付き合っていることを話すのは、勇気がいる。
「そなたとの関係を、二人に……いや、四人に伝えようと思う。いいか?」
「はい。わたくしも親友たちに秘密を打ち明けたいと思っていました」
とうとう私とメタナイト卿の関係を伝える時がきた。アーニャとランタン、ブレイドナイトとソードナイトさんは一体どんな反応を示すだろうか?
悩んだ。どうやって伝えるか。どんな言葉を選ぶべきか。アーニャとランタンに認めてもらって祝福して欲しかったから、すごく悩んだ。
でもそれも杞憂に終わる。
だってあの二人なら、私が愛した人を信じてくれるもの。
その結論に辿り着いて当日を迎えた。その日の食事会は鍋だ。切って入れて味を調えるだけなので、料理経験が浅いお三方も作りやすいだろう。
鍋は二つ作る。大人六人分なので、最後に雑炊かうどんを食べることになっても、このくらいの量はいると思ったのだ。それぞれの鍋の具材は違う。きのこ数種類、白菜、ネギ、にんじん、豆腐、大根、しらたき、春菊、もやし、こんにゃく、お肉はそれぞれ鶏肉と豚肉を投入する。鍋の味はあっさりと濃い目を用意して、さらにごまだれなどの鍋で食べるタレ類も数種類ほど用意した。
これでかなり豪華になったはず。喜んでもらえるだろうか?
「ブレイドナイトさんはお肉が好きなんですけど、あっさり味の物もお好きらしいので。今日の鍋はたいへん喜んでいただけると思います」
「ソードナイトも肉が好きだって言っていたわね。あの人が鍋が好きかどうかわからないけれど、おいしければ喜んでくれるわよ」
予測をたてるアーニャと、自信たっぷりなランタン。二人の言葉に頷き、私も気を楽にしてその時を待った。
常夏のプププランド。それでも太陽の光が届かない地下室は案外肌寒い。おかげで、鍋を食べる場所として最適だった。
三人の戦士は、はしを止めることなくどんどん食べ進めてくれる。特にブレイドナイトさんとソードナイトさんは「うまいぞ」「どれもいけるな」と褒めてくれた。メタナイト卿も満足そうに食べ進めている。私たち三人はそれぞれ顔を見合わせて互いを称え合った。
三人の戦士は、さすがというか切る作業はとても上手だった。なので、後は味付けさえ覚えてしまえば鍋はマスターしたと言えるのではないかな。
次はワンプレート料理がいいかもしれない。プレートとは、一つの皿にメインや、おかずをそれぞれ乗っける料理のことだ。
肉をメインに、端にサラダとかふかした芋とかを乗せる。湯がいたコーンと、ポテトサラダも一緒に乗せればより豪華になるだろう。わざと、お子様ランチのように色々乗せても楽しく食べられそうだ。でも、初心者向けではないから、お子様ランチはまた今度にしよう。
そうやって色々考えて、もくもくと鍋をつついた。私はごまだれが好きなので、あっさり味の鍋ばかり食べている。それに気づいて慌てて、濃い目の鍋にも手を出した。うん。両方味がしみていておいしい。
それから、鍋の具をほとんど食べきって「さあシメを食べよう」となった時、ソードナイトさんとブレイドナイトさんは本気で唸りだした。
「どちらがおいしいのか……」
呟かれた言葉に思わず吹き出してしまった。すみません。おかしくて……。
「雑炊も、うどんもできますので少々お待ちいただけますか?」
「どちらも楽しめるのか!」
「はい。わたくしたちの間でも、雑炊とうどんのどちらで食べ終わるか話し合いになりまして。鍋は二つあるのだから、それぞれ楽しめばいいじゃないか。という結論になったんです」
「今準備しますから少々お待ちくださいね」
「じゃ、私うどんの方をやるわね」
「よろしくお願いしますね、ランタン」
お三方には座って待っていてもらい、雑炊とうどんを準備する。それはすぐに準備できて、ソードナイトさんとブレイドナイトさんは「これなら俺たちにもできそうだ」とやる気を出していた。
「鍋は簡単よ。食材を切って鍋に入れて、味を調えるだけ。それだけで案外おいしくなっちゃうんだから。味を調えることが難しいなら市販の鍋つゆを購入すればいいのよ」
「変わり種の具材には、ソーセージ、ギョーザがありますね。野菜は今日使った物をもう一度利用して、ラーメン鍋で食べるといいと思います。見た目が少し変わりますし、味も変化するのでおいしく食べられますよ」
雑炊は少し蒸らす方が好みなので、蓋をして少々おく。先にできあがったうどんを食べた。
「うむ。うまい」
「気に入っていただけたようで嬉しいです。おかわりしたい方はぜひ仰ってくださいね」
うどん三人前を六人で食べ終わり、次に雑炊を食べる。卵は半熟でとろりとしており、おいしそうだ。六人は均等に食べられるように始めは少な目に盛って、まずは味をみてもらう。
「卵の濃厚さがうまいなあ」
「野菜の出汁とか、そういううまみが出ていてうまい。おかわり!」
「はい、いっぱい食べてください」
「う、うむ……」
アーニャが微笑むとブレイドナイトさんが口ごもった。これは、もしかすると、もしかしてなのかしら。
友人に訪れるかもしれない幸せに、私は胸がドキドキする。ううん、待って。先に私とメタナイト卿のことについて考えなくちゃいけない。友人たちの恋について考えるのはその後だ。
食事を食べ終えて、片付けを始める。
え?どのタイミングで発表するのかしら?もう終わっちゃうわ。
隣で、メタナイト卿の横顔をこっそり盗み見る。
「……私から言うので、待ってくれるか?」
「あ、はい。わかりました。その時にはお傍にいますね」
「頼む」
汚れた食器を洗い、流し、相手に渡して布巾で拭く。水気をある程度拭ったら、シンクの隣の開けたスペースに食器を並べる。直に置かず、吸水性のいい大きめのタオルを一枚敷いておく。その上に、並べていくのだ。食器同しがくっつかず、重ならないよう慎重に。
さあ、後は別れの挨拶だけ。
その時になってやっと、メタナイト卿から合図が送られた。
じっとこちらに視線を送ってこられた。「(今でしょうか?)」と察して、彼の傍に寄る。
「遅くなった。心の準備は?」
「はい。できております」
「うむ。……ソードナイト、ブレイドナイト。それにアーニャ、ランタン。聞いてほしい」
四人の視線がメタナイト卿に集まる。ごくり、と私の喉が大きく鳴った気がした。
「私とリーノは、交際している。今まで黙っていてすまなかった」
「おお!」
「やはり」
「まあ!!」
「そうだと思った!」
あら、驚かれると思いましたけれど、予想とちょっと違いました。メタナイト卿に視線を送ると、彼はゆるりと頭を振りました。
「どうやら、バレていたらしいな」
「なぜバレてしまったんでしょうか?」
「長年、親友をやっているもの。小さな変化だって気づくわよ」
「実は以前、お二人の会話を聞いてしまって……。そこから推測していました」
「そうだったんですか。……他の方も気づいていると思いますか?」
四人は顔を見合わせて、答えを出した。
「いや、まだじゃないかしら。村じゃ、二人が付き合っている噂を聞かないもの」
「城内でも聞きません。……秘密にしておいた方がいいでしょうか?」
「私は話してくれてかまわない。リーノはどう思う」
「正直に申しますと、まだ照れくさいですわ。でも、皆さんに伝えられたら嬉しいです。なので、話していただいてもいいですよ」
「ふふ、村中の男たちが驚くわよ」
「卿たちのファンもとっても驚くでしょうね」
「我々にファンがいるのか……?」
「いますよ。皆さん表立って行動されていませんが」
「そ、そうか!」
嬉しそうに頷くソードナイトさんとブレイドナイトさん。私はできたら、身近に目を向けて欲しいなと思った。私の勘違いかもしれないけど。
「(今度、きちんと二人から話を聞きたいですわ)」
その時は、私もたくさん質問されるでしょう。わくわくするような、びくびくするような。
「(楽しみですわね……)」