【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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アニメ開始
やって来た!星のカービィ


 玉座の間から出てきた廊下でフーム様とブン様に出会った。

 お二人とも大きくなられた。

 

「この前まで、ついこの前まではわたくしの手を握って歩いたり、よちよちと後ろをついてきたりしましたのに……本当に月日が経つのは早いですわ」

 

 姉弟の姿を見かけるたびに胸がいっぱいになる。

 そんな私の様子に呆れて、ブン様は盛大にため息を吐かれた。

 

「ま~た言ってるよ、姉ちゃん」

「まあいいじゃない。ねえ、リーノ。それよりもデデデについて聞きたいんだけど」

「はい。なんでしょうか」

「最近、おかしな様子はなかった?」

「おかしな、ですか?そうですね。気になることと言えば一つあります。先日、陛下はタコのペットを購入されました。こんな事は陛下に仕えてはじめてです」

「あのタコのペットね。やっぱり怪しい!でも証拠がないわ……」

 

 悩まれるフーム様に、ブン様。そして二人の後ろにいらっしゃった大臣夫婦と、村の牧場主たち。皆は何かに困っていて、陛下にそれを言いに来たらしいのですが、聞き入れられなかったみたいですね。

 それならば。

 

「カブーに相談してはいかがでしょう?あの方ならば、いい知恵を貸してくださるはずですわ」

「そうだ!その手があったわ!!ありがとう、リーノ。皆、行きましょう!!」

 

 皆はカブーの谷へ向かった。

 私は玉座の間に入った。陛下が食事した後の皿を下げるためだ。

 

「まったく、どいつもこいつも……」

 

 エスカルゴン閣下がぶつぶつと何か言っているが聞き取れない。だけど見当はつく。おそらく先ほどいた住民たちへの不満だろう。「陛下に物申すなんて無礼だ」とかなんとか思われているんじゃなかろうか。

 

「もぐもぐもぐ……ごっくん。ふう、食った食った!よし、行くゾイ!」

 

 物音を鳴らして、陛下は椅子から立ち上がった。

 私はさっと近づき注意する。

 

「陛下。まだ“ごちそうさま”を言っておりません」

「あ~ん?……ごちそうさまでした。これでいいかゾイ?」

「はい。たいへんよくできました」

 

 手を合わせてちゃんと「ごちそうさま」を言う陛下に、にっこり笑いかける。

 前世でも今生でも、デデデ陛下のことをワガママ大王と思う。けれど、こうして臣下のいう事を素直に聞き入れてくださる姿もあるのだと知った。そんな姿は可愛らしいと思う。

 陛下は満足そうに頬を緩ませて、閣下をお呼びになられた。

 

 

 

 デデデ陛下とエスカルゴン閣下が、車に乗って出かけられた。

 その姿を見送ると、メタナイト卿に出くわした。おそらく後をつけていたのだろう。毎度のことなので私はもう慣れていた。

 

「ごきげんよう、メタナイト卿。何か御用でしょうか?」

「陛下はどこに出かけられた?」

「カブーの谷です。フーム様たちを追って行かれました」

「そうか。ありがとう」

「どういたしまして」

 

 こうやって情報を流し彼に協力することも、いつものことだ。

 メタナイト卿と別れてメイドの仕事に戻る。

 

 陛下の自室を掃除しつつ、そういえばと思い出す。

 タコの魔獣が出現して村人を困らせるといえば、アニメの第一話だよね。今日がその日なのかしら。

 そう考えると胸がわくわくと躍り出す。足取りも軽く、ステップを踏み出しそうだ。

 鼻歌を歌いながら、はたきで埃を落とす。すると突然、窓が光った。

 何事かと驚き歌も手も止める。光は、窓から入ってきているようだ。あまりにも眩しくて、窓の方へ近づけなかった。

 やがて光は収まった。

 数十秒ほど出来事だけど、耳の横で心臓が鳴っているようだ。体が緊張する。私はゆっくり窓に近づいて、空を見上げる。なんの変哲もない、いつもの青空が広がっていた。ほっと、体から力が抜ける。

 

「今のは一体何だったのかしら?」

 

 空が光るなんて人生ではじめての経験だった。怖かった。

 周囲を見渡すと、同じく部屋で一緒に仕事をしていたワドルディたちの手も止まっていた。みんな窓の外を見ている。

 

「みんな、もう大丈夫よ。掃除を続けましょう」

 

 声をかけると、止まっていた手が動き始めた。私も、今は仕事に集中しよう。

 

 

 

 そろそろ夕飯の準備をしないといけないな。太陽が随分と傾きはじめた頃、私は城のキッチンに向かう。

 キッチンはいつも清潔だ。ワドルディたちが毎食後の掃除を欠かさないからである。私も仕事で掃除をするが、彼らより器用ではないし、掃除だって上手くはない。

 なんでもできてしまうワドルディたちは、今も昔も私にとって仕事のお手本だった。

 キッチンの隣には、準備室がある。そこで割烹着を着用し、三角巾を被ってキッチンに入る。埃が料理の中に入ってしまわないようにするための配慮だ。料理担当のワドルディたちも頭にはカバーをつけている。髪の毛のない彼らには必要がないと思うんだけどな。

 腕まで袖をめくり、しっかり手を洗う。それから調理開始だ。

 

「今日は……うん、しばらくカレーライスを作っていないから、カレーにしましょうか。どうでしょう。よろしいですか?」

「わにゃ」

「では、そうしましょう。陛下も閣下もお好きですから、多めに作りましょうか」

「わにゃ」

 

 一ヶ月の献立表をチェックしながら、最近お出ししていないものをチョイスする。今晩はカレーライスだ。

 ライスはワドルディに任せて、私はカレー作りに精を出す。

 肉は鶏むね肉を使用する。肉と野菜を一口サイズに切る。底が深いフライパンを火にかけて、油とにんにくを入れる。にんにくの香りをしっかりと出したいので、大体十分ほど炒める。換気扇を回すのを忘れないこと。

 まず肉を入れて、よく炒める。色が変わったら、次は野菜を投入する。良く混ぜたら全体が浸かるほどの水を入れる。蓋をして沸騰させる。蓋を開けてあくを取り除く。火を少し弱めて煮込み、じゃがいもやにんじんに串がすんなり入るなら火を止める。

 いやあ、陛下に頼み込んでキッチンを最新式に変えていただけてよかった。前は薪をくべて火を起こしていたけれど、今はそんな手間いらないものね。楽だわ。

 ルウを必要な数だけ入れて再び蓋をして、五分程待つ。

 するとルウが溶けているので弱火にかけて、よく混ぜながらさらに煮込む。

 

 これでカレーは完成だ。

 

「こちらはできました。ライスの方はいかがですか?」

「わにゃにゃ」

 

 様子を窺うともうすぐできあがりそうだった。そろそろ陛下にお席についていただいてもいいかもしれない。

 そう考えていると、一人のワドルディが近づいてきた。

 

「かき混ぜるのを代わっていただけますか?陛下にもうすぐご夕食の準備が整うことをお知らせしてきますので」

 

 ワドルディは頷いた。しかし、彼の背は低すぎてかき混ぜているお玉に届かない。近くから椅子を持ってきて、その上に乗り、リーノからお玉を受け取った。

 

「では、後はよろしくお願いします」

 

 キッチンにいるワドルディたちに向けて一礼し、部屋を出た。

 扉を閉めると、遠くの方で花火の音が聞こえた。あのドーンという弾ける音だ。

 私は首を傾げる。

 

「陛下ったら、花火でも打ち上げているのでしょうか?」

 

 もしそうならば、陛下は見晴らしのいい場所にいるだろう。

 順番に探すしかない。

 外の様子が窺えて、尚且つ機械類の操作ができる玉座の間に、一旦足を運ぶことにする。

 

 

 

 玉座の間へと続く廊下を歩いていると、後ろから小さなピンク玉が追い抜いていった。

 あの一頭身は、まさか……。

 私は胸が高鳴るままに後を追った。

 

 

 

 小さなピンク玉は玉座の間へと入って行った。私も続いて中に入る。

 中には陛下がいらっしゃった。陛下はピンク玉に気づくと、ご自身のハンマーを掲げられて、ピンク玉に襲い掛かった!

 

「デデデ陛下!?」

 

 陛下は何度もピンク玉にハンマーを振り下ろした。その度にピンク玉が跳ねて転がる。

 なんて痛ましい光景だろうか。たまらず陛下の前に飛び出した。

 

「陛下、お止めください!」

「リーノ、危ない!!」

 

 フーム様の声が聞こえた。陛下のハンマーは止まらない。私は目をつぶった。

 

「はあ!!」

 

 何かがぶつかる金属音がした。恐る恐る目を開けると、デデデ陛下は床に伏せていた。そして私を庇うようにメタナイト卿が剣を抜いて立っている。助けられたのだ。

 

「ありがとうございます。メタナイト卿」

「あれを」

 

 彼の手が示す方向を見る。

 陛下のペットのタコが、見る見るうちに巨大化していった。

 

「うわあああ!!?」

「あ、ああ……なんてことでしょう」

「魔獣だ!これじゃ羊を食べる訳だよ」

「しかも陛下を操っていた!」

 

 タコはやがて壁を破壊し、さらに体を大きくさせる。天井が崩れる中、遠くでタコの足が城にからみつく光景を見た。

 なんて日だ、この世の終わりか?

 

 タコに……魔獣にソードナイトとブレイドナイトが突撃する!しかし、タコの足に攻撃を邪魔されてダメージが入らない!

 陛下は魔獣を応援する始末だ。皆や城が大変な目にあっているのに何しているんだあの人は!?今日の夕ご飯はお酒抜きにしてやる!

 

 魔獣は体中から小さい自分の分身を出現させて、逃げるピンク玉を追わせる。魔獣自身も追いかけて外に出た。あら、フーム様がいない?

 

「フーム様?」

「こっちだ」

 

 メタナイト卿とブン様に案内されて、フーム様の元に辿り着く。そこから、ピンク玉が戦っている様子が見られた。

 強力な吸い込みが魔獣の分身を何百と吸い込む。

 乗り出していたフーム様が吸い込まれそうになり危なかった。ブン様を一緒に引き上げる。

 数百の分身を吸い込んだ彼は平然としていた。その様子に私たちは驚くが、メタナイト卿は平然としている。むしろ技の解説をしてくれるぐらいだ。

 

「どうして、技のことをしっていますの……?」

「秘密だ」

 

 はぐらかされてしまった。フーム様たちと顔を見合わせる。

 魔獣に動きがあった。

 今度は炎をまとった分身が、魔獣の吸盤中から飛び出てきた!ピンク玉は体を回し蹴りで分身を弾く。魔獣の攻撃が効かない。

 

「わああああい!」

「やった!」

 

 魔獣はさらに分身を放出する。しかしピンク玉はすべてを飲み込んでしまった。

 そして彼の体が発光する。

 

「姿が変わった?!」

「ふむ!コピー能力だ!」

「こぴー?」

 

 再びメタナイト卿はコピー能力について解説してくれる。なんて凄い能力なんでしょうか。

 

「今彼は、ファイヤーカービィとなった!」

「ファイヤー、カービィ」

 

 カービィ、この世界の主人公。彼が、カービィ!

 

 魔獣が炎の攻撃をくり出す。フーム様が「カービィ!!」と叫ばれて何かを投げた。それは星型で空を自在に飛んでいる。あれが、ワープスター!?

 今度はカービィが炎攻撃を魔獣にぶつける。

魔獣は粘ったが炎に勝てず、遥か彼方へ飛ばされてしまった。

 

 カービィの勝利だ!

 

「やりましたわ!」

「やったー!」

「カービィは最高!本物の戦士だわ!!」

 

 合流した大臣夫婦と喜びを分かち合う。そして陛下は魔獣が負けたことで悲しそうに泣かれていた。

 いつの間にか、メタナイト卿の姿はなかった。

 

 

 

 早朝、カービィはププビレッジを出ることになったらしい。さすらいの旅が彼の定めなんだそうだ。

 

「そうですか。どうか、わたくしの分までお別れを言っておいてくださいませ」

「待って、リーノは一緒に見送りに行かないの?」

「壊れた城を直さなければなりませんから。それに、カービィさんとは知り合いでもなんでもありません。私が行くのは不自然でしょう」

「……わかったわ。じゃあ、また後でね」

「はい。いってらっしゃいませ」

 

 と、しんみり話して城を出発したのに。

 戻ってきた大臣一家の中には、去ったはずのカービィが一緒にいた。

 

「カービィは当分ここに住むことになったわ!!」

「まあ、それは……おめでとうございます?」

 

 大臣一家はカービィを連れて帰ってきた。

 

 

 どうやら、物語は動き始めたらしい。

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