという配慮か、それとも逃がさないようにと、見張りに私が選ばれた。私は光が差し込む方向へ歩く。その短い道中、メタナイト卿が話しかけてきた。

 

「君は……」

「はい」

「どうしてあの大王に仕えている?」

 

 足を止めて眉を寄せた表情を彼らに見せる。

 

「どういう意味でしょうか?」

「不快にさせたのなら謝る。すまない。ただ純粋に興味を抱いたのだ。君はなぜ彼に仕えている?」

「……わたくしは早くに両親を亡くしました。しばらくは一人で生きていましたが、お金が底をつきました。その時お会いしたのが、デデデ陛下と閣下です。私は生きるためにお城のメイド見習いになりました。随分昔の話ですわ」

「そうか。大変だったのだな……」

 

 リーノは頷く。大変だった。でも、同時に非常に恵まれてもいた。

 再び、廊下を歩き出す。

 

「大変でしたが、わたくしは恵まれておりました。デデデ陛下はよく遊びに連れて行ってくださり、エスカルゴン閣下は勉強を教えてくださいました。ワドルドゥ隊長は優しくて、ワドルディたちはいつも嫌な顔をせず助けてくれました。ここはわたくしの、大好きな家です。呆れたり、がっかりすることもありますけれど、同じくらい好きなんです」

「…………」

「……なんて、お客様にお話することではありませんでしたね。不必要な部分は忘れてください。……願わくば、あなた方にとってもこのププビレッジが、第二の故郷となることを祈っています」

「あなた方も?」

 

 広場に到着する。歓声が一際大きく上がった。私は貴賓席でご観覧になられる陛下と閣下にお辞儀をする。

 

「皆様のご活躍をお祈り申し上げます」

 

 三人に向かってもお辞儀をした。戦士たちは力強く頷いた。

 

 

 

 メタナイト卿たちは、見事お城の戦士となった。階級はワドルドゥ隊長よりも上になるそうだ。

 彼らの活躍は村中に知れ渡り、年頃の女性たちは色めき立つ。特に、最もワドルディを倒したメタナイト卿が人気らしい。かっこいいものね。

 

 彼らがお城に住むことになって、私はよく村の女性たち捕まるようになった。彼女たちの質問は大体決まっている。

 

「今日の三人はどうだった?」

「あなた、恋人はいないの!?あの三人のうち誰が好きなの!??」

「これ、あの人に渡してくれない?」

 

 村を訪れれば必ず言われるし、三人へのプレゼントを渡される。とっても疲れたので、「誰も好きじゃない、本人に聞いてほしい」とロボットのように繰り返した。プレゼントも本人に直接渡してほしいと断った。

 救いだったのはアーニャとランタンが他の人とは違ったことだ。二人とも私に何も頼まなかった。なぜか聞いてみた。

 

「私は遠くから見つめているだけで満足ですから……何かアクションを起こしたいとは思いませんね。あ、応援うちわって知っていますか?アイドルのコンサートに持って行く、自作のうちわなんですけど。私は三人のうちわを作りたいんです。今度一緒に作っていただけませんか?一人だと勝手がわからなくて……」

「アーニャったら、どっぷりあの人たちのファンじゃない。私はそうね、恋より仕事に生きる女だからかな。今は服の勉強に力を入れたいの。だから他の事はパス」

「なるほど」

「あんたは?傍であの人たちのことを見てるんでしょ?誰か、気になったりしていないの?」

 

 前世の推し、という意味ではメタナイト卿一択だ。だけど、ここはリアルで、彼らは仕事仲間だった。そういう浮ついた気分にはなれない。私は首を振った。

 

「仕事仲間としてできるかどうか、その視点でしか見られないかな」

「リーノさんって結構ドライですよね」

「そうかな?」

 

 

 

 人の噂も七十五日。三人が来て数ヶ月がたった。パーム様とメーム様のご息女、フーム様が誕生した。そして間もなく、ロロロとラララがお城に住み始めた。怒涛の主要&サブキャラの登場である。

 フーム様のお世話を手伝い、日々の仕事をこなし、アーニャとランタンの仕事を手伝い、メタナイト卿たちと時々交流する。あっという間にブン様がお生まれになった。

 ああ、もう原作はそこまで来ているんだ。小さな命を抱きながら思いをはせる。あの小さな戦士はどのくらい大きいのだろう。今のブン様や、横から覗き込んでくるフーム様よりも小さいのだろうか。さすがに大きいだろうか。はやく会ってみたいな。

 

 

 

 やがて、真昼の空に流れ星が落ちる。

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