【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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不法投棄

深夜。

見張りの兵士が交代して、眠りにつく時間。

リーノは、部屋を出ていくメタナイト卿を見送ろうとしていた。いざ、扉を開けようとする。

外で物音が聞こえてきた。

 

「今のは?」

「あちらだ」

 

メタナイト卿と共に廊下に出て、村がよく見えるバルコニーに出た。外を眺めると、村の上空に円盤型宇宙船が浮遊していた。船は数分上空で待機した後、空へ浮かび上がり彼方へと飛んで行った。

村に目を戻す。村の中心部、巨木がある場所に何か盛られている。

 

「……夜のせいか、よく見えませんわ」

「おそらくゴミだ」

「ゴミ?……もしかして、ゴミの不法投棄でしょうか?」

 

あそこは村のシンボル的な場所だ。

そんな所に、ゴミ捨ての許可が降りるとは思えない。ならば、誰かが無許可で捨てたのだろう。

 

「多分な。リーノ、よく知っていたな」

「昔、聞いたことがありますの」

 

転生前のことなので、詳しくは覚えていないけれど。

 

「そうか。ところで、私はあの宇宙船は誰の物で、どこから来たのか、調べるつもりだ」

「では、わたくしは村で情報集めてみます。ちょうど明日は村長さん宅でお茶会です。噂が集まるでしょう」

「ああ、頼む」

 

別れは色気がない会話になってしまい、少し残念だった。

 

 

 

次の日、昼過ぎに村長さんの家にお邪魔する。

午前中は、広場に不法投棄されたゴミ問題で慌ただしかったようだが、今は片付いたようだ。

玄関の呼び鈴を鳴らすと、ハナさんが出迎えてくれた。持参したお菓子を渡すと、たいへん喜んでくれた。アーニャとランタンを連れて、案内されたダイニングに入る。すでにサトさんとメーム様が座っていて、お茶を飲んでいた。

 

「来たわ!」

「さあさあ、三人とも座って。座って」

 

興奮した調子で、席に座るよう促される。

 

「あ、リーノはこの席に座ってね」

「かしこまりました」

 

そこはいわゆるお誕生日席で。いつもは村長さんが座るだろう、主人の席だった。

普段なら絶対に座らない場所だ。席に着くと、お尻がムズムズして落ち着かない。

そうして気を取られていたら、メーム様とサトさんが三人分のお茶を用意してくれた。二人に頭を下げる。

 

「すみません。ありがとうございます」

「いいのよお、これぐらい」

「今日の主役はリーノなんだから、座ってていいのよ!」

「はあ……」

「お待たせ。お茶菓子の用意ができました」

 

ハナさんは、お菓子を二つのお皿に綺麗に並べて持ってきた。用意されたお菓子は、私たちが持参した物だった。

 

「今日はリーノたちが持ってきてくれた、クッキーです」

「あら、おいしそうね!」

「これはみんなの手作りかしら」

 

サトさんの疑問にアーニャが答えた。

 

「はい。午前中に作ったドライフルーツ入りクッキーです」

 

それはおいしそうだと、メーム様、ハナさん、サトさんはクッキーに手を伸ばす。そして一口食べた。

 

「……おいしい。ドライフルーツがいいアクセントになっているわ」

「フルーツの味が、紅茶に合うわね」

「いくらでも食べられちゃうわ」

 

束の間、クッキーと紅茶を楽しんだ。一枚のクッキーを食べ終わり、みんなの体が私の方を向いた。

 

「さて、リーノ」

「メタナイト卿との馴れ初め、聞かせてくれる?」

「……お手柔らかにお願いします」

 

いつから付き合っているのか。昔から好きだったのか。告白はどちらからしたのか。キスはもうしたのか。

 

答えにくいところは、はっきりと「恥ずかしいので」と断る。だって中々際どい質問もされるんですもの。照れちゃいます。

この場にいるのは、昔からお世話になっている方だったり、親や姉代わりの人しかいない。だからこそ、できる会話だ。

 

親が生きていたら、こんな会話をしていたのだろうか。前世では、どうだったか。もう思い出せないけれど、今のように笑いが絶えない日常があったら嬉しい。

 

話題は私から、アーニャ、ランタンへと移り変わる。

 

「二人は、良い人いないの?」

「まだ、ですねえ」

「気長に探すわ」

 

どうやら、ランタンは恋人のことを秘密にするようだ。まだ付き合ってから時間が経っていないからだろう。落ち着いたら皆に話すと思う。

 

三人の奥様方は、アーニャとランタンの答えに納得できないみたい。村でも人気の二人だもの。彼女たちの心を射止める存在は、とても気になるのだろう。

 

「……本当にいないの?」

 

メーム様に確認される。私は首を振った。

 

「いないはずです」

「リーノが言うなら、間違いないでしょうね」

「ああ、早く二人の旦那さんに会いたいわ」

 

サトさんと、ハナさんの言葉にランタンが笑う。

 

「報告は結婚の時でいいんですか?」

「いいえ!もっと速く教えてちょうだい!!」

 

話題は移り変わり、村に不法投棄されたゴミの話になった。

紅茶を味わいつつ、情報を集める。

 

「どこから来たんでしょうか?あのゴミは、村の物ではありませんよね?」

 

広場に家があるサトさんが、困ったように片手を顎に添えた。

 

「違うと思う。夫のボルンが調べたんだけど、誰もが“自分のゴミじゃない”と言うの。みんな嘘をついている様子はなかったらしいわ」

「では、外部から持ち込まれたゴミ……という可能性が高いですね」

 

話を聞いていたハナさんが首を傾げる。

 

「外から広場までやって来て、あんな量を一晩で運び込むのは無理じゃないかしら?」

「人力では難しいかと。……たくさんの人がいれば、できるかもしれません。ですが、昨夜は誰もその姿を見ていません。犯行は素早く行われたものかと思われます」

「素早く……車を使ったのかしら?」

 

ハナさんの言葉にアーニャとランタンがお互いを見る。

 

「車なら、人力より素早くゴミを捨てられます。でも、誰にも気づかれずできるものでしょうか?」

「音とかうるさいものね……宇宙船はどうかしら?空からぱっと現れて、ぱっと捨てて消えちゃうの。そうしたら、誰にも気づかれず捨てられるんじゃない?」

 

ランタンの言葉に、その場にいた全員が納得した。

 

「それなら犯行は可能ね!」

「でも、そしたら犯人は宇宙人ということ?怖いわ……」

「そうねえ。ゴミは持って帰って欲しいけれど、まず話せるのかどうか……」

 

リーノは紅茶に視線を落とす。

アニメではどうだったかだろうか。ゴミ問題はクリーンカービィによって片付いた回があったはずだ。でもそれは、今日だっただろうか。

もうずいぶんと、アニメカービィについて書いた日記を読み返していない。読み返せば何か、今回の出来事についてわかるだろうか?

リーノは目を閉じる。しばし記憶の海をさまよい、目を開けた。

きっとわからない、それがリーノの出した答えだ。

 

日記にはたしかにアニメカービィの内容を書いてある。しかし、それは穴だらけの内容だ。お話の順番が違うし、覚えていない話も多い。

とても役に立つとは思えなかった。

 

「(現状、できることを頑張る。やれることをやる。……ですわね)」

 

 

 

話したいことを話し終えても、おしゃべりは楽しく続いた。久しぶりにたくさん話したせいか、頬の筋肉が少々痛い。

 

夕方。城に帰ると、村のゴミが庭に山積みになっていた。警察署、村長さん宅、そしてここに流れ着いたらしい。

閣下、ワドルドゥ隊長と相談する。ゴミをどうするか、どこに捨てるのか……いい案はでなかった。

 

そして、夜。夕食はアーニャとランタンと一緒に食べた。夜の九時前には別れて、自室に入る。

さて、後はメタナイト卿に会うだけ。集めた情報をーーといっても大きな成果はなかったけれどーー報告しに行こう。

手土産は何がいいか?夜食か朝食用に、おにぎりを持っていこう。

しかし、時間がかかり過ぎるかしら。チャーハンならすぐに作れるけれど、朝から食べてくださるかしら。

指先を唇に当てて、考える。その間にドアがノックされた。

 

「私だ」

「すぐに行きます」

 

訪ねて来たのは、メタナイト卿だった。

部屋の中に招いて、いつもの席に座っていただく。

 

「コーヒーでもいかがでしょうか?」

「いや、今日はあまり長く居られない」

 

私が用意するコーヒーは、時間と手間をかけています。忙しい日には向いていません。

 

「でしたら、お茶はいかがですか?すぐにご用意できますよ」

「では、それを貰おう」

「かしこまりました。温めますか?」

「いや、常温でいい」

「わかりました」

 

やかんから、二つの湯のみにお茶を注ぐ。朝に作っておいたので、すっかり冷めている。

それをメタナイト卿に出して、席に座り、互いに情報を交換する。

 

「わたくしの方では、いい情報を得られませんでした。すみません」

「謝ることはない。……私の方は、どうも陛下たちが怪しいという情報を掴んだ」

「また、陛下たちが?」

「あのゴミについて、二人が何か知っていることは確実だろうな」

「もう……懲りない方たち」

 

一口お茶を飲む。呆れもため息も飲み込んで、陛下たちがあまり酷い目に合わなければいいと、そう思った。

 

今回はあまり時間がないということで、手土産はナシになった。

ちょうど、湯のみ一杯分のお茶を飲んだところで、メタナイト卿は席を立つ。リーノはその後ろを追う。

城の廊下へ続くドアの前で、二人は歩みを止める。

メタナイト卿はリーノの方へ振り返った。

リーノは微笑む。

 

「また、おにぎりを作らせていただきますね」

「ああ、楽しみにしている。では、おやすみ」

「はい。おやすみなさい」

 

ドアが開いて夜の風が部屋に入り、愛しい人が廊下へと出て行って、バタリと閉められた。

名残惜しい気持ちをぐっと引き締めて、リーノは眠る支度をする。

 

 

次の日。

プププランド中が、ゴミで埋まっていた。城はまだ無事だけれど、これでは村は生活ができないだろう。

 

「ああ、陛下。なんてことを……」

 

でも詰め寄ることはできない。証拠がないのだ。

それよりも、私は何か、できることがないのかと考える。

数日のうちに問題は解決するだろう。だからといって、行動しないわけにはいかない。

問題解決のために動くのなら、フーム様と話す方がいいかもしれない。あの方はいつも物語の中心にいらっしゃる方だ。私が今回の事件で知っていることを話そう。何か、力になれることを願って。

 

 

その日の夜。全ての仕事を終えて、夕食頃に大臣一家の家を訪ねた。

メーム様が出迎えてくださる。

 

「まあ、リーノ。ちょうど夕食を食べるところよ。あなたもどう?」

「いえ、今日は遠慮しておきます。忙しい時間にすみません。フーム様はどちらに?」

「どうしたの、リーノ」

 

メーム様の隣からひょっこりと顔を出されるフーム様。

 

「フーム様、5分ほど話せませんか?」

「別にいいけど……?」

 

フーム様は外に出て、メーム様は家の中に戻られた。

フーム様は首を傾げられる。

 

「それで、話って?」

「単刀直入に申し上げます。わたくし、ゴミを不法投棄した方を存じております」

「なんですって!?」

「相手は空からやって来ました。宇宙船に乗っていたのです。昨日……いえ、すでに今日でした。深夜、それは村の上空に現れて、広場にゴミを捨てていったのです」

「なるほど。だからゴミを運ぶ姿を見た人がいないのね!ありがとう、リーノ。犯人の正体がわかっていれば、対処しやすいわ!」

「何かなさるのですか?」

「証拠写真を撮るの!今日の夜から始めるわ」

「わたくしもお供させてください。何か、村のためにしたいのです」

「いいわ。一緒に行きましょう!じゃあ、パパとママが寝た後に……」

「でしたら夜の十二時ちょうどに、ここで、待ち合わせしましょう」

 

 

フーム様とは、そこで一旦別れた。

部屋に帰る。夜食の準備をはじめ、風呂に入った後にメイクをやり直す。

ゴミ山を歩くので、数少ないズボンを履いた。鋭い物から肌を守るために、袖や裾が長いものを着る。

リュックに食料と飲み物を多めに入れて、レジャーシートや、ウェットティッシュなど、必要そうなものをギュッと詰め込んだ。

 

時間通り、待ち合わせした場所に到着する。

そこにはフーム様だけじゃなくて、ブン様とカービィも一緒だった。

 

「こんばんは、フーム様。それにブン様とカービィも」

「こんばんは、リーノ。準備はバッチリのようね」

「おう、リーノ!それ似合ってんじゃん」

「ぽよ、ぽよ」

「ありがとうございます。普段の服よりも、動きやすさを重視しました。食事もご用意させていただきましたので、夜食は任せてください」

「やった!」

「リーノのごはんは久しぶりね!楽しみだわ」

「ぽーよ!」

 

子供たちに喜ばれ、私は嬉しくて頬を緩ませた。

四人は城を出て、ゴミの山を進み、村に到着する手前で歩みを止める。

 

「あの、バスタブの中がいいわ」

 

私たちは白いバスタブの中に入る。四人だと少々狭い。しかし、肌寒い夜風の中で身を寄せ合うと、バスタブの大きさはちょうどよかった。

リーノはリュックから毛糸のカーディガンを二枚取り出す。

それは子供用の大きさで、それぞれフームとブンをイメージして作られたことが分かる。

 

「フーム様、ブン様、今夜は冷えます。どうぞこちらを」

「まあ!ありがとう。素敵だわ」

「やった!サンキュ!」

「リーノの手作りかしら?」

「はい。以前、プププランドに冬が訪れたでしょう?その時、何か羽織る物が一枚でもあれば、良いと思いまして。お二人のために編んだんです」

「ぽーよ!ぽーよ!」

「ごめんなさい。カービィの分はありません。その代わり、夜食を多めに作りましたので、許してくださいね」

「ぽよ!」

 

本当はカービィの分も編もうか考えた。しかし、彼のサイズを知らなかったので、作れなかったのだ。

できるなら、青い彼の人のためにも編みたい。

二人はカーディガンをすぐに着てくれた。サイズはぴったりだ。

 

空からやって来る不届き者を見張り、三時間が過ぎた。

途中、夜食を食べたり、ここでもメタナイト卿との関係について質問された。

 

しばらくは興奮気味だったブン様とカービィは、見張りに進展がないとわかると、私に寄りかかって寝ている。やがてフーム様も、静かな寝息をたてていた。

私は夜空を眺める。

こんな風に、穏やかな夜は久しぶりだ。メタナイト卿との夜は、その、鼓動が賑やかになる。だから、穏やかとは、少しだけ違うと思う。

いつか、もしもいつか……彼と結婚して、子供を産んだら。こんな風に、夜を過ごすのだろうか。

胸が熱くなる。

気が早い望みとはいえ、憧れだった家族を持つ夢がずっと近くある気がした。

 

――空からエンジン音がする。

車のエンジンではない、この音は……?

 

「皆、起きてください!宇宙船が!」

「はっ」

「なんだ!?」

「ぽよ?」

 

全員が、顔を勢いよくあげる。夜空を覆い隠すほど大きな円盤が、浮かんでいた。

中央の口が開き、数秒後、大量のゴミが吐き出される。新しいゴミは雪崩となり、古いゴミ山の上を滑る。そして、私たちが入ったバスタブを押し流した。

 

「きゃああああ!!」

 

私か、フーム様が悲鳴を上げる。ジェットコースターのように滑るバスタブは、あと少しで別のゴミ山に激突する、はずだった。

 

突然、バスタブが速度を落としたのだ。急ブレーキをかけたように動くバスタブの中で、私たちは必死に掴まり、投げ出されないように耐えた。

ゴミ山にぶつかる寸前で、バスタブは止まってくれた。中にいた私たちはよろけて、ひっくり返ってしまった。

 

「あいたたた……なんとか助かりました」

「でも、一体何が?」

「私だ」

 

その声は青い彼の人の声。

声がする方を見上げると、メタナイト卿が立っていらした。

きっと助けてくださったのだろう。

 

「メタナイト卿、ありがとうございます。助けてくださったんですね」

「無事で何よりだ。見ろ」

 

空を見上げると、あの宇宙船はまだゴミを吐き出していた。

それは城にまで被害が及ぶ。

 

「ああ……城が……」

「……はっ、カメラ!」

 

フーム様は慌てて、持参したリュックからカメラを取り出し、シャッターをきる。

これで証拠は掴んだ。

次はどうなるのだろう。わからない。今日の証拠が役に立てばいいけれど。

 

宇宙船が空の彼方に消えてから、私たちは城に帰った。

城は異臭が凄まじく、みんなで鼻をつまんでそれぞれの部屋に帰宅する。

メタナイト卿は、私を部屋まで送ってくださった。

自室の扉前で、別れの挨拶をする。

 

「今日は助けてくださってありがとうございました。それではまた明日……」

「リーノ」

「はい?」

「あまり、無茶をするな。心配で傍を離れられん」

「……ごめんなさい。無茶をしたくて、しているわけではないのです。ただ村のために何かやりたかったんです」

「そなたの気持ちはわかるつもりだ。だが、行動した結果、今回のように危ない目にあってしまうかもしれない」

「重々承知しております。でも、どうか故郷を守るために動くことをお許しください」

「私に許可を求める必要はない。……行動する前に、私に相談してくれるか?」

「出来うる限り、必ず」

「絶対では、ないのだな」

「できない日が、あるかもしれませんから」

 

私たちは、お互いに一歩近づき、抱きしめ合った。

彼の体温が暖かくて、冷えた心身にしみ渡る。

彼に何と伝えようか迷い、整理できない感情をそのまま伝えることにした。

 

「……メタナイト卿。必ず、あなたの元に戻ります。五体満足で、無事に。だから、村を襲う異常に、立ち向かわせてください」

「……わかった。私は、私にできることをしよう」

「と、言いますと?」

「故郷を守る君を、守る」

「ありがとうございます」

 

充分に、互いの腕で温まった頃。私たちはゆっくりと離れ、それぞれの家に帰った。

 

 

 

 

翌日。

フーム様と村に行こうと思ったけれど、陛下から「城内だけでも綺麗に掃除しろ」と命令されてしまった。命令は断れない。アーニャとランタンとワドルディたちと共に、城内を綺麗に掃除していく。

 

内部から、ゴミ臭い外部へと掃除を行う。だんだんキツくなっていく匂いに、とうとうアーニャはえずいた。マスクをしていても、苦しい。

 

「うぅ、早く解決すればいいのですが……」

「昨日、フーム様が犯人を突き止めてくださいました。きっと、進展するはずです」

「そうなの?さすがフーム様ね!」

 

「ガウガウ!!」

 

「きゃあ!??」

「なんなの!?」

 

火の塊のような大きな獣が、目の前に現れた。それは大きくジャンプして、私たちに向かってきた。

私たちは一つに固まった。互いが互いを庇うように腕をまわす。

 

 

大きな獣は私たちを飛び越えたようだ。後ろの方でドスンと大きな音を立てて、遠ざかって行った。

音が聞こえなくなった。私たちはようやく体から力を抜いて、その場に座り込んだ。

落ち着く間もなく、酷い臭いが辺りに充満する。目を開けて周りを見ると、ゴミが燃えていた。

 

「この臭い、嗅ぎ続けてはいけないと思います。城の内部へ避難しましょう」

 

三人は支え合って立ち上がり、震える足を動かして走った。角を曲がり直進した所で、ソードナイトとブレイドナイトに出会う。

 

「よかった、いた!」

「三人ともこちらに!」

「ええ!」

 

二人に誘導されて入った部屋は、メタナイト卿の部屋だった。

 

「騒ぎが落ち着くまで、ここにいてください」

「わかりました。お二人はどちらに?」

「あの魔獣を追います」

 

ランタンがソードナイトに駆け寄る。その表情は不安そうだ。

 

「無茶しないでよ」

「わかってる」

 

その時、ブレイドナイトはアーニャを見た。アーニャは体を震わせていた。けれど、相手の視線に気づいて、顔を上げて笑顔を見せた。

 

「行ってくる」

「はい!気をつけて」

 

戦士たちは力強く頷き合い、部屋を出ていった。

 

 

しばらくして、城が小さく揺れた。地震かと思ったけれど、それにしては揺れが不自然に感じた。壁に飾られた武器から離れて、部屋の中央で三人が集まった。

間もなくして揺れも収まり、それでも不安から私たちは手を繋いで彼らが帰ってくるのを待った。

 

それから、扉が開いて。

三人の戦士が顔を見せてくれた。

無事に帰ってきてくれたこと、会えたことに安堵して。私たちは床に再びへたりこんだ。

 

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