朝の早い時間、村で郵便局長のモサさんにお会いしました。
モサさんはいろんな人に会うため、村の内外の情報に詳しい方です。いつものおしゃべりのついでに、懐中時計を売っているお店について聞いてみました。
「懐中時計が欲しいのかい?それなら、隣り町のパキサンドラという時計屋に行くといい。あそこの懐中時計は大切に使ってやれば五十年使っても壊れん」
「隣り町のパキサンドラというお店ですね。わかりました。モサさん、ありがとうございます」
わたくしは、良いことを教えていただいたお礼をしようと思いました。
モサさんは隣り町の芋羊羹がお好きだったはず。それをお土産にしましょう。
村でお城の食材を注文したら、すぐに帰城します。
そして陛下たちを探しました。陛下と閣下は、中庭でゴルフをされていました。
お二人に話しかけて、数日ほど有給を申請します。
陛下は、こちらを見向きもせずに言います。
「ランタンとアーニャが仕事するなら、まあ良いゾイ」
「早く帰ってくるでゲスよ。それと知らない奴についてっちゃダメでゲスからね」
「……心得ております」
気をつけていても、攫われちゃうときがあるのですが。そういうときはどうすればいいのでしょうか?
声に出してしまうと、質問攻めにされますので口は結んでおきます。
陛下と閣下に話を通したあとは、アーニャとランタンに伝えます。
二人は城の一階、洗濯場にて洗濯物を干していました。
話をすると二人とも、以前の事件を思い出して顔色を悪くしました。
アーニャが不安そうな声で言います。
「あの、メタナイト卿に同行をお願いできないのでしょうか」
「三戦士ともお忙しいから難しいかと……」
「聞いてみたの?」
「いえ、まだです」
「なら、聞いてみましょ。もしかしたら町に行く用事があるかもしれないし」
「そう、ですね。聞いてみてから、考えましょうか」
「……というわけで、一緒に隣り町へ行ってくださいませんか?」
「わかった。行こう」
メタナイト卿のお部屋にて、三人が集まっているところを訪ねました。
メタナイト卿は二つ返事で了承されるので、驚きます。
「仕事の方はよろしいのですか?」
「かまわない。ちょうど隣り町に用事があったのだ」
「その用事とは?」
「秘密だ」
おそらくハルバード建設に必要な資材を購入したいのでしょう。
わたくしは深く詮索してはいけないと思い、質問は避けました。
「わかりました。では、その時間は別行動ですわね」
「詳細は夜にでも決めよう。何時ごろ空いている?」
「夜の八時半以降でしたら、いつでも大丈夫です」
「では九時に会いに行こう」
「かしこまりました。お待ちしておりますわ。それでは、お邪魔しました」
頭を軽く下げて部屋から出ました。
「リーノ」
「はい、メタナイト卿」
部屋を出て、扉を閉めた廊下で後ろを振り返りました。
「そなたなら、いつ来ても歓迎する」
「……嬉しいです。ありがとうございます」
そう言ってくれる、メタナイト卿の気持ちがたいへん嬉しかったです。
隣り町への出発は、五日後でした。
出発までに親しい方に旅行すると知らせます。そこでハナさんとサトさんに言われて、気づいたのです。
「そういえば、まだ故郷に帰ったときの土産話を聞いてなかったわね。帰ってきたら、聞かせてちょうだい」
「リーノの故郷、どんなところかしらね」
「そうですわね……帰って来たときにでも、お話しします」
故郷から届いたあの手紙、わたくしがヤミカゲに攫われるきっかけとなった本物と思われる手紙。
「確かめに行かなくてはなりませんね」
メタナイト卿にお願いして、行き先をもう一つ増やしました。
故郷はどんなところか、楽しみですわ。
出発日は曇りときどき晴れ。歩いて旅行するには、ちょうど良い気温です。
太陽が上り出した早朝、メタナイト卿と並んで歩き、後ろにはフーム様、ブン様、カービィがついてきます。
今日は静かに、緊張した様子で辺りの様子を窺っています。
魔獣がいないか警戒されているのでしょう。わたくしも周りをキョロキョロと見ますが、何もいないように思えました。
「そこまで警戒しなくても、何もいないぞ」
「あら、そうなのですか?では、問題ありませんね」
「そうは言ってもよー」
「心配なのよ……」
ブン様とフーム様はわたくしを見つめます。
その瞳には心配の色が濃く、なんとか払って差し上げたいと思いました。
なので、近くにあった岩を凍らせます。
「失礼」
一言言ってから、岩を巨大な氷で包みました。
一瞬の出来事にみんなが驚きます。
わたくしは微笑んで、言いました。
「敵はこのように凍らせちゃいますので、わたくしたちが怪我をすることはないかと」
「そうだな。……最近ますます技を繰り出す速さに、磨きがかかったようだな」
「ありがとうございます。毎日練習しておりますから、そのお陰ですわね」
和やかなわたくしたちの違って、子供たちは少し引き気味です。
「はは……これなら、魔獣も怖くないな」
「そうね」
「ぽよぽよ」
それでも、安心してもらえたのでしょう。顔に笑顔が戻っています。
子供たちは元気よく、わたくしたちを送り出してくれました。
*****
歩いて最寄りの駅に到着します。
そこで三十分ほど待ちまして、汽車が来ました。それに乗り込み、隣り町に到着するまで揺られ続けました。
山を越え、野原を通り、田んぼの景色をぼんやりと見つめ、まったりと過ごします。
一時間後、隣り町に到着しました。
プププビレッジよりも大きな町は、人も建物も多く、流れていく人の数も多いです。
「はぐれてはいけない。手を繋ぐか?」
「はい。お願いします」
私たちはお互いの手を繋いで、人の流れに加わりました。
まず、荷物を預けましょうとわたくしは言いました。
ハナさんにおすすめされた、老舗の宿を訪ねます。事前に電話で宿泊予約していましたのでスムーズに部屋に通してもらえました。
部屋は一つです。初めて恋人同士で宿泊します。とても緊張しますね。
部屋は洋室で、大きなベッドルームが一つにユニットバスがついています。
コンパクトな造りは、見たことがないけれど記憶の中にあるホテルや旅館の部屋を思い出させます。
「少し休んでいくか?それとも食べていくか?宿の中には食堂があるらしい」
「食堂に行きたいですわ。それから、懐中時計のお店に行きましょう」
「わかった」
必要最低限の荷物だけを持ち、宿の中の和風な食堂の中に入りました。
のれんをくぐり、受付で男性の方に会います。
「今の時間帯なら、すぐにご案内できます。どうぞ、奥へお進みください」
「ありがとうございます」
奥のホールは広くて綺麗でした。特に外側は一面ガラス張りで、風景がよく見えました。
昼食には早い時間帯のためか、お客さんはわたくしたちの他に数組だけです。
ここの食堂はビュッフェ形式のようです。
わたくしたちは料理が取りやすいように、近い席に座りました。
食事はたいへんおいしかったです。
レシピを教えてほしいと思うほどでした。叶うことなら、わたくしが作って村のみんなに食べさせてあげたいですね。
食事の次は時計屋さんに向かいます。町の中心地にあるようなので、少し歩きました。メタナイト卿とのんびり散歩できるのは楽しいですわ。
目的地の時計屋さんは、大きな看板を掲げていたのですぐに見つけられました。
中に入るとベルが店内に響きます。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
奥から店主さんらしきおじいさんが出て来ました。
その方は、カウンターの内側に座ると新聞を読み始めます。こちらは自由にしても良いということでしょう。
「では、探しましょうか」
「そうしよう」
メタナイト卿と一緒にゆっくりと店内を見てまわります。
落ち着いた雰囲気の店内は、時間さえもゆっくりと過ぎるようです。
懐中時計はお店の中央にありました。
ガラスのケースに入れられて、選ばれるのを待っているようです。
たくさんの種類がある中で、わたくしが気に入ったのは星形の懐中時計です。
作り込みが細やかで、色合いもシックでとても良いですね。先は丸まってるのでポケットに入れても、破れることはなさそうです。
値段も、二つ合わせても予算内なのです。その点も良いですね。
星形の懐中時計を眺めていると、メタナイト卿が声をかけられました。
「それが良いのか?」
「はい。メタナイト卿はどれがいいですか?」
「君の選んだものが良い。君が選んでくれたものが欲しいから」
「わかりました。では、この星形にしましょう」
「決まったかい?」
店主さんが話しかけてきました。音もなく後ろにいらっしゃったので、わたくしは少し驚きました。
「え、ええ。こちらの星形の懐中時計を二つ、いただけますか?」
「あいよ。で、真ん中の宝石はどうする?何の石がいいんだ?」
「変えられるのですか?」
「ああ。揃いで買ってくれる客には、無料サービスでやっているんだ。で、どうする?」
「ぜひ、お願いします。よろしいですか?メタナイト卿」
「ああ、変えてもらおう」
店主さんはじっとわたくしたちの顔を見ました。
「ふむ。じゃあ、濃い紫と明るい金でいいかな?」
わたくしの瞳の色が濃い紫色で、メタナイト卿の現在の瞳の色が金色です。
メタナイト卿は待ったをかけました。
「いや、濃い青色と濃い紫色にしてくれ」
「?それでいいのかい?」
「はい、お願いします」
「わかった。昼前に来てくれたからな。今日の夕方にはできるよ」
「随分早いのですね」
「迅速に仕事をするのがうちのモットーだからな」
店主さんは、わたくしたちが選んだ懐中時計をケースから取り出して「あとは任せておけ」と言いました。
注文書に記入し、お金を払い、わたくしたちは再び町の中を歩きます。
次はメタナイト卿の用事を済ませます。
港へはずいぶん離れていましたので、馬車に乗って向かいます。
汽車に乗ることも、馬車に乗ることも、たいへん新鮮で楽しいですね。
十五分ほど揺られて到着した先は、繁華街でした。
広く、大きく、たくさんのお店があります。子供たちが遊ぶ、大きな公園もありました。
メタナイト卿が「こちらだ」と案内板に案内してくださいました。
「私はこれからドックのある方に行く。リーノはどうする?」
「そうですね、本でも読みつつ待っていようかと」
「では、まず本屋に行くか?」
「はい。行き先はメモに書いておきますから、一人でも行けますわ。次に待ち合わせの場所ですけれど、本屋さんの隣にあるカフェでいいですか?」
「わかった。では、そこで集合しよう」
メタナイト卿の背中を見送ってから、わたくしは繁華街の中央にある本屋さんへと歩きました。
本屋さんの品揃えは、それはもう豊富でした。大きい店舗なので、迷子になってしまうのではないかと思いました。
どの本を購入するのか、たいへん悩みました。刺繍、大好きな小説の続本、新しい本……。
決めました。村には置いていない、レース編みの本を一冊購入します。
この本を読みつつ、編み物をして待っていましょう。
隣りのカフェに行きます。
今日が平日で、混む時間を過ぎたためか、空いていました。飲み物と軽食を注文して、外からよく見えるテラス席でメタナイト卿を待ちます。
今日のような空いた時間のために、わたくしはレース編みのセットを持ち歩いていました。軽くて持ち運びしやすいので、こういうとき便利ですね。
また、テレビに出演できるかもしれません。その時は、またアーニャたちとのハンドメイド作品を身につけて登場しようと思うのです。
作品を気に入って、購入してくださる方がいるかもしれません。そのお金を貯めて、いつか三人のお店を出すのです。
ふと、想像しました。
そのとき、わたくしはお城でメイドをしてるのでしょうか?
そのときも、わたくしたち三人は一緒でしょうか?
未来を知りたくて空を見上げますが、青空が広がっていました。
レース糸を編んで、二時間が経過した頃。
さすがに肩がこりはじめてきました。
椅子の背もたれに体を預けて、力を抜きます。
作品はいい感じにできていました。今回はイヤリングにしましょう。そうすれば、子供でも身につけやすいはずですわ。
「待たせた」
突然、声をかけられました。
待ちに待った、あの優しい声。
わたくしは咄嗟に、首を振りました。
「――さほど、待っていませんわ。こうして、楽しく編んでいましたので」
作っている最中の作品を見せます。
メタナイト卿は「そうか」と、安心したようでした。
その後、観光しつつ早めの夕食をいただきました。
日が落ちる前に時計屋さんに赴き、時計を受け取りました。
受け取ったその場で、お互いの時計を交換します。
「これでいつでも、そなたと共にあれる」
そう、メタナイト卿が仰るものですから、わたくしはたいへん顔が赤くなりました。
日が沈んだ後、宿に戻り、一泊しました。
次はわたくしの生まれ故郷に向かいます。
生まれ故郷はのどかな町でした。
静かで自然が溢れていて、プププビレッジに似ています。
その町の中で、一番大きな屋敷が目的地でした。
石造りの大きな二階建てのお屋敷を見て、わたくしは驚きます。
想像よりずっと大きかったのです。
「どうした?」
「大きなお屋敷で驚きました……。わたくし、変な格好ではありませんか?」
「今日も素敵だ」
「ありがとうございます。……ふう、ベルを鳴らしますね」
門のところに備え付けられたベルを鳴らします。
待った時間は長く感じました。きっとわたくしが緊張していたためですわね。
奥のお屋敷からではなく、右手側から顔を出したのは、おじいさんさんでした。
「こんにちは。なにか御用ですかな?」
「こんにちは。リーノと申します。両親の遺品整理に来ました」
「…………」
「あの……?」
「君が、リーノか。大きく、なったなあ」
大粒の涙を流すおじいさんは、暖かく微笑みました。
わたくしたちはおじいさんに案内されて、お屋敷に入ります。
玄関は予想通り大きいです。吹き抜けになっていて、天井から明かりが差し込んで……玄関が明るくてとても綺麗ですわ。
そこに一人の執事さんがやってきました。
「旦那様、お帰りなさいませ。おや、後ろの方々はお客様でしょうか?」
「グラント。孫のリーノと、その恋人のメタナイト殿だ。着替えてくるので、あとを頼む」
「かしこまりました。ではアリーとマナを呼びましょう」
「そうしてくれ」
執事さんが玄関でベルをチリリンと響かせると、今度はメイドさんが二人現れました。
一人はおばあさんで、もう一人はフーム様ぐらいの子供です。
「はいはい。何か御用でしょうか?あら、お客様ですね」
「アリー、先日手紙をくださったリーノ様とメタナイト殿だ。応接室にご案内するように」
「かしこまりました。リーノ様、メタナイト様。私、アリーと申します。こちらは見習いのマナ。私とグラントの孫ですわ」
「こんにちは。マナです」
「こんにちは。ご丁寧にありがとうございます。リーノです」
「メタナイトだ。本日はお邪魔します」
挨拶もそこそこに、わたくしたちは一階の日当たりの良い応接室に通されました。
応接室は広いお部屋で、一人用ソファが向かい合って四つと大きなテーブルがあります。奥には大きな窓があって、様々な種類の花が咲き乱れる中庭が見えました。
アリーさんに従って上座のソファに座り、出された紅茶をいただきます。
十分後に、館の主人と奥様は現れました。
わたくしのお祖父様と、お祖母様です。
お祖父様は先ほど会いました。服と髪を整えると印象がガラリと変わります。穏やかな雰囲気はそのままですが、さっきよりもずっと上品で優雅な雰囲気になりました。
初めて会うお祖母様は、例えるならハナさんのようです。優しくて、上品で、優雅で、包容力がある雰囲気を感じます。濃いシックな紅のドレスが、その身につけている宝石とよく似合っていました。
お二人とも、わたくしを見て泣きそうに微笑みます。
「あなたのお母さんにそっくりだね」
「瞳の色はお父さんに、似ていますね」
その言葉を聞いて、わたくしも泣きそうになりました。
両親を知っている人に出会えたことが嬉しい。
親族がいてくれたことが嬉しい。
私を拒絶しなかったことが、ありがたくて。
わたくしは言葉を紡げませんでした。
深呼吸をして気持ちを落ち着けます。
ようやく、わたくしたちは話を始めました。
主にわたくしの近況を話しました。祖父母はときせつ、涙を浮かべて話を聞いてくれました。
祖母に「苦労したのね」と言われました。その言葉にわたくしは笑って答えます。
「みんながいてくれたから、毎日楽しかったですよ」
お茶が空になったころ。
祖父母は遺品を持って来ると言って、応接室を出ていかれました。
メイドさんたちは新しいお茶を淹れてくるためにキッチンに行きました。
わたくしたちはわずかな時間をゆったりと楽しむはずでした。
小さなは訪問者が現れたのです。
その子は十歳くらいの男の子でした。
利発そうな目を釣り上げていました。
「あなたは……?」
「ここを奪いに来たのか?」
わたくしは、首を振りました。
「いいえ。わたくしの両親の持ち物を受け取りに来たのです。このお屋敷をいただくために訪問したのではありません」
「でも、お祖母様もお祖父様も言ってたぞ!正当な所有者はリーノっていう孫のものだって!俺と、母さんじゃないって!」
「その、お話しは初耳ですね……」
この話を進めるためには、情報が足りていません。
まずは、男の子に落ち着いてもらうことにしました。
席を立ち上がり、一礼します。
「まずは挨拶を。初めまして、リーノです。あなたのお名前を聞かせてください」
「ナラルだ」
「ナラルくん、ですね。どうぞ一緒に席に座って、お祖父様とお祖母様を待ちませんか?お話しはそれからでも、遅くないでしょう?」
「わかった……」
どうやら素直な子のようです。まだまだわたくしたちを警戒していますが、部屋の壁際に置いてあった一人用の椅子を持ってきて、テーブルの近くに座りました。
ちょうどそこに、アリーさんとマナちゃんがお茶を運んできてくれました。
二人はナラルくんの登場に驚きました。そして、今はご主人様たちと四人でお話しさせてあげてほしいと、説得します。
わたくしは、ナラルくんにも同席してほしいと、伝えました。
「この屋敷の所有権のお話しは、彼にも関係ありますよね?同席してくれるとありがたいですね」
「かしこまりました。一応、旦那様と奥様にも確認させていただきます」
「もちろんです。それでいいかな?ナラルくん」
「うん」
その後、応接室に帰ってきた祖父母の許可もいただきましたので、ナラルくんも同席しました。
祖父母が持ってきた遺品は、ほとんどが宝飾品で、あとは屋敷の権利書を含めた書類でした。
母の気に入っていた宝飾品ならば、すでに手元にあります。置いていったということは、あまり大事ではないのでしょう。
館の権利書は……必要ないかな?両親のお墓があるのはプププビレッジだし、わたくしの家はあのお城だもの。今は出て行くつもりはありません。
わたくしはその二つを祖父母に管理してもらうことにしました。そして相応しい相手に渡してもらうようにお願いします。
お祖父様は言いました。
「いいのか?どちらも、売れば大きな額になる」
「いいのです。それらは両親の持ち物であっても、私が受け継いだものではありませんから。これまで管理してくださった、お祖父様とお祖母様に任せたいのです。ナラルくん、これでいいかな?」
「うん」
わたくしとナラルくんのやりとりを見て、お祖母様が心配そうに声をかけてきました。
「ナラルに何か言われたのかい?」
「いいえ。ただ、このお屋敷を出て行くことになるのではないかと、心配していたので」
「そうだったの。それは不安だったでしょう。おいで、ナラル」
「はい、お祖母様」
ナラルくんはお祖母様の隣りに行きました。
お祖母様はナラルくんの頭を抱きしめました。
その様子を見て、これで良かったのだと、メタナイト卿と顔を見合わせました。
これにて、わたくしの故郷訪問の旅は終わります。