【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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村での歓迎会

 数日後。

 

「三人の歓迎会をするから、呼んできてほしい?」

「そうなんじゃ。昼間は準備があるからのう、近づけないで……」

「夕方になったら連れてきてほしいんじゃ」

「まあ、難しいですわね」

 

 村長さんとキュリーさんの言葉に、頭を捻る。二人と、周りにいた村人たちは「そこを何とか」という感じで、私に手を合わせていた。

 そんなにお願いされると、断れないから困る。私は結局「なんとかしてみます」と言って依頼を受けた。

 

 どうやって彼らを城に留めよう。どうやって彼らをここへ連れてこよう。いくつかの案を頭の中でシミュレーションする。またアーニャたちを誘って彼らの所に行けば、何か勘づかれそうだ。今度は一人で行った方がいいだろう。

 

「何かそれらしい理由をつけて、夕方まで村に近づけさせなければいいのよね」

 

 こんなのはどうだろう。

 今、村中で工事を行っている。昼間に行っても埃まみれになるだけ。行くなら夕方四時以降がいい。

 こう言えば、例えトンカチを振るっているところを見られても言い訳ができる。村長さんに相談すると「良い案だ」と言ってもらえた。ならば、この作戦で行こう。

 

 

 

 城に帰ってメタナイト卿たちの休憩室を訪ねる。彼らは揃っていて、ソードナイトさんが出迎えてくれた。先日よりも柔らかい態度だ。

 

「リーノ殿、中に入られますか?」

「いいえ、ここで。すぐに済みます。こちらの用紙を渡すだけなので」

 

 つい先ほど、村長さんが作った「村工事中のお知らせ」を彼に渡す。ソードナイトさんはさっと斜めに読んで、内容に目を通した。

 

「なるほど、明日は夕方からお店が開いているんですね。わかりました。ありがとうございます」

「いいえ。では失礼します」

 

 軽く頭を下げてその場から立ち去った。さて、今日のところはこれでいいだろう。もし、明日の夕方になっても村に来てくれなかったら、私の方から彼らを誘おう。歓迎会は午後六時に行われる。それまでに連れ出せばいいだろう。

 

 

 

 次の日。

今日は午前中の仕事だけだ。なぜなら昨夜、一度も使ったことがない有休を申請したのだ。閣下は渋々といった感じで受け取ってくれた。

歓迎会の準備を手伝おうと思い、昼食をサンドウィッチで手早く済ませて村に向かった。

 村のあちこちからトンカチを振る音、木をのこぎりで切る音が聞こえてくる。その中を歩いてサトさんとハナさんを探した。大がかりな大工仕事は力が足りなくてできない。けれど女の仕事ならやれることがあるはずだ。こういう催しものの準備のとき、村の女たちは村長さん宅に集合するので、一旦そちらに向かう。

 村の外れにある村長さん宅は、村で一番大きな屋敷だ。中から女たちの賑やかな笑い声が聞こえてくる。扉の前で私は呼び鈴を鳴らした。すぐに扉が開く。

 

「はーい、どなた……あら、リーノ。いらっしゃい」

「こんにちは、ハナさん。歓迎会のお手伝いに来ました」

「まあ、ありがとう!さあ、中に入って」

 

 ハナさんに促されて家の中に入る。中にはすでに村のご婦人方が集まって、大きな白い布を縫っていた。おそらくテーブルクロスにするつもりなのだろう。人手は足りているように見えた。

 

「こっちは人が足りているから大丈夫よ。そうね……午後二時からパーティに出すお料理を作り始めるの。そっちを手伝ってくれる?」

「わかりました。料理はどちらで作るんですか?」

「広場で作るわ。その方が、料理が冷めなくていいでしょう?」

 

 ハナさんの言う通りだ。リーノは頷く。

 

「良い考えですね。そっちに顔を出して見ます」

「ええ、そうしましょう。時間まで、ここにいなさいね」

「はい。布ができたら、片付けを手伝いますね」

「ありがとう。お願いするわ」

 

 

 

 村長宅で一仕事を終えたら、今度は広場へ移動する。すでに村中のご婦人方が集まっていた。その中に三戦士のファンである若い女性たちを見つけた。彼女たちも私を見つけた。お互いに会釈をする。顔に笑顔を張り付けた。

 

「こんにちは、リーノさん。今日は、戦士様たちはいらっしゃるのかしら?」

「こんにちは、皆さん。今日はあのお三方に会っていませんから、わかりませんわ」

「そうですの。残念。時間になったらリーノさんが呼びに行かれるの?」

「ええ、村長さんに頼まれましたので。そのつもりです」

 

 「いいなー」という声がちらほらと上がった。私は笑みを崩さない。

 

「そうですか。ちょっと羨ましいです」

「ただのお使いですわ。ああ、サトさんが出てきましたね。それでは私はこれで」

 

 軽く一礼をしてからサトさんのところへ歩く。そこでアーニャとランタンにも合流した。私は体から力を抜いて、心からの笑顔を向ける。

 

「リーノ、アーニャとランタンも、いらっしゃい。今回はこの人数で、村の皆が食べるお菓子を作るわよ」

「あの、サトさん。私は主役たちを呼びに行くために途中でいなくなるんですが、それでも人数は足りますか?」

「問題ないわ。生地は先に作ってあるの。あとは焼くだけだもの。さあ、お入りなさい」

「お邪魔します」

「失礼します」

「お邪魔しまーす」

 

 村で唯一の警察署。そこがサトさんとボルンさんの家だ。警察署の奥に二人の居住スペースがあった。サトさんは私たちを台所まで案内した。中はすでに甘い匂いが充満している。私たちはエプロンと三角巾をつけて、手を良く洗った。

 

「さ、じゃんじゃん作るわよ!」

「ある程度数が焼けてきたら、子供たちに持たせる用の分も作りましょうか?」

「いいわね。そうしましょう」

 

 女たちは忙しく動き回り、クッキーを焼いていった。四人いれば作業は滞りなく進むが、空いた時間にはお喋りを挟む。

 

「三人は、化粧をしないの?」

「この作業が一段落したらします」

「私は軽く直す程度ですね」

「私は夜用にばっちりメイクするわよ」

 

 私たちの様子を見て、サトさんは首を振った。

 

「自分の為じゃなくて、誰かのためにしないのかしら?」

 

 三人は声を揃えた。

 

「「「しませんね」」」

「あら、いい人いないの?」

「私は仕事に集中したいので……」

「夢のために邁進中です」

「私も、夢を追いかけるのに忙しいわ」

「そうなの。三人とも村じゃ人気なのにね」

 

 その言葉を聞いてリーノが驚いた。

 

「わ、私が人気なのですか?」

「そうよ。ほら、あなたお城でメイドをしているじゃない?家事が上手でしょう。だから良いお嫁さんになってくれそうだって言う人がいるわね」

「そう、ですか。はじめて知りました。……二人はどうなんですか?」

 

 ランタンが思い出すように答える。

 

「私は、色っぽいところに惚れたって言われたわね」

「言われた……それって告白されたの!?」

「昔の話よ。そいつ私の外見しか見てないっぽいから断ったわ。アーニャは?」

「ええ!?私ですか?私は、その……、いつも本を読んでいるところを見ていたらしくて……その雰囲気が好きだと」

「そ、それで?」

「話したことがない方だったので、お断りしました」

「そうなの。リーノは?」

「私は、告白されたことなんてありません。二人は凄いな……」

「……あんた、あんまり村に来ないでしょ?告白しようにも、まず話しかけるタイミングがないんだもの。それじゃあイベントだって発生しないわよ」

「そうね。もっと村にいれば、彼らにもチャンスがあるかもね」

「彼ら……え、そんなにいるんですか?」

 

 困惑するリーノを見て、サトは「この子にはまだ色恋の話は早かっただろうか」と思った。

 

「(私が生きている間に、子供の顔を見せてくれるといいわね)」

 

 サトの友人であったリーノの亡き母を思い、そう考える。

 

 

 

 クッキーを大量に作り上げその甘い香りだけで胸焼けを起こした頃、外から黄色い声が響いた。騒ぎを察するにあの三人組が来たようだ。時計を見ると短い針は五時を指している。

 

「ちょうどいいタイミングでしたね」

「もう食事も出来上がっている頃でしょう。歓迎会が始まるわね」

 

 サトさんの言った通り、三人が来たことで歓迎会は前倒しされた。すでに装飾や料理ができあがっていた為だ。メタナイト卿、ソードナイト、ブレイドナイトは村長にテーブルへ案内され、料理がどんどん運び出される。村人たちの手には乾杯用のグラスが渡された。足りなかった人はマグカップである。私はサトさんにコップを借りた。中にはほうじ茶が入っている。お酒は苦手なのだ。

 

「え~それでは。メタナイト卿、ソードナイトさん、ブレイドナイトさんのお三方の歓迎会を行います。では、村長であるわたくし……」

 

「あの、よければこちらを召し上がってください」

「これ、私が作ったんです。食べてみてください」

「私のも、食べてください」

 

 村長さんの長いお言葉は続かなかった。それよりも早く女性陣が動いたからだ。三人の戦士たちの傍には着飾った女性たちが、料理を盛った皿を差し出している。数人ではない。三十人近くが彼らを取り囲んでいた。

 アーニャが目をぱちくりと瞬かせて言う。

 

「すごい、人気ですね」

「さすがって感じ」

「あなたたちは行かないの?」

「行きませんね」

「ゆっくりご飯を食べたいです」

「まずは、ご飯よね」

 

 色気よりも食い気を選ぶ女の子たちに、サトはやきもきするのであった。

 

 女三人固まってゆっくり食事をとる。周囲から視線を感じるのは気のせいだろうか。私を想ってくれているという誰かの視線だろうか。そう考えると、段々食事が喉を通らなくなってきた。じっとしていられない。私は食器を片付けたり、できあがった料理を運んだ。皿洗いを率先していると、ランタンに「職業病ね」と勘違いされてしまった。自意識過剰になっているなんて言えないので頷いておいた。

 

 

 

 食後のデザートを運び終わったところで、アーニャが私に時間をたしかめてきた。懐の懐中時計を取り出して見る。時刻は午後の八時を回っていた。もうこんな時間なのかと驚いた。そろそろ城へ帰らないといけない。

 

「午後八時よ、アーニャ。あなたはそろそろ帰る?」

「ええ、お暇させていただきますわ。リーノはどうしますか。帰宅したほうがいいと思いますけれど……」

「帰るわ。ランタンにも声をかけてみましょう」

 

 ランタンは汚れた食器を運んでいる最中だった。そこへ駆け寄り、皿を分け合って運ぶ。

 

「ランタン、もう午後八時なの。それで……」

「帰るわ。あんたたちもでしょう?リーノ、明日休みなら泊まらない?」

「明日も仕事なの。誘ってくれてありがとう」

「じゃ、アーニャは?時間あるかしら」

「午前中なら大丈夫ですよ。一度家に寄ってからお邪魔してもいいでしょうか?」

「そうね、一旦アーニャの家に行きましょう。お城とは反対方向だから、今日は途中まで送れないわね」

「まだ早い時間ですから大丈夫ですよ。では、サトさんとハナさんに声をかけてからお暇しましょうか」

 

 サトさんとハナさん、そして周りにいたご婦人方にも声をかけて帰宅する旨を伝えた。誰も嫌な顔をせず送り出してくれる。むしろ「若い娘なんだから早めに帰りなさい」と、心配されてしまった。

 

「いくら今日が満月で明るくても、夜道は危険よ。懐中電灯は持っているの?うちのを貸しましょうか?」

「ふふ、大丈夫です。ちゃんと持って来ました」

 

 細めの懐中電灯を出して見せる。ハナさんはそれなら良しと、微笑んだ。

警察署から外に出て広場を見渡した。あの戦士さんたちはどこだろう。着飾った女性たちを見つける。その視線の先を追うと、彼らは村の男性たちと飲んでいるところだった。その中にパーム大臣夫婦を見つけた。いらしていたのか。

 

「どうかしましたか、リーノ」

「パーム大臣とメーム婦人を見つけたの。一応、声をかけて来るわ」

「いってらっしゃい」

 

 私は一人、男性たちの中をかき分けてメーム婦人の傍に寄った。

 

「メーム婦人、こんばんは」

「あら、リーノ。こんばんは。あなた!」

「うん?おお、君も来ていたのか」

「はい、呼んでいただきました。ですが、明日が早いのでそろそろ城に帰ろうかと思います。お二人はどうされますか?」

「私たちはもう少しパーティを楽しむよ。……一人で帰るのかい?」

「はい。そうです」

「あら、女の子が一人でなんてダメよ」

「まだ午後八時なので、大丈夫かと……」

「いーえ、いけません。こういうときは警察に頼むのが一番。ボルン署長に送ってくださるよう頼んでみましょう……」

「よろしければ、私たちが送ろう」

 

 視界の端から青い戦士が現れた。そちらに顔を向けると、ソードナイトとブレイドナイトを連れたメタナイト卿がいた。ちょっと疲れた雰囲気なのは気のせいではないだろう。そして女性たちのざわつく声も、また気のせいではないはずだ。

 

「メタナイト卿。ですが、あなた方は今日の主役ですぞ」

「わたくしども明日が早いので……」

「そろそろ帰らなければなりません」

「そういうことでしたら……」

「仕方ありませんな」

「よかったわね、リーノ。こちらの三人が一緒なら心強いわ」

「そうですね。では、よろしくお願いいたします。メタナイト卿、ソードナイト様、ブレイドナイト様」

「ああ」

 

 こうして、残念そうな女性たちの視線を後にして私たちはパーティから退場した。広場を出てすぐの角で、アーニャとランタンと別れる。それからは四人で歩いた。城までの道中に明かりはない。懐中電灯を使うかと尋ねると、必要ないと言われた。

 

「夜道が、見えますの?」

「まあ、そんなところだ」

「それはいいですわね。わたくしは見えませんので、点けてもいいでしょうか?」

「好きにしろ」

「ありがとうございます」

 

 最後尾を歩く私の足元だけを照らす。すると三人の戦士たちの影が前方に伸びた。私たちの隙間を縫うように温かい夜風が通り過ぎて、メタナイト卿のマントをなびかせた。

 

 

 

 城に到着する。私は三人を呼び止めた。

 

「あの、少しだけよろしいでしょうか?」

「なんだ」

「エレベーターの存在はご存知ですか?」

「……いや、はじめて聞いた」

「でしたら、ご案内します。どうぞこちらへ」

 

 中庭から近い隠し部屋へ案内する。その少し奥にエレベーターはあった。

 

「……これも陛下の趣味か」

「そのとおりですわ。もう体験されていらっしゃるかもしれませんが、ここの隠し部屋以外にも、城の中には随所に隠し部屋、隠し階段、仕掛けがございます。どうぞお気をつけください」

 

 私の言葉を聞いたソードナイトさんが惜しむように言った。

 

「もっと早くに知りたかったな」

「まあ、すでに体験なさったんですね」

「ああ。穴から滑り落ちた」

「それは……大変でございましたね」

 

 遠い記憶。まだこの城に慣れていなかったころ、自分も穴から落ちたことを思い出した。

 

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