【完結】転生者がカービィ世界で生き抜く話   作:紅絹の木

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1周年

 

 村に日用品を買い足しに行った日。

 村のコンビニの前で、子供たちに呼び止められました。フーム様、ブン様、イロー、ハニー、ホッヘの五人です。

 

 子供たちはわくわくと興奮した様子で、わたくしに声をかけました。

 

「リーノ。一週間後になにがあるか、わかる?」

 

 ブン様は人差し指をピンと立てて、問題をだされました。

 わたくしは首を傾げます。

 

「一週間後、でございますか?うーん……どなたかの誕生日でしょうか?」

「ブッブー」

「違うわ」

 

 イローとハニーが楽しそうに笑みをこぼします。ホッヘがヒントを出してくれました。

 

「記念日だよ!さて、なんでしょう!」

「結婚ですか?恋人記念でしょうか?」

「ちーがーう!」

 

 みなさんが答えを言いたくてウズウズする頃、フーム様が教えてくれました。

 

「今度ね、カービィがこの村にやってきてから一周年になるのよ」

「それはそれは!おめでたいですね!」

「でしょう!だからね、村中のみんなを誘って、パーティーしようと思っているの」

 

 続いてブン様が説明してくれます。

 

「当日はカービィへのプレゼントを持って来るか、みんなと一緒に用意するんだ。リーノはどうする?」

 

 わたくしは少し考えました。仕事を終わらせてから参加するのか、有給を消化して参加するのか、どちらにしましょうか。

 

「パーティーは何時頃を予定していますか?」

「日没後だから、夜よ。パーティー会場を作って、ライトで照らして、華やかにするの!」

「それは素敵ですね。夜からでしたら、仕事を終えた後にパーティーに参加できると思います。事前準備はするのでしょうか?」

「するわ。手伝えそう?」

「陛下と閣下に相談して、時間を作ることができれば……」

「それはダメよ!」

 

 子供たちは首を横に振ります。

 わたくしは、なぜいけないのか、わかりませんでした。

 

「どうしてですか?」

「デデデたちが知ったら、邪魔されるじゃん」

「そうでしょうか?知らせないままでいると、別のなにかに勘違いされてしまいませんか?」

「例えば?」

「……革命とかでしょうか?」

 

 そういうと、みなさん大笑いされました。

「まさか、ねえ」と、フーム様は仰います。

 

「陛下は思い込みが激しいところがありますから」

「とにかく、デデデたちには知らせないで。うまいこと言って、パーティーに参加してちょうだい」

「かしこまりました。準備はお手伝いできませんが、カービィと参加者のためにお菓子を持ってきますね」

「ええ、それでいいわ。お願いね、リーノ」

 

 

 

 城に帰ってから、アーニャとランタンを探します。

 玉座の間を掃除していた二人を引き止めて、休憩がてら少しおしゃべりをします。

 カービィの一周年パーティーのことを伝えました。二人も、パーティーに参加するようです。

 それならば、と。わたくしは二人をお菓子作りに誘います。

 

「カービィ用にプレゼントする分と、パーティー会場を用意してくださるみなさんのためにお菓子を作りたいと考えています。どうか一緒に作っていただけませんか?」

「今回はどんな物を作る予定ですか?」

「アイシングクッキーを作りたいんです。デコレーションすれば、いつものクッキーよりも華やかでエレガントになりますから」

「一周年の記念日にはピッタリね」

「そういうことです」

「賛成!お手伝いします」

「私も、今からクッキー作るのが楽しみだわ!」

「ありがとうございます。パーティーは一週間後なので、今日から準備を始めましょう」

 

 準備はその日の夜から始まりました。

 まずは、オーブンなどお菓子作りに必要な家電が揃っているリーノの部屋に集まります。三人が持っているクッキーの型を持ち寄り、どれを使うのか決めていきます。

 型が決まれば、次は試作です。

 毎日クッキーを焼いては、デコレーションしてデザインを決めていきます。

 思ったよりも、デコレーションするのに時間がかかってしまいました。わたくしたちは本番まで練習を繰り返します。

 

 クッキーを見飽きて、食べ飽きた四日目。一度休みを挟みました。クッキーを作らず、クッキーを入れる袋とリボンを選びます。

 カービィに渡す袋を一番大きいものにして、あとは同じサイズにします。

 リボンは袋の口を結ぶのに必要な長さを測り、それを量産します。

 ちょきん。ハサミの切る音がして「あら」とランタンが言いました。

 

「ランタン、どうかしましたか?」

「リボン、無くなったわ。買いに行かなきゃね」

「こちらも無くなりました」

「では、明日買い出しに行きましょうか」

 

 五日目は村で買い物をしました。正午を少し過ぎた頃です。

 リボンなどの雑貨類と、お菓子作りに必要な材料を購入します。

 大量の荷物を三人で分けて、えっさほいさと運びます。リボン選びに時間をかけてしまいましたので、もう夕方に近いです。

 それでも楽しかったので、わたくしたちの顔に疲れの色はあまりありません。

 アーニャがちらりとカワサキさんのお店を見て言いました。

 

「ちょっとだけ休んでいきませんか?喉が乾いてしまって」

「いいですよ。わたくしもアイスコーヒーが飲みたいです」

「トイレ休憩も兼ねて入りましょうか」

 

 カワサキさんのお店に入ります。中はいつも通り、空いていました。

 テレビを見ていたカワサキさんが、立ち上がりこちらに来ます。

 

「いらっしゃーい!あ、リーノにランタンにアーニャ!今日は晩ごはんを作りに来てくれたのかい?」

 

 わたくしたちは笑みを浮かべました。

 

「違いますわ。今日はお客としてきました。飲み物をいただけますか?」

「なんだ〜そっか。いいよ。なにが飲みたい?」

「わたくしはアイスコーヒーで。アーニャとランタンはどうしますか?」

「ホットコーヒーでお願いします」

「緑茶でお願い」

「はいよー!ちょっと待っててね」

 

 カワサキさんはすぐに奥へ行かれました。

 わたくしたちはカワサキさんが座っていた、奥のキッチンから近いテーブルに座ります。荷物は椅子の下に置かれたカゴの中に入れました。

 三人で息をほっと吐き出します。

 

「今日は疲れましたけれど、楽しかったわ」

「リボン選びは久々だったので、ついはしゃいじゃいました。みんなお気に入りのリボンを買えてよかったですね」

「帰ってからまた作業をしなくちゃいけないけれど、新しいリボンを使うのはとっても楽しみだわ」

 

「買い物の帰りかい?」

 

 ぴたりとわたくしたちのときが止まりました。見知らぬキャピィ族の男性が声をかけてきたからです。

 ……いや、どこかで見たような気もしますが。

 ランタンが怒気を孕んだ声で言います。

 

「またあんたなの?私たちになにか用?私たちには、あんたに用なんてないんだけど」

「今日は君を誘いに来たのさ。ねえ、デートしないかい?」

「はあ?」

 

 ランタンは大きくため息を吐きました。

 わたくしとアーニャは顔を寄せます。互いにひそひそと話し合います。

 

「誰でしたっけ?」

「私も知りません。多分、前にコンビニで声をかけてきた見知らぬ男性ではないでしょうか?」

「……ああ!」

 

 そこでわたくしはやっと思い出しました。

 あのときのナンパさんです。しつこかった記憶があります。あと空気が読めない方。

 

 ちらりと男性を見てみると、視線を感じたのか、こちらに笑いかけてきました。

 悪い方ではないのでしょう。ですが、こちらの話を聞いていませんね。

 

「はいよ〜。飲み物お待たせ!……なんだい、この状況?」

 

 この場のピリピリとした空気にカワサキさんが不思議がる。

 ランタンが怒ったように、実際そうなのでしょう……調子を荒げて言います。

 

「ナンパよ!こっちはゆっくりしたいのに、困るわ!」

「ああ、困らせる気はなかったんだ。返事をもらったら帰るよ」

「ノー」

「え?」

「答えはノーよ。さあ、帰って」

「どうしてノーなんだい?」

「私、ソードナイトと付き合っているもの」

 

「えーと、つまり……リーノちゃんが……」

「ちゃん付けはやめてください。嫌です」

「ごめんよ。リーノとアーニャはそれぞれメタナイト卿とブレイドナイトさんと付き合っているんだろう?それで、ランタンもソードナイトさんと付き合っているのかい?」

「呼び捨てにしないで。それをしてもいいのは……」

 

「私たちだけだな」

 

「メタナイト卿!」

「お前が、以前にもリーノたちに声をかけたのだな」

「……そうだよ」

「ふむ。少し話せるか?向こうで」

「ここじゃダメなのかい?」

「彼女たちは休んでいる。その近くで問答する気はない。さあ、こちらだ」

 

 メタナイト卿は早足でお店から出ていきました。男性はそのあとを追って行きました。

 二人がいなくなって、カワサキさんが言いました。

 

「店の外に、塩、撒いとこうかな。店の中でナンパとか困るもん」

 

 

 

 およそ十分後にメタナイト卿が帰ってきました。

 多分、すっきりされた様子です。

 

「話はつけた。もう話しかけてこない。安心するといい」

 

 わたくしたちは喜びました。

 なにがあったのかは、誰も聞きませんでした。

 メタナイト卿のことですもの、きっと穏便に済ませたはずですわ。

 

 それから、メタナイト卿はわたくしたちと一緒に帰ることになりました。

 お菓子の材料を、重い荷物を持ってくださって助かりました。途中で、軽い荷物と交換しました。

 

「最近、筋トレの効果が出てきたのか、重い荷物でも楽に運べますの。ですから、持たせてください」

「わかった。では、二人の荷物を持とう」

 

 その言葉にアーニャが声を上げます。

 

「そんな!悪いですわ」

「良いのだ。さあ、貸してくれ」

 

 重い荷物を、メタナイト卿は軽々と持ち上げてしまいます。

 そして、また歩き出します。わたくしたちはあとに続きました。

 

 

 

 

 メタナイト卿はわたくしの部屋まで、重い荷物を運んでくださいました。

 そのお礼にとお茶に誘いますが、遠慮されます。

 理由は部下のお二人を待たせているからだとか。

 アーニャが「でしたら」と言います。

 

「後日みなさんに差し入れを持っていきます。何か、リクエストはありますか?」

「……私は」

 

 メタナイト卿がわたくしに目を向けます。そして呟かれました。

 

「おにぎりが、食べたいな」

 

 それは、以前メタナイト卿に差し入れしたことがある物です。

 また食べたいと思っていただけて嬉しいですね。

 わたくしは何度も頷きました。

 

「作ります。必ず」

「他にはないかしら」

 

 ランタンは三人にもっと作ってあげたいようです。

 メタナイト卿は一瞬考えて「弁当のようにおかずがあるものが良いな」と話されました。

 

「前に作った弁当みたいな感じね。少し豪華にしましょうか?」

「今、忙しいのだろう?できる範囲でかまわない」

「好きな人たちに贈るお弁当を作るのに、手は抜けません」

 

 わたくしたちは穏やかに笑みをこぼします。

 メタナイト卿も、つられて笑いました。

 

「楽しみに待っている。弁当は、いつでも良い」

「でしたら、数日後のパーティーが終わるまでお待ちいただけますか?」

「パーティー?」

「カービィがこの村にやってきて一周年のパーティーがあるの。開催場所はカービィの家付近で、時間は夕方から夜よ」

「カービィと、あと陛下と閣下には内緒なのです」

「わかった。ソードとブレイドには知らせる。あとは内密にしよう」

「よろしくお願いします」

 

 そうして、メタナイト卿は部屋から出て行きました。

 

 

 

 パーティー当日。

 日々の業務を終えて、ヘトヘトになった体を引きずって城から出ます。

 みなさんに渡すお菓子も準備でき、カービィへのプレゼントも用意できました。喜んでもらえるといいですね。

 想像してにこにこしていると、パーティー会場から花火の音が聞こえてきました。

 

 夜空を見上げると、花火と共に打ち上がる陛下と閣下が見えました。

 わたくしは荷物が落ちることも気にせず、陛下たちの元へ走りました。

 

「陛下!閣下!」

「危ない、近づくと危険だ!落ちてくるのを待つのだ」

 

 メタナイト卿に止められました。

 わたくしは首を振ります。

 

「地面に激突しないようにしてあげたいのです!」

「そなたの細腕では無理だ。氷を使え」

「……!わかりました」

 

 上から降ってくる人を受け止めるなんてやったことがありません。

 ですが、滑り台の要領で受け止めれば、落下は避けられるはずです。

 

 わたくしは巨大な滑り台を作り出し、落ちてくる陛下たちを痛くないように受け止めます。そして近くの池の中に滑り台の出口を作りました。

 二人は激しい音をたてて、池の中に落ちました。

 慌てて向かい、池の淵に立ちます。陛下と閣下はすぐに顔を出されました。

 

「リーノ、なんで池の中に落とすゾイ!!!」

「地面に落ちたら転んでしまうと思ったからです。それなら濡れてしまいますが、池の中に放り込んだ方が怪我をしないと考えました」

「良いのではないか?事実、怪我はしていない」

 

 メタナイト卿が賛同してくれます。

 閣下が怒りました。

 

「でも、おかげでこっちはびしょ濡れでゲスよ!!!」

「それぐらいいいでしょ!怪我するよりずっとマシだわ」

「そーそー」

 

 フーム様とブン様が仰います。

 陛下と閣下に味方をしてくれる人がいないので、お二方は次の言葉を紡げませんでした。

 そこに村長さんたち村の方々も来ました。

 

「陛下、エスカルゴン殿、ご無事でしたか。いやはや、良かったですぞ。体をはった見事な見せ物でした」

「みな、大いに楽しませていただきました」

 

 村長さんとボルンさんが陛下と閣下を褒めます。

 陛下は嬉しそうに笑いました。

 

「デハハハハハ!当然ゾイ!ワシのプレゼントが一番に決まっておる!……へっくち」

「大変!陛下、閣下、早く池から上がってください。風邪を引いちゃいますわ」

「誰のせいでゲスか、ったく……おー冷えるでゲス」

「すみません……」

 

 持っていたハンカチで陛下のお顔についた水滴を取ります。

 

「リーノ」

「アーニャ、ランタン。二人もハンカチを出してください」

「かしこまりました」

「わかりました」

 

 二人のハンカチは閣下に渡されました。閣下はその二つで全身を拭かれます。

 

「ありがとうでゲス。あー、帰って風呂に入りたいでゲスよお」

「城に戻るゾイ。ワドルディ共、撤収!!」

「陛下に続けー!!」

 

 陛下の後を追うワドルドゥ隊長と、隊長が率いるワドルディたち。

 彼らならばお風呂の用意などしてくれることでしょう。

 

「ハンカチ、持って行かれちゃいましたね」

「後で返してくださいますよ。陛下は律儀なところがありますから」

「ところで私たちはどうするの?パーティーに参加するの?」

「ぜひ、そうしてちょうだい!みんな、リーノたちを待ってたんだから!」

「お土産あるんだろ?なあ、くれよ!」

 

 ブン様の「お土産」という言葉を聞いた村人たちが、ザワザワと囁き合いました。

 みんな楽しみにしている様子です。

 わたくしは嬉しくなって、すぐにお菓子を配ろうとしました。

 けれど、荷物を持っていませんでした。落としていたことをすっかり忘れていたのです。

 

「あ、荷物が……」

「ここよ。荷物を放り出して走っちゃったときは驚いたわ」

「ランタン、ありがとうございます!」

 

 どうやらランタンが拾っていてくれたみたいです。

 わたくしは荷物から、一番立派な袋を取り出してカービィに差し上げました。

 

「カービィ、一周年記念おめでとうございます」

「ぽよぽよ!」

 

 幼き戦士は飛び上がって喜んでくれました。

 

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