【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

20 / 81
産業革命

自然豊かなププビレッジ。

平和な村に工場が建てられた。この村には似合わない見た目をしている。その工場煙突から、黒々とした煙が二十四時間あがっている。

その煙は、城へたどり着くと壁や天井を黒く汚した。おかげで掃除が大変である。

 

「こういうとき、アーニャたちの手があれば、楽できますわね」

 

ワドルディたちはやることがあるようで、みんな忙しそうだ。リーノと共に掃除するワドルディたちも、どこかへ駆り出されている。

おそらく、新しくできた工場で働いているのだろう。あの工場には、嫌な予感がしていた。村人たちに怪我がなければいいのだが。

 

「リーノ!」

「フーム様?少々お待ちください」

 

高い所を脚立にのぼって掃除していた。下からフーム様に呼ばれたので、脚立を降りる。

身だしなみを整えようとしたら、何か言いたげなフーム様と目が合った。今日は先にお話を聞いた方が良さそうね。

 

「このような格好で失礼します。何かご用ですか?」

「デデデの企みを止めて欲しいの!あなたの言葉なら耳を貸すでしょう?」

「それは、難しいかと。わたくしはただのメイドです。いくら陛下たちに長く仕えているとしても、あの御方は耳を貸してくれませんわ」

「そんな……」

「ごめんなさい。フーム様、今はお力になれずとも、騒動が落ち着いたときには必ず力にならせていただきます」

「それじゃ遅すぎるのよ!」

 

フーム様は走り去ってしまった。

その背中を、私は直視できない。私がこうして、のんびり構えてられるのは、未来を知っているからだ。工場は壊れて、村人たちは正気に戻る。壊れた自然は帰ってくる。

でも、フーム様はそれを知らない。だから、今を一生懸命生きられる。行動される。

それが眩しくて目を伏せる。自分が少し情けなかった。

 

 

 

数日後、村が気になった。雨が降っていたからだ。そろそろ酸性雨によって自然が壊され始める頃だ。私はその様子を見ておかなくてはならないと思った。

城の廊下でメタナイト卿に出会い、一緒に村へ向かった。

会話はあまりない。私の重苦しい気持ちを察してくださっているのかも。

 

村へついたのに、誰にも会わなかった。おかしい。お昼前だとしても数人とすれ違うものなのに。

 

「みんな、工場で働いているのでしょうか?」

「だろうな。アーニャとランタンは?」

「二人は工場には行っていないはずです。前に工場について説明したところ『それなら、自分たちで作品を作っていた方が良い』と話していましたから」

「ならば、無事だろう。雨だ。家にいるだろう」

「ええ、そうですよね」

 

メタナイト卿に花畑があった村の外れに行かないかと誘った。彼は了承してくれたので、そちらに足を向ける。

 

花畑には先客がいた。フーム様だ。声をかけようとして、何も言えなかった。フーム様の先にあったはずの自然がなくなっていたのだ。草木は枯れて、以前のような緑美しい景色はない。

 

「この、雨のせいですね」

「ああ、そうだ」

「メタナイト卿、それにリーノ……。気づいていたの!?」

「おおよそな」

「わたくしは、何となくという程度です。あの煙には、良くない物が含まれている気がしていました」

「二人とも、どうして止めてくれなかったの!?」

 

メタナイト卿はちらりと私の方を見てから、言った。

 

「愚か者たちは痛い思いをしなければ理解できない」

「…………」

 

手をぎゅっと握りしめる。フーム様が声を張り上げた。

 

「ひどいわ!リーノが村を、みんなを大切にしていることは知っているでしょ!」

「いいんです。フーム様、メタナイト卿は間違っていません。それに私だって、こうなることをわかっていたのに、何もしなかったんです。悪いのは私自身です」

「リーノ……」

「フーム様、それにメタナイト卿。わたくし、不安なんです。あの工場は便利グッズを作るためだけなのでしょうか?」

「なんですって?」

「わたくしの勘が正しければ、もっと悪いことが起きるはずです。それが恐ろしいのです」

「……調べてみる!!」

 

フーム様は走ってどこかへ向かわれた。きっと工場だろう。

 

「メタナイト卿、今日は工場の方に行ってみようと思いますの」

「何をするつもりだ」

「何もしません。外からただ、眺めるだけですわ。この自然を壊した原因を、ただ見たいんです」

「わかった。共に行こう」

「ただ近くで見るだけですよ?」

「念の為、というやつだ」

「わかりました。では、ご一緒に」

 

工場へ歩いていく。誰にもすれ違わない。それがとても寂しくて、こんなこと何度も起こりませんようにと祈った。

 

やがて雨は止む。

 

工場が近くなる。すると激しい物音と人々の悲鳴が聞こえてきた。私たちは走り、逃げてゆく村人の一人を捕まえる。

 

「何がありましたの!?」

「デデデに騙されていたんだ!ここはロボット工場だった!!今は、カービィが戦っている!」

 

それだけ言うと村人は走って行ってしまった。メタナイト卿の方へ振り向く。

 

「メタナイト卿!」

「落ち着け。フームたちの姿がない。まだ中にいるんだ」

「そんな……わたくしのせいで、フーム様は!」

「君がきっかけだったとしても、決めたのはフームだ。信じて待とう」

「わかり、ました」

 

「リーノ!メタナイト卿!!」

「逃げろ〜!!!」

 

「フーム様、ブン様、カービィ!」

「逃げるぞ!!」

「は、はい!」

 

後ろから走ってくる三人と合流し、工場から離れ続ける。

五分ほど走っただろうか。後ろで大爆発が起きた。

遠くで悲鳴も聞こえた。なんとなく、聞き覚えがあるのは陛下たちの声だからだろう。

きっと今回も、ワドルドゥ隊長が兵士を率いて探しに行くんだわ。帰ったらご飯の用意だな。

 

 

 

 

 

村は自然を失った。

取り戻すべく、キュリオさんとフーム様がリーダーとなり村人たちは動き出した。

私も参加する。お手伝い程度なのは、炊き出しを主に担当しているからだ。私が作るご飯をみなさん楽しみにしてくれているらしい。嬉しいことだ。

 

何より、以前より村人たちが自然を大切にしようと行動していた。子供たちは花を見つけては水をやった。大人たちは、もっとよく考えて木を切ろうと話し合うようになった。

それが嬉しくて、メタナイト卿との会話でも話題に出す。

 

「良い方向に落ち着きそうです。良かったですわ」

「だが、また同じことが起こるかもしれない」

「そのときは、また頑張ればいいんです。今度は、わたくしもフーム様のお手伝いをさせていただきます」

 

それが、私の出した結論だった。

 

 

 

 

工場のせいで自然が大変なことになった。そして、お城も大変なことになった。

天井と高い壁が煙で汚れた。私一人頑張っても、すぐには綺麗にならない。ワドルディたち総出で掃除しても数日かかってしまった。

あー、これは間違いなく、掃除上手なメイドがもう二人いた方が助かるわね。

陛下に進言したところ、お試し三ヶ月で雇うこととなる。

 

「というわけで、陛下から許可をいただきました!二人とも、準備はいい?」

「いいわ!店長には言ってあるもの」

「私も、大丈夫ですよ!」

「では、今から引越し始めましょう!」

 

アーニャとランタンは、これからメイドになる。

そして私は二人の上司、メイド長となった。これには驚いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。