【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

22 / 81
タマゴ

「カービィのタマゴ、ですか?」

「そう!カービィと同じぐらいのサイズでさ、寝て起きたらカービィが持ってたんだ」

 

朝早い時間に雨が降り出した。きっとにわか雨だ。数時間で止むだろう。

ブン様は村の方へ遊びに行かれて、雲行きが怪しくなったので一度帰ってきた。

そのとき、一階でワドルディたちと洗濯物を取り込んでいた私と、たまたま会ったのだ。

私は頬に手を添えた。

 

「カービィと同じくらいのサイズのタマゴですか。カービィは赤ちゃんだから、タマゴは産めないと思うんですけれど……」

「そうだけどさ、面白いじゃん!」

「まあ、ブン様ったら。からかいも、ほどほどになさってくださいね。あなたは、カービィのお友達なのですから」

「へーい。んじゃ、またな。リーノ」

「はい。また、ブン様」

 

ブン様はお家に帰られた。屋根のある場所に洗濯物を干し直した後、メタナイト卿のお部屋に行く。

二度、ノックをした。ノックは三回以上するのがマナーと聞いたことがある。この国ではノック二回で通っている。それ以上すると、うるさいとか、多いとか言われるのでしない方がいい。

扉が開く。

出迎えてくれたのは、ソードナイトさんだ。

 

「おはようございます。中で、少しお話できますか?報告したいことがあります」

「どうぞ」

 

中へ招いてくれた。奥に進むと、椅子に座ったメタナイト卿と、床に座ったままのブレイドナイトさんがいた。メタナイト卿の隣まで歩く。

三人の視線がこちらを向いた。

 

「おはようございます。メタナイト卿、ブレイドナイトさん」

「おはよう、リーノ」

「おはようございます」

「報告です。カービィがタマゴを産んだ、と村で噂になっているみたいです」

「おそらく、陛下が用意したタマゴのことだろう」

「ご存知でしたの?」

「昨夜、深夜に陛下たちがカービィと同じくらいのタマゴを持って、城の外に出かけられた。カービィに預けたということは、おそらくカービィに育てさせるためだ」

「カービィに育てさせて、襲わせるつもりでしょうか?酷いわ……」

「かもしれん。村へ行くなら気をつけるように」

「行くつもりでしたが、今日はやめておきます。二人に、予定が変更になったことを伝えに行かなくちゃ」

 

今日は村へ行ってやることがあった。

先日のレストランゴーンでの騒ぎ。迷惑をかけたカワサキへ、お詫びのお菓子を持っていくこと。久しぶりにヤブイ先生の勉強会を開くため、先生に許可を貰いに行くこと。

どちらも明日にまわそう。命が大事だ。

 

メタナイト卿たちと別れて、私はアーニャとランタンのいる階層へ急いだ。

二人を見つけて、予定を変更したことを伝えた。陛下がいないうちに、お部屋を大掃除したいと言ったのだ。

 

「この時期に大掃除ですか?」

「陛下の部屋はいつでも綺麗にします。大掃除は数ヶ月に一回、もしくは思い立ったらやります」

「臨機応変ってヤツね。仕方ない。陛下の部屋、綺麗にしちゃいましょう」

「ありがとうございます」

「カワサキへ贈るお菓子と、先生の件はどうしますか?」

「今日、陛下とお話します。明日の午後から半日休めるようにしますので」

「それなら、仕事を気にしないでいいので、余裕を持って取り組めますね!」

 

明日が楽しみだと、二人は笑う。私も笑った。

確実な情報ではないので、カービィのタマゴが魔獣かもしれないということは、黙っておいた。

 

 

 

 

 

次の日の午後、フーム様と厨房で出会った。なんでもここから、いい匂いがただよってきたらしい。

 

「今、カワサキに贈るお菓子を作っているんですよ」

「リーノたちの手作りね。おいしそう」

「味見していく?えーと、フーム様」

「なんか、ランタンにそう呼ばれるの変な感じ」

「ランタン、フーム様にも敬語を使ってください」

「気をつけるわ」

 

お菓子を盛った皿をフーム様の前に出す。フーム様はお行儀よく、食べ始めた。

 

「おいしい!これならお店だってできるわ」

「ありがとう、ございます」

「ありがとうございます。フーム様」

「うん。二人とも、その調子です」

「ねえ、聞いてみたかったんだけど、リーノの指導ってどんな感じ?」

 

私の前でその質問をするのかと、驚いた。二人は気にせず答える。

 

「一言で言うなら優しいわね。何回同じ質問しても、笑顔で答えてくれるから助かるわ」

「丁寧に教えてもらえるので、わかりやすくていいですね」

「リーノは教えるのも上手なのね!」

「アーニャとランタンが相手だからですよ。もしまったく知らない方が相手だったら、きっと緊張してうまく話せません」

「リーノ、あがり症なところあるものね」

 

女性が四人もいれば、話も盛り上がる。

 

話題はカービィに変わった。

昨日、村の噂になったタマゴは、その日のうちにかえったようだ。

中から魔獣の子供が出てきた。その子はずいぶんな食欲旺盛で、村中の食料を食べてしまったらしい。村人たちは怒り、カービィは魔獣の子供を庇った。そしてカービィは魔獣の子供を連れて、村の外れに新しい寝床を作った。

そこに魔獣の親がやって来た。親は子供に攻撃されて怒り、子供に攻撃した。

それに怒ったカービィが戦い、親の魔獣は倒された。

魔獣の子供は、村から近い森で生活することになり、カービィが時々面倒をみるために通っている。

 

「魔獣は、やっぱり陛下のせいかしら」

「そうよ。リーノ、村に何かあってからじゃ遅いわ!なんとかデデデたちを止められない?」

「ごめんなさい。難しいと思います。私も考えました。でも、他の何かで興味を引きつけたとしても、ホーリーナイトメア社のサービスを使うと思うんです。そうなれば、どこかに魔獣を仕掛けてくる。ホーリーナイトメア社がなくなれば問題は解決するんですが」

「その、魔獣をだうんろーどする機械を、壊すだけじゃダメなのですか?」

「機械は直してしまえば、また使える。だから、壊しても意味が無いのね」

「その通りです。すみません。フーム様」

「謝らないで!リーノは悪くないわ!!それに、デデデが魔獣サービスを使わなくなる方法を、考えてくれたんでしょう?それだけでも、嬉しいわ」

 

お菓子の熱が引いたところで、フーム様は用事を思い出し、厨房から出ていった。

 

私たちはお菓子をラッピングする。一番大きな包みはカワサキに、三つの小さい包みは戦士たちに贈る。

 

「今は仕事中のはず。城のどこかには、いるはずです」

「探すのに時間がかかりそうね」

「でしたら、夜に渡しませんか?夜なら、確実に会えますよね?」

「多分、会えると思います。メタナイト卿とよく会うのは、夜ですから」

「なら、夜にメタナイト卿の部屋にお邪魔しましょう」

「お菓子は厨房に隠しておきますか?メモを書いておけば大丈夫でしょうし」

 

ランタンがメモ用紙を一枚ちぎり、さらさらと書き込む。それを、三つの包み紙が入っているカゴの中に入れた。簡単に落ちてしまわないように、メモの位置を調整する。

 

「これでいいでしょ」

「あとはどこに隠すか、ですね」

「上の棚の奥にしませんか?取り出しにくいですけれど、死角になって見つかりにくいと思うんです」

「アーニャの言う通りですね。では、そこにしますか?」

「賛成」

 

無事にお菓子を隠したら、私たちはカワサキへのプレゼントを持って村へ行く。

 

村につくと、注目を集めた。

きっとアーニャとランタンがメイド服を着ているから、珍しいんだわ。

ランタンがため息を吐きながら言う。

 

「メイド服、脱いできた方が良かったかしら」

「そうですね。今は仕事ではありませんし」

「メイド服を、脱ぐ?」

「リーノは慣れちゃっているから、その発想はなさそうね」

「みたいですね」

「……メイド服、いいですよ?丈夫で、汚れにくくて」

「まあね。はあ、村のみんなが慣れてくれたら、注目されなくなるわよね」

「人の噂も七十五日、飽きられるのを待つしかありませんね」

 

カワサキの店へ入る。

店主カワサキと、常連客のボルン署長と奥さんのサトさんがいた。ボルンさんとサトさんはテーブルに座っている。

 

「いらっしゃい!今日はお客さんが多くていい日だよ」

「こんにちは。カワサキ。今日は客として来たんじゃないのよ」

「先日のレストランゴーンの件で謝罪に来たんです」

「なんだ〜そんなこと〜。そんな昔のこと気にしなくていいからさ、食べていってよ。それか作って」

「ふふ、あなたの明るさには頭が上がりません。いいですよ、何か作ります。といっても用事がまだありますので、簡単な料理で一品だけにしてくださいね」

「んじゃ、カレーライス!大量に作ってくれよ!今日の晩飯にするからさ」

「ワシらにも貰えるか?」

「リーノのご飯はおいしいから、食べたいわ」

 

話を聞いていたらしい署長夫婦が、声をあげた。カワサキはにこっと笑う。

 

「いいよー!みんなで食べよう」

「カワサキがいいのでしたら、その分多めに作っておきますね」

 

三人分じゃなくて、おかわりも考慮して二倍の六人分作ればいいかしら。

 

「ごめんなさい。アーニャ、ランタン。という訳だから、少し待ってくれますか?」

「何言ってるのよ!手伝うに決まってんじゃない!」

「先輩だけ働かせておくなんてできません」

 

二人はすぐにキッチンへ入っていく。途中、署長夫婦に挨拶をして。私も二人の後に続き、署長夫婦に挨拶をした。

通り過ぎようとしたら、サトさんに腕を優しく掴まれた。

「あの、何か?」

「今度、ハナさんのお宅でお茶会をするの。メームさんも呼ぶから、話聞かせてね」

「それは、やっぱりメタナイト卿とのことですか?」

「もちろんよ〜。私、娘の恋バナを聞くのが夢だったの!」

 

サトさんの喜びようにも驚いたが、娘という言葉にも驚いた。すごく嬉しくて、顔がにこにこと緩む。

 

「ぜひ、メタナイト卿も呼んできてね」

「すみません。あの人は忙しいので、参加は難しいと思います」

「なら、リーノ。アーニャとランタンも呼んでお茶会にしましょ!決まりね!都合がいい日に合わせるから、教えてね」

「はい。できるだけ早く、お知らせしますね」

 

そう言うと、サトさんは手を離してくれた。私はお二人に一礼してから、キッチンに入る。

 

カレーを三人で作れば、六人分でもあっという間にできあがる。煮込む時間はかかるけれど、その間にサラダを作った。

以前カワサキは、一人暮らしなので簡単な料理ばかり作ると、言っていた。

今回はカレーライスにサラダがついてきて、健康にいいと、喜んでくれた。

署長夫婦は私たちの料理の腕を褒めて、おかわりをしてくれる。

おいしそうにカレーを食べてくれる姿を背に、私たちはヤブイ先生のいる医院に向かった。

 

 

 

 

ヤブイ先生の許可を得たので、あとは勉強会の日程を決めて、一週間前になったらチラシ配りだ。子供たちに手伝ってもらって、お礼にはお菓子を渡そう。そんな話をしながらお城へ帰る。

夕焼けこやけ。空はだんだんと赤く染まっていく。

お城の門で、佇むメタナイト卿を見つけた。近くまで歩くと、彼はこちらに気づいた。目が合うと、頬に熱が集まるようだ。

 

「メタナイト卿、ただいま戻りました」

「ああ、おかえり。今日は三人で出かけていたそうだな」

 

その言葉に、アーニャとランタンが答える。

 

「カワサキにお詫びの品を渡してきまして」

「ヤブイ先生の勉強会を開催する許可をもらってきたところよ」

「そうか。また開催するのだな」

「はい。前回の復習と、今度は新しく止血の方法を教えていただきます」

「勉強熱心だな」

 

リーノはメタナイト卿と並んで歩き出す。ふらふらと、メタナイト卿について行こうとしていたので、慌てて親友二人が止めた。

 

「リーノ、お菓子を忘れているわよ」

「はっ、そうでした。メタナイト卿、三人にお菓子を贈りたいので、一緒に来てもらえませんか?」

「わかった。行こう」

 

厨房に四人で向かった。

私たちの中で一番背が高いランタンに、隠したお菓子を取ってもらう。脚立にのぼり、上の棚を覗いた。

 

「えーと、あった。はい、アーニャ」

「受け取りました。ありがとうございます」

「ありがとうございます。ランタン」

「どういたしまして」

 

ランタンはゆっくり降りてくる。

アーニャは受け取ったお菓子のカゴからメモを取り、ポケットにしまう。カゴごとお菓子をメタナイト卿に渡した。

 

「ありがとう。いつもすまないな」

「いえ、お菓子が作れて私たちも楽しかったですから」

「そうですね。みなさんを想いならが作ることは、楽しかったです」

「感想、聞かせてよね」

「もちろんだ」

 

厨房でメタナイト卿と別れる。

私たちは残った。

 

「で、まだ厨房に用があったかしら」

「あら、これから陛下と閣下のご飯作りですわ」

「わ、忘れてました」

 

二人は、がくりと肩を落とした。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。